新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1412、2013/02/14 10:33
【行政処分・重大違反唆し(そそのかし)等」・道路交通法90条1項5号についての行政手続き・浦和地方裁判所昭和49年12月11日判決・東京高等裁判所平成23年7月25日判決】
質問:先日,友人が飲酒運転で検挙されました。私も一緒に酒を飲んで自動車の後部座席で寝ていました。警察から,運転していなくても免許停止か取り消しになると言われましたが本当でしょうか。免許取り消しにならないような方法はありますか。
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回答:
1.飲酒運転の自動車に同乗するのは飲酒運転同乗罪(道路交通法65条4項,同乗の依頼要求が必要。)に該当するほか道路交通法上,重大違反を助ける行為として「重大違反唆し(そそのかし)等」(道路交通法90条1項5号)に該当する可能性があります。そして,「重大違反唆し等」については,運転免許取消しや免許停止の一事由に該当します(道路交通法103条1項6号)。運転免許にかかわる処分は行政処分として,捜査機関が行う飲酒運転同乗罪の捜査とは別個に手続きがすすむことになります。重大違反唆し等を理由に免許取消,免許停止(90日以上)の処分がなされる前には,聴聞の手続きが必要ですので,処分を避けるためにはこの聴聞手続で自身にとって有利な主張を述べる必要があります。
2.関連事例集1389番,1343番,1332番,1303番,1263番,1250番,1247番,1245番,1241番,1228番,1144番,1042番参照。
解説:
1 行政処分(不利益処分)と意見陳述の手続き
行政手続法は,「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資することを目的」とする法律であり,同法は,処分,行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関して共通する事項を定めています(行政手続法1条)。
この1条に定める目的を受けて行政手続法は,@処分庁の恣意によって不当な処分がなされないよう,不利益処分を課す際の処分基準を定め,かつ,公にしておくよう定める(法12条)とともに,A不利益処分をしようする場合には,処分対象者に対して意見陳述の機会を与え(13条),B実際に不利益処分をする場合には,被処分者に対し,不利益処分の理由を提示しなければならないと定めています(14条)。@〜Bは,いずれも処分の公正を担保するために設けられた規定ですが,不利益処分を行うに当たって,処分対象者に,当該事案について意見を述べ,有利な証拠を提出する機会を与えるAの手続きが最も重要といえます。
行政手続法は,行政手続に関する一般法ですので,各特別法で独自に不利益処分に対する手続きについて定めている場合がありますが,基本的には行政手続法の定めを踏襲した形で規定が整備されています。
2 免許取消し,停止の際の意見陳述の機会
道路交通法は,免許取消し,停止の際の意見陳述の機会として,「意見の聴取」(104条)と「聴聞」(104条の2)について規定しています。ご相談の件は「重大違反の唆し等」が問題となる事案ですので,「聴聞」の機会が与えられることになります。
実務上,運転免許に関する処分は,処分対象者の人数が多いこともあり,意見陳述の機会が流れ作業のように行われることも稀ではありませんが,自身への不当な処分を回避するためには,この機会に自身の主張を尽くす必要があります。
この意見陳述の機会については,形式的に処分対象者に意見を述べる場を与えるだけでは足りず,防御の機会という実質が伴っていることが必要です。この点については,道路交通法が意見陳述の機会を保証した趣旨及び法の要求する聴聞の実質について判断を示した浦和地方裁判所昭和49年12月11日判決が参考になるので該当部分を引用します。
「運転免許の取消処分をするにあたつて,道路交通法が公開による聴聞を経ることを要件とし,かつ,その聴聞において被処分者に意見を述べ,有利な証拠を提出する機会を保障したのは,公開による聴聞を行うことにより取消処分の基礎となる事実やこれを前提とした法律適用について,被処分者に十分意見を述べさせ,立証を尽させることによつて,公安委員会の事実認定およびそれを前提とした法律適用に恣意,独断の疑いが入らないようにし,もつて,取消処分の適正さを確保するためであることは,原告の主張するとおりである。
ところが,運転免許の取消処分をするにあたつて行う聴聞においては,その手続構造上,処分を求める者と処分をする者とが分離されていないため,聴聞の実施方法いかんによつては,公安委員会がいかなる証拠にもとづいて事実を認定しようとしているのか,また,その事実認定を前提としてどのような法律適用をするのか,被処分者にとつて必ずしも明らかでなく,その結果,被処分者が意見を述べ,有利な証拠を提出しようとしても,実質的にみてこれを有効適切になしえない事態が起こりうるのを避けがたい。しかし,このような事態が起りうることは,先に述べた法が公開による聴聞を経ることを要件とし,かつ,その聴聞において被処分者に意見を述べ,有利な証拠を提出する機会を保障した趣旨に照らして,決して望ましいことでなく,とりわけ,当該取消処分の結果に影響を与える可能性のある事項のなかに,事実認定上微妙なものが含まれているため,あるいは,法律適用上見解の対立の予想されるものがあるため,被処分者に十分な主張,立証を尽させることが事実認定やそれを前提とする法律適用に適正さを期するうえで重要であると認められる場合に,被処分者において当該取消処分を争う意思を有しているにもかかわらず,有効適切に意見を述べ,有利な証拠を提出することができないとするならば,法がこれを保障した趣旨は,甚だしく損われるといわなければならない。法が聴聞の実施に先立つてその期日および場所とともに,処分しようとする理由を通知することを要する旨規定しているのも,被処分者に可能な限り右に述べた権利を有効適切に行使させるためであるにほかならない。
それゆえ,運転免許の取消しの場合の聴聞につき規定する道路交通法,同施行令および一般の聴聞の手続につき規定する「聴聞および弁明の機会の供与に関する規則」(埼玉県公安委員会規則昭和四二年第八号)のいずれにも明文の規定はないが,当該取消処分の結果に影響を与える可能性のある事項のなかに,前述した事実認定上微妙なものが含まれているとき,あるいは,法律適用上見解の対立の予想されるものがあるときは,被処分者において争う意思を有している以上,被処分者に対し当該事案全体につき包括的に答弁を求め,主張立証の有無を確認するといつた聴聞にとどまるのでは足りず,進んでその事項を具体的に摘示し,被処分者に主張立証を促す方法をとることによつて聴聞を実施することまで要し,かつ,事実認定上微妙なものを含んでいるがゆえに被処分者に当該事項を摘示すべきであると認められる場合にあつては,証拠を開示することによつて第三者の名誉が害され,あるいは,刑事事件の捜査裁判に支障を来たすといつた事情が認められない限り,あわせて当該事項に関連する主要な証拠を具体的に開示したうえ,被処分者にこれに対する反論立証の機会を与えることを要するものと解するのが相当である。
そして,このような見地からすると,公安委員会が,被処分者に前述した問題事項を具体的に摘示することを要する場合であるのに,これを行わないまま漫然と聴聞を実施し,その結果,被処分者において十分主張立証を尽すことができなかつたと認められる事情が存するときは,そのようにして実施された聴聞は,法の要求する聴聞としての実質を欠くものと評しうるから,これを前提としてなされた取消処分も,違法であるといわなければならない。」
ご相談の件については,あなたが友人の車に同乗した行為について,飲酒運転同乗罪に該当するのか,また,道路交通法上の「重大違反の唆し等」に該当するのかが問題となります。それ故,聴聞の機会においては,処分者(公安委員会)が,あなたがこれらの問題となる事項に該当すると判断するに至った主要な証拠の開示を求めることが考えられます。
3 道路交通法上の「重大違反の唆し等」について
「重大違反の唆し等」については,同事由に該当するとして運転免許を取り消された被処分者が処分の取消しを求めた事案(東京高等裁判所平成23年7月25日判決)が参考となります。
「運転免許の取消事由である「重大違反唆し等」(道路交通法103条1項6号)とは,自動車等の運転者を唆して同法の規定に違反する行為で重大なものとして政令で定められた「重大違反」(酒気帯び運転はこれに当たる。道路交通法施行令33条の2の3第4項3号,別表第2の1)をさせ,又は自動車等の運転者が重大違反をした場合において当該重大違反を助ける行為をいう(同法90条1項5号)。したがって,重大違反唆し等に当たるというためには,酒気帯び運転の意思のない者に働きかけてその意思を生じさせる必要はなく,既にその意思を有する者による酒気帯び運転行為を物理的,心理的に容易にする行為もこれに含まれるということができるが,他方で,酒気帯び運転であることを知りながら自動車等に同乗するだけで,運転者による行為を何ら助けるものでないときは,重大違反唆し等に当たらないと解するのが相当である。」但し,飲酒運転同乗罪は成立します(同乗罪のみにては運転をしていたわけではありませんので運転免許の取消,停止はありません)。
ご相談の件では,あなたが友人の車に同乗した際のあなたの体調や,友人の認識が問題となります。すなわち,友人としては,もともと車で帰宅しようと考えており,偶々あなたが酩酊状態であったために同乗させたに過ぎず,あなたの存在が友人の飲酒運転を物理的にも心理的にも容易にしたわけではない場合には,「重大違反唆し等」に該当しないことになります。
4 まとめ
以上述べたとおり,ご相談の件では,聴聞の機会において,公安委員会が保持している証拠の開示を求めつつ,実質的な防御活動を行っていく必要があります。聴聞手続きへの対応や証拠の検討については,ご自身だけでの対応では困難かと思いますのでお近くの専門的法律事務所にご相談することをおすすめします。
<参照条文>
道路交通法
(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条 何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2 何人も,酒気を帯びている者で,前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し,車両等を提供してはならない。
3 何人も,第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し,酒類を提供し,又は飲酒をすすめてはならない。
4 何人も,車両(トロリーバス及び道路運送法第二条第三項
に規定する旅客自動車運送事業(以下単に「旅客自動車運送事業」という。)の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項,第百十七条の二の二第四号及び第百十七条の三の二第二号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら,当該運転者に対し,当該車両を運転して自己を運送することを要求し,又は依頼して,当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
(罰則 第一項については第百十七条の二第一号,第百十七条の二の二第一号 第二項については第百十七条の二第二号,第百十七条の二の二第二号 第三項については第百十七条の二の二第三号,第百十七条の三の二第一号 第四項については第百十七条の二の二第四号,第百十七条の三の二第二号)
(免許の拒否等)
90条
1項 公安委員会は,前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して,第一種免許又は第二種免許にあつては一年を,仮免許にあつては三月を経過していない者に限る。)に対し,免許を与えなければならない。ただし,次の各号のいずれかに該当する者については,政令で定める基準に従い,免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず,又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
5号 自動車等の運転者を唆してこの法律の規定に違反する行為で重大なものとして政令で定めるもの(以下この号において「重大違反」という。)をさせ,又は自動車等の運転者が重大違反をした場合において当該重大違反を助ける行為(以下「重大違反唆し等」という。)をした者
(免許の取消し,停止等)
103条
1項 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し,又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし,第五号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは,当該処分は,その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ,することができない。
6号 重大違反唆し等をしたとき。
(意見の聴取)
104条
1項 公安委員会は,第百三条第一項第五号の規定により免許を取り消し,若しくは免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内においてこれと異なる期間を定めたときは,その期間。次条第一項において同じ。)以上停止しようとするとき,第百三条第二項第一号から第四号までのいずれかの規定により免許を取り消そうとするとき,又は同条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の処分移送通知書(同条第一項第五号又は第二項第一号から第四号までのいずれかに係るものに限る。)の送付を受けたときは,公開による意見の聴取を行わなければならない。この場合において,公安委員会は,意見の聴取の期日の一週間前までに,当該処分に係る者に対し,処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所を通知し,かつ,意見の聴取の期日及び場所を公示しなければならない。
2項 意見の聴取に際しては,当該処分に係る者又はその代理人は,当該事案について意見を述べ,かつ,有利な証拠を提出することができる。
3項 意見の聴取を行う場合において,必要があると認めるときは,公安委員会は,道路交通に関する事項に関し専門的知識を有する参考人又は当該事案の関係人の出頭を求め,これらの者からその意見又は事情を聴くことができる。
4項 公安委員会は,当該処分に係る者又はその代理人が正当な理由がなくて出頭しないとき,又は当該処分に係る者の所在が不明であるため第一項の通知をすることができず,かつ,同項後段の規定による公示をした日から三十日を経過してもその者の所在が判明しないときは,同項の規定にかかわらず,意見の聴取を行わないで第百三条第一項若しくは第四項の規定による免許の取消し若しくは効力の停止(同条第一項第五号に係るものに限る。)又は同条第二項若しくは第四項の規定による免許の取消し(同条第二項第一号から第四号までのいずれかに係るものに限る。)をすることができる。
5項 前各項に定めるもののほか,意見の聴取の実施について必要な事項は,政令で定める。
(聴聞の特例)
104条の2
1項 公安委員会は,第百三条第一項又は第四項の規定により免許の効力を九十日以上停止しようとするとき(同条第一項第五号に係る場合を除く。)は,行政手続法第十三条第一項
の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
2項 公安委員会は,前項の聴聞又は第百三条第一項若しくは第四項の規定による免許の取消し(同条第一項各号(第五号を除く。)に係るものに限る。)若しくは同条第二項若しくは第四項の規定による免許の取消し(同条第二項第五号に係るものに限る。)に係る聴聞を行うに当たつては,その期日の一週間前までに,行政手続法第十五条第一項
の規定による通知をし,かつ,聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3項 前項の通知を行政手続法第十五条第三項
に規定する方法によつて行う場合においては,同条第一項
の規定により聴聞の期日までにおくべき相当な期間は,二週間を下回つてはならない。
4項 第二項の聴聞の期日における審理は,公開により行わなければならない。
5項 第二項の聴聞の主宰者は,聴聞の期日において必要があると認めるときは,道路交通に関する事項に関し専門的知識を有する参考人又は当該事案の関係人の出頭を求め,これらの者からその意見又は事情を聴くことができる。
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は,三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で,その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの
二 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第二項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が身体に前号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両等を運転した場合に限るものとし,前条第二号に該当する場合を除く。)
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第三項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が酒に酔つた状態で車両等を運転した場合に限る。)
四 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第四項の規定に違反した者(その者が当該同乗した車両の運転者が酒に酔つた状態にあることを知りながら同項の規定に違反した場合であつて,当該運転者が酒に酔つた状態で当該車両を運転したときに限る。)
第百十七条の三の二 次の各号のいずれかに該当する者は,二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第三項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が身体に第百十七条の二の二第一号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で車両等(軽車両を除く。)を運転した場合に限るものとし,同条第三号に該当する場合を除く。)
二 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第四項の規定に違反した者(当該同乗した車両(軽車両を除く。以下この号において同じ。)の運転者が酒に酔つた状態で当該車両を運転し,又は身体に第百十七条の二の二第一号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両を運転した場合に限るものとし,同条第四号に該当する場合を除く。)
行政手続法
(処分の基準)
12条
1項 行政庁は,処分基準を定め,かつ,これを公にしておくよう努めなければならない。
2項 行政庁は,処分基準を定めるに当たっては,不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
(不利益処分をしようとする場合の手続)
13条
1項 行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,次の各号の区分に従い,この章の定めるところにより,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
1号 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか,名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分,名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
2号 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
2項 次の各号のいずれかに該当するときは,前項の規定は,適用しない。
1号 公益上,緊急に不利益処分をする必要があるため,前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。
2号 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって,その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書,一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。
3号 施設若しくは設備の設置,維持若しくは管理又は物の製造,販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において,専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測,実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。
4号 納付すべき金銭の額を確定し,一定の額の金銭の納付を命じ,又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。
5号 当該不利益処分の性質上,それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。
(不利益処分の理由の提示)
14条
1項 行政庁は,不利益処分をする場合には,その名あて人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし,当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は,この限りでない。
2項 行政庁は,前項ただし書の場合においては,当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き,処分後相当の期間内に,同項の理由を示さなければならない。
3項 不利益処分を書面でするときは,前二項の理由は,書面により示さなければならない。