未成年と性行為してしまった場合の法的責任
刑事|児童福祉法違反|児童買春・児童ポルノ禁止法|東京高裁平成8年10月30日判決
目次
質問
質問:私は,先月,出会い系サイトで知り合った女の子と性行為をしてしまいました。相手の年齢は定かではないのですが,見た目が若く,未成年だったかもしれません。性行為自体はもちろん相手との合意のうえで行ったものです。相手が未成年だった場合,同意があっても逮捕されることもあるのですか。
約2か月前、夫が子どもを虐待している、ということで、子どもが児童相談所に一時保護されてしまいました。しつけとはいえ、夫が子どもに暴力を振るったことは確かなので、今後、夫とは離婚を前提として別居し、私は実家で子どもと生活しようと思っていました。
2か月で子どもは戻ってくると思っていたのですが、児童相談所の人から「児童養護施設に入所させたいので、その旨同意してもらえないか」という話がありました。
これはどういう意味なのでしょうか。私はどうすれば子どもと生活できるのでしょうか。
回答:
1.未成年者と性行為を行った場合,仮に相手方の同意の上で行ったものであったとしても,刑法,児童福祉法,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律,各都道府県が定める青少年育成条例(東京都の場合の正式名称:東京都青少年の健全な育成に関する条例)などに抵触する可能性があります。なお,民法上の未成年者は満20歳未満(民法4条)とされていますが,性行為が問題となる児童や青少年は満18歳未満のものとされています。
2.一言に「未成年者との性行為」といいましても,その年齢,対価の支払の有無,性行為に及ぶまでの態様によって,抵触する法律又は条例が異なります。解説の項では,抵触する可能性のある法律又は条例を年齢や対価の支払の有無に分けて説明させていただいておりますので,ご参照ください。
3.なお,このようなケースが捜査の端緒となるのは,相手方の未成年者の親権者が子供の行為に気付き警察に相談するケースや相手方の未成年者が別件で捜査機関に関与した際に発覚するケースなど様々のようです。仮に,このようなケースが立件された場合,相手方女性並びにその保護者との示談の有無が刑事処分の帰趨を大きく左右する事情となりえます。
4 その他関連する事例集はこちらをご覧ください。
解説:
児童と性的関係を持つ行為の処罰について
成人が同意の上児童(18歳未満の者。児童福祉法4条)と性交することそのものを処罰する法律の規定はありません。婚姻制度が16歳から結婚の自由を認めていますので(民法731条),16歳以上の児童も幸福追求権の内容として基本的に性的自由権を有しています(憲法13条)。しかし児童は未だ教育監護を受け(民法818条,820条),全人格的教育を受ける義務を有する立場であり(憲法26条),性的自由権の濫用は許されませんし,他人がその濫用を助長幇助するような行為は勿論許すことはできませんから刑罰の対象として禁止しています。
青少年,児童は将来社会国家を形成し担ってゆく社会的財産,宝であり,三つ子の魂百までというように多感で肉体精神的に未発達,未熟な段階で受けた不健全な性的影響は将来本人が自由に生きてゆく児童個人の尊厳,基本的人権保障だけでなく公正な社会秩序維持という社会,国家的見地からも影響があまりにも大きくとても見過ごすことはできません(法の支配の理念)。そこで法は,児童(18歳未満)の健全な性的成長発達を保護するため,児童の人権(人格権を含む)が影響,侵害されやすい順に違法性,責任を判断し重罰をもって対処しています。
一定の場合には犯罪となり,処罰の対象となりますが,処罰の根拠条文として用いられるのは,第一に都道府県ごとの青少年保護育成条例の淫行処罰規定,第二に児童福祉法34条1項6号です(罰則は60条1項)。他に児童に何らかの利益を供与する児童買春防止法があります。
青少年保護育成条例の規定の仕方は都道府県によって異なりますが,たとえば東京都では「みだらな性交又は性交類似行為」が禁止されており,罰則は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です(同条例18条の6,24条の3)。児童福祉法は,「児童に淫行をさせる行為」を禁じ,罰則は10年以下の懲役または300万円以下の罰金です(児童福祉法34条1項6号,60条)。児童買春をした者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する(児童買春防止法4条)。児童福祉法が,育成条例,児童買春より懲役刑が2倍以上になっているのは違法性,責任がさらに大きいからです。すなわち,単なる誘惑や経済的対価を提供して児童の性的成長権を侵害するよりも,児童に対する社会的,職業的地位を利用して半ば性的強制を行うことは刑法の強姦罪(3年以上の懲役最長20年)とはいえなくとも,精神的に未熟な児童の弱みを利用して事実上抵抗が難しい状態を作出することから,大人の狡猾な面があり違法性,責任がさらに重く人道的にも許されないと評価されます。
1 13歳未満の場合
(1)刑法
相手方未成年が13歳未満だった場合,相手方未成年者の同意の有無に関わらず,刑法177条後段で定められる「強姦罪」に該当し,3年以上20年以下の懲役刑が科される可能性があります(同法177条後段,12条1項)。13歳未満の者は,意思能力が十分でなく,性行為の意味を理解できませんから同意したという評価ができません。仮に同意能力を問題にしなくても,13歳未満のものは,成長未熟性から性的自由を濫用することは許されずこれを助長,誘発することも当然許されませんから,被害者の意思に反して被害者の幸福追求権,被害者の性的自由権,性的に健全に成長する権利(憲法13条)という法益を侵害したことになります。
(2)児童福祉法
児童福祉法は,「児童に淫行をさせる行為」を禁止しています(同法34条1項)。そして,同法は,かかる規定に違反した場合には,10年以下の懲役ないし300万円以下の罰金又はその両方が科されると規定しています(同法60条1項)。同意の上の行為でもかなり重罰になっています。
もっとも,同法34条1項の行為に該当するか否かにつきましては,「児童」,「淫行」,「させる」など法的な解釈を必要としますので若干の補足をします。
ア まず,同法における「児童」とは,同法4条1項が「満十八歳に満たない者をいい」と規定していますので明確です。
イ 次に,「淫行」の意義についてですが,これは同法に明確に規定はされていません。
もっとも,最高裁昭和47年11月28日判決は,「「淫行」とは,・・・手淫・口淫等,・・・性器を直接の手段として性欲の満足・性感情の興奮を目的とする行為に限定されるべきであつて,・・・性交類似行為もこの範囲の行為に限定されるべきである」と判示しています。
いずれにしても,姦淫行為が行われれば,「淫行」に該当することに争いはないと思われます。
ウ 次に,「させる」についてですが,かかる字義からすれば,一見相手方女性に対して第三者との性行為をあっせんするような行為を指すものとも解釈できそうなのですが,裁判例はそのように解していません。
東京高裁平成8年10月30日判決は,「「児童に淫行させる行為」とは,行為者が児童をして第三者と淫行をさせる行為のみならず,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為をも含むものと解するのが相当」と判示しています。
ただし,淫行を行った者すべてが「させた」ものとされるわけではなく,同判決は,かかる解釈については限定をかけ,「同号違反の罪が成立するためには,淫行をする行為に包摂される程度を超え,児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される」とも判示している。
すなわち,児童(18歳未満の者)と淫行を行った際,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけた事実が存在しない場合,同法違反とはならず,青少年育成条例違反などが適用されるか否かの問題が残るということです。もっとも,青少年育成条例違反も比較的緩やかではありますが,刑事罰が規定されているので注意が必要です((4)参照)。
児童の健全に成長する性的自由権(憲法13条)を実質的に保障する必要があり妥当な解釈です。児童は,未成熟であり周りの環境に影響されやすくこのような状況を利用し児童の権利を侵害するのは違法性,責任ともに重く青少年保護育成条例,児童買春よりも重罰をもって臨んでいます。懲役10年,都青少年保護育成条例の5倍です。「事実上の影響力」の解釈も,児童が実質的に影響を受けやすい権限を有する地位をもつ者ということになります。児童を雇用する経営者,法的に教育,監督を行う地位になる者,例えば,学校の先生,実質的に親権を持つ者,医療等の看護を行う者等です。
(3)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は,「児童買春」を禁止している(同法2条2項)。これに違反した場合,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科される可能性があります(同法4条)。
「児童」とは,児童福祉法の「児童」と同様に18歳未満の者をいいます(同法2条1項)。
そして,「児童買春」とは,児童,児童に対する性交等の周旋をした者,児童の保護者(親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者に対し,対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し,性交等(性交若しくは性交類似行為をし,又は自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器等(性器,肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り,若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいいます(同法2条2項)。
同法に規定された禁止行為は,「児童買春」であり,すなわち,対価の供与があった場合のみ,同法により処罰される可能性があります。
(4)東京都青少年の健全な育成に関する条例
各都道府県は,その名称は様々ですが,いわゆる青少年育成条例という条例を制定しています。東京都の場合には,「東京都青少年の健全な育成に関する条例」という名称の条例になります。ここでは,東京都の青少年育成条例を取り上げて解説します。
かかる条例の主たる趣旨は,青少年の健全な育成を図ることです。
同条例は,青少年とみだらな性交又は性交類似行為を禁止しています(同条例18条6)。これに違反した場合,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります(同条例24条の3)。
「青少年」とは,18歳未満の者をいいます(同条例2条1号)。
「みだらな性交又は性交類似行為」とは何かが問題となりますが,かかる意義について,同趣旨の福岡県の福岡県青少年保護育成条例について判断を下した最高裁昭和60年10月23日判決が参考になります。
同判決は,「「淫行」とは,広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当」と判示しています。
すなわち,東京都の東京都青少年の健全な育成に関する条例の「みだらな性交又は性交類似行為」についても,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為ないしこれに近似する行為と解釈することができます。
(5)売春防止法
売春防止法では「対償を受け,又は受ける約束で,不特定の相手方と性交すること」を売春と規定(同法2条)し,「何人も売春の相手方になってはならない」と規定されています(同法3条)が,違反について刑罰規定はありません。この法律は「売春」を防止するのが立法趣旨となっていますので,現在のところ買春そのものは刑事処罰の対象とはなっていません。しかし,売春の「勧誘」や「周旋」や「場所の提供」などの行為は刑事処分の対象となっておりますので,これらの罪の刑事事件の捜査に関連して,捜査当局からの事情聴取を受けることは避けられないでしょう。
2 13歳以上16歳未満の場合
相手方未成年者が13歳以上16歳未満だった場合,真の合意があれば(1)の刑法177条後段に定められている強姦罪に該当しないことになりますが,その他,(2)の児童福祉法,(3)の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律,(4)の青少年育成条例違反,(5)の売春防止法については,上記1の説明がそのまま該当しますのでご参照ください。なお,この年齢の児童は,未だ判断能力が未成熟ですから,合意の成立についての事実認定も厳しく判断される可能性が高くなりますので注意が必要です。
3 16歳以上18歳未満の場合
相手方未成年者が16歳以上だった場合,真の合意があれば(1)の刑法177条後段に定められている強姦罪に該当しないことになりますが,その他,(2)の児童福祉法,(3)の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律,(4)の青少年育成条例違反,(5)の売春防止法については,上記1の説明がそのまま該当しますのでご参照ください。なお,16歳以上になりますと,民法の婚姻適齢(民法731条,16歳から婚姻できる)に達していますので,男女間の真摯な交際で結婚の約束があるような場合には,各法規の解釈にあたって違法性を持つ可能性が低くなることになります。
4 18歳以上の場合
相手方未成年者が18歳以上だった場合,1(5)の売春防止法のみが適用対象となります。
≪参考判例≫
最高裁昭和47年11月28日決定(二) 凡そ「淫行」とは,一般用語例としても姦淫行為を意味し,仮りにこれを拡張して解釈し得るとしても,手淫・口淫等,第一審判決が摘示する,性器を直接の手段として性欲の満足・性感情の興奮を目的とする行為に限定されるべきであつて,第一審判決の謂う性交類似行為もこの範囲の行為に限定されるべきである。
東京高裁平成8年10月30日判決
2 淫行の相手方と淫行をさせる行為をした者との同一性について(所論(2))
児童福祉法34条1項6号は,「児童に淫行をさせる行為」を禁止しているところ,まず,規定の文言上,淫行の相手方を限定していないばかりでなく,右の「児童に淫行をさせる行為」は,文理上は,淫行をさせる行為をした者(以下「行為者」という。)が児童をして行為者以外の第三者と淫行をさせる行為と行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為の両者を含むと読むことができる。そして,前記1において述べた同法の基本理念や同法34条1項6号の趣旨目的に照らせば,同号にいう淫行の相手方が行為者以外の第三者であるか,それとも行為者自身であるかは,児童の心身に与える有害性という点で,本質的な差異をもたらすべき事項とは考えられない。もっとも,同号にいう「淫行をさせる行為」とは,行為者以外の第三者を相手方として淫行させることをいうもので,行為者が自ら児童と淫行する場合を含まない旨の所論に沿う見解も存在する。しかし,単に児童と淫行したに過ぎない者が同号に該当しないことは当然であるとしても,行為者が児童に対しいかに淫行を働きかけた場合であっても,行為者が自ら淫行の相手方になったときは,同号に該当しないこととなるとの点については,人を納得させるに足るだけの根拠が示されておらず,その点について合理的理由を見出すことも困難であって,右のような見解を採ることはできない。以上の次第で,同号にいう「児童に淫行させる行為」とは,行為者が児童をして第三者と淫行をさせる行為のみならず,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為をも含むものと解するのが相当である。所論は,採用できない。
3 淫行を「させる行為」について(所論(3))
児童福祉法34条1項6号にいう淫行を「させる行為」とは,児童に淫行を強制する行為のみならず,児童に対し,直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず,事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される(なお,最高裁判所昭和30年12月26日第三小法廷判決刑集9巻14号3018頁,最高裁判所昭和40年4月30日第二小法廷決定裁判集155号595頁参照。)。そして,前記2でみたとおり,同号には,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為を含むと解すべきところ,同号が,いわゆる青少年保護育成条例等にみられる淫行処罰規定(条例により,何人も青少年に対し淫行をしてはならない旨を規定し,その違反に地方自治法14条5項の範囲内で刑事罰を科するもの)とは異なり,児童に淫行を「させる」という形態の行為を処罰の対象とし,法定刑も最高で懲役10年と重く定められていること等にかんがみれば,行為者自身が淫行の相手方となる場合について同号違反の罪が成立するためには,淫行をする行為に包摂される程度を超え,児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。
最高裁昭和60年10月23日判決
そこで検討するのに,本条例は,青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的として定められ(一条一項),他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除き,小学校就学の始期から満一八歳に達するまでの者を青少年と定義した(三条一項)上で,「何人も青少年に対し,淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」(一〇条一項)と規定し,その違反者に対しては二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金を科し(一六条一項),違反者が青少年であるときは,これに対して罰則を適用しない(一七条)こととしている。これらの条項の規定するところを総合すると,本条例一〇条一項,一六条一項の規定(以下,両者を併せて「本件各規定」という。)の趣旨は,一般に青少年が,その心身の未成熟や発育程度の不均衡から,精神的に未だ十分に安定していないため,性行為等によつて精神的な痛手を受け易く,また,その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ,青少年の健全な育成を図るため,青少年を対象としてなされる性行為等のうち,その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであつて,右のような本件各規定の趣旨及びその文理等に徴すると,本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは,広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし,右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは,「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく,例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等,社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて,その解釈は広きに失することが明らかであり,また,前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは,犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて,前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で,前叙のように限定して解するのを相当とする。このような解釈は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり,「淫行」の意義を右のように解釈するときは,同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから,本件各規定が憲法三一条の規定に違反するものとはいえず,憲法一一条,一三条,一九条,二一条違反をいう所論も前提を欠くに帰し,すべて採用することができない。
以上