少年事件で全件送致主義(家裁送致)の例外はあるか

刑事|少年法|全件送致主義の例外要件|最高裁決定昭和58年9月5日

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

息子の窃盗事件が裁判所に送られてしまうのかどうか,という相談です。今年で17歳になる息子が,先週友人の家に遊びに行ったときに,その友人の財布を盗んでしまいました。警察署に被害届が出されたようです。20歳未満の少年が刑事事件を起こしてしまった場合,必ず事件が検察官か家庭裁判所に送られてしまうという話を聞いたのですが,どうしても送られてしまうのでしょうか。弁護士に依頼して,家庭裁判所の審判を回避するか,そもそも事件を検察や裁判所に送らないようにできないでしょうか。

回答:

1 ご質問のとおり,20歳未満の少年が刑事事件を起こした場合,警察署から(直接若しくは検察官を通じて)全件家庭裁判所に事件が送致されることとなり,引き続いて家庭裁判所の少年審判という手続により,少年の改善更生のための処遇(保護観察や少年院送致など)を判断されるのが法の原則です(全件送致主義)。

ただ,一定の極めて軽微な事件については通常の送致手続よりも簡易な手続によって送致され,家庭裁判所の審判に付されないこと(審判不開始という手続き)があります(簡易送致)。さらに,簡易送致として送致する必要性もないような(種々の面から見て犯罪が軽微で保護の必要性がほとんどない)事件の場合には,当該事件を警察署限りとして扱い,検察官や家庭裁判所に送致しない場合があります(不送致)。

2 簡易送致や不送致とされるためには,具体的に,警察署に対し,①被害者との示談が成立し(被害者が少年とすると両親との交渉が不可欠になりますので相手方によっては交渉が難航する場合があります。),一切の刑事処分や家庭裁判所送致を望んでいないこと,②非行事実が極めて軽微であること,③犯罪の原因及び動機,当該少年の性格,行状,家庭の状況及び環境等からみて再犯のおそれがないこと,④刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められることを,意見書や上申書、示談書等の書面で主張し,担当警察官と面談の上で主張,立証することが必要不可欠です。

事件が警察署段階にある内に,示談交渉等早期に弁護活動を行うことが必要と考えられますので,適切な弁護士に依頼することをお勧めします。

3 息子さんが17歳で高校生の場合は、学校への連絡を事実上回避することが極めて重要です。

場合により退学処分になりますから、捜査機関と至急協議が必要です。学校は、学業の場であり、少年の更生の為の環境、設備がありませんので連絡しても停学、退学等の不利益を受けるだけで、更生という面からほとんど意味がありません。学校側も連絡されると校則などに準拠して不利益処分をする義務が生じ非行少年を保護したくても身動きが取れないのが現状です。頼りは、家族と弁護人です。さらに、被害者の友人が未成年者ですと、その両親との交渉が不可欠になり、被害者の両親が学校へ連絡する場合が往々にしてあります。少年の場合、保護処分より退学等の処分が大きな影響を持つ可能性がありますから経験ある弁護人が必要です。

4 少年事件に関する関連事例集参照。

解説:

総論 少年法の基本趣旨 14歳以上の少年は刑法上の責任能力があるのにどうして刑事処分を受けないのか。

少年の刑事事件についてどうして刑法の他に少年法が規定されているのか簡単に説明します。刑法とは犯罪と刑罰に関する法律の総称であり,刑罰は犯罪に対する法律上の効果として行為者に科せられる法益の剥奪,制裁を内容とする強制処分です。刑法の最終目的は国家という社会の法的秩序を維持するために存在します。どうして罪を犯した者が刑罰を受けるかという理論的根拠ですが,刑罰は,国家が行為者の法益を強制的に奪うわけですから,近代立憲主義の原則である個人の尊厳の保障,自由主義(本来人間は自由であり,その個人に責任がない以上社会的に個々の人が最大限尊重されるという考え方),個人主義(全ての価値の根源を社会全体ではなく個人自身に求めるもの,民主主義の前提です)の見地から,刑罰の本質は個人たる行為者自身に不利益を受ける合理的理由が不可欠です。

その理由とは,自由に判断できる意思能力を前提として犯罪行為者が犯罪行為のような悪いことをしてはいけないという社会規範(決まり)を守り,適法な行為を選択できるにもかかわらずあえて違法行動に出た態度,行為に求める事が出来ます(刑法38条1項)。そして,その様な自分を形成し生きて来た犯罪者自身の全人格それ自体が刑事上の不利益を受ける根拠となります(これを刑法上道義的責任論といいます。判例も同様です。対立する考え方に犯罪行為者の社会的危険性を根拠とし,社会を守るために刑罰があるとする社会的責任論があります)。

すなわち,刑事責任の大前提は行為者の自由意志である是非善悪を弁別し,その弁別にしたがって行動する能力(責任能力)の存在が不可欠なのです。この能力は,画一的に刑法上14歳以上と規定されていますから,少年であっても理論的には直ちに刑罰を科すことが出来るはずです。しかし,少年は刑事的責任能力としての最低限の是非善悪の弁別能力があったとしても総合的に見れば精神的,肉体的な発達は不十分,未成熟であり,周りの環境に影響を受けやすく人格的には成長過程にあります。従って,少年に対して形式上犯罪行為に該当するからといって直ちに成人と同様に刑罰を科するよりは,人格形成の程度原因を明らかにして犯罪の動機,原因,実体を解明し少年の性格,環境を是正して適正な成長を助けることが少年の人間としての尊厳を保障し,刑法の最終目的である適正な法社会秩序の維持に合致します。又,道義的責任論の根拠は,元々その人間が違法行為をするような全人格を形成してきた態度にあり,未だ成長過程にある未成熟な少年に刑罰を直ちに科す事は道義的責任論からも妥当ではありません。

そこで,人格性格の矯正が可能な少年については処罰よりも性格の矯正,環境の整備,健全な教育育成を主な目的とした保護処分制度(保護観察,少年院送致等)及び少年に特別な手続(観護措置,鑑別所送致)が優先的に必要となるのです。更に少年の捜査等の刑事手続,全件送致主義、家庭裁判所の裁判等の判断についても以上の観点から適正な解釈が求められます。全件送致主義の事実上の例外的取り扱い(要件)も以上の趣旨から行われます。

1 少年事件における全件送致主義とは

20歳未満の者(以下「少年」といいます。)が刑事事件を起こした場合,ご指摘のとおり,原則として,当該事件は家庭裁判所に送致されることとなっています。これを,少年事件における全件送致主義とよんでいます(少年法第41条,42条)。

少年が行った犯罪事実(少年事件では,「非行事実」とよんでいます。)については,警察署から直接または検察官を通じて家庭裁判所に送致後,家庭裁判所調査官の詳細な調査を経て,裁判所による少年審判という手続を行い,少年の今後の処遇(保護観察,少年院送致等の処分)を慎重に審理するのが法の建前となっています。

全件送致主義が採られている理由は,以下のとおりです。少年が罪を犯した場合,軽微な非行事実に過ぎない場合であっても,その少年に今後も非行を繰り返す重大な危険性が潜んでいる場合があります。そこで,専門的判断機関である家庭裁判所において,少年に潜む問題点を早期に発見し,適切な処遇を加えることがその保護教育のために有効です(少年法第1条参照。保護主義といいます。)。そこで,警察官,検察官が少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,これを家庭裁判所に送致しなければならないとされているのです(少年法41条,42条)。

成人の刑事事件の場合は、刑事処分を科すべきか否かという問題を刑事事件の専門である警察や検察がまず判断するのに対して、少年事件の場合は刑事処分を科すべきか否かという問題ではなく、少年の更生の必要があるのか否かという点からその処分は捜査機関ではなく家庭裁判所の専権にするというのが全件送致主義の趣旨です。

2 例外的措置その1(簡易送致)

(1)しかし,少年の刑事事件において,今後非行を繰り返す可能性が低く,家庭裁判所等による保護の必要性(これを「要保護性」をいいます。)が少ない少年は,裁判所の手続的な負担から可能な限り早期に解放すべきですし,極めて軽微な事件についてまで,厳格な方式に従った送致を要求することはかえって少年の保護にならず,また,司法警察員の事件送致意欲を低下させ,少年法本来の精神に反するおそれすらあります。家庭裁判所の事件処理能力の点からも保護の必要がない事件をすべて家庭裁判所が判断することは無理があります。

そこで,一定の極めて軽微な事件については,通常の手続よりも簡易な手続によって,家庭裁判所に送致する方法がとられています。それが,いわゆる簡易送致というものです。

簡易送致扱いとされた少年事件については,少年や保護者に訓戒等の措置を取った上で「少年事件簡易送致書」という書面で,月に一回まとめて家庭裁判所に送致されます。そして,送致を受けた家庭裁判所は,特に問題ない限り,家庭裁判所調査官による少年の調査等は行われず,「審判不開始」として事件が終結となります。即ち,少年が家庭裁判所に出頭する少年審判が行われることはなく,また,一定期間保護観察所による指導(保護観察)を受けたり,少年院に送られることもありません。

(2)簡易送致事件として扱われる基準については,犯罪捜査規範214条に規定されています。

具体的には,捜査した少年事件について,①その事実が極めて軽微であり,②犯罪の原因及び動機,当該少年の性格,行状,家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく,③刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ,かつ,④検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたもの,という4つの要件からなっています。

3 例外的措置その2(家庭裁判所への不送致、刑事事件としての不認知段階)

さらに,当該非行事実について,「少年の健全な育成のために,非行のある少年に対し性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」という少年法第1条の保護主義の理念に照らし,少年法上の少年事件として,家庭裁判所に簡易送致事件として報告する必要性も無いと評価される事案があります。このような事案については,そもそも少年事件として家庭裁判所に送致することなく,警察署限りで当該事件が終了することがあります(不送致による終了)。

例えば,非行事実が極めて軽微であり,かつ,被害者との示談が成立し(被害者の宥恕の上申書),被害者が一切の刑事処分を希望していないような事件の場合,実質的に当該少年は「非行」を行っていないもの(刑事事件として認知していない段階)と同視すべきであるといえます。(なお,少年事件における「保護処分の決定の基礎となる非行事実の認定については、慎重を期さなければならないのであつて、非行事実が存在しないにもかかわらず誤つて少年を保護処分に付することは、許されないというべきである。」とするのが最高裁判例の立場です(最高裁決定昭和58年9月5日)。)

このような非行事実に関する点に加え,本件が単なる偶発的犯行に過ぎない事案であり,当該少年に前科前歴も無く,また,家庭環境等が整っている等の理由から,今後非行を繰り返すおそれが全くないような場合には,警察による今後の捜査の必要性も無く,むしろ早期に手続から解放することこそが,少年の保護につながるのです。

このような見地から,少年法上の手続に乗せずに,家庭裁判所等に対する送致を行わず,警察署限りで事件が終了する場合があります(不送致)。ただし,1で述べた全件送致主義からみれば,極めて例外的な措置ですので,弁護士を通じた警察官との折衝は必要不可欠といえますし,簡易送致の基準を考慮しつつ,少年事件として家庭裁判所へ報告する必要性が無く,早期に少年法上の手続から解放されるべき事件であることを,具体的事実に照らして詳細に主張,立証していく必要があるでしょう。

このような取扱いは、事実上、警察段階で、刑事事件として事件を認知するに至っていない段階で、警察官から対象少年に対して厳重注意指導があった状態と捉えることができます。このような取扱いは、少年法の全件送致主義や刑事訴訟法や、警察法に違反する取扱いでしょうか。そうではありません。少年法の制度趣旨は、少年法1条で明記されているとおり「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」であり、少年の健全な育成が可能であると考えられるのであれば、軽微な事案について、被害者の理解を得て、被害届け提出前の段階であれば、事件の捜査を進めて積極的に事件を認知するよりも、少年に対して注意指導を与えて更生の機会を与えることも少年法の制度趣旨に反しないことであると考えられるからです。警察法施行令に基づいて制定された国家公安委員会規則である少年警察活動規則3条1号でも少年警察活動の基本を「少年の健全な育成を期する精神をもって当たるとともに、その規範意識の向上及び立直りに資するよう配意すること。」と規定されていますし、同3条3号では「少年の性行及び環境を深く洞察し、非行の原因の究明や犯罪被害等の状況の把握に努め、その非行の防止及び保護をする上で最も適切な処遇の方法を講ずるようにすること。」と規定されていますので、軽微な事案について、少年と被害者の示談が成立し、被害者が被害届けを提出せず、これ以上の捜査も希望しないという意思を示している場合などには、警察段階の厳重注意処分とすることも関係法規の制度趣旨に反しないことと考えることができるのです。

4 本件における具体的な弁護活動

では,既に発生してしまった少年事件について,簡易送致又は不送致となるためにどのように具体的主張,立証活動を行っていけばよいのでしょうか。本件に即していえば,下記のとおり考えることができます。

(1)被害者に対する被害弁償,示談の準備,努力をしていること(実際に示談が成立していること)

本件は窃盗という被害者のいる犯罪であり,かつ,犯行自体は認めているということですので,被害者との示談交渉をすることは必要不可欠といえます。被害者との示談は,厳密には犯罪後の事情にすぎませんが,窃盗のような個人的な財産に対する犯罪においては,被害者に対する被害弁償が非行事実の重大性を判断する上で極めて重要で,少年の矯正のために保護処分をするかどうか(その前提として,そもそも家庭裁判所に送致するかどうか)の判断に大きく影響することとなります。

被害弁償をしたことに加えて,被害者が当該少年を許し,一切の刑事処罰を求めないこと,さらに家庭裁判所への送致を求めないことを希望しているのであれば,「刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ」る事情として,さらに考慮されるでしょう。

ただ,非行事実を行った少年が直接示談交渉することについては被害者の心理的抵抗も大きく,示談交渉の結果については適切に書面に残しておく必要がありますので,専門家である弁護人を通じて示談交渉を行うことが必要になります。本件では、友人が未成年者の場合、両親との交渉、和解、上申書の取得が不可欠になり、被害者本人、両親と場合により交渉が難航することが予想されます。これだけは着手してみないと分かりません。相手方が学校への連絡を望む場合がありますので注意が必要です。経験ある弁護人が必要となるでしょう。

(2)被害の態様,程度が極めて軽微か,実質的に被害が生じていないこと

簡易送致の基準にもあるように,当該非行事実が「極めて軽微」な場合には,少年法による厳格な手続による矯正・保護の機会をあえて設ける必要が無くなりますので,簡易送致ないしは不送致になる可能性が高まります。

具体的には,犯行日時,手段,方法,態様,結果発生の有無,程度,被害者側の事情等を綿密に検討した上で,警察署に上申書ないし意見書といった形で,本件の真の事実関係を伝える必要があります。また,被害が極めて軽微であることであることについては,(1)の示談交渉により,被害が実質的に回復されたことも重要な考慮要素になるでしょう。

(3)反省の態度が顕著であること

当然,当該少年の本件犯行に対する反省の情を具体的に示す必要があります。簡易送致の基準として,「犯罪の原因及び動機,当該少年の性格,行状」といったものが考慮されており,少年の内面が重視されているからです。

反省の情を伝えるためには,当該少年自身の反省文の作成が有効です。具体的には,被害者に対する真摯な謝罪の意図はもちろんのこと,犯罪に対する原因,動機の考察,今後の更生への意欲,改善のための具体的方策を記載することが必要です。

(4)動機に酌むべき事情があること,偶発的行為であり前科前歴(審判歴含む)がないこと

本件非行事実に至った経緯に同情しうる事情があり,計画的,常習的になされたものではなく,偶発的なものに過ぎないものであることが主張できれば,今後非行(再犯)を繰り返す可能性が低くなりますので,あえて少年法に則った矯正の機会を与える必要性は弱まり,簡易送致ないしは不送致にすることにつながる一つの考慮要素になります。

また,少年に前科前歴が無いこと(少年審判歴が無いことも含みます)についても,あえて少年審判等を経て,法による矯正の機会を与える必要が無いことにつながる重要な事実となります。

(5)今後の就学・就労状況が確保されていること,将来にわたる家庭環境が確保されていること

「当該少年の性格,行状,家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがな」いこと,「刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められること」が簡易送致の基準になっているのは上記のとおりです。

当該少年に今後の就労・就学環境が適切に確保されており,また,家庭内による少年への教育環境が整っているのであれば,社会内処遇による少年の更生を十分に期待することができますので,家庭裁判所が介入して少年の矯正,保護を図る必要性はなく,簡易な送致の方法を取るか,家庭裁判所に事件を送致しないことにもつながりやすいでしょう。

そのためには,客観的な資料として,例えば,家族,勤務先,就学先(すでに学校に連絡されている場合)による上申書等を作成してもらい,今後の少年の身元を引き受け,今後の更生へ協力していくこと,そのための具体的な方策を述べてもらう必要があるでしょう。

(6)まとめ

本件で具体的に考えられる弁護活動については,以上述べたとおりです。以上の各事情については,被害者との示談の上で警察署に対する意見書(上申書)を作成・提出し,本件を簡易送致事件として終了させるべき事件であること,また,そもそも家庭裁判所や検察官に送致すべき少年事件には該当しないことを説得的に主張,立証することが必要です。そのためには直接警察官と面談の上,口頭で主張することも必要でしょう。

いずれにせよ,警察署段階にある現時点において早急な活動を行う必要があり,また,警察官や被害者との交渉については弁護人を通じて行う必要がありますので,適切な弁護人に依頼することをお勧めいたします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

少年法

(この法律の目的)

第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

(司法警察員の送致)

第四十一条 司法警察員は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも,家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,同様である。

(検察官の送致)

第四十二条 検察官は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて,これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも,家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,同様である。

2 前項の場合においては,刑事訴訟法 の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は,その効力を失う。

犯罪捜査規範

(軽微な事件の処理)

第二百十四条 捜査した少年事件について,その事実が極めて軽微であり,犯罪の原因及び動機,当該少年の性格,行状,家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく,刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ,かつ,検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては,被疑少年ごとに少年事件簡易送致書及び捜査報告書(家庭裁判所へ送致するものについては,別記様式第二十二号。ただし,管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において,当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議しその特例に準じて別段の様式を定めたときは,その様式)を作成し,これに身上調査表その他の関係書類を添付し,一月ごとに一括して検察官又は家庭裁判所に送致することができる。

2 前項の規定による処理をするに当たつては,第二百条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。

少年警察活動規則

(平成十四年九月二十七日国家公安委員会規則第二十号)

警察法施行令 (昭和二十九年政令第百五十一号)第十三条第一項 の規定に基づき、少年警察活動規則を次のように定める。

第一章 総則

(趣旨)

第一条 この規則は、少年の非行の防止及び保護を通じて少年の健全な育成を図るための警察活動(以下「少年警察活動」という。)に関し、必要な事項を定めるものとする。

2 少年警察活動に関しては、警察法 (昭和二十九年法律第百六十二号)、警察官職務執行法 (昭和二十三年法律第百三十六号)、少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)、刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)、児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)、犯罪捜査規範 (昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)その他の法令(地方公共団体の条例又は規則を含む。)によるほか、この規則の定めるところによる。

(定義)

第二条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 少年 少年法第二条第一項 に規定する少年をいう。

二 犯罪少年 少年法第三条第一項第一号 に規定する少年をいう。

三 触法少年 少年法第三条第一項第二号 に規定する少年をいう。

四 ぐ犯少年 少年法第三条第一項第三号 に規定する少年をいう。

五 非行少年 犯罪少年、触法少年及びぐ犯少年をいう。

六 不良行為少年 非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為(以下「不良行為」という。)をしている少年をいう。

七 被害少年 犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた少年をいう。

八 要保護少年 児童虐待を受けた児童、保護者のない少年その他の児童福祉法 による福祉のための措置又はこれに類する保護のための措置が必要と認められる少年(非行少年に該当する場合を除く。)をいう。

九 低年齢少年 十四歳に満たない者をいう。

十 保護者 少年法第二条第二項 に規定する者をいう。

十一 少年補導職員 少年相談(少年の非行の防止及び保護に関する相談をいう。以下同じ。)、継続補導(第八条第二項(第十三条第三項及び第十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により行う継続的な補導をいう。以下同じ。)、被害少年に対する継続的な支援その他の特に専門的な知識及び技能を必要とする少年警察活動を行わせるため、当該活動に必要な知識及び技能を有する都道府県警察の職員(警察官を除く。)のうちから警察本部長(警視総監及び道府県警察本部長をいう。以下同じ。)が命じた者をいう。

十二 少年サポートセンター 警視庁、道府県警察本部又は方面本部の内部組織のうち、少年補導職員又は前号に規定する知識及び技能を有する警察官(以下「少年補導職員等」という。)を配置し、専門的な知識及び技能を必要とし、又は継続的に実施することを要する少年警察活動について中心的な役割を果たすための組織として警察本部長及び方面本部長が定めるものをいう。

(少年警察活動の基本)

第三条 少年警察活動を行うに際しては、次の各号に掲げる事項を基本とするものとする。

一 少年の健全な育成を期する精神をもって当たるとともに、その規範意識の向上及び立直りに資するよう配意すること。

二 少年の心理、生理その他の特性に関する深い理解をもって当たること。

三 少年の性行及び環境を深く洞察し、非行の原因の究明や犯罪被害等の状況の把握に努め、その非行の防止及び保護をする上で最も適切な処遇の方法を講ずるようにすること。

四 秘密の保持に留意して、少年その他の関係者が秘密の漏れることに不安を抱かないように配意すること。

五 少年の非行の防止及び保護に関する国際的動向に十分配慮すること。

(部門間の連絡等)

第四条 警察本部長及び警察署長は、少年に係る事案の適切な取扱いを確保し、及び少年に対する暴力団の影響の排除、暴走族等の非行集団に係る対策その他の複数の部門に関係する施策を的確に推進するため、少年警察部門(少年警察活動を所掌する部門をいう。以下同じ。)とその他の警察部門との緊密な連絡を保たせるものとする。

2 警察本部長及び警察署長は、すべての警察職員が少年警察活動の基本を理解するよう、適切かつ効果的な教養を実施するものとする。

(関係機関等との連携)

第五条 少年警察活動は、学校、家庭裁判所、児童相談所その他の少年の健全な育成に関係する業務を行う機関又は少年の健全な育成のための活動を行うボランティア若しくは団体との連携と適切な役割分担の下に行うものとする。

(早期発見)

第六条 第二条第五号から第八号までに掲げる少年については、街頭補導(次条第一項に規定する街頭補導をいう。)及び少年相談を適切に実施し、並びに警察の各部門間及び警察と関係機関の連携を図り、これらを早期に発見するように努めるものとする。

第二章 一般的活動

(街頭補導)

第七条 街頭補導(道路その他の公共の場所、駅その他の多数の客の来集する施設又は風俗営業の営業所その他の少年の非行が行われやすい場所において、第二条第五号から第八号までに掲げる少年を発見し、必要に応じその場で、これらに第十三条第一項、第十四条第一項、第三十六条第一項又は第三十八条第一項に規定する措置をとる活動をいう。以下同じ。)は、自らの身分を明らかにし、その他相手方の権利を不当に害することのないよう注意して行うものとする。

2 第二条第五号から第八号までに掲げる少年を早期に発見するため必要があるときは、街頭補導の実施に当たり、学校その他の関係機関、少年の健全な育成のための活動を行うボランティアその他の関係者の協力を求めるものとする。

(少年相談)

第八条 少年又は保護者その他の関係者から少年相談を受けたときは、懇切を旨として、当該事案の内容に応じ、指導又は助言、関係機関への引継ぎその他適切な処理を行うものとする。

2 少年相談に係る少年について、その非行の防止を図るため特に必要と認められる場合には、保護者の同意を得た上で、家庭、学校、交友その他の環境について相当の改善が認められるまでの間、本人に対する助言又は指導その他の補導を継続的に実施するものとする。

3 前項の規定による補導は、少年サポートセンターに配置された少年補導職員等(やむを得ない理由がある場合には、少年サポートセンターの指導の下、少年警察部門に属するその他の警察職員)が実施するものとする。

4 少年サポートセンターにおいては、第二項の規定による補導の適切な実施のため必要があるときは、保護者の同意を得た上で、これを学校関係者その他の適当な者と協力して実施するものとする。

(少年の規範意識の向上等に資する活動)

第九条 広く少年の参加を得て行うボランティア活動等の社会奉仕体験活動、柔道、剣道等のスポーツ活動その他の少年の規範意識の向上又は社会の一員としての意識の涵養に資するための体験活動については、学校その他の関係機関等が実施する少年の健全な育成のための活動との適切な役割分担の下、少年警察活動に関する知見、警察職員の能力その他警察業務の専門性を生かして、効果的に実施するものとする。

(情報発信)

第十条 少年警察活動については、少年の健全な育成に関する国民の理解を深めるため、少年の非行及び犯罪被害の実態並びに少年警察活動の状況に関する情報を積極的に発信するものとする。この場合においては、関係機関との協議会の開催、関係機関が開催する講習会等への協力その他の適切な方法により、少年警察活動に関する専門的な知見が関係機関等における少年の健全な育成のための活動に反映されるよう配慮するものとする。

(有害環境の影響の排除に係る都道府県知事への連絡等)

第十一条 警察本部長及び警察署長は、少年が容易に見ることができるような状態で性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品が販売されていることその他の少年の心身に有害な影響を与える環境(以下「有害環境」という。)があると認めるときは、都道府県知事その他の関係行政機関に対し、その旨を連絡するものとし、広報啓発その他の地域における民間公益活動、酒類販売業者等の事業者による顧客の年齢確認その他の民間における有害環境の少年に対する影響を排除するための自主的な活動に関し、その求めに応じ、必要な配慮を加えるものとする。

第三章 少年の非行の防止のための活動

第一節 通則

(捜査又は調査を行う部門)

第十二条 警察本部長又は警察署長は、犯罪少年に係る事件の捜査又は触法少年に係る事件の調査(以下「触法調査」という。)若しくはぐ犯少年に係る事件の調査(以下「ぐ犯調査」という。)を少年警察部門に属する警察官に行わせるものとする。ただし、事件の内容及び当該警察本部又は警察署の実情にかんがみ、適切な捜査又は調査の実施のため必要と認められるときは、この限りでない。

2 警察本部長又は警察署長は、前項ただし書の場合においても、少年の特性に配慮した捜査又は調査が行われるよう、少年警察部門に属する警察官に捜査又は調査の経過について常に把握させ、捜査又は調査を行う警察官に対する必要な支援を行わせるものとする。

(非行少年についての活動)

第十三条 非行少年については、当該少年に係る事件の捜査又は調査のほか、その適切な処遇に資するため必要な範囲において、時機を失することなく、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置をとるものとする。

2 触法調査又はぐ犯調査を行うに当たっては、特に家庭裁判所及び児童相談所との連携を密にしつつ、これを進めなければならない。

3 触法少年であって少年法第六条の六第一項 の規定により送致すべき者若しくは児童福祉法第二十五条 の規定により通告すべき者に該当しないもの又は十四歳未満のぐ犯少年であって児童福祉法第二十五条 の規定により通告すべき者に該当しないものの処遇については、第一項に定めるもののほか、第八条第二項から第四項までの規定を準用する。

(不良行為少年についての活動)

第十四条 不良行為少年を発見したときは、当該不良行為についての注意、その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い、必要に応じ、保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは、保護者及び当該関係者)に連絡するものとする。

2 第八条第二項から第四項までの規定は、不良行為少年について準用する。

第二節 触法調査

(触法調査の基本)

第十五条 触法調査については、少年法 及び児童福祉法 に基づく措置に資することを念頭に置き、少年の健全な育成を期する精神をもって、これに当たらなければならない。

2 触法調査を行うに当たっては、特に低年齢少年が精神的に未成熟であり、可塑性に富むこと、迎合する傾向にあること等の特性を有することにかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、少年に対する言動に注意する等温情と理解をもって当たり、少年の心情と早期の立直りに配慮しなければならない。

(調査すべき事項)

第十六条 触法調査においては、事件の事実、原因及び動機並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等について調査するものとする。

(調査指揮)

第十七条 触法調査の指揮については、犯罪捜査規範第十六条 から第十九条 (事件指揮簿に関する部分を除く。)までの規定を準用する。この場合において、第十六条中「捜査」又は「犯罪の捜査」とあるのは「触法少年に係る事件の調査」と、「捜査態勢」とあるのは「調査態勢」と、第十七条の見出し中「捜査担当部課長」とあるのは「調査担当部長及び課長」と、同条中「刑事部長、警備部長その他犯罪の捜査を担当する部課長」とあるのは「触法少年に係る事件の調査を担当する部長及び課長」と、「犯罪の捜査の」とあるのは「触法少年に係る事件の調査の」と、第十八条中「犯罪の捜査」又は「捜査」とあるのは「触法少年に係る事件の調査」と、第十九条の見出し中「捜査指揮」とあるのは「調査指揮」と、同条第一項中「犯罪の捜査」とあるのは「触法少年に係る事件の調査」と読み替えるものとする。

2 触法少年に係る事件については、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の少年事件処理簿を作成し、触法調査の指揮及び事件の送致又は通告その他の事件の処理の経過を明らかにしておかなければならない。

(調査主任官)

第十八条 警察本部長又は警察署長は、個々の触法調査につき、調査主任官を指名するものとする。

2 調査主任官は、前条第一項の規定により読み替えて準用する犯罪捜査規範第十六条 から第十九条 (事件指揮簿に関する部分を除く。)までの規定により指揮を受け、当該触法調査につき、次に掲げる職務を行うものとする。

一 調査すべき事項及び調査に従事する者の任務分担を定めること。

二 押収物及びその換価代金の出納を承認し、これらの保管の状況を常に把握すること。

三 調査方針を立てること。

四 調査に従事する者に対し、調査の状況に関し報告を求めること。

五 調査の適正な遂行及び当該調査に係る少年の自殺その他の事故の防止について調査に従事する者に対する指導教養を行うこと。

六 家庭裁判所、児童相談所、学校その他の関係機関との連絡調整を行うこと。

七 前各号に掲げるもののほか、警察本部長又は警察署長から特に命ぜられた事項

3 警察本部長又は警察署長は、第一項の規定により調査主任官を指名する場合には、当該事件の内容並びに所属の職員の調査能力、知識経験及び職務遂行の状況を勘案し、前項に規定する職務を的確に行うことができると認められる者を指名しなければならない。

4 調査主任官が交代する場合には、関係書類、証拠物等の引継ぎを確実に行うとともに、調査の状況その他必要な事項を明らかにし、事後の調査に支障を来すことのないようにしなければならない。

(付添人の選任)

第十九条 少年法第六条の三 に規定する付添人の選任については、付添人を選任することができる者又は付添人から両者が連署した付添人選任届を差し出させるものとする。

(触法調査のための呼出し及び質問)

第二十条 触法調査のため、触法少年であると疑うに足りる相当の理由のある者(以下この条において「少年」という。)、保護者又は参考人を呼び出すに当たっては、電話、長官が定める様式の呼出状の送付その他適当な方法により、出向くべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、少年又は重要な参考人の呼出しについては、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。

2 少年を呼び出し、質問するに当たっては、当該少年の保護者又はこれに代わるべき者に連絡するものとする。ただし、連絡することが当該少年の福祉上著しく不適当であると認められるときは、この限りでない。

3 少年を呼び出し、質問するに当たっては、当該少年に無用の緊張又は不安を与えることのないよう言動に注意するとともに、やむを得ない場合を除き、夜間に呼び出し、質問すること、長時間にわたり質問すること及び他人の耳目に触れるおそれがある場所において質問することを避けなければならない。

4 少年に質問するに当たっては、当該少年に無用の緊張又は不安を与えることを避け、事案の真相を明らかにし、事後の効果的な指導育成に資するよう、少年の保護者その他の当該少年の保護又は監護の観点から適切と認められる者の立会いについて配慮するものとする。

5 少年、保護者又は参考人を呼び出す場合には、長官が定める様式の呼出簿に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。

(令状の請求)

第二十一条 少年法第六条の五第二項 において準用する刑事訴訟法 中の司法警察職員の行う押収、捜索、検証及び鑑定の嘱託に関する規定(同法第二百二十四条 を除く。)による捜索、差押え、記録命令付差押え、検証若しくは身体検査の令状又は鑑定処分許可状は、同法第百九十九条第二項 の規定に基づき都道府県公安委員会が指定する警部以上の階級にある司法警察員たる警察官がこれを請求するものとする。ただし、やむを得ないときは、他の司法警察員たる警察官が請求しても差し支えない。

2 前項の令状を請求するに当たっては、順を経て警察本部長又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後速やかに、その旨を報告するものとする。

3 第一項の令状を請求したときは、長官が定める様式の令状請求簿により、請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。

(触法少年に係る事件の送致又は通告)

第二十二条 触法調査の結果、次の各号に該当するときは、当該各号の手続により処理をするものとする。

一 当該少年が少年法第六条の六第一項 各号のいずれかに該当するとき 長官が定める様式の触法少年事件送致書を作成し、これに長官が定める様式の身上調査表その他の関係書類を添付して児童相談所長に送致すること。

二 前号に掲げるもののほか、当該少年に保護者がないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められるとき 長官が定める様式の児童通告書により児童相談所に通告するほか、少年法第六条の二第三項の規定に基づく警察職員の職務等に関する規則 (平成十九年国家公安委員会規則第二十三号)別記様式の調査概要結果通知書により児童相談所に通知すること。

2 前項の処理をするに当たっては、警察本部長又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。

(関連事件の送致)

第二十三条 数個の触法少年に係る事件が関連する場合において、これらを共に児童相談所長に送致するときは、各別の記録とすることを要しないものとする。

(共通証拠物の取扱い)

第二十四条 触法少年に係る事件が成人又は犯罪少年に係る事件と関連し、これらを送致若しくは送付する場合において、共通の証拠物があるときは、成人又は犯罪少年に係る事件に証拠物を添付し、触法少年に係る事件の記録にこの旨を記載するものとする。ただし、触法少年に係る事件のみが重要と認められ、かつ、当該事件について児童福祉法第二十七条第一項第四号 の措置がとられた場合は、当該措置に係る家庭裁判所に証拠物を送付するものとする。

(指導教養)

第二十五条 警察本部長及び警察署長は、触法調査に従事する者に対し、低年齢少年の特性その他の職務遂行に必要な知識及び技能に関する指導教養を行うものとする。

(準用規定)

第二十六条 触法調査については、この節に規定するもののほか、その性質に反しない限り、犯罪捜査規範第十一章 の例によるものとする。

第三節 ぐ犯調査

(ぐ犯調査の基本)

第二十七条 犯罪の捜査、触法調査、少年相談その他の活動において、ぐ犯少年と認められる者を発見した場合は、少年法 及び児童福祉法 に基づく措置に資することを念頭に置き、少年の健全な育成を期する精神をもって、当該少年に係る事件の調査に当たるものとする。

2 ぐ犯調査を行うに当たっては、少年の心理、生理その他の特性にかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、少年に対する言動に注意する等温情と理解をもって当たり、その心情を傷つけないよう努めなければならない。

(ぐ犯調査を行うことができる警察職員)

第二十八条 少年法第六条の二第三項の規定に基づく警察職員の職務等に関する規則第一条 の規定により警察本部長が指定した警察職員は、上司である警察官の命を受け、ぐ犯調査を行うことができる。

(調査すべき事項)

第二十九条 ぐ犯調査においては、事件の事実、原因及び動機並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等について調査するものとする。

(調査主任官等)

第三十条 警察本部長又は警察署長は、調査すべき事項及び調査に従事する者の任務分担の決定、関係機関との連絡調整その他の適正な調査の遂行及び管理のために必要な職務を行わせるため、個々のぐ犯調査につき、調査主任官を指名するものとする。

2 調査主任官が交代する場合には、関係書類等の引継ぎを確実に行うとともに、調査の状況その他必要な事項を明らかにし、事後の調査に支障を来すことのないようにしなければならない。

3 ぐ犯少年に係る事件については、長官が定める様式の少年事件処理簿を作成し、ぐ犯調査の指揮及び事件の送致又は通告その他の事件の処理の経過を明らかにしておかなければならない。

(ぐ犯調査のための呼出し及び質問)

第三十一条 ぐ犯調査のため、ぐ犯少年と認められる者(以下この条において「少年」という。)、保護者又は参考人を呼び出すに当たっては、電話、長官が定める様式の呼出状の送付その他適当な方法により、出向くべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、少年又は重要な参考人の呼出しについては、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。

2 少年を呼び出し、質問するに当たっては、当該少年の保護者又はこれに代わるべき者に連絡するものとする。ただし、連絡することが当該少年の福祉上著しく不適当であると認められるときは、この限りでない。

3 少年、保護者又は参考人を呼び出す場合には、長官が定める様式の呼出簿に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。

(低年齢少年に係るぐ犯調査における配慮)

第三十二条 低年齢少年に係るぐ犯調査を行うに当たっては、特に低年齢少年が精神的に未成熟であり、可塑性に富むこと、迎合する傾向にあること等の特性を有することにかんがみ、少年の心情と早期の立直りに配慮しなければならない。

2 低年齢少年であってぐ犯少年と認められる者(以下この項及び次項において「少年」という。)を呼び出し、質問するに当たっては、当該少年に無用の緊張又は不安を与えることのないよう言動に注意するとともに、やむを得ない場合を除き、夜間に呼び出し、質問すること、長時間にわたり質問すること及び他人の耳目に触れるおそれがある場所において質問することを避けなければならない。

3 少年に質問するに当たっては、当該少年に無用の緊張又は不安を与えることを避け、事案の真相を明らかにし、事後の効果的な指導育成に資するよう、少年の保護者その他の当該少年の保護又は監護の観点から適切と認められる者の立会いについて配慮するものとする。

(ぐ犯少年に係る事件の送致又は通告)

第三十三条 ぐ犯調査の結果、次の各号に該当するときは、当該各号の手続により処理をするものとする。

一 処理をする時において、当該少年が十四歳以上であって、その者を家庭裁判所の審判に付することが適当と認められるとき 長官が定める様式のぐ犯少年事件送致書を作成し、これに長官が定める様式の身上調査表その他の関係書類を添付して家庭裁判所に送致すること。

二 処理をする時において、当該少年が十四歳以上十八歳未満であって、保護者がないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められ、かつ、家庭裁判所に直接送致するよりも、まず、児童福祉法 による措置にゆだねるのが適当であると認められるとき 長官が定める様式の児童通告書により児童相談所に通告すること。

三 処理をする時において、当該少年が低年齢少年であって、保護者がないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められるとき 長官が定める様式の児童通告書により児童相談所に通告すること。

2 前項の処理をするに当たっては、警察本部長又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。

(指導教養)

第三十四条 警察本部長及び警察署長は、ぐ犯調査に従事する者に対し、職務遂行に必要な知識及び技能に関する指導教養を行うものとする。

第四節 雑則

(長官への委任)

第三十五条 この章に定めるもののほか、触法調査又はぐ犯調査に関する書類の様式その他必要な事項は、長官の定めるところによる。

第四章 少年の保護のための活動

(被害少年についての活動)

第三十六条 被害少年については、適切な助言を行う等必要な支援を実施するものとする。

2 前項に定めるもののほか、被害少年について、その精神的打撃の軽減を図るため特に必要と認められるときは、保護者の同意を得た上で、カウンセリングの実施、関係者への助言その他の継続的な支援を実施するものとする。

3 前項に規定する継続的な支援について、その適切な実施のため必要があるときは、保護者の同意を得た上で、これを学校関係者その他の適当な者と協力して実施するものとする。

(福祉犯の被害少年についての活動)

第三十七条 福祉犯(児童買春に係る犯罪、児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって長官が定めるものをいう。以下同じ。)の被害少年については、当該福祉犯に係る捜査、前条に規定する支援のほか、当該少年が再び被害にあうことを防止するため保護者その他の関係者に配慮を求め、及び関係行政機関への連絡その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置をとるものとする。

(要保護少年についての活動)

第三十八条 要保護少年については、児童福祉法第二十五条 に基づく児童相談所への通告又は同法第三十三条第一項 若しくは第二項 の規定による委託を受けて行う一時保護の適切な実施のため、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置をとるものとする。

2 要保護少年について、少年に保護者がないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められるときは、長官が定める様式の児童通告書により児童相談所に通告するものとする。

(児童虐待を受けている児童等についての活動)

第三十九条 児童虐待を受け、又は受けているおそれのある児童については、児童相談所その他の関係機関との緊密な連携の下、当該児童に対するカウンセリング、保護者に対する助言又は指導その他の当該児童に対する支援を的確に実施するほか、児童虐待の防止等に関する法律 (平成十二年法律第八十二号)第十条 に基づく援助の求めがあった場合においては、その求めをした者との適切な役割分担の下、必要な措置をとるものとする。