新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1387、2012/12/12 13:55 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
【民事・違法金利業者・ヤミ金・システム金融・対策・最高裁平成20年6月10日判決】
質問:私は,会社を経営しているのですが,経営に行き詰ってしまい,他に金を貸しているところがないことから,いわゆるヤミ金に初めて手を出してしまいました。元金として50万円を貸してもらう代わりに,小切手60万をヤミ金に対して振り出してしまいました。10日後に60万円を支払うように言われ,携帯電話にかなりの頻度で取立ての電話がかかってきています。支払わないと,小切手を銀行に回すなどと言われ,精神的に参ってしまっています。今後どのよう対応していけばよいでしょうか。
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回答:
1.ヤミ金について定義はありませんが,貸金業の登録をしていない業者あるいは,登録の有無にかかわらず出資法違反の利息を請求する業者,違法な取り立てをする業者をヤミ金(闇金)といいます。その貸付行為は刑事上罰せられる犯罪行為です。違法な利息についての支払義務はありませんし,受け取った元金についても返還する義務はありません。支払ってしまった金銭については,法律上全額の返還請求が可能です。
2.ただ,本件のように手形や小切手を担保にされてしまった場合には,困難な問題が生じます。決済資金が足りないのに手形や小切手が銀行に交換に回されると,不渡事故が生じてしまい会社の経営に大きな影響が生じてしまう可能性があるため,ヤミ金側が債務者に対して強い立場にあるからです。このような場合,警察に対して情報提供や刑事告発等を行い,また,弁護士の協力を得ながら,小切手や支払ってしまった元金の返還請求をしていく必要があるでしょう。
3.その他,ヤミ金に関連する事例集論文としては、1223番、番、1070番、897番、393番、163番、160番、147番、101番、75番、53番を、不渡処分の具体的内容については、1292番の事例集論文をご参照ください。
解説:
第1 ヤミ金の種類,手口
1 (ヤミ金の定義,特徴)
ヤミ金には,街金などさまざまな呼称があります。
ヤミ金による貸付の特徴としては,@出資法の利率を超える超高金利の利率であること,A本人に対する過剰な取立てに加え,勤務先や家族,友人に対しても取立ての催告をする,B消費者金融や銀行からの借入れをできない債務者に対して,強引に勧誘をしてきて金銭を貸し付けてくる等が挙げられます。債務者の経済的窮状に乗じて,執拗に貸付,取立てを行ってきます。
2 (ヤミ金の手口,利率の計算について)
ヤミ金の手口については様々なものがあります。
近年多発している代表的な類型として,いわゆる「090金融」と呼ばれるものが挙げられます。他人名義の携帯電話を利用して貸付・取立を行うことにより,その身元が特定されないようにしているヤミ金業者です(貸金業者の登録には固定電話が必要ですから携帯電話の番号だけが表示されている場合はヤミ金ですので電話をしてはいけません)。
また,貸付の際に,手形小切手を担保に取られてしまい,返済ができない場合には手形小切手を交換に回してしまう,いわゆる「システム金融・手形小切手金融」という類型もあります。
今回のご相談の場合,現金50万円を貸す代わりに,60万円分の小切手を振り出してしまったものですので,類型としてはこのシステム金融に該当します。
そして,今回の利率の計算についてですが,50万円を貸し付け,10日後にその20%である10万円を加算した60万円を返還することを約束させられたので,年利としては730%の金利となります。これは,出資法第5条の年利109,5%を大きく超える違法な利率となります。
計算式 : 10万円(利息)×365日÷10日(利息の日数)×100÷50万円(受け取った元金)=730%(年利)
3 (システム金融(手形小切手金融)の厄介な点)
(1)システム金融は,上述のように債務者に対し手形や小切手を振り出させ,それを担保にして元金を交付するという手口をとっています。支払がない場合にはヤミ金は当該手形小切手を銀行に交換に回してしまいます。
小切手等は,持参人により支払呈示がなされると,支払銀行の当座預金から支払いがなされることになります。この場合,当座預金に小切手の支払金額に足りる金額がない場合には,小切手の支払拒絶がなされることとなり,いわゆる「不渡処分」(不渡)となってしまいます。
(2)不渡処分が出てしまった場合には,以下のような不利益が生じます。
まず,1回目の不渡処分が出た場合,手形交換所は不渡報告を行い,加盟銀行に対して通知を行います。これにより,不渡の発生が加盟銀行に通知され,今後の取引の信用等について事実上影響が出てしまうこととなります。ただ,当座取引自体が制限されるわけではありません。6か月以内に2回目の不渡処分を起こさなければ,下記の「取引停止処分」は免れることができます。
これに対し,6か月以内に2回目の不渡処分を起こしてしまった場合には,銀行の当座預金について取引停止処分を受けてしまいます。取引停止処分を受けてしまった場合には,2年間,加盟銀行との間で当座取引を行うことができません。当座取引ができないことは,会社の経営にとって重大な影響が生じることを意味し,場合によっては会社の倒産等に追い込まれてしまいます。
小切手における不渡処分の具体的な内容については,手形交換所規則に規定があります。事例集の1292番に,不渡処分の詳細が記載されています。ヤミ金は,債務者が不渡処分による不利益を被ってしまうことに乗じて,執拗に債務の支払を請求してきます。
第2 ヤミ金についての刑事上,民事上の法律関係について
次に,ヤミ金の貸付行為についての,刑事上,民事上の法律関係について検討します。以下に述べるように,ヤミ金による貸付は刑事上処罰される犯罪行為であり,民事上も金銭(元金,利息,遅延損害金)の返還義務はありません。
1 (ヤミ金による貸付行為の犯罪性)
(1)高金利罪(出資法第5条)
出資法第5条第1項によれば,年利109,5%を超える貸付けは禁止されており,それを超えて貸付を行った場合には,犯罪行為として,5年以下の懲役刑に科せられることになります。なお,業として金銭の貸付けを行った場合には,年20%を超える貸付を行った場合に5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金刑(出資法第5条第2項),年109.5%を超えた場合には10年以下の懲役刑若しくは3000万円以下の罰金刑に処せられることになります。
本件では,上記のように年利が730%となっていますので,上記出資法第5条に違反する犯罪行為となります。
(2)無登録営業罪(貸金業法第47条2号,11条1項)
貸金業をするためには貸金業登録をしなければなりませんが(貸金業法第11条第1項),これをしていない場合には,貸金業法47条2号等に違反し,10年以下の懲役若しくは3000万円の罰金が科されることとなります。
近年では貸金業の登録が厳格になっていることもあり,無登録の業者が増えています。ただ,実際に登録している業者の名前を使って貸付を行っているヤミ金業者(実際には無登録業者)もかなりの割合で存在しますので,注意が必要です。
(3)違法取立の禁止(貸金業法第21条第1項)
貸金業法21条1項により,債権の取立てをする場合には,人を威迫し,私生活や業務の平穏を害するような言動をしてはならないとされています。貸金業無登録のヤミ金業者であっても,この規制は及びます。これに違反するような取立行為をした場合には,2年以下の懲役若しくは300万以下の罰金の刑に科せられることとなります。
(4)その他刑法上の犯罪(脅迫罪,恐喝罪,住居侵入罪,威力業務妨害罪等)
他にも,以下のような刑法上の犯罪の成立が考えられます。
ヤミ金が生命身体等に対する害悪の告知を行って取立て行為をしたのであれば刑法上,脅迫罪(刑法第222条第1項,第2項)に該当します。一般人が畏怖するような形で恐喝して金銭の交付を要求したのであれば,恐喝罪にも該当します(刑法第249条第1項)。
また,違法な取立てを行うため,会社に電話を何回も掛けたりするような場合には場合によっては威力業務妨害罪(刑法第234条)に該当しますし,相談者様の家に侵入してきたような場合には,住居侵入罪(刑法第130条)にも該当します。
2 (ヤミ金による貸付行為に対する民事上の法律関係について)
次に,ヤミ金による貸付を受けた場合,民事上の法律関係(金銭の返還義務等)がどうなるかについて検討してゆきます。
(1)公序良俗無効(民法90条)
ヤミ金による貸付は,出資法の定める利率を大幅に超えるものであり,暴利行為に該当する契約ですから,公序良俗違反として民事上契約は無効となります(民法第90条)。
(2)支払ってしまった金銭の不当利得返還請求(民法第703条,第704条)
(1)で述べたように,ヤミ金による貸付契約は民事上無効なものですから,ヤミ金に支払ってしまった元金については「法律上の原因」なく受け取ったものといえます。したがって,ヤミ金に対して支払ってしまった金銭については,全額の返還請求をすることが可能です。
(3)受け取った元金等の返済義務について(民法第708条)
では,ヤミ金から受け取った元金については,返還しなくてはならないのでしょうか。この点については,ヤミ金から受け取った元金は返還しなければならないとする立場もありました。
しかし,最高裁平成20年6月10日判決は「反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,上記のような民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである。」という立場を明らかにしています。 すなわち,最高裁の立場によれば,ヤミ金から受け取った元金については,不法原因給付(民法第708条)として返還することは不要です。また,債務者がヤミ金に損害賠償請求をした場合に,請求額から元金の額を差し引くことも許されないこととなります。
第3 ヤミ金に対する具体的な対処法
以上のようなヤミ金についての民事上,刑事上の法律関係を踏まえ,具体的な対処方法について検討します。
1 (警察への情報提供,告訴,告発等)
第2・1で述べたとおり,ヤミ金による貸付は出資法,刑法に違反する犯罪行為です。そこで,違法な取立てが続くような場合,ヤミ金に関する資料(業者名,借入額,利率,チラシ,ダイレクトメール,取立てがかかってくる携帯電話の番号など)を収集した上で,警察に対しヤミ金の情報提供をすべきです。ヤミ金の情報提供に関しては,各警察のHPに連絡先が記載してありますので,そこへ連絡することになります。
例)警察庁HP http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no7/9110/9110.htm
警察に対して情報提供した上で,ヤミ金に対して直接電話を掛けて取立てを辞めるように警告してもらうように依頼するとよいでしょう。警察から取立てを止めるように警告がなされた場合,ヤミ金は出資法違反等の犯罪行為として刑事上罰せられることをおそれ,過剰な取立行為は控えることが多いです。
併せて,警察に対して,ヤミ金による被害を申告する被害届の提出,刑事告訴,告発等の手段を取ることも考えられます。その際には,被害届(告訴・告発状)を提出できるだけの証拠を収集して,警察に相談に行くこととなります。
2 (弁護士への依頼)
次に,ヤミ金被害に対する民事上の問題としては,弁護士に依頼することが考えられます。東京三弁護士会(東京,一弁,二弁)は,ヤミ金事件を受任した弁護士の事件処理の基本方針として,以下の3つを挙げています。
@ 名目の如何を問わず,ヤミ金融業者に対しては1円の金銭も返還しない。
A ヤミ金融業者に対して,依頼者が支払った金銭の返還請求をする。
B 刑事告訴・告発及び行政指導申告などを積極的に行う。
まず,弁護士がヤミ金の処理を受任した場合,電話やFAXを通じて,書面か口頭によって,ヤミ金業者に対し速やかに受任通知(本件については任意整理として弁護士が介入した旨の通知)を行います。
その上で,ヤミ金による貸付行為が上記のように犯罪行為(出資法違反,貸金業法違反,刑法違反等)であることを指摘します。そして,直ちに取立てを止める旨,今後金銭の支払は一切行わない旨,既に弁済した金銭については返還する旨の警告を行います。場合によっては,警察から電話をしてもらう等の手段を取ることによって,違法な取立てを控えさせます。
通常,弁護士による受任通知,取立を直ちに止めるように強く警告することで,債務者に対する取立行為は止まることが多いです。ただし,元金を一切もしくはほとんど返還していないような状況では,ヤミ金側から強い抵抗を受けるのが通常ですので,こちらとしても粘り強く交渉を続ける必要があります。
3 (システム金融(手形小切手金融)への対処)
(1)システム金融(手形小切手金融)の問題点
一般のヤミ金に対する対処法としては以上のとおりですが,今回のようにヤミ金に対して手形や小切手を振り出してしまったような場合には上述のように厄介な問題が生じます。小切手等については,受け取った持参人であれば銀行で換金することができる場合があり,元金や利息を支払わないとヤミ金が小切手を取立てに回してしまう可能性が高いからです。この場合,債務者には第1・3(2)で述べたように不渡事故による倒産の危険等が生じてしまいます。
(2)具体的な対処法
ア 交渉内容について(依頼返却の交渉)
弁護士にシステム金融の処理を依頼した場合,一般的な処理としては通常のヤミ金と同一です。弁護士はシステム金融に対して,直ちに受任通知を行います。電話番号しかわからない場合は弁護士が直接電話をします。その上で,元金を渡す代わりにそれより大きい額面額の小切手等を振り出させることも,出資法第5条の高金利罪に該当する犯罪行為であることを指摘します。
また,小切手を直ちに返却すること(依頼返却)を請求し,小切手を交換に回して不渡にしたような場合には不法行為に基づく損害賠償請求等の民事的手段を取る旨,また,出資法違反(貸金業法違反,刑法違反)による刑事告発等の手段を取る旨を告げ,強く警告します。このような警告を行った場合,システム金融は,警察による摘発をおそれ,通常は小切手等の返還(依頼返却)について応じる場合が多いでしょう。ただ,ヤミ金が渡した元金については返還するよう抵抗される場合もあり,また,銀行へ交換に出してしまうことも少なくありません。
イ 異議申立てについて
銀行へ交換に出された場合,決済資金を当座預金に用意しないと不渡処分になってしまいます。どうしても不渡事故を避けたい場合には,手形小切手について異議申立ての手続をとることによって,取引停止処分を防ぐことが可能です。ただし,異議申立てをするためには,小切手等の額面額と同等の異議申立預託金が必要となります。預託金を準備し,支払銀行に異議申立事由(今回の場合には,小切手がヤミ金に詐取によるものであることなど)があることを説明することによって,取扱銀行に対して協力を求めることになります。
ウ 支払委託の取消について(小切手に振出日が記載されている場合)
預託金が準備できないような場合には,警察や弁護士の協力を得ながら,粘り強く小切手を返還するように交渉する必要があります。銀行に交換に回してしまった場合であっても,依頼返却によって小切手を取り戻すことは可能です。
また,小切手に振出日が記載されている場合に限定されますが,以下のように支払委託の取消という手段も考えられます。支払委託の取消とは,振出人が小切手を振出したが支払をしてほしくない事情がある場合(小切手の形式不備等)に,振出人が支払銀行に対して,その小切手を支払わないように申し出ることをいいます。
小切手については,法律上,振出日の翌日から10日以内に銀行に支払呈示をすることを要する,とされています(支払呈示期間。小切手法第29条第1項)。そこで,小切手に振出日が記載されている場合には,振出日の翌日から10日間までの間は,ヤミ金に対して銀行に支払呈示をしないように交渉を続け,10日間が経過した後に,支払委託の取消を銀行等に申し出ることが考えられます。
支払呈示期間経過後の支払委託の取消により小切手の決済がなされなかった場合,いわゆる「0号不渡」として処理されますので,不渡届の提出はなされず不渡処分とは扱われません。
ここにいう支払委託の取消には,支払呈示期間経過後の当座勘定の解約も含まれます。そこで,緊急の場合,支払呈示期間経過後に口座を解約してしまうことも,0号不渡として不渡情報が流れることを防止するためには有効であると考えられます。なお,支払呈示期間経過前の口座解約については,「取引なし」のいわゆる「1号不渡」として,不渡処分としての不利益(上記参照)を被ることになってしまいますので注意が必要です。
なお,以上については,小切手に振出日が記載されていることが大前提です。最近の手形小切手金融(システム金融)は,振出日や金額欄について白地(小切手上に記載されていないこと)のまま小切手を振り出させることも多く,振出日が白地の場合には,上記のように刑事上違法であること等を警告しつつ,依頼返却に向けて粘り強く交渉を続けていく必要がやはりあるでしょう。
4 (ヤミ金被害に遭ってしまった場合)
以上検討したように,ヤミ金による貸付は刑事上違法な犯罪行為に該当するものであり,民事上も一切の支払義務がないものです。ただ,ヤミ金は債務者の経済的な窮状に乗じて過酷な取立を行ってきますし,また,本人がいくら法律的に正しいことを主張しても,関係なく取立てを行ってくることも多いと考えられます。
このように,ヤミ金業者には本人による対応は難しいことがありますので,警察や弁護士などの専門家の協力を得ながら,毅然とした態度で応じていくべきでしょう。
<参照条文>
小切手法
第二十九条 国内ニ於テ振出シ且支払フベキ小切手ハ十日内ニ支払ノ為之ヲ呈示スルコトヲ要ス
○2 支払ヲ為スベキ国ト異ル国ニ於テ振出シタル小切手ハ振出地及支払地ガ同一洲ニ存スルトキハ二十日内又異ル洲ニ存スルトキハ七十日内ニ之ヲ呈示スルコトヲ要ス
○3 前項ニ関シテハ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ振出シ地中海沿岸ノ一国ニ於テ支払フベキ小切手又ハ地中海沿岸ノ一国ニ於テ振出シ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ支払フベキ小切手ハ同一洲内ニ於テ振出シ且支払フベキモノト看做ス
○4 本条ニ掲グル期間ノ起算日ハ小切手ニ振出ノ日附トシテ記載シタル日トス
出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律
(高金利の処罰)
第五条 金銭の貸付けを行う者が,年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし,一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは,五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者も,同様とする。
2 前項の規定にかかわらず,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において,年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは,五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。その貸付けに関し,当該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者も,同様とする。
3 前二項の規定にかかわらず,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において,年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし,一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは,十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。その貸付けに関し,当該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者も,同様とする。
貸金業法
(無登録営業等の禁止)
第十一条 第三条第一項の登録を受けない者は,貸金業を営んではならない。
2 第三条第一項の登録を受けない者は,次に掲げる行為をしてはならない。
一 貸金業を営む旨の表示又は広告をすること。
二 貸金業を営む目的をもつて,貸付けの契約の締結について勧誘をすること。
3 貸金業者は,貸金業者登録簿に登録された営業所又は事務所以外の営業所又は事務所を設置して貸金業を営んではならない。
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて,人を威迫し,又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに,社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に,債務者等に電話をかけ,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 債務者等が弁済し,又は連絡し,若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において,その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに,前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に,債務者等に電話をかけ,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は債務者等の居宅を訪問すること。
三 正当な理由がないのに,債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において,債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず,当該場所から退去しないこと。
五 はり紙,立看板その他何らの方法をもつてするを問わず,債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
六 債務者等に対し,債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
七 債務者等以外の者に対し,債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において,更に債権の取立てに協力することを要求すること。
九 債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法
人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
十 債務者等に対し,前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
2 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は,債務者等に対し,支払を催告するために書面又はこれに代わる電磁的記録を送付するときは,内閣府令で定めるところにより,これに次に掲げる事項を記載し,又は記録しなければならない。
一 貸金業を営む者の商号,名称又は氏名及び住所並びに電話番号
二 当該書面又は電磁的記録を送付する者の氏名
三 契約年月日
四 貸付けの金額
五 貸付けの利率
六 支払の催告に係る債権の弁済期
七 支払を催告する金額
八 前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
3 前項に定めるもののほか,貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たり,相手方の請求があつたときは,貸金業を営む者の商号,名称又は氏名及びその取立てを行う者の氏名その他内閣府令で定める事項を,内閣府令で定める方法により,その相手方に明らかにしなければならない。
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は,十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一 不正の手段によつて第三条第一項の登録を受けた者
二 第十一条第一項の規定に違反した者
三 第十二条の規定に違反した者
第四十七条の三 次の各号のいずれかに該当する者は,二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。情を知つて,第六号又は第七号に該当する者から信用情報の提供を受けた者も,同様とする。
一 第四条第一項の登録申請書又は同条第二項の書類に虚偽の記載をして提出した者
二 第十一条第二項又は第三項の規定に違反した者
三 第二十一条第一項(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項,第二十四条の五第二項及び第二十四条の六において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
四 第四十一条の四の規定による命令(役員の解任の命令を除く。)に違反した者
五 第四十一条の十六(第四十一条の二十四第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らし,又は盗用した者
六 第四十一条の三十八第一項の規定に違反して返済能力等調査以外の目的のために加入指定信用情報機関に信用情報の提供の依頼をし,又は加入指定信用情報機関から提供を受けた信用情報を返済能力等調査以外の目的に使用し,若しくは第三者に提供をした者
七 第四十一条の三十八第二項の規定に違反して加入指定信用情報機関から提供を受けた信用情報を使用し,又は第三者に提供した者
2 第二十四条の十二第一項の規定に違反した者は,二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
刑法
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入し,又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は,三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
(脅迫)
第二百二十二条 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。
(強要)
第二百二十三条 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者も,前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は,罰する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も,前条の例による。
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は,十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。