新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1401、2013/01/23 12:04 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm
【刑事・一般人の起訴前の面会・逮捕後勾留前も面会ができるか】
質問:先日,息子が突然,詐欺罪で逮捕・勾留されてしまいました。警察の方に聞いたところ,振り込め詐欺グループに関わっていたとのことのようです。今は警察署に留置されていると警察から連絡がありました。息子に会いに行きたいのですが,警察署で面会をすることはできるのでしょうか。また,服,手紙,本等の差入れをしたいのですが,このようなこともできるのでしょうか。
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回答:
1 息子さんとの面会や,息子さんへの差入れは,勾留決定がされた後であれば行える可能性があります。ただし,裁判所の勾留決定に接見等禁止の決定が追加されているか否かによっても結論が異なってきます。
2 息子さんとの面会について,通常,面会時間は限られますが,警察署に留置されている息子さんに面会できる可能性はあります。ただし,裁判官が接見等禁止の決定を行っている場合,弁護人以外の者との面会が禁止されてしまいますので,あなたが息子さんと面会はできないことになります。
3 息子さんへの差入れについても,通常は可能ですが,接見等禁止の決定がされた場合には,弁護人以外の者の差入れも禁止となってしまいます。ただ,例外的に,服の差入れについては認められる可能性があります。
4 接見等禁止の決定には,不服申立てをすることができるほか,弁護人が就いていれば,接見禁止等にかかわらず弁護人を通じて息子さんとやり取りすることが可能です。
5 接見交通権に関連する事例集738番,734番参照。
解説:
1 息子さんの現状
息子さんは,現在,犯罪を行ったという疑いがあることを理由として,逮捕又は勾留されている状態にあると考えられます。
(1)逮捕
逮捕とは,ある者に罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき,裁判官の発する逮捕状により被疑者を身体拘束し,引き続き短期間の拘束を継続することをいいます。逮捕の期間は,簡単にいえば3日以内となっています。より正確に言うと,被疑者が警察に逮捕されると,48時間以内に被疑者を検察官に送る必要があり(刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)203条1項),検察官は,被疑者を留置する必要がないと判断するときには直ちに釈放し,留置が必要と判断するときには,警察から被疑者を受け取ったときから24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならないとされています(刑訴法205条1項)。逮捕全体の時間制限は,被疑者が身体拘束をされたときから72時間以内となっています(刑訴法205条2項)。
(2)勾留
勾留とは,被疑者を刑事施設に拘束する裁判及びその執行のことをいいます。住居不定,罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのある被疑者に対して勾留の決定がなされます(刑訴法207条1項本文,60条1項)。
検察官により勾留が請求され,裁判官が勾留の決定をすると,被疑者は,勾留請求された日から10日間の勾留をされることになり,この勾留期間が満了となる前に,検察官は,被疑者を起訴するか釈放するかを決定しなければなりません(刑訴法208条1項)。場合によってはさらに最大10日間の勾留の延長がされることもあります(刑訴法208条2項)。すなわち,勾留は合計で20日間に及ぶ可能性があります。
2 面会の可否
(1)面会の可能性
留置施設において,留置されている者に面会の申出があったとき,留置の業務を管理する者は,留置されている者との面会を許すこととされています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」といいます。)216条本文)。そうすると,相談者の方は,面会を申し出ることにより,留置施設に留置されている息子さんに面会できる可能性があることになります。
もっとも,いつでも面会ができるというわけでもありません。刑事訴訟法では,弁護人以外の者の面会等について,「勾留されている」被疑者又は被告人と規定していますので(同法80条,207条1項),逮捕段階で息子さんに面会できるわけではありません。又条文上逮捕状による逮捕に関する準用規定(刑訴209条)の中に一般人との面会(接見)を認める刑訴80条を準用していないので解釈上勾留前は面会ができないとされています。この考えには反対説もあり被疑者留置規則31条の文言から一般人の面会も可能なように思われます。理論的根拠としては、無実の推定を受ける被疑者は、逮捕勾留前でも外部との連絡、面会を基本的に有し捜査に支障のある場合は制限されるものと解釈するのが憲法13条(人間としての幸福追求権)の趣旨に合致するものと考えられます。実務上も、捜査に全く支障がないような場合警察の裁量で勾留前でも一般人の接見(面会)ができる例外的取扱いがなされている場合もあるようです。ただ本件では事件の性質上面会は無理でしょう。
また,面会ができる日時は,日曜日その他政令で定める日以外の日で,留置施設の施設時間内とされているほか(法220条1項),内閣府令により,留置施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができるとされています(法220条5項)。通常の警察署では,平日の午前10時から午後4時までの時間帯を面会時間としていることが多いと思われますが,警察署によって異なることも考えられるため,面会に行く前に,当該警察署の留置係に確認した方がよいと思われます。
(2)接見等禁止による面会の禁止
裁判官は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請求又は職権で,勾留されている被疑者と弁護人等以外の者との接見や授受すべき書類等の授受を禁じるなどすることができるとされています(刑訴法207条1項本文,81条本文)。この決定は,接見等禁止決定と呼ばれています。
上記のように,接見等禁止決定がされてしまうと,被疑者は,弁護人以外の者と面会することができなくなってしまいます。
接見等禁止決定の要件としては,「逃亡し又は罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき」とされています。これは勾留の要件と重なりますが,勾留よりもより具体的な可能性が存在するときに初めて上記要件を充たすと考えられており,勾留がされたからといって,必ず接見等禁止決定が出るわけではありません。
ただ,共犯者のいる事件ですと,共犯者との口裏合わせにより証拠を隠滅する可能性が高いと判断されることも多いように思われます。本件でも,息子さんは詐欺グループの一員として関わってしまったのであれば,共犯者が複数いるとして接見等禁止決定がされ,面会が禁止される可能性が高いと考えらえます。
接見禁止決定が出ている場合でも、弁護士による面会は一切制限されることはありません。一番最初の接見は特に重要ですので、逮捕当日の深夜や翌日未明に弁護士が接見することもあります。適正公平な裁判を実施するために、全ての被疑者・被告人には、刑事裁判という不利益処分にあたって、自己の有利な事情を主張する権利がありますし、弁護士を通して法的な知識を得る権利があるからです。身柄拘束されてしまった被疑者にとって、弁護人との面会は極めて重要なチャンスです。このことは、憲法31条適正手続の保障や、同34条弁護人依頼権の保障を根拠として、刑事訴訟法39条で「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。」と規定され、接見交通権が保障されています。
3 差入れの可否
(1)差入れの可能性
弁護人でなくとも,物の差入れをすることも可能です。ただし,手紙等については,内容を検査されたり,その内容によって差入れが認められないなどの制限があります(法221条ないし225条)。また,タオルやボールペン等の留置施設内にあるものや,飲んだりすることで自殺する可能性のある薬類,その他の危険物等は差入れをすることができません。差入れできるものについても,留置されている警察署の留置係に具体的に尋ねてみた方がよいかもしれません。
なお,面会と同様,勾留決定がされていない逮捕段階では,息子さんに差入れを行うことはできませんので,注意してください。
(2)接見等禁止による差入れの禁止
接見等禁止決定には,通常,上述した面会禁止のほかに,物の授受を禁止する内容も含まれています。そうすると,接見等禁止決定がなされる可能性が高い本件では,息子さんへの差入れも禁止されてしまうことが予想されます。
ただ,服の差入れといった,証拠隠滅とはおよそ関係ないものについては,差入れが許される可能性があります。接見等禁止には,文書等を差し入れることを禁止する文言が入っているのが通常ですが,服等はその禁止の範囲に入らないことも多いといえます。
4 接見等禁止に関する付随的問題
弁護人は接見等禁止決定の対象となっていませんので,接見等禁止決定がされた場合には弁護人を通じて差入れ等を行おうと考える方もいらっしゃいます。しかし,接見等禁止決定を潜脱する差入れは,弁護人による差入れであっても拒否されます。例えば,接見等禁止決定がなされている場合に,あなたが書いた手紙につき,弁護人を通じて息子さんに渡そうとしても,差入れは拒否されますので注意してください。
また,起訴前に行われた接見等禁止決定については,起訴されたからといってその効力を失うわけではないと考えられていますが,実際には,起訴前勾留という期間に限定された接見等禁止が請求・決定され,起訴後に改めて接見等禁止の請求があった場合に,再度接見等禁止の要否について判断することが多いようです。
5 接見等禁止決定に対する争い方
接見等禁止決定がついてしまうと,被疑者の精神的負担は大きく,親族の方すら全く会えない状態が続くことから,接見等禁止決定を覆すよう争うことも考えられます。争い方には,主に,以下の2つの方法があります。
(1)接見等禁止解除の申立て
裁判官に対して,接見等禁止の解除を申し出る方法があります。
この申出には,その全部を解除するよう申し出るものと,その一部を解除するよう申し出るものが考えられます。後者については,ある特定の人(例えば父母)を禁止の対象から除外してほしいというものと,ある特定の日時に個別に面会することや,ある特定の手紙の差入れのみ認めてほしいとするものの,2つが考えられます。
もっとも,接見等禁止決定については,取消しの請求に関する刑訴法の規定が存在しないため,いったん決定がなされてしまうと,弁護人や被疑者のほか,検察官にも取消請求権がないと考えられています。そのため,上記申出は,正確には裁判官の職権発動を促すという意味があるに過ぎませんので,職権を発動しないとする判断に対して不服申立てをすることもできないこととされています。
ただ,全部解除のほかにも,一部解除を求めることができ,裁判官による柔軟な対応が期待できる場合もあるので,接見等禁止解除の申出には一定のメリットがあるといえます。
(2)接見等禁止の決定に対する準抗告
接見等禁止の決定は,勾留に関する裁判であるといえますので,裁判官が行った接見等禁止決定に対して「準抗告」という不服申立てができることとなっています(刑訴法429条1項2号)。この準抗告は,接見等禁止の要件である「逃亡し又は罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき」に該当せず,同決定の要件が欠けることを理由として争うことになると考えられます。
この準抗告が認められると,接見等禁止決定は覆って存在しないものとなり,面会や差入れが通常の場合と同じようにできるようになります。ただ,現実としては,この準抗告が認められる可能性は高いとはいえません。
6 本件での対応
身体拘束を受けている息子さんは,精神的負担が大きく孤独感を感じることが多いため,できるだけ面会に行き,必要な物を差し入れることが望ましいと考えられます。
そして,接見等禁止決定がされてしまった場合には,あなたの面会や差入れはほとんど制限されてしまいますので,弁護人が非常に重要な役割を果たすことになると思われます。接見等禁止を争う余地があり,この場合に法律上の主張を展開する必要性があることも考えると,接見等禁止となってしまった場合には,早期に弁護人をつけ,息子さんをサポートする態勢を整えることが必要になると考えられます。
<参考文献>
池田修・前田雅英『刑事訴訟法講義(第4版)』東京大学出版会
田口守一『刑事訴訟法(第6版)』弘文堂
新関雅夫・佐々木史朗ほか『増補令状基本問題(下)』判例時報社
<参考条文>
刑事訴訟法
第八十条 勾留されている被告人は,第三十九条第一項に規定する者以外の者と,法令の範囲内で,接見し,又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置されている被告人も,同様である。
第八十一条 裁判所は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請求により又は職権で,勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ,又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し,その授受を禁じ,若しくはこれを差し押えることができる。但し,糧食の授受を禁じ,又はこれを差し押えることはできない。
第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は,その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し,保釈については,この限りでない。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(面会の相手方)
第二百十六条 留置業務管理者は,被留置受刑者以外の被留置者に対し,他の者から面会の申出があったときは,第二百二十八条第三項の規定により禁止される場合を除き,これを許すものとする。ただし,その被留置者が未決拘禁者である場合において,刑事訴訟法の定めるところにより面会が許されないときは,この限りでない。
(面会に関する制限)
第二百二十条 被留置者の弁護人等との面会の日及び時間帯は,日曜日その他政令で定める日以外の日の留置施設の執務時間内とする。
2 前項の面会の相手方の人数は,三人以内とする。
3 留置業務管理者は,弁護人等から前二項の定めによらない面会の申出がある場合においても,留置施設の管理運営上支障があるときを除き,これを許すものとする。
4 留置業務管理者は,第一項の面会に関し,内閣府令で定めるところにより,面会の場所について,留置施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
5 留置業務管理者は,被留置者と弁護人等以外の者との面会に関し,内閣府令で定めるところにより,面会の相手方の人数,面会の場所,日及び時間帯,面会の時間及び回数その他面会の態様について,留置施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
6 前項の規定により面会の回数について制限をするときは,その回数は,一日につき一回を下回ってはならない。
(発受を許す信書)
第二百二十一条 留置業務管理者は,被留置者に対し,この款又は第二百二十八条第三項の規定により禁止される場合を除き,他の者との間で信書を発受することを許すものとする。ただし,その被留置者が未決拘禁者である場合において,刑事訴訟法の定めるところにより信書の発受が許されないときは,この限りでない。
(信書の検査)
第二百二十二条 留置業務管理者は,その指名する職員に,未決拘禁者が発受する信書について,検査を行わせるものとする。
2 留置業務管理者は,留置施設の規律及び秩序の維持その他の理由により必要があると認める場合には,その指名する職員に,未決拘禁者以外の被留置者が発受する信書について,検査を行わせることができる。
3 次に掲げる信書については,前二項の検査は,これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし,第一号ハ及び第二号ロに掲げる信書について,留置施設の規律及び秩序を害する結果又は未決拘禁者について罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合は,この限りでない。
一 被留置者が次に掲げる者から受ける信書
イ 弁護人等
ロ 国又は地方公共団体の機関
ハ 自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人を含む。以下この款において同じ。)
二 未決拘禁者以外の被留置者が次に掲げる者に対して発する信書
イ 自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関
ロ 自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士
(信書の発受の禁止)
第二百二十三条 留置業務管理者は,犯罪性のある者その他被留置受刑者が信書を発受することにより,留置施設の規律及び秩序を害し,又は被留置受刑者の改善更生に支障を生ずるおそれがある者(被留置受刑者の親族を除く。)については,被留置受刑者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし,婚姻関係の調整,訴訟の遂行,事業の維持その他の被留置受刑者の身分上,法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合は,この限りでない。
(信書の内容による差止め等)
第二百二十四条 留置業務管理者は,第二百二十二条の規定による検査の結果,被留置者が発受する信書について,その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には,その発受を差し止め,又はその該当箇所を削除し,若しくは抹消することができる。同条第三項各号に掲げる信書について,これらの信書に該当することを確認する過程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も,同様とする。
一 暗号の使用その他の理由によって,留置業務に従事する職員が理解できない内容のものであるとき。
二 発受によって,刑罰法令に触れることとなり,又は刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがあるとき。
三 発受によって,留置施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
四 威迫にわたる記述又は明らかな虚偽の記述があるため,受信者を著しく不安にさせ,又は受信者に損害を被らせるおそれがあるとき。
五 受信者を著しく侮辱する記述があるとき。
六 未決拘禁者が発受する信書について,その発受によって,罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。
七 被留置受刑者が発受する信書について,その発受によって,その改善更生に支障を生ずるおそれがあるとき。
2 前項の規定にかかわらず,被留置者が国又は地方公共団体の機関との間で発受する信書であってその機関の権限に属する事項を含むもの及び被留置者が弁護士との間で発受する信書であってその被留置者に係る弁護士法第三条第一項に規定する弁護士の職務に属する事項を含むものについては,その発受の差止め又はその事項に係る部分の削除若しくは抹消は,その部分の全部又は一部が前項第一号から第三号まで又は第六号のいずれかに該当する場合に限り,これを行うことができる。
(信書に関する制限)
第二百二十五条 留置業務管理者は,内閣府令で定めるところにより,被留置者が発する信書の作成要領,その発信の申請の日及び時間帯,被留置者が発信を申請する信書(弁護人等に対して発するものを除く。)の通数並びに被留置者の信書の発受の方法について,留置施設の管理運営上必要な制限をすることができる。
2 前項の規定により被留置者が発信を申請する信書の通数について制限をするときは,その通数は,一日につき一通を下回ってはならない。
被疑者留置規則
(昭和三十二年八月二十二日国家公安委員会規則第四号)
最終改正年月日:平成一八年五月二三日国家公安委員会規則第一八号
被疑者留置規則を次のように定める。
第一章 総則
(この規則の目的)
第一条
この規則は、逮捕された被疑者の留置を適正に行なうため必要な事項を定めることを目的とする。
(処遇の適正)
第二条
留置中の被疑者(以下「留置人」という。)については、法令の定めるところによるのほか、この規則に従い、その処遇の適正を期し、いやしくも人権の保障に欠けることがあつてはならない。
第六章 接見および書類その他の物の授受
(弁護人との接見授受)
第二十九条
留置人に対し、弁護人(弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者を含む。以下同じ。)から接見又は書類その他の物の授受の申出があつたときは、留置主任官は、その者が刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三十九条第一項に規定する者であることを確認した上、必要な措置を講じなければならない。
2 捜査主任官は、弁護人との接見又は書類その他の物の授受に際し、捜査上の必要があるときは、その日時、場所及び時間を指定することができる。ただし、被疑者の防御の準備をする権利を、不当に制限してはならない。
(弁護人との接見授受に関する注意)
第三十条
留置人と弁護人との接見または書類その他の物の授受に際しては、その接見に立ち会い、またはその間における書類その他の物の授受を妨げてはならない。ただし、留置場の保安上支障があるものの授受については、この限りでない。
2 前項に規定する書類その他の物の授受に際しては、留置場の保安上支障のあるものの授受が行なわれることのないよう、それらの物の検査を行なわなければならない。
(弁護人以外の者との接見授受及び自弁購入)
第三十一条
留置主任官は、弁護人以外の者から留置人との接見又は書類その他の物の授受の申出があつたとき及び留置人からそれらの物の自弁購入の申出があつたときは、捜査上又は留置場の保安上支障がある場合を除き、その便宜を図るようにしなければならない。この場合において、捜査上の支障の有無については、捜査主任官の意見を聴かなければならない。2 糧食の差入れおよび自弁購入は、これを禁止してはならない。
3 糧食の差入れおよび自弁購入は、特別の事情のある場合を除き、警察署長が指定する業者が調製し、または取り扱うもので、かつ、警察署長が定める種類および分量によつて行なわせるものとする。
4 第一項および第二項に規定する接見または書類その他の物の授受もしくはそれらの物の自弁購入に当つては、接見に立ち会い、または授受もしくは自弁購入されるそれらの物の検査を行なわなければならない