覚せい罪事案における執行猶予の可能性について

刑事|覚せい剤使用と実刑|執行猶予の可能性|保釈の可能性|最高裁昭29年10月26日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

質問:私の息子が,昨日,覚せい剤所持の罪で逮捕されてしまいました。全て認めているようです。息子は,8年半ほど前に覚せい剤の所持及び使用で懲役1年6月執行猶予4年の判決をもらっています。執行猶予期間が終了していても2度目の覚せい剤は,間違いなく実刑になると聞いたことがあるのですが,本当でしょうか。また,息子は小さいながらも会社を経営しており,もし実刑になるということであれば,実刑前に身辺整理をさせてあげたいです。何か手段はありますか。

回答:

1.実務上2度目の覚せい剤事案であっても,前刑に執行猶予がついている場合は,前刑の言い渡しから本件逮捕まで7年以上期間が空いていると,被疑者の情状次第では再度の執行猶予付判決の可能性が出てくると言われています(前刑の言い渡しからおよそ6年が経過する前の逮捕である場合には,2度目の執行猶予を獲得するのはかなりの困難とされ,10年以上の期間が経過していれば,その可能性は大分高まってくると言われています。)。

2.ただし,実刑判決も見据えた行動も視野に入れる必要があります。身辺整理の必要がある場合は,保釈請求を行うことが一般的です。保釈請求についても,2度目の覚せい剤事案であれば,見通しは決して明るいわけではありませんが,情状によっては保釈が通る可能性があります。

3 覚せい剤取締法違反に関する関連事例集参照。

解説:

1 本件手続きの概要

覚せい剤の所持は覚せい剤取締法14条違反にあたります。さらに、今後尿検査等で覚せい剤の使用として19条違反とされる可能性が考えられます。覚せい剤は,被害者無き犯罪ではありますが,覚せい剤の薬理作用による重大犯罪の防止,暴力団の資金源になることを防止する,などといった観点から,厳しい処罰規定が設けられています。

本件の場合,被疑者も素直に認めているということですが,逮捕後,72時間以内に10日間の勾留,その後さらに10日間の勾留延長による身体拘束が続き,最終日に公判請求になるという流れが一般的です。合計23日間の身体拘束中に,使用の事実を確認するために尿検査を行い,その他,入手経路や使用目的,使用頻度等につき取り調べが行われることになります。

本件が自白事件であることを前提にすると,一般的なタイムスケジュールとしては,逮捕されてから23日以内に公判請求,公判請求日から概ね1月~2月以内に第1回公判期日,第1回公判期日の2週間前後に判決,というものになります。すなわち,逮捕されてから1審判決まで3か月程度というのが一つの目安であるといえます。

2 本件の見込み

(1)執行猶予付判決の見込み

まず本件は,二度目の覚せい剤事案とはいえ,法律上は執行猶予付判決を行える事案です。法律上,執行猶予付判決を受けることができるのは,①一度も禁錮以上の刑に処せられたことがない場合,②禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合,③前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがある場合,以上の3つに限られます(刑法25条)。本件の場合,被疑者は前刑の執行猶予期間を無事に満了しているので,前刑の言い渡しが消滅し,①一度も禁錮以上の刑に処せられたことがない場合,に該当します(刑法27条)。従って、法律上は執行猶予が可能なことになります。

しかし,法律上は一度も禁錮以上の刑に処せられたことがないという評価になるとはいえ,裁判所は,本件判決を行う場合,過去に覚せい剤の所持使用により懲役刑の言い渡しを受けた事実を悪しき情状として量刑に反映させることは可能であり,初めて覚せい剤を使用した事案と同じ扱いをしてもらえるわけではありません。初犯の場合と比較し,重い刑が予想されると考える必要があります。

この点,覚せい剤事案(単純な所持使用)においては,被害者無き犯罪であり,被害の程度や被害感情というものが観念できないため,量刑の考慮要素としては被告人の使用状況及び反省の態度や今後の監督状況に限られてきます。この点,監督者が一応の誓約があり,被告人が罪を素直に認め反省の意思を示している事案においては,量刑の相場がある程度定型化されています。量刑の相場に従うと,前刑の言い渡しからおよそ6年が経過する前の逮捕である場合には,2度目の執行猶予を獲得するのはかなりの困難を極めると理解しておく必要があります。また,前刑の言い渡しからおよそ7年以上期間が開いていると,情状次第では執行猶予付判決の可能性が一定程度見出せるといえ,さらに言えば,10年以上の期間が経過していれば,その可能性は大分高まってくると言えるでしょう。一般の犯罪よりも執行猶予の条件が厳しくなっているのは、覚せい剤使用に関する犯罪は、被害者は被告人自身と言われるように犯罪自体から抜け出すことが覚せい剤の薬物の性質上(依存症)困難な面があり一般の犯罪に比較して執行猶予にして社会内更生を期待する可能性が少ないからです。

以上の量刑相場に従うと,本件は実刑になるか執行猶予付判決になるか,際どい事案であり,いかによい情状を収集できるかにかかってきます。執行猶予を目指すのであれば,逮捕段階から早急に有利な情状を揃えていく必要があると言えます。

(2)有利な情状について

覚せい剤事案においては,薬理作用から生じる依存性により,再び覚せい剤に手を出す可能性がどれだけ存在しているか,という点が裁判所としても気になる点です。そのため,被告人が覚せい剤と決別できる環境がどれだけ整っているか,また,決別の意思を窺える事情がどれだけ揃っているか,という点が重要になります。

① 反省文

被告人の反省の念を,反省文という形でしたためておく方法です。覚せい剤に対する決別の意思などを中心に作成する必要があります。この点,反省の念については,公判廷における被告人質問で話せば十分であるという見方もありますが,文章にするからこそ明らかになる感情や,日々の気持ちの変化が発見できる場合があります。

② 贖罪寄付

弁護士会、法テラスや日本ダルクなどに対し,寄付を行うという形で反省の念を示すことになります。寄付金額は人それぞれですが,反省の意欲と被告人の資力のバランスを図りながら金額を設定すべきでしょう。

③ 監督者の設定

覚せい剤から決別するためには,監督者が存在していることが必要不可欠です。覚せい剤の誘惑に対し,第三者が被疑者を律してあげる必要があります。監督者がいる場合といない場合では,裁判所の印象は大きく変わってきます。少なくとも本件の場合,適切な監督者が不在なのであれば,実刑の可能性は大きく高まってくるといえるでしょう。監督者として公判廷で誓約を行うというだけでも,「わざわざ裁判所に来てくれるという意気込みがある」という限度において監督意思の存在が窺われますが,本件のような限界事案においては,とても強い監督意思があることを,「監督します」という発言のみならず,行動でも示す必要があると思われます。特に,本件は2度目の逮捕です。被疑者の覚せい剤に対する親和性が決して低くないことが窺われ,単純に被疑者の日常生活を律するだけではなく,監督者自身も覚せい剤に対する理解を深めることで,更に効果的な監督が期待できるものと思われますし,裁判所の印象もよくなるといえます。具体例としては,各治療機関が主催している研修会の参加,アパリ主催のセミナーに参加,などが挙げられます。

④ 覚せい剤の入手先との関係断絶

覚せい剤から決別するための手段として,覚せい剤の入手経路を断絶するという点が挙げられます。入手経路が友人や知人ということであれば,断絶のために友人との一切の連絡を断ち切るということになるので,その旨証言しても現実味がないことが多いです。他方,インターネットで売人と知り合った場合など,売人とは薬の売買だけを行う関係ということであれば,電話番号を削除するといった手段をとることが有益でしょう。

⑤ 通院治療

覚せい剤から決別するための手段として,医療機関に通うことが考えられます。特に,覚せい剤患者に対しては,隔離病棟を用意している医療機関も存在しており,長期的な入院治療を行い,覚せい剤からの脱却に向けたよいスタートを切ることができます。裁判所としても,入院治療を行うということであれば,治療に向けた努力を行っているとの評価をしやすくなります。ただし,実務上,覚せい剤事案は身柄事件となることが一般的であり,下記3の保釈手続きを行わない限りは警察署または拘置所に留置されたまま裁判当日を迎えることになります。早期の入院治療を行うためには,起訴後に保釈請求を行い,その許可を得る必要があります。

また,担当医と信頼関係を築くことができれば,当該担当医の先生に,情状証人として法廷で証言してもらうことが考えられます。証言内容としては,治療経過や今後の治療見込み,治療終了後に覚せい剤との親和性がどれだけ解消されるか,などといった点です。医師の中には,薬物事犯を取り締まる警察官と連携が取れる方もおり,かかる医師とコネクションがあるというだけで覚せい剤に手を出すことに対する心理的制約になるといえるでしょう。ただし,医師は,医師の職業倫理との関係で,実際の治療経過や症状と異なる証言をすることはできないと思われるので,医師の方を情状証人に呼んで弁護に功を奏するのは,治療経過が良好な場合や覚せい剤との親和性が弱いと医師が判断している場合などに限られるという見方もあります。

3 保釈について

上記でも述べたとおり,起訴後であれば保釈請求を行うことができます。

(1)権利保釈(刑訴法89条各号)

権利保釈とは,保釈請求がある場合に,刑訴法89条各号に該当しない限り,必ず裁判所が保釈を認めなければいけないものです。本件は覚せい剤所持に該当し,場合によっては使用の事実が存在しているかもしれないので,10年以下の懲役に処せられることになります(同法14条,19条,41条の2,41条の3)。そのため,刑訴法89条1号2号には該当しません。しかし,事案にもよりますが,覚せい剤事案においては,依存性が顕著に見受けられるという犯罪の性質を前提に,また,自宅内に注射器やパケが存在しているなどの事情がある場合,長期3年以上の罪の常習性が認定され(刑訴法89条3号),権利保釈が認められないことが多いです。

その場合,下記の裁量保釈が認められるかどうかが問題となります。

(2)職権保釈(刑訴法90条)

職権保釈とは,権利保釈事由が存在しない場合であっても,裁判所が適当と認める場合には裁量により保釈を行うことを意味します。

いかなる場合に適当と認められるかについては,ケースバイケースですが,犯罪の性質や情状,被告人の身上関係,公判審理の進捗状況などの諸般の事情から判断されることになります。

本件の場合,被疑者に同種前科があり,それだけでマイナスのスタートであると理解する必要があります。とはいえ,8年前の出来事であることを前提に,被疑者が素直に罪を認め,適切な監督者が存在し,組織的犯行であることが窺われないこと,などの事情があれば,裁量保釈が認められる余地はないわけではないという考え方も可能です。さらにいえば,保釈請求時において,監督者がすでに薬物に関するセミナーを受講している場合にはその資料を,また,既に入院治療先を確保している場合にはその資料及び担当予定医師の身元引き受け書を提出すれば,保釈許可の可能性が一層高まるといえるでしょう。

ここで,覚せい剤事案の場合,留置施設に拘束されているよりは,薬物依存からの脱却という意味では,入院治療を行う方がはるかに効果的です。保釈後に入院治療先を確保できている場合には,治療を早期に与える環境が必要ですし,その旨,保釈請求の際に主張すべきです。裁判所も,限界事案においては治療先が確保できていることを決め手として保釈許可を行うケースもよく見受けられます。

(3)保釈の条件

ア 保釈保証金

保釈許可が出る場合,保釈保証金を裁判所に差し入れる必要があります(93条)。金額は裁判所が決定しますが,覚せい剤事犯で一般的な経済力を有する家庭の場合,前科があることを考慮しても,200万円~300万円の保釈保証金の支払いを命じられることが多いといえます。実際に身柄が解放されるのは,保釈保証金を納付した後,ということになるので(刑訴法94条1項),少しでも早期の釈放を目指すのであれば,保釈許可決定が出る前の段階で,200万円から300万円程度の金銭を用意しておく必要があります。

イ その他条件

その他,保釈許可条件として住居が指定されることが通常で,指定先は,監督者の住居となることが多いです。また,数泊以上の外泊する場合や海外旅行を行う場合には裁判所の許可が必要,などといった条件を付されることも一般的です。

これらの条件を守らなかった場合,保釈は取り消され,かつ,保釈金が没収される可能性が出てきます(刑訴法96条1項5号,2項)。

ウ 第1審保釈期間中の行動について

入院治療を前提として保釈許可が出た場合,入院を行う必要があります。後は,会社関係者などに事情をすべて伝えるなどして身辺整理を行うべきか,という問題がありますが,これは控訴を行って再保釈期間中に行えば足りるのか,執行猶予判決などといった事情を総合的に踏まえ,判断すべきでしょう。

4 一審判決が出た場合の対応について

(1)本件が,執行猶予付き判決になるか,実刑判決になるか,際どい事案であるというとは,先ほど述べたとおりです。

(2)執行猶予付き判決が出た場合

ア 身体拘束について

仮に執行猶予判決が出た場合,勾留状の効力が失われるので(刑訴法345条),身体拘束の根拠を欠くことになります。そのため,勾留継続中であれば判決当日に身体が解放されます(ケースによりますが,①判決の言い渡しと同時に法廷で釈放され,留置施設に自ら荷物を取りに戻る場合と,②一度留置官とともに留置施設に戻ってから荷物を持ち出す場合のどちらかです。)。

保釈されている場合は、検察官の控訴申し立ての有無にかかわらず,判決後,相当期間後に納付済みの保釈保証金は返還されることになります。裁判所の内部手続きがあるので,判決日から数日ないし1週間程度,返還までの期間を見ておくべきでしょう。

ただし,判決後に新たな勾留事由(住居不定,罪証隠滅の恐れ,逃亡の恐れ。刑訴法60条1項各号)が生じた場合は,裁判所は新たに勾留状を発付することが可能です(最高裁昭29年10月26日判決)。そのため,控訴審に至った場合に,勾留状の効力が失効した場合であっても,再度勾留される恐れが存在していることは念頭に置く必要があります。

イ 控訴された場合の対応について

本件は執行猶予付き判決の限界事案であると思われるため,執行猶予付き判決が出た場合には,検察官が控訴を申し立てる可能性があります。一審の弁護人は,控訴審においては,弁護人たる地位を有しないので(刑訴法32条2項。実務上は,一審判決が確定又は控訴申し立てにより移審の効果が生じるまで,とされています。すなわち,一審弁護人は,控訴を申し立てる権限までは有していることになります),継続して同じ弁護人を再度選任するか,新たな弁護人を探すか,検討する必要があります。

(3)実刑判決が出た場合

ア タイムスケジュールについて

実刑判決が出た場合,被告人及びその関係者と相談の上,控訴を申し立てるか否かを慎重に検討する必要があります。上で述べたとおり,1審の弁護人は,控訴の申し立てを行うことが可能ですが,その後は再度弁護人選任手続きを行う必要があります。

仮に控訴する場合であれば,判決日の翌日から起算して14日以内に高等裁判所あての控訴申立書を原審裁判所に提出,控訴申し立てから約70日以内に控訴趣意書の提出,その後約1か月程度で控訴審の第一回期日,その後1月以内を目途に控訴審の判決,というタイムスケジュールになります。そのため,控訴を申し立てる場合,実際に判決が出るまでは3か月程度の期間が開くことになります。

イ 身体拘束について

実刑判決が出た場合,上記(2)と異なり,勾留状の効力は存続し続けることになります。そのため,引き続き,留置施設における身体拘束が続くことになります。

仮に,1審の間に保釈許可を得ていた場合ですが,本件覚せい剤取締法違反は懲役刑しか法定されていないため,実刑判決の場合は,「禁錮刑以上の刑に処する判決の宣告」があったものとして保釈の効力が失われ,再び身体拘束がなされます(刑訴法343条,刑法9条,10条)。通常は,実刑判決が宣告されると,公判廷でそのまま留置管理官に身柄を確保され,留置施設に連行されることになるので,保釈中に実刑判決が見込まれる場合は,必要最小限の荷物を持参して,判決の宣告を受けに行く必要があります。

ただし,実刑判決が出て,保釈の効力が失われた場合であっても,再度保釈請求を行うことが可能です。宣告と同時に保釈の効力は失われることになりますが,先ほど述べたとおり,1審判決が確定するもしくは移審の効果が生じるまでは第1審の弁護人は弁護人たる地位を有しますから,控訴を申し立てる場合であれば,控訴申立て前は第1審弁護人が,控訴申し立て後であれば,控訴審の弁護人が再保釈請求の権限を有することになります。早期の再保釈を望む場合は,判決日までに1審に再保釈請求を依頼しておき,1審弁護人が実刑判決の宣告後直ちに法廷にいる担当書記官に対して再保釈請求書を提出することが一般的です。なお,再保釈請求は,実刑判決を受けた後ということで,罪証隠滅や逃亡の恐れが類型的に増加するため,1審の場合よりも保釈が許可される見込みが低下し,また,仮に許可が出る場合であっても保釈保証金も1審よりも高額なもの(1審の金額の1.5倍程度まで増加しうることを予測しておくべきでしょう)を命じられる可能性があるといえます。なお,1審で納付済みの保釈金は,再保釈の場合の保釈保証金としてそのまま流用するように裁判所に申請することが可能なので,再保釈の場合には1審の上乗せ分の保釈金を用意しておけば足ります。

ウ 再保釈許可が出た場合

上記アのとおり,早期に再保釈が認められた場合,控訴審の判決が出る3か月程度の間は,住居の制限こそあれ,自由な生活ができます。1審が実刑であった場合,控訴審でも実刑となるケースの方が多いといえるので,控訴審において再び実刑判決が出うることを見越し,遅くとも再保釈請求中の間には被告人の会社関係者や取引先などに,引継ぎの準備など,事情を伝えておくべきケースもあるのではと思います。もちろん,控訴審において判決が覆される可能性も十分ありえ,それを目指した弁護活動を行う必要がありますが,最悪の事態に備え,再保釈中に身辺整理を最低限行っておくことを考える必要があるかもしれません。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

【刑法】

第九条 死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。

第十条 主刑の軽重は,前条に規定する順序による。ただし,無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし,有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも,禁錮を重い刑とする。

2 同種の刑は,長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし,長期又は多額が同じであるときは,短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。

3 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は,犯情によってその軽重を定める。

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間,その執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときも,前項と同様とする。ただし,次条第一項の規定により保護観察に付せられ,その期間内に更に罪を犯した者については,この限りでない。

第二十七条 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

【覚せい剤取締法違反】

第十四条 覚せい剤製造業者,覚せい剤施用機関の開設者及び管理者,覚せい剤施用機関において診療に従事する医師,覚せい剤研究者並びに覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者の外は,何人も,覚せい剤を所持してはならない。

第十九条 左の各号に掲げる場合の外は,何人も,覚せい剤を使用してはならない。

一 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合

二 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合

三 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合

四 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合

五 法令に基いてする行為につき使用する場合

第四十一条の二 覚せい剤を,みだりに,所持し,譲り渡し,又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は,十年以下の懲役に処する。

第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は,十年以下の懲役に処する。

一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

二 第二十条第二項又は第三項(他人の診療以外の目的でする施用等の制限又は中毒の緩和若しくは治療のための施用等の制限)の規定に違反した者

三 第三十条の六(輸入及び輸出の制限及び禁止)の規定に違反した者

四 第三十条の八(製造の禁止)の規定に違反した者

【刑事訴訟法】

第三十二条 公訴の提起前にした弁護人の選任は,第一審においてもその効力を有する。

○2 公訴の提起後における弁護人の選任は,審級ごとにこれをしなければならない。

第六十条 裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,左の各号の一にあたるときは,これを勾留することができる。

一 被告人が定まつた住居を有しないとき。

二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

第八十九条 保釈の請求があつたときは,次の場合を除いては,これを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 被告人が,被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第九十条 裁判所は,適当と認めるときは,職権で保釈を許すことができる。

第九十四条 保釈を許す決定は,保証金の納付があつた後でなければ,これを執行することができない。

○2 裁判所は,保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。

○3 裁判所は,有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

第九十六条 裁判所は,左の各号の一にあたる場合には,検察官の請求により,又は職権で,決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。

一 被告人が,召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。

二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

四 被告人が,被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし,又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。

五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

○2 保釈を取り消す場合には,裁判所は,決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。

○3 保釈された者が,刑の言渡を受けその判決が確定した後,執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき,又は逃亡したときは,検察官の請求により,決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

第三百四十三条 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつたときは,保釈又は勾留の執行停止は,その効力を失う。この場合には,あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り,第九十八条の規定を準用する。

第三百四十五条 無罪,免訴,刑の免除,刑の執行猶予,公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。),罰金又は科料の裁判の告知があつたときは,勾留状は,その効力を失う。