新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1475、2013/11/22 00:00
【民事 独身と偽って交際し妊娠した場合の中絶合意  東京地方裁判所平成24年7月31日判決 】

質問:
都内で勤務する会社員です。先日、妻帯者であることを隠し、独身と偽って交際していた女性の妊娠が発覚しました。妻がいることを理由に交際解消を申し入れるとともに、子供を堕ろしてほしい旨伝えたところ、「家庭にも職場にも全部ばらしてやる。」「強姦で告訴してやる。」「絶対に許さない。」といった罵声を浴びせられました。交際期間中、結婚を期待させるような言動をしていたこともあり、交際女性は私と結婚できるものと信じていたようですが、私は妻と別れるつもりはありません。私としては、交際女性に中絶手術を受けてもらうことを希望しているのですが、相手が感情的になっており、全く話し合いになりません。どうしたらよいのか分かりませんので、対応策をご教示頂きたいです。



回答:
1.子を産むか否かの選択は交際女性の自己決定権に属する事柄ですので、仮に中絶を合意したとしてもそれを法的に強制することはできません。したがって、中絶を希望する場合、あなたの意向を丁寧に伝え、納得してもらった上で、最終的な決断については交際女性の自由意思に委ねる他ありません。
2. お聞きした事情の下では、あなたは差し迫ったところでは、@女性の告訴による強姦罪での逮捕・勾留(たとえ冤罪であっても)、A女性の告訴による逮捕勾留あるいは女性の職場への苦情による職場での懲戒処分、B女性による第三者への口外や電子掲示板等の利用による名誉権・プライバシー権侵害等の危険があると思われます。また、独身と偽って交際して性行為を行うことは交際女性の性的自由に関する自己決定権を侵害する不法行為ですので、C慰謝料等の請求を受ける可能性があります。さらに、交際女性が子を産む選択をした場合、あなたはD認知を経て原則的に子が成人するまでの間養育費の支払義務を負うことになり、E子には相続権が発生することになります。
3. これらの問題を一挙抜本的に解決するためには、慰謝料の点や、警察等への被害申告や本件についての第三者への口外禁止等の内容を含めた合意の早期締結を目指す必要があります。交際女性が子を産むか否かについていずれを選択した場合であっても双方納得の上での合意書の作成は不可欠といえます。
4.仮に交際女性が中絶を選択する場合、時間の経過に伴い身体的・精神的負担を増加させることになるため、早期の合意は双方にとって望ましいといえます。直接の話し合いが難しいようであれば弁護士に代理人として交渉してもらうことをお勧めいたします。

5.当事務所関連事例集 1290番921番 、783番634番630番115番37番参照。

解説:
1.(中絶に関する女性の自己決定権)
 まず、あなたは交際女性に対して中絶手術を希望しているとのことですが、子を産むか産まないかの選択、決定は本来女性の基本的人権としての自己決定権(憲法13条後段)に属する事柄であり、たとえあなたが父親だとしても、交際女性に対し中絶を求める権利といったものは法的に観念し得ません。性質上処分不能な権利ですので、たとえ交際女性との間で中絶することを確認する合意が成立したとしても、そのような合意に中絶をさせるという法的拘束力はなく、中絶するか否かの決定は交際女性の意思に委ねられることになります。
 したがって、中絶をするか産むかについてあなたにできることは、交際女性とよく話し合ってあなたの意向を丁寧に伝える他ありません。もっとも、当事者同士ではお互い感情的になるなどして話し合いが困難な場合が多く、また、後述するように慰謝料や子が生まれた場合の認知、養育費等の法的問題も派生してくるため、これらの点も含めて十分協議しておかないと、仮に中絶するか否かの点について合意できたとしても後々別のトラブルに発展する可能性があります。また、中絶はその時期が遅れれば遅れるほど女性の身体的・精神的負担が増す上、母体保護法上人工妊娠中絶が可能な時期は妊娠22週未満に制限されているため、交際女性の負担の軽減という点からも、早期の協議が必要です。加えて、あなたの場合、交際女性が家庭や職場等への通告、刑事告訴などを考えているとのことですので、問題を不必要に拡大させないためにも、速やかに話し合いの機会を持つ必要があります。当事者同士の直接の話し合いが困難であれば、弁護士を代理人に選任し、法的紛争を終息させるための合意の成立を目指して交渉してもらうことが不可欠といえるでしょう。
その場合、交際女性の中絶するか否かの選択は慰謝料の金額(後述するように、あなたは交際女性に対して慰謝料の支払義務を負っていると考えられます。)や子の認知、養育費の負担の有無等にも影響してくるため、慰謝料等の提示と関連付けて中絶を希望するとのあなたの意向を代弁してもらうことになります。ただし、前述のとおり、産むか産まないかの選択は交際女性の自己決定権に属するため、代理人に選任された弁護士といえども、中絶を積極的に勧めることはできず(職業倫理的にも問題があると思われます。)、あくまであなたの意向を説得的に伝えることができるにとどまる点、注意が必要です。

2.(交際女性に対する不法行為とこれに基づく慰謝料)
あなたは妻帯者であることを伏せて交際相手にあなたが独身であると誤信させ、あなたとの結婚を期待させた状態で関係を持ったということですが、かかる行為により、あなたは交際女性に対し、慰謝料の支払義務を負っていると考えられます。肉体関係を持つか否かの判断基準として、相手方が既婚者か否かは重要な要素です。あなたが独身者であると偽って肉体関係を持った行為は、交際女性にあなたと関係を持つかどうかについての判断を誤らせた点で、交際女性の貞操権ないし自己決定権を侵害しており、あなたは交際女性に対する不法行為(民法709条)が成立していることになります。但し、男女の関係ですから単に結婚をしていることを黙って肉体関係を持ったというだけでは不法行為に該当する違法な行為といえるか検討が必要です。関係が継続的にあり、自分が既婚者であることを説明すべき義務がある状況が存在し、しかも結婚の希望を抱かしめるような状況がある場合は不法行為に該当すると言えます。
この点、長崎地裁昭和38年6月28日判決は「被告は原告に対し、自己に妻のあることを秘し、婚姻の意思がないのにあるように装つて原告を欺いて情交関係を結び、その後も原告が被告に妻のあることを察知するまでの間原告をして結婚の希望を抱かしめ、これを欺罔して情交関係を続けて来たことが認められるから、被告は不法に原告の貞操を弄びこれを侵害して来たものというべきであつて、被告は原告に対し右侵害によつて原告の蒙つた精神的損害を賠償する義務があることが明らかである。」と述べて貞操権侵害による不法行為の成立を認めています。
また、仮に交際女性があなたの希望通り中絶を選択した場合でも、あなたは中絶費用や中絶に伴う交際女性の精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務を負うことになります。慰謝料の金額はあらゆる事情を基に総合判断されるため、ケースバイケースですが、以下の裁判例が参考になります。

○東京地方裁判所平成24年7月31日判決
被告が離婚しているなどと虚言を弄したためその旨誤信して被告との交際を開始するとともに、被告の子供を妊娠したり被告と婚姻の約束をするなどした原告が、被告がその後いまだ婚姻中であることが原告に発覚するや、被告から婚姻の約束を一方的に破棄されたことなどにより精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、「その場しのぎの場当たり的な言動で原告の気持ちを翻弄した被告の上記一連の虚偽行動や偽装工作の態様,原告に対する暴行の態様や原告の傷害の程度,この間原告が妊娠中であったこと等の事情に加え,虚偽が発覚した後の被告の言動,とりわけ,原告に対し,胎児の中絶を要求し,出産しても認知しないなどと述べるなど不誠実な態度に終始していること,被告の不法行為によって,原告のみならず,原告の子らもその心情を傷つけられていると推測されること,さらに,本訴において,当初代理人弁護士を選任し,原告二男と被告との関係を明らかにするためのDNA鑑定手続を積極的に提案しておきながら,その鑑定嘱託が採用された途端,同弁護士との連絡を絶って同弁護士をして訴訟代理人を辞任させ,結局,鑑定嘱託を不能に至らしめた(顕著な事実,弁論の全趣旨)被告の無責任な対応等本件で認められる一切の事情を総合考慮すれば,被告の不法行為により原告が被った精神的損害を慰謝するに足りる慰謝料の額は250万円と認めるのが相当である。」と判示し、250万円の慰謝料を認めています。

○東京高等裁判所平成21年10月15日付判決
交際して合意の上で性行為を行い妊娠したが、相手方男性の同意を得て人工妊娠中絶の手術を受けたというケースで、「原告は、妊娠して中絶手術を受けたが、その後に心身症の胃炎、不眠症、重篤なうつ状態といった精神的疾患等を発症し、現在においてもその症状が残存し、これらによって精神的・身体的苦痛を受け、また、治療費等の費用の支出による経済的損害を受けていることが認められる。」として、かかる精神的苦痛等に対する慰謝料相当額を200万円とした第1審(東京地裁平成21年5月27日判決)の判断を支持しています。

 したがって、トラブルの早期解決を目指すのであれば、交渉の中であなたの側から慰謝料を提示することが不可欠となります。筆者の経験上、交渉により、相手女性の中絶を内容とする合意による早期解決を目指す場合、解決金の金額は裁判の場合に認められる金額よりも高額となる傾向にあるように思われます。中絶するか否かの選択が相手女性に委ねられていること、倫理上中絶を積極的に勧めたり依頼するような交渉のし方ができないこと、中絶するか否かの選択を迫られる女性の葛藤の大きさ、中絶に伴う精神的身体的苦痛の大きさ等に照らせば、ある程度はやむを得ないと言わざるを得ないでしょう。
 なお、あなたが交際女性と肉体関係を持った行為は、あなたの妻との関係では夫婦間の貞操義務に違反し、妻の婚姻共同生活の平和を維持する権利ないし法的保護に値する利益を侵害する行為であり、あなたは妻に対する関係でも不法行為(民法709条)が成立しており、妻が不貞によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料の支払い)義務が発生していると考えられます。妻との法律関係の詳細については別稿に譲ることにしますが、こちらについても最終的には協議等によりきちんと解決すべき問題であることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
 以下では、交際相手との交渉、和解にあたって最終的に合意書上に盛り込むべき内容を、あなたが現在置かれている状況及びそれに伴うリスクに関連して、検討していきます。

3.(あなたの置かれている状況)
(1)人工妊娠中絶手術を受けることの確認
 仮に交際女性が妊娠した子を産む選択をした場合、生まれてくる子はあなたの子に他ならないのですから、認知によってあなたとの間に子の出生時に遡って法的な親子関係が生じ(民法784条本文)、子には相続権が発生することになり(民法887条1項)、あなたは原則的に子が成人するまでの間養育費の支払義務が発生します。子の認知については、たとえあなたが認知の届出の手続き(民法781条1項)に応じなかったとしても、子の法定代理人(母親)である交際女性から認知を求める調停(家事事件手続法257条、244条)や認知請求の訴訟(民法787条)を提起されることが見込まれます。このように交際女性が子を産むか産まないかの選択はあなたの家族にも大きな影響を持つものであり、あなたと交際相手だけの問題にとどまるものではありません。それだけに、産むか否かの点については、交際女性がどちらを選択するにせよ、十分な協議の上合意をまとめる必要があります。
 中絶の合意に法的拘束力がなく、中絶するか否かの決定が交際女性の意思に委ねられることについては前述のとおりですが、後述する解決金(慰謝料等)の支払いの根拠を明らかにするためにも、合意にあたっては中絶手術を受けることの確認が不可欠です。交際女性の自己決定権の範疇の問題ですので、その手術が交際女性の意思決定に基づくものであることを確認する必要があります。
(2)解決金(慰謝料)
 解決金の金額については、交際時の言動、妊娠発覚後の対応、交渉経過等々、一切の事情が総合考慮され、個別具体的に判断されますが、概ね200万円程度が1つの目安になると思われます。
 交渉によって任意かつ早期に慰謝料の支払いをすることによって、その後に交際女性から慰謝料等の支払を求める民事訴訟を提起されることを回避することができ、公開の法廷で事件審理されることによるプライバシーの観点からの問題や訴訟に伴いがちな精神的・時間的負担を回避できることは、合意による早期解決の1つのメリットといえるでしょう。金額面等での後の紛争を回避するためには、両者間で当該合意書に定める他何らの債権債務関係が存在しないことを相互に確認する清算条項と呼ばれる条項を合意内容に盛り込むことが不可欠です。
(3)責任追及を行わない旨の確認
 交際相手は強姦罪での刑事告訴をする旨述べているようですが、あなたは「暴行又は脅迫を用いて…姦淫した」わけではないので、強姦罪(刑法177条)は成立しません。仮に交際女性が警察等に対し、事実に反して強姦被害を受けた旨の虚偽の被害申告をした場合、虚偽告訴罪(刑法172条)として交際女性が刑事処罰を受ける可能性があります。
しかし、仮に虚偽の被害申告であったとしても、警察等捜査機関があなたが強姦行為を行ったと疑うに足りる相当な理由があると判断して捜査を開始すれば、逮捕・勾留による長期間の身柄拘束がなされる可能性が大きいことも事実です。逮捕・勾留が認められるためには被疑事実に関する罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれが必要ですが(刑事訴訟法199条、207条1項、60条1項参照)、交際女性との密接な人的関係に照らすと脅迫や懇願等によって交際女性の供述を変遷させる等の罪証隠滅のおそれが認められやすいといえ、逃亡のおそれについても、法定刑が3年以上の懲役という重罪(刑法177条)が問題となっていることからすると、たとえ会社員という立場があったとしても重罰をおそれて逃亡するおそれが比較的容易に認められやすいといえます。仮に逮捕されてしまった場合、起訴前だけでも最大23日間の身柄拘束が認められうるため(刑事訴訟法203条1項、205条1項・2項・4項、208条1項・2項)、勤務先との関係でも懲戒解雇等の問題が生じ、たとえ冤罪であってもあなたや家族、職場等関係者に与える影響は重大です。したがって、このような事態になる前に早期の合意により、本件を警察等捜査機関に持ち込まないこと(被害届の提出や告訴を行わないこと)の確認を得る必要があります。
 また、たとえ刑事事件化しないにしても、交際女性が憎しみや怒りの感情から本件をあなたの勤務先やマスコミ等に通告したり、インターネット上の電子掲示板等に本件に関する書き込みを行う等の行動に出た場合、やはり職場内での懲戒やあなたの名誉権・プライバシー権(憲法13条後段)の侵害等の回復困難な問題が生じえます。そのような事態を回避するためには、本件を一切第三者に口外しない旨の条項を盛り込んだ早期の合意を目指す必要があります。
 もっとも、ただ合意書の文面を作成し、署名押印するだけでは合意の実効性がどこまで期待できるか疑問ですので、あなたの側で交際女性を十分説得し、交際女性の方でも十分理解・納得した上で合意に応じて頂くということが最も重要です。

4.(本件における対応)
 交際女性が感情的になっていてあなたとの直接の話し合いが不可能ということであれば、弁護士に代理人として入ってもらい、交渉してもらうことが不可欠と思われます。話し合いができないまま放っておいても、中絶を希望する旨のあなたの意向が交際女性に正確に伝わることはないですし、逮捕・勾留や職場での懲戒、電子掲示板等での名誉権・プライバシー権侵害等の危険性が高い現状においては、暫く様子を見てみる等の悠長な対応をしている場合ではないはずです。前述のとおり、弁護士が交際女性に対して中絶を積極的に勧めることはできませんが、あなたの意向を説得的に伝えることはできます。また、結婚していることについて黙っていたという事情があるにせよ、暴行脅迫によって強制的に性行為をした事案ではないので強姦罪での刑事告訴はできないこと、事実に反する陳述をして虚偽の刑事告訴をした場合は犯罪に問われる可能性のあることを、女性に対して冷静に説明する必要もあります。これは法的な説明になりますので、法律専門家の立場から説明した方が伝わりやすいでしょう。本件の様に双方の感情的な対立を生じてしまっている事案においては、冷静な第三者として代理人弁護士を介在させるメリットがあると言えます。
後のトラブルを回避するためには、交際女性が子を産むか否かについていずれを選択した場合であっても合意書の作成(双方納得の上での合意)は不可欠です。仮に交際女性が中絶を選択する場合、時間が経過すればするほど中絶にあたっての身体的・精神的負担を増加させることになるため、早期の合意は双方にとって望ましいといえます。
 あなたの代理人として早急に交渉開始してくれる弁護士を探すことをお勧めいたします。

≪参照条文≫
日本国憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(認知の方式)
第七百八十一条第1項 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
第2項 認知は、遺言によっても、することができる。
(認知の効力)
第七百八十四条  認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
(認知の訴え)
第七百八十七条  子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。

家事事件手続法
(調停事項等)
第二百四十四条  家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
(調停前置主義)
第二百五十七条
第1項 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
第2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第3項 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。

刑法
(虚偽告訴等)
第百七十二条  人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
(強姦)
第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
(親告罪)
第百八十条
第1項 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第2項 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。

刑事訴訟法
第六十条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第八十七条  勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百五条
第1項 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
第2項  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
第4項  第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百七条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
第二百八条
第1項 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第2項 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。


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