新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1477、2013/11/24 00:00
【民事 中間省略登記 第三者のためにする契約と契約上の地位の譲渡の場合、法務省民事局長通達(平成19年1月10日)、内閣府の規制改革会議答申(平成19年5月30日、同年6月22日】
質問:
不動産がA→B→Cへと順次売買され、現在、登記名義はAにありますが、既に所有者はCになっているので、A名義からB名義への所有権移転登記を省略して、直接A名義からC名義に移転登記することは可能ですか。
↓
回答:
1、当該不動産の所有権が実際に、A→B→Cと移転している場合、上記事例においては、直接A名義からC名義への移転登記はできません。
2、もっとも、「売買契約書」が使用され、形式上A→B→Cへと順次売買されているようにみえるものであっても、AB間の契約条項やBC間の契約条項によっては、権利が直接AからCに移転したと構成することにより、登記名義を直接A名義からC名義に移転することは可能です。
具体的には、[1]AB間の契約が第三者(C)のためにする契約である場合、あるいは[2](A)BC間の契約をAB間の売買契約の買主の地位の譲渡契約である場合、実体の権利もA→Cと移転しているので、AからCへの所有権移転登記をすることができます。
このように契約を構成することで、登記名義を直接A名義からC名義に移転することが可能となります。
3、実際に、どのような契約条項を作成すれば、上記のような直接登記が可能かについては、他の契約文言との調整もあります。また、既に契約を締結した後でも契約の変更という手法等により、上記のような直接登記が可能となる場合もあります。したがって、上記のような事例で、登記名義を直接A名義からC名義に移転しようとする場合には、一度弁護士や司法書士に御相談なさるとよいでしょう。
いずれにしろ、所有権が実際にAC間で移転するという場合でなければそのような登記はできません。登録免許税など登記費用を免れるために実際はABCと順次所有権が移転するような契約の場合はそのような登記はできません。
4.この事例集は、事務所事例集394番に追加修正したものです。
解説:
第1 中間省略登記
ABCと三者間で順次所有権が移転する場合にBへの登記を省略していきなりC名義に移転する登記は、従前,中間省略登記と呼ばれていた事例です。このような登記が認められれば、移転登記手続にかかる費用(登録免許税等)の節約になりますが、実体の権利関係を正確に公示する不動産登記制度の要請も無視することはできませんので、このような登記が認められるのか議論があったところです。
第2 判例・実務の立場
1 判例の立場
判例は、Cによる中間省略登記手続請求は原則として、認められないとしつつ、例外的に中間者の同意がある場合には許容される立場をとっています(最判昭40年9月21日)。また、既になされた中間省略登記の効力については、実体的権利関係に合致する限り、中間者の同意がなくとも登記自体の効力は否定されず(最判昭44年5月2日)、また中間者の同意がなくても、登記の抹消を求めるにつき正当な利益を有しないとき(代金を既に受領している場合等)には、登記の抹消請求は認められません(最判昭35年4月21日)。
2 実務での手続
登記手続上は、判決による登記申請の場合を除いては、中間省略登記を認めないとする法務省民事局長通達が存在し、中間省略登記であることが登記申請書及びその添付書類から登記官に判明すれば、当該登記申請は却下される扱いです。
現行の不動産登記法による登記申請については、従来の「申請書副本」による申請を排除し、登記申請に際して「登記原因証明情報」を法務局(登記所)に提供することが義務付けられ(不動産登記法61条)、提供された「登記原因証明情報」が登記官の審査対象とされます。売買による所有権移転であれば、売買契約書や売買契約及び物権変動の事実を記載し売主が署名又は記名押印した書面等が「登記原因証明情報」に当たります。
実体上権利がA→B→Cへと移転した場合、「登記原因証明情報」の提供により、権利の移転経過が明確になることで、A名義からC名義への移転登記は中間省略登記であることが明らかとなってしまい、登記申請が却下されます。
第3 契約の解釈
もっとも、AB間の契約やBC間の契約の解釈によっては、実体上権利が直接AからCに移転したという構成も可能です。実体上権利が直接AからCに移転しているのであれば、A名義からC名義への移転登記の申請は可能です。中間省略登記が問題となり登記実務で否定されるのは権利関係の移転が登記上実体的な権利関係と一致しないためですから、実体法上も所有権がACへ直接移転しているのであればその旨の登記をすることはむしろ望ましいことで何も問題はないと言えます。
具体的には、[1]AB間の契約が第三者(C)のためにする契約である場合、[2](A)BC間の契約がAB間の売買契約の買主の地位の譲渡契約である場合、実体の権利もA→Cと移転したことになります。
これらの方法によるA→Cの移転登記が可能であることは、法務省民事局長通達(平成19年1月10日)、内閣府の規制改革会議答申(平成19年5月30日、同年6月22日)及び日本司法書士会連合会の会長名での通知(平成19年5月30日)が認めているところです。
第4 第三者のためにする契約(前項[1]について)
契約当事者が合意することで,当事者以外の第三者に利益を得させるような契約のことを第三者のためにする契約といいます(民法537条)。ここでの合意の主体は,元の契約の当事者のみであり,第三者は受益の意思表示をすることで権利を取得することになります(民法537条2項)。
契約当事者以外に契約の効力を及ぼさせることは認められないのが原則です(契約の相対性の原則)が,第三者に利益を与える合意は,その原則の例外として認められています。このような合意は,売買契約や賃貸借契約と並ぶ契約の類型ではなく,各契約の特約という位置づけとされています。
第三者のためにする契約で,当事者以外の第三者には,権利を取得させるのが原則ですが,権利を取得させることにあわせて,付随的な負担を負わせることは,判例及び通説上認められているところです(契約上責任を負うのは自分がそのような責任を負うという判断をしてその旨相手に申し出たからこそ責任を負うのですから、責任を負うことを申し出ていない第三者は責任を負うことはできません。利益を得るのであれば、第三者が後日了解すれば問題はないことから責任を負わせない限りで契約の効力を認めようというのが第三者のためにする契約です。また付随的な義務を負うことが明らかになっている以上利益を得るために、その点も併せて第三者が承諾したのであれば責任を負わせることも私的自治の原則には反しませんから付随的な義務を負わせることもできます。但し、義務を負わせることあまりに広く認めることは第三者が不測の損害を被ることも考えられることから利益を得るに付随する義務に限定されることになります。)
第三者のためにする契約により第三者Cとしては,Aに対する登記請求権を取得することになります。もっとも,その他の権利義務関係については,AB間の合意により定まることになります。
なお、この場合の登記原因証明情報は下記のとおりです。
(例)登記原因証明情報
1 登記の目的 所有権移転
2 登記の原因 平成18年11月1日売買
3 当事者 権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙)
丙野太郎
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲)
甲山一郎
5(1)の売買契約の買主 E市F町3丁目4番5号
(乙)
乙川花子
4 不動産の表示 所 在 X市Y町Z丁目
地 番 7番9
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
5 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)甲は,乙との間で,平成18年10月1日,その所有する上記不動産(以下「本件不動産」という。)を売り渡す旨の契約を締結した。
(2)(1)の売買契約には,「乙は、売買代金全額の支払いまでに本件不動産の所有権の移転先となる者を指名するものとし、甲は,本件不動産の所有権を乙の指定する者に対し乙の指定及び売買代金全額の支払いを条件として直接移転することとする。」旨の所有権の移転先及び移転時期に関する特約が付されている。
(3)所有権の移転先の指定
平成18年11月1日,乙は,本件不動産の所有権の移転先として丙を指定した。
(4)受益の意思表示
平成18年11月1日,丙は甲に対し,本件不動産の所有権の移転を受ける旨の意思表示をした。
(5)平成18年11月1日、乙は、甲に対し、(1)の売買代金全額を支払い、甲はこれを受領した。
(6)よって、本件不動産の所有権は、平成18年11月1日、甲から丙に移転した。
平成18年11月5日 ○○法務局●●出張所御中
上記登記原因のとおり相違ありません。
権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙野太郎 印
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲山一郎 印
5(1)の売買契約の買主 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙川花子 印
第5 買主の地位の譲渡(前項[2]について)
契約上の地位を一括して移転することも認められています。売買契約における売主の地位の移転の場合,元の契約の当事者に加え地位を引き受ける第三者も合意主体に含まれることになります。
第三者Cとしては,買主Bの立場を包括的に取得することになります。したがって,CはAに対する登記請求権のみならず,AB間契約の代金支払義務も直接負担することになります。それにより,AB間の契約代金がCの知るところになります(この点が第三者のためにする契約の構成と大きく異なる点です。)。
なお、この場合の登記原因証明情報は下記のとおりです。
(例)登記原因証明情報
1 登記の目的 所有権移転
2 登記の原因 平成18年11月1日売買
3 当事者 権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙)
丙野太郎
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲)
甲山一郎
買主の地位の譲渡人 E市F町3丁目4番5号
(乙)
乙川花子
4 不動産の表示 所 在 X市Y町Z丁目
地 番 7番9
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
5 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)甲は,乙に対し,平成18年10月1日,その所有する上記不動産(以下「本件不動産」という。)を売り渡す旨の契約を締結した。
(2) (1)の売買契約には,「乙から甲への売買代金の支払いが完了した時に本件不動産の所有権が乙に移転する。」旨の所有権の移転時期に関する特約が付されている。
(3)地位の譲渡契約
乙は,丙との間で,平成18年10月11日,(1)の売買契約における買主としての地位を丙に売買により譲渡する旨を約し,甲は,これを承諾した。
(4)代金の支払い
平成18年11月1日,丙は,甲に対し,(1)の売買代金全額を支払い,甲はこれを受領した。
(5)よって、本件不動産の所有権は、平成18年11月1日、甲から丙に移転した。
平成18年11月5日 ○○法務局●●出張所御中
上記登記原因のとおり相違ありません。
権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙野太郎
印
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲山一郎
印
買主の地位の譲渡人 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙川花子
印
第6 新しい手法による契約と従前の判例との関係
前述した原則として中間省略登記を認めない判例(最判昭40年9月21日)は,その理由として,登記は,実体的な権利関係をそのまま反映させるものであることをあげています。ここで,実体的な権利変動が,A→B→Cと移転しているような場合に登記をA→Cとすることは,実体的権利変動と登記が食い違うことになります。もっとも,前述した,第三者のためにする契約や買主の地位の譲渡による方法とすると,実体な権利変動としてもA→Cと移転することになります。したがって,実体的な権利変動と登記が一致することになります。第三者のためにする契約や買主の地位の譲渡による方法によって,登記をA→Cに移すことを肯定することは,前述の中間省略登記を認めない判例と矛盾することにはなりません。
≪参考条文≫
民法537条
1項 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは,その第三者は,債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2項 前項の場合において,第三者の権利はその第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示したときに発生する。
≪参考判例≫
最判昭和40年9月21日
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人西阪幸雄の上告理由第一点について。
法律解釈の根拠、理由の説明は、必ずしも判決に示す必要がないのであるから、これを欠いているからといつて、審理不尽、理由不備の違法があるとはいえない。論旨は採用することができない。
同第二、三点について。
実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しないと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然として甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登記すべき旨を請求することは許されないというべきである。ただし、中間省略登記をするについて登記名義人および中間者の同意ある場合は別である。(論旨引用の当裁判所判決は、すでに中間省略登記が経由された後の問題に関するものであつて、事案を異にし本件には適切でない。)本件においては、登記名義人の同意について主張、立証がないというのであるから、上告人の中間省略登記請求を棄却した原判決の判断は正当であつて、不動産登記法に違反するとの論旨は理由がない。また、登記名義人や中間者の同意がない以上、債権者代位権によつて先ず中間者への移転登記を訴求し、その後中間者から現所有者への移転登記を履践しなければならないのは、物権変動の経過をそのまま登記簿に反映させようとする不動産登記法の建前に照らし当然のことであつて、中間省略登記こそが例外的な便法である。右の法解釈をもつて経験則や慣習に違反しているとの論旨もまた理由がない。所論は、いずれも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六)
最判昭和44年5月2日
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人柏倉栄助、同飯塚芳夫、同柏倉秀夫の上告理由第一点について。
本件中間省略登記が中間取得者であるMSの同意なしにされたものであるとしても、右登記が現在の実体的権利関係に合致することは、原判決により明らかであるから、このような場合には、右MSが右中間省略登記の抹消登記を求める正当な利益を有するときにかぎり、同人において右登記の抹消を求めることができる(最高裁判所昭和三五年四月二一日第一小法廷判決、民集一四巻六号九四六頁参照)にとどまり、中間取得者にあたらない上告人らが右中間省略登記の無効を主張してこの抹消登記を求めることができないと解するのが相当である。引用の判例は本件に適切でない。したがつて、これと趣旨を同じくする原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。
同第二点について。
被上告人が上告人Jにおいて本件土地を含む二四四坪二合四勺の宅地の借地権を有することを知りながら、同上告人所有の右地上建物に保存登記のないのを奇貨とし、同上告人の借地権を消滅させる目的で本件土地を買受けたものであると認めるに足りる証拠がない旨,被上告人の本訴請求を権利の濫用と認めることができない旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係および第一審および原審の取り調べた証拠に照らして首肯できる。原判決には所論の違法はないから、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)
最判昭和35年4月21日
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人竹下伝吉の上告理由第一点(五の点を除く)について。
所論は原審が、本件登記の現状が実質上の権利者と一致する場合云々と判示したことは法令の解釈を誤まり、理由不備、理由そごの違法があるというのである。
しかし、二重売買の場合において、第一の買主と第二の買主とは実質上いずれも所有者であつて、売主に対してはその所有権を主張し得るけれども、本件のように第二の買主たる被上告人田島新一が所有権移転登記をした以上、同被上告人は何人にも対抗しうべき所有権者となると解するを相当とし、右登記がいわゆる中間省略登記であると否とによつて、結論を異にすべきものではない。原審の判示は右と同一趣旨に出ずるものであつて、所論の違法は認められない。
同第一点五について。
所論は本件登記の現状が実質上の権利者と一致していないものであることを前提として原判決の違法をいうものである。
しかし本件登記の現状が実質上の権利者と一致している旨の原判示の正当であることは前記のとおりであり、論旨は原判示に副わない主張であつて、採るを得ない。
同第二点、第三点について。
原審は、本件登記につきいわゆる中間者である上告人の本件家屋の譲渡前後の事情、経過を詳述し、上告人は訴外組合より本件家屋を未登記のまま承継取得して自ら所有する期間これを登記しようとしたことなく、登記方を他人に依頼することもなく、未登記のまま何ら不満を感ぜず経過し、これを訴外KEに譲渡するに当つても、単に所有権を与えてその対価を収得することをもつて満足し、不動産を何人の名をもつて保有登記をなすや等既登記不動産とする点に関しては毫も関心なく、話題となすこともなかつたこと及び上告人は自己名義を登記に登載することを要するがごとき利益もまた何らなかつたことを認めるに十分であつた旨を認定し、更に上告人の本訴を提起した動機についても、何ら自己自身の利益を守る目的に非らずして、ただ訴外KEが二重譲渡したことを聞知し、その譲受人の一人である訴外KMをもつて正当の権利者と解し、これに責任ありと感じて同訴外人名義の登記を実現するため被上告人名義の登記を抹消しようとするにあることは、上告人本人の供述により明らかである旨を認定している。そして右原審の認定は、挙示の証拠に照らしこれを是認することができる。かかる事実関係の下においては、原審が、被上告人とKMといずれが法律上の保護に値するかどうかは同人らの訴訟の結果によるべきであり、上告人には本件登記の抹消を訴求するについての法律上の利益を認めがたく、本訴請求は失当であると判示したことは正当である。所論は、原審の右判断を争い、または右原審の認定に副わない事実関係を前提として原判決の違法をいうものであつて、採るを得ない。
同第四点について。
所論は判例違反をいうが、原審は、その認定のごとき事実関係の下において、中間省略登記につき上告人の同意がなかつたからといつて、上告人がこれを理由として本件登記の抹消を訴求するについての法律上の利益を認めがたく、本訴請求は失当である旨を判示したに止まり、中間省略登記の効力、要件等につき所論のように、引用の判例と異なる判断を示したものとは認められない。所論は採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 高木常七)
≪参考文書≫
日司連発第1490号
平成19年1月16日
司法書士会会長殿
日本司法書士会連合会
会長中村邦夫
法務省民事局民事第二課長通知について(お知らせ)
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
法務省民事局民事第二課長から、「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の可否について(照会)」に対する通知を受けましたので、別紙のとおりお送りいたします。
本通知は、従来の取扱いを変更するものではありません。「第三者のためにする取引」及び「買主の地位の譲渡」について、甲乙間及び乙丙間の契約内容から実体上も甲から丙に直接所有権が移転していると認められる場合に限定したものであり、甲乙間及び乙丙間双方に不動産売買契約が二つ存在する場合は該当しないことをご理解ください。
また、本通知による登記原因証明情報を作成するにあたっては、甲・乙・丙三者に面談し、登記原因を確認した上で署名をうけること等が必要と考えられます。
実体関係を十分把握することなく実体と合わない登記原因証明情報を作成することは、司法書士の職責上認められませんので、十分ご留意の上職務遂行をしてください。実体の合わない登記原因証明情報の作成は、綱紀上の問題になるとともに、法律に抵触することも考えられますことを付言します。
なお、運用などの詳細については、後日、法務省等との協議、又は対策部等における検討の上で通知する予定です。
記
1.「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」
第3章の11住宅・土地分野(2)登記制度の運用改善について(通知)」
〔平成19年1月10日付法務省民二第53号〕
【法務省からの回答文書】
平成18年12月22日法務省民二第2878号民事第二課長回答
第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(回答)
本月21日付け照会のあった標記の件については,いずれも貴見のとおりと考えます。
【法務省への照会文書】(平成18年12月21日)
第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(照会)
甲を登記義務者,丙を登記権利者とし,別紙1又は別紙2の登記原因証明情報を提供して行われた甲から丙への所有権の移転の登記の申請は,他に却下事由が存在しない限り,いずれも受理されるものと考えて差し支えないか,照会します。
別紙1(第三者のためにする契約)
別紙2 (買主の地位の譲渡)