新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1399、2013/01/21 15:12 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

【親族・家事事件・婚姻費用分担の即時抗告事件の抗告状、抗告理由書の送付・送達が抗告人の相手方にされないまま行われた抗告審の判断について特別抗告ができるか・平成20年5月8日最高裁決定】

質問:別居中の妻から婚姻費用分担審判を申し立てられ、審判が出ました。私はてっきりその金額で決まったものと思っていましたが、妻は不服だったらしく、上級裁判所に即時抗告していました。しかし、私には抗告されたことも、それに関係する書類もなぜか送られてきませんでした。そして、私の知らないうちに、抗告審が行われ、最初の審判よりも高い婚姻費用が認められてしまいました。抗告審は私に反論する機会を与えなかったため、不当であると感じています。即時抗告申立書や抗告理由書等が私に送られてこなかったことを、裁判を受ける権利の侵害として上訴(最高裁に特別抗告)することはできないでしょうか。

回答: 
1.平成20年5月8日最高裁決定は、本件と同様の事案において、抗告を棄却しています。裁判を受ける権利における裁判とは訴訟事件であり、家事審判は非訟事件に該当するので、裁判を受ける権利が侵害されたという問題は生じない、というのが理由でした。反対意見もありますが、現状はこのような取り扱いをされるおそれがあるということです。面倒でも、家事審判について心配であれば、確定したことを裁判所に確認したほうが万全でしょう。
2.なお、平成25年1月1日に施行された家事事件手続法では、これまで事実上、必要に応じて行われてきた申し立て書類の相手方への送付を明文で規定しています。したがって、本件のような問題は、今後は起こらないものと考えられます。
3.家事審判事項に関連する事例集論文1236番、1132番、1056番、1043番、983番、981番、790番、684番、676番、427番参照。

解説:
(家事審判の特質)
  家事審判とは、個別的に定められた家庭に関する事件(本件養育費の決定等)について訴訟手続である民事訴訟法ではなく、非訟事件手続である家事審判法に基づき家庭裁判所が判断する審判を言います。私的な権利、法律関係の争いは訴訟事件といい、民事訴訟手続により行われます。民事訴訟とは、国民の私的な紛争について裁判所が公的に判決等により判断を行い強制的に解決するものですから、当事者にとり適正(より真実にあっていること)公平で、迅速性、費用のかからないものでなければなりません(訴訟経済)。
  従って、訴訟事件は、原告被告を相対立する当事者と捉え、公正を担保するため公開でなければいけませんし、当事者の公平を保つため主張、立証、証拠収集について当事者の責任とし(当事者主義、弁論主義といいます。)、裁判所は仮に真実、証拠を発見し気づいたとしても、勝手に当事者の主張を変更し、証拠を提出、収集できないことになっています。更に、紛争の公的早期解決のため迅速に、費用がかからないようにその進行について積極的に訴訟指揮が行われます。しかし、事件の内容によってはこのような対立構造になじまない紛争があります。権利の存否(事実関係の有無、当事者の勝ち負け)が問題となる紛争ではなく、離婚時に親権者を定めたり、両親の養育費を定めたり、当事者の利害をどのように調整すべきか問題となるような紛争です。
  すなわち、当事者に任せておいては事件の真の解決につながるか問題があり、国家、裁判所が後見的、裁量的判断を求められる事件があります。これが非訟事件です。非訟事件については、基本的には非訟事件手続法があり、個々の非訟事件について個別的に法令を定めて事件の性質に合った非訟手続を用意しています。家事審判とは非訟事件の中の、家庭に関する事件をさし、家事審判法はその手続を規定しています。非訟事件の基本構造は、事件の性質上合理的解決のため裁判所が裁量権を有し、後見的に介入し民事行政的作用の面があり、攻撃し相対立する当事者という形は取っていません。当事者の意見にとらわれず合理的解決を目指しているので、事件の内容を公開せず(非公開、非訟事件手続法13条)、国家が後見的立場から主張、証拠、収集について介入し自ら証拠収集ができ、主張に対するアドヴァイスができる事になっています(職権探知主義といいます。非訟事件手続法11条、当事者主義に対立する概念です。)。訴訟の指揮、進行も迅速性を最優先にせず、訴訟経済もさほど強調されません。この趣旨から本件の手続き違背の判断が行われます。

回答:
1. (平成20年5月8日最高裁決定について)
  まず、上記最高裁決定について解説します。抗告の理由は、反論の機会を与えられなかったことが、憲法に規定する裁判を受ける権利を侵害したといえるか、という問題でした。決定は、憲法32条の裁判を受ける権利の裁判とは「純然たる訴訟事件」であり、婚姻費用分担の審判のような「非訟事件」には適用がないから、そもそも憲法の問題にならない、と述べ、抗告を棄却しました。

2. (非訟事件の特質)
  非訟事件とは、裁判所が後見的立場から、合目的的に裁量権を行使して権利義務関係の具体的内容を形成する裁判、と定義されています。夫婦の問題、子の問題などに関わる事件はこれに分類されることが多くあります。非訟事件には、訴訟事件とは異なるさまざまな規定が適用されます。最高裁は、婚姻費用分担の審判は、「裁判」ではないため、裁判を受ける権利と直接関係がないと述べているものの、「即時抗告の抗告状及び抗告理由書の写しを抗告人の相手方に送付するという配慮が必要であった」として、「原審の手続には問題があるといわざるを得ないが、この点は、特別抗告の理由には当たらない」としています。当事者主義を取っていないのですから、裁判所の裁量で相手方の意見を聞かないこともできるということです。
  この決定には反対意見が付されています。婚姻費用分担という争訟性の強い審判類型には、純然たる訴訟事件ではないとしても、憲法32条が保障する審問請求権ないし手続保障の対象となるべき、とするものです。裁判を受ける権利は、憲法の人権の中でも非常に重要なものです。自己の権利関係について、裁判所の正当な判断を受けることができる権利は、現代法治国家において最も重要なものと言えます。そして、現代社会では、家事事件の申し立て件数は増加の一途をたどり、時代とともに紛争性も高まってきています。  私見では、純然たる訴訟事件にあたらない、と言うだけの理由で、反論を行い、裁判所の判断を受ける機会を失わせたことには非常に問題があると考えます。最高裁判所も、「問題あり」としただけでなく、もう一歩踏み込んだ救済が必要であったと考えます。
  他方、抗告審の裁判官の立場になって考えてみれば、確かに相手方への書類送付は行われませんでしたが、非訟事件ですし、一件記録を精査し、関係法令や先例に照らして判断したので相手方に特に不利な決定ではない、という考え方もできるでしょう。婚姻費用分担事件ですから、離婚後に収入が大幅に減ったなどの事情変更があれば、別途、婚姻費用減額調停を申し立てることもできます。弁護士に相談し、抗告審の後の事情変更により新たな手続きが可能かどうか、協議されると良いでしょう。

3. (新しい家事事件手続法)
  平成25年1月1日に施行された家事事件手続法では、これまで事実上、必要に応じて行われてきた申し立て書類の相手方への送付を明文で規定しています(新法の適用は、適用後に申し立てられた事件についてのみ適用されることになっていますが、運用としてはそれ以前の事件についても事実上新法に基づく手続きで行われるものとされています)。したがって、本件のような問題は今後は起こらないものと考えられます。他にも、家事事件手続法では、調書の作成や記録の閲覧など、これまで手続き上保障されなかった事項について手続きが整備されました(旧法では規則12条で、裁判所が相当と認める場合に記録の閲覧謄写が許可されていましたが、新法では裁判所の許可が必要なことに変わりはありませんが、裁判所は原則許可しなければならないことになっています)。これは、乙類審判事件(相手方のいる、争訟性があるとされる事件)が、時代とともに事件数も紛争性も高まってきたことを反映しています。

4. (まとめ)
  乙類審判(新法では別表第二)事件は、家庭裁判所での審判事件ですが、紛争性が高く、代理人を依頼して最初から激しい争いが行われることも珍しくありません。設問のようなトラブルが起こらないよう、早い段階から弁護士に相談することをお勧めします。

≪参考判例≫
(平成20年5月8日最高裁決定)婚姻費用分担審判に対する抗告審の変更決定に対する特別抗告事件

憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和26年(ク)第109号同35年7月6日大法廷決定・民集14巻9号1657頁、最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。したがって、上記判例の趣旨に照らせば、本質的に非訟事件である婚姻費用の分担に関する処分の審判に対する抗告審において手続にかかわる機会を失う不利益は、同条所定の「裁判を受ける権利」とは直接の関係がないというべきであるから、原審が、抗告人(原審における相手方)に対し抗告状及び抗告理由書の副本を送達せず、反論の機会を与えることなく不利益な判断をしたことが同条所定の「裁判を受ける権利」を侵害したものであるということはできず、本件抗告理由のうち憲法32条違反の主張には理由がない。また、本件抗告理由のその余の部分については、原審の手続が憲法31条に違反する旨をいう点を含めて、その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって、民訴法336条1項に規定する事由に該当しない。(中略)そもそも本件において原々審の審判を即時抗告の相手方である抗告人に不利益なものに変更するのであれば、家事審判手続の特質を損なわない範囲でできる限り抗告人にも攻撃防御の機会を与えるべきであり、少なくとも実務上一般に行われているように即時抗告の抗告状及び抗告理由書の写しを抗告人に送付するという配慮が必要であったというべきである。以上のとおり、原審の手続には問題があるといわざるを得ないが、この点は特別抗告の理由には当たらないところである。
よって、裁判官那須弘平の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(中略)

裁判官那須弘平の反対意見は、次のとおりである。
1 私は、本件処理のために家事審判規則、家事審判法、非訟事件手続法及び民事訴訟法を解釈するに際し、憲法32条(「裁判を受ける権利」に関する規定)を念頭におきこれを解釈指針とすることにより即時抗告の抗告状及び抗告理由書(以下一括して、「即時抗告の抗告状等」という)の送達ないしこれに準じる送付が必要であったとの結論に到達でき、原審もこれを前提として決定をすべきであったと考える。原決定はこれと異なる立場に立って処理されたものであり、裁判に影響を及ぼすべき明らかな法令の違反があったと判断されるので、当審において職権により破棄し原審に差し戻すのが相当である。
2 家事審判規則18条は家事審判の即時抗告につき「その性質に反しない限り」審判に関する規定を準用すると定め、家事審判法7条本文は特別の定めがある場合を除き審判に関し「その性質に反しない限り」非訟事件手続法第1編の規定を「準用」する旨定めている。また、非訟事件手続法25条は「抗告ニハ特ニ定メタルモノヲ除ク外民事訴訟ニ関スル法令ノ規定中抗告ニ関スル規定ヲ準用ス」と定める。そして、民事訴訟法331条本文は、抗告及び抗告裁判所の訴訟手続には、「その性質に反しない限り」控訴の規定を準用すると規定している。しかし、これら法律及び規則の規定を見ても即時抗告の抗告状の送達の要否について、控訴状の送達を規定する民事訴訟法289条1項が準用されるか否かについては明らかでない。そこで、裁判所の実務としては、家事審判法上に特段の規定がないこと、家事審判手続が職権主義・裁量主義を採っていることなどを理由として法的には原則不要とする立場に立ちつつ、争訟性の強い乙類審判事件については相手方に不利益に変更される場合であって相手方の反論を聴取する等実質的な意味がある場合等を中心に、即時抗告の抗告状等を相手方に普通郵便等の方法で送付する運用が慣行として広く行われているようである。
3 問題は、実務における上記慣行を超えて、家事審判規則、家事審判法、非訟事件手続法及び民事訴訟法の解釈として、即時抗告の抗告状等の送達ないし送付を義務的なものと認めるべきかどうかという点にある。この場合、法律や規則に明文の規定がないことだけを理由にして法的義務がないと即断することは条文至上主義の弊を挙げるまでもなく相当でないことが明らかである。家事審判法9条の定める乙類審判事件の中にも強い争訟性を有する類型のものがあり、本件で問題となっている婚姻費用分担を定める審判もこれに属する。私は、少なくとも、この類型の審判に関しては、憲法32条の趣旨に照らし即時抗告により不利益な変更を受ける当事者が即時抗告の抗告状等の送付を受けるなどして反論の機会を与えられるべき相当の理由があると考える。このような当事者の利益はいわゆる審問請求権(当事者が裁判所に対して自己の見解を表明し、かつ、聴取される機会を与えられることを要求することができる権利)の核心部分を成すものであり、純然たる訴訟事件でない非訟事件についても憲法32条による「裁判を受ける権利」の保障の対象になる場合があると解する(略)

≪条文参照≫

家事審判手続法(平成25年1月1日施行予定)
(審判事項)
第三十九条  家庭裁判所は、この編に定めるところにより、別表第一及び別表第二に掲げる事項並びに同編に定める事項について、審判をする。
(参与員)
第四十条  家庭裁判所は、参与員の意見を聴いて、審判をする。ただし、家庭裁判所が相当と認めるときは、その意見を聴かないで、審判をすることができる。
2  家庭裁判所は、参与員を家事審判の手続の期日に立ち会わせることができる。
3  参与員は、家庭裁判所の許可を得て、第一項の意見を述べるために、申立人が提出した資料の内容について、申立人から説明を聴くことができる。ただし、別表第二に掲げる事項についての審判事件においては、この限りでない。
4  参与員の員数は、各事件について一人以上とする。
5  参与員は、毎年あらかじめ家庭裁判所の選任した者の中から、事件ごとに家庭裁判所が指定する。
6  前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の規定による選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
7  参与員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
(当事者参加)
第四十一条  当事者となる資格を有する者は、当事者として家事審判の手続に参加することができる。
2  家庭裁判所は、相当と認めるときは、当事者の申立てにより又は職権で、他の当事者となる資格を有する者(審判を受ける者となるべき者に限る。)を、当事者として家事審判の手続に参加させることができる。
3  第一項の規定による参加の申出及び前項の申立ては、参加の趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。
4  第一項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(利害関係参加)
第四十二条  審判を受ける者となるべき者は、家事審判の手続に参加することができる。
2  審判を受ける者となるべき者以外の者であって、審判の結果により直接の影響を受けるもの又は当事者となる資格を有するものは、家庭裁判所の許可を得て、家事審判の手続に参加することができる。
3  家庭裁判所は、相当と認めるときは、職権で、審判を受ける者となるべき者及び前項に規定する者を、家事審判の手続に参加させることができる。
4  前条第三項の規定は、第一項の規定による参加の申出及び第二項の規定による参加の許可の申立てについて準用する。
5  家庭裁判所は、第一項又は第二項の規定により家事審判の手続に参加しようとする者が未成年者である場合において、その者の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮してその者が当該家事審判の手続に参加することがその者の利益を害すると認めるときは、第一項の規定による参加の申出又は第二項の規定による参加の許可の申立てを却下しなければならない。
6  第一項の規定による参加の申出を却下する裁判(前項の規定により第一項の規定による参加の申出を却下する裁判を含む。)に対しては、即時抗告をすることができる。
7  第一項から第三項までの規定により家事審判の手続に参加した者(以下「利害関係参加人」という。)は、当事者がすることができる手続行為(家事審判の申立ての取下げ及び変更並びに裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の取下げを除く。)をすることができる。ただし、裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、利害関係参加人が不服申立て又は異議の申立てに関するこの法律の他の規定によりすることができる場合に限る。
(手続からの排除)
第四十三条  家庭裁判所は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を家事審判の手続から排除することができる。
2  前項の規定による排除の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(法令により手続を続行すべき者による受継)
第四十四条  当事者が死亡、資格の喪失その他の事由によって家事審判の手続を続行することができない場合には、法令により手続を続行する資格のある者は、その手続を受け継がなければならない。
2  法令により手続を続行する資格のある者が前項の規定による受継の申立てをした場合において、その申立てを却下する裁判がされたときは、当該裁判に対し、即時抗告をすることができる。
3  第一項の場合には、家庭裁判所は、他の当事者の申立てにより又は職権で、法令により手続を続行する資格のある者に家事審判の手続を受け継がせることができる。
(他の申立権者による受継)
第四十五条  家事審判の申立人が死亡、資格の喪失その他の事由によってその手続を続行することができない場合において、法令により手続を続行する資格のある者がないときは、当該家事審判の申立てをすることができる者は、その手続を受け継ぐことができる。
2  家庭裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、職権で、当該家事審判の申立てをすることができる者に、その手続を受け継がせることができる。
3  第一項の規定による受継の申立て及び前項の規定による受継の裁判は、第一項の事由が生じた日から一月以内にしなければならない。
(調書の作成等)
第四十六条  裁判所書記官は、家事審判の手続の期日について、調書を作成しなければならない。ただし、証拠調べの期日以外の期日については、裁判長においてその必要がないと認めるときは、その経過の要領を記録上明らかにすることをもって、これに代えることができる。
(記録の閲覧等)
第四十七条  当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は家事審判事件に関する事項の証明書の交付(第二百八十九条第六項において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。
2  前項の規定は、家事審判事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。
3  家庭裁判所は、当事者から前二項の規定による許可の申立てがあったときは、これを許可しなければならない。
4  家庭裁判所は、事件の関係人である未成年者の利益を害するおそれ、当事者若しくは第三者の私生活若しくは業務の平穏を害するおそれ又は当事者若しくは第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、若しくはその者の名誉を著しく害するおそれがあると認められるときは、前項の規定にかかわらず、同項の申立てを許可しないことができる。事件の性質、審理の状況、記録の内容等に照らして当該当事者に同項の申立てを許可することを不適当とする特別の事情があると認められるときも、同様とする。
5  家庭裁判所は、利害関係を疎明した第三者から第一項又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。
6  審判書その他の裁判書の正本、謄本若しくは抄本又は家事審判事件に関する事項の証明書については、当事者は、第一項の規定にかかわらず、家庭裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付を請求することができる。審判を受ける者が当該審判があった後に請求する場合も、同様とする。
7  家事審判事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、家事審判事件の記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
8  第三項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
9  前項の規定による即時抗告が家事審判の手続を不当に遅滞させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。
10  前項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

(家事審判の申立書の写しの送付等)
第六十七条  別表第二に掲げる事項についての家事審判の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、家事審判の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。ただし、家事審判の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは、家事審判の申立てがあったことを通知することをもって、家事審判の申立書の写しの送付に代えることができる。
2  第四十九条第四項から第六項までの規定は、前項の規定による家事審判の申立書の写しの送付又はこれに代わる通知をすることができない場合について準用する。
3  裁判長は、第一項の規定による家事審判の申立書の写しの送付又はこれに代わる通知の費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、家事審判の申立書を却下しなければならない。
4  前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

別表第二(第二十条、第二十五条、第三十九条、第四十条、第六十六条―第七十一条、第八十二条、第八十九条、第九十条、第九十二条、第百五十条、第百六十三条、第百六十七条、第百六十八条、第百八十二条、第百九十条、第百九十一条、第百九十七条、第二百三十三条、第二百四十条、第二百四十五条、第二百五十二条、第二百六十八条、第二百七十二条、第二百八十六条、第二百八十七条、附則第五条関係)

項 事項 根拠となる法律の規定
婚姻等
一 夫婦間の協力扶助に関する処分 民法第七百五十二条
二 婚姻費用の分担に関する処分 民法第七百六十条
三 子の監護に関する処分 民法第七百六十六条第二項及び第三項(これらの規定を同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)
四 財産の分与に関する処分 民法第七百六十八条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)
五 離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定 民法第七百六十九条第二項(同法第七百四十九条、第七百五十一条第二項及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)
親子
六 離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定 民法第八百八条第二項及び第八百十七条において準用する同法第七百六十九条第二項
親権
七 養子の離縁後に親権者となるべき者の指定 民法第八百十一条第四項
八 親権者の指定又は変更 民法第八百十九条第五項及び第六項(これらの規定を同法第七百四十九条において準用する場合を含む。)
扶養
九 扶養の順位の決定及びその決定の変更又は取消し 民法第八百七十八条及び第八百八十条
十 扶養の程度又は方法についての決定及びその決定の変更又は取消し 民法第八百七十九条及び第八百八十条


民事訴訟法
第三章 抗告
(抗告をすることができる裁判)
第三百二十八条  口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。
2  決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。
(受命裁判官等の裁判に対する不服申立て)
第三百二十九条  受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、受訴裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、その裁判が受訴裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2  抗告は、前項の申立てについての裁判に対してすることができる。
3  最高裁判所又は高等裁判所が受訴裁判所である場合における第一項の規定の適用については、同項ただし書中「受訴裁判所」とあるのは、「地方裁判所」とする。
(再抗告)
第三百三十条  抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。
(控訴又は上告の規定の準用)
第三百三十一条  抗告及び抗告裁判所の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第一章の規定を準用する。ただし、前条の抗告及びこれに関する訴訟手続には、前章の規定中第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。
(即時抗告期間)
第三百三十二条  即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
(原裁判所等による更正)
第三百三十三条  原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。
(原裁判の執行停止)
第三百三十四条  抗告は、即時抗告に限り、執行停止の効力を有する。
2  抗告裁判所又は原裁判をした裁判所若しくは裁判官は、抗告について決定があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。
(口頭弁論に代わる審尋)
第三百三十五条  抗告裁判所は、抗告について口頭弁論をしない場合には、抗告人その他の利害関係人を審尋することができる。
(特別抗告)
第三百三十六条  地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2  前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
3  第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。
(許可抗告)
第三百三十七条  高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2  前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
3  前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
4  第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
5  最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
6  第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。


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