新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1482、2013/12/30 19:16 https://www.shinginza.com/seinen-kouken.htm
【民事 制限行為能力者制度とその弱点 対応策としての高齢者虐待防止法】
質問:
父が3年前に亡くなり、80代の母が一人暮らしでしたが、体調を崩したことをきっかけにして、兄(長男)と同居を開始しました。しかし、それからは、私(妹)は、母と面会することもできず、電話しても、「銀行に連れて行かれた」などと言うので心配になってしまいます。母には、会社員だった父の遺族年金も支給されており、毎月の生活費に困って預貯金を引き出す必要はありません。母は日常会話は出来ますが、記憶や計算する能力が衰えてきたと感じます。兄が母の財産を全て無くしてしまうのではないかと心配になります。何か、母の財産を散逸させてしまわないように予防する手段は無いでしょうか。
↓
回答:
お母様の判断能力が不十分なため経済的な損害が生じることを防ぐ制度として、民法で制限行為能力者制度が定められています。制限行為能力者制度には「補助」、「保佐」、「後見」がありますから、それらの申し立てを検討してください。
なお、制限行為能力者制度の申し立てても、その旨の審判が決定するまでの間に経済的な損害が生じるという緊急性がある場合は、申し立ての際に家庭裁判所に財産管理人の選任を申し立てることもできます。家庭裁判所はそのような緊急性がある場合は後見等の制度が開始するまでの間の財産の管理人を選任し、あるいは関係者等に対して財産の管理について一定の指示をすることができます(家事事件手続法規則23条)
認知症高齢者の財産が奪われるようなケースは、経済的虐待と評価されることもあります。高齢者虐待にあたるようなケースであれば、市役所の高齢者福祉課に相談して、精神保健福祉法33条による医療保護入院の措置や、老人福祉法10条の4及び11条による「やむを得ない事由による措置」として老人福祉施設への入所手続を取ってもらうことができる場合もあります。
既にお兄様が、お母様の預貯金を引き出して、その引き出した金銭を受領し、損害が発生しているのであれば、その金銭を取り戻すことができます。
制限行為能力者制度により補助等が開始されるまでの間の、お兄様の預金引き出し行為等を止めさせるため、警告書(ただちに預金の引き出しを止めること、これまでに引き出した預金を戻すこと等を記載)を送付する手段が考えられます。警告書には、例外的措置として、やむを得ず横領罪等での刑事告発することもある旨、付記しておくことも場合によっては必要でしょう。
法定(成年)後見に関し事務所事例集1185番、1065番、775番、196番参照。
解説:
1、 制限行為能力者制度
高齢者の方が、認知症などにより判断能力が低下し、財産管理能力が著しく減退している場合、同居の親族などが、そのことを利用して、高齢者に財産的損害を与えてしまう場合があります。しかし、当然のことながら、たとえ親子間であっても、何の根拠も無く、高齢者の財産を奪うことは許されません。
このような危険がある場合、本人の判断能力のレベルに応じて、補助開始審判申立(民法15条1項、家事事件手続法136条)、保佐開始審判申立(民法11条、家事事件手続法128条)、後見開始審判申立(民法7条、家事事件手続法117条)をすることができる制限行為能力者制度が規定されています。
※参考URL(東京家庭裁判所による成年後見申立の手引)
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/130618seinenkoukenmoushitatenotebiki.pdf
(1)補助
補助とは、高齢者認知症や精神病など、精神上の障害によって、判断能力が不十分である者について、家庭裁判所の審判により、補助人を任命して、特定の重要な財産処分行為(民法13条1項各号に規定された被保佐人が同意を要する行為の一部)などについて、補助人の同意を要することと決めてもらう手続です。補助人の同意を要するとされた財産行為について、補助人の同意無く処分が行われた場合は、いつでもこれを取り消すことができます(民法17条4項)。
補助開始審判の申立権者は、本人、配偶者、4親等以内の親族等です。この手続では、本人の判断能力が不十分ながらも残っているため、申立の際に、本人の同意が必要となりますが、他方、医師による鑑定は原則として不要という取扱いとなっております。
※参考書式(申立書の例)
https://www.shinginza.com/m-hozyo.pdf
必要書類は、本人の戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書(既に制限行為能力者として審判を受けていないことの確認)、本人の診断書、本人の財産に関する資料、補助人候補者の住民票、同意権または代理権を求める行為に関する資料、などです。
※ 参考書式(申立時に添付する診断書の書式例)
https://www.shinginza.com/sindansyo.pdf
御相談の事例のように、補助開始申立の本人が申立人と同居していない場合、申立資料の収集に困難を伴う場合がありますが、弁護士に相談し、また、家庭裁判所と相談して、必要があると認められれば、診断書が用意できなくても、申立が受理されることがあります。
申立が受理されると、家事事件手続法の規定により、審判期日への出頭も過料による制裁によって強制されますし、証拠調べ手続においても過料の制裁による強制力があります(家事事件手続法64条)。実務上は、高齢の被補助人等の期日呼び出しはあまりされないようですが、家庭裁判所の公的な手続きですので、兄弟間で話し合いをするよりも、冷静な対応を期待することができます。申立時に診断書が用意できない場合は、家庭裁判所の選任する医師による鑑定を受けるよう、家庭裁判所から、本人と同居親族に連絡が行くことになります。この鑑定は、強制力のある処分ではありませんが、同居親族と本人が同意すれば、鑑定が行われ、必要に応じて、補助開始審判が発令されることになります。同居親族が鑑定を拒否するなどの事情を生じた場合は、その事情をひとつの材料として、次項で説明する高齢者虐待防止法の手続を検討すると良いでしょう。
家事事件手続法第51条(事件の関係人の呼出し)
第1項 家庭裁判所は、家事審判の手続の期日に事件の関係人を呼び出すことができる。
第2項 呼出しを受けた事件の関係人は、家事審判の手続の期日に出頭しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
第3項 前項の事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、五万円以下の過料に処する。
(2)保佐
保佐とは、高齢者認知症や精神病など、精神上の障害によって、判断能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判により、保佐人を任命して、法律で定められた重要な財産処分行為について、保佐人の同意を要することと決めてもらう手続です。保佐人の同意を要するとされた財産行為について、補佐人の同意無く処分が行われた場合は、いつでもこれを取り消すことができます(民法13条4項)。
保佐人の同意を要する行為は、民法13条1項各号に規定されていますが、ここに列挙します。
1)元本を領収し、又は利用すること。
2)借財又は保証をすること。
3)不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4)訴訟行為をすること。
5)贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法第2条1項)をすること。
6)相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7)贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8)新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9)民法602条に定める期間(建物3年)を超える賃貸借をすること。
保佐開始審判の申立権者は、本人、配偶者、4親等以内の親族等です。この手続では、本人の判断能力が著しく不十分であるため、申立の際に、本人の同意は不要とされておりますが、他方、医師による鑑定(診断)は原則として必要という取扱いとなっております。
※参考書式(申立書の例)
https://www.shinginza.com/m-hosa.pdf
必要書類は、本人の戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書(既に制限行為能力者として審判を受けていないことの確認)、本人の診断書、本人の財産に関する資料、保佐人候補者の住民票、などです。
(3)成年後見
成年後見とは、高齢者認知症や精神病など、精神上の障害によって、判断能力が全く無い状態である者について、家庭裁判所の審判により、代理権を有する成年後見人を任命して、本人の財産を管理させる手続です。成年被後見人の法律行為は、日用品の購入などの日常生活に関する行為を除いて、取り消すことができます(民法9条)。このようにして、成年被後見人の財産が不当に散逸してしまい、本人が後日困ってしまうことを防止することができます。
後見開始審判の申立権者は、本人、配偶者、4親等以内の親族等です。この手続では、本人の判断能力が全く無いことから、申立の際に、本人の同意は不要とされておりますが、他方、医師による鑑定(診断)は原則として必要という取扱いとなっております。
※参考書式(申立書の例)
https://www.shinginza.com/m-kouken.pdf
必要書類は、本人の戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書(既に制限行為能力者として審判を受けていないことの確認)、本人の診断書、本人の財産に関する資料、後見人候補者の住民票、などです。
成年後見の申立が一度受理されると、申立人だけの都合では取下げをすることはできなくなります。申立の取下げには家庭裁判所の許可が必要であり、家庭裁判所に手続の続行が必要と判断されると、取下げができません。後見開始の審判手続が、申立人の利益のための手続ではなく、意思能力を喪失してしまった審判対象者(成年被後見人)の利益を守るための手続だからです。
逆に、判断能力が不十分でもまだ残っている補助、補佐の申し立ては審判前は取り下げができます。この規定は、平成23年5月25日制定(施行は平成25年1月1日)の家事事件手続法の制定により定められました。旧家事審判法の規定からは明確でなかったので解釈上は取り下げが認められる余地がありました(事例集1065番参照)。唯、後見申し立ての事情により審判前の取り下げも認められる可能性があるので裁判所に諸事情を記載した書面を提出して交渉してみる必要があります。取り下げ禁止は、あくまで被後見人保護のためにあるので絶対に認められないというものではないからです。
※家事事件手続法
第121条(申立ての取下げの制限)次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。一号 後見開始の申立て
(4)制限行為能力者制度まとめ
以上の制限行為能力者制度が定められていますが、いずれも申立には原則として高齢者本人の同意あるいは医師の診断書が必要とされています。しかし、高齢者の財産を不当に奪おうとする親族は高齢者と同居し他の親族が高齢者本人に連絡を取ることを拒否するのが普通で、高齢者の同意や、高齢者を医師に診察させることには困難が伴います。同居していない親族の方がこれら制度を活用される場合は、代理人弁護士に申立代理人や、相手方との交渉を依頼されると良いでしょう。家庭裁判所に申立が受理され、鑑定人を高齢者自宅まで派遣するという連絡をしているにも関わらず、どうしても同居親族が鑑定人の面会を拒否するような事例では、高齢者虐待が疑われる事態に至っている危険もありますので、次の高齢者虐待防止法の措置の検討が必要になります。
なお、同居の親族が高齢者の財産を勝手に使っているような場合、同居の親族は後見制度等については反対し、その為家庭裁判所の鑑定人による鑑定ができないような場合は、仮に同制度の申し立てをしても審判決定までに時間がかかってしまい、審判が決定するまでに高齢者の財産が失われていしまうことも考えられます。そのように制限行為能力者制度の申し立て、その旨の審判が決定するまでの間に経済的な損害が生じるという緊急性がある場合は、申立の際に家庭裁判所に財産の管理人の選任を申し立てることもできます。家庭裁判所はそのような緊急性がある場合は後見等の制度が開始するまでの間の財産の管理人を選任したり、あるいは関係者等に対して財産の管理について一定の指示をすることができます(家事事件手続き法規則23条)
ですから、早急に高齢者の保護が必要という場合は、その点についても家庭裁判所を納得させるだけの資料を集めて後見人等の申立をし、その際に、審判決定までの間の財産の管理人を求め、その後、審判手続きが開始しても同居の親族が鑑定に反対する場合は後述の高齢者虐待防止法による措置を取ることが必要になります。
2、高齢者虐待防止法の措置
近年、本邦の高齢化社会の進展に伴って、高齢者虐待の問題がクローズアップされてきました。食生活や医療の進歩により平均寿命が延びる一方で、少子高齢化社会の進展により、多数の若年者により少数の高齢者を介護するという従来の生活スタイルが維持できなくなってきたことも原因と考えられますが、個人の尊厳を重視する現行憲法の趣旨を実現するために、病気や認知症になったとしても、虐待とは無縁の、人間らしい生活が維持できるように、環境整備に努力することが必要となってきました。そこで、高齢者虐待防止法が制定され、国民や、市区町村などの責務が規定され、高齢者の虐待を防止するための諸施策が試みられることになったのです。高齢者虐待防止法の目的規定を引用致します。
高齢者虐待防止法第1条(目的)
この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
高齢者虐待防止法2条3項で、次のような行為が高齢者虐待と定義されています。高齢者に対する物理的な暴力行為だけでなく、高齢者の財産を不当に処分することも虐待に含まれています。
一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
認知症高齢者の財産が不当に奪われるようなケースは、高齢者虐待防止法2条3項2号の経済的虐待と評価されることもあります。高齢者虐待にあたるようなケースであれば、市役所の高齢者福祉課に相談して、高齢者虐待防止法に基づいて、精神保健福祉法33条による医療保護入院の措置や、老人福祉法10条による「やむを得ない措置」として老人福祉施設への入所手続を取ってもらうことが出来る場合もあります。強制的な措置が実行された場合は、現に同居する親族との同居が解消されますので、これ以上の財産的損害は予防することができるでしょう。
医療保護入院は、精神保健福祉法33条の規定により本人の同意がなくても保護者の同意により精神科病院に入院させることができる手続です。高齢者虐待が行われている場合は、同居の親族が保護者となることはできませんから、市区町村の長が代わりに保護者として、医療保護入院の同意を行うことになります(精神保健福祉法21条)。
医療保護入院の端緒のひとつに、高齢者虐待防止法6条の市区町村に対する相談があります。通常、各市区町村役場の、高齢者福祉課において、この相談を受け付けることが多いようです。
※高齢者虐待防止法
第6条(相談、指導及び助言)市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及び養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護のため、高齢者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとする。
※参考URL(東京都の高齢者虐待防止サイト)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/zaishien/gyakutai/
老人福祉法10条の4、及び11条による「やむを得ない事由による措置」とは、高齢者が同居している親族などから虐待を受けていて、かつ、自分自身では老人福祉施設への緊急避難の手続きをとることができない場合に、市区町村長の判断と権限により、介護サービスや、短期入所施設への入所や、特別養護老人ホームへの入所を手続する措置です。
※参考条文=老人福祉法11条1項2号
第十一条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。
二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。
本人が契約することができず、親族の協力が得られなくても、市町村長の権限で、これら施設への入所契約を締結したり委託したりすることができるというわけです。お困りの場合は、市区町村への虐待防止措置の相談に際して、弁護士の意見書を持参したり、弁護士が同行する手段が考えられます。
3、内容証明通知書による警告文送付
以上の説明のとおり高齢者の財産を守るためには、家庭裁判所に制限能力者制度の申し立てを行ったり、高齢者虐待防止法の措置をとることが法律上の制度として考えられます。しかし、いずれにしろ申し立てには時間がかかり、その間に不当に高齢者の財産が奪われてしまう危険があることから、それを防止しておく必要があります。そのためには、他の親族から警告文を送付することが有効な場合があります。
お兄様が、お母様の預貯金を引き出して、その引き出した金銭を受領している場合、お兄様からは(1)引き出したお金はもらったお金である、あるいは(2)生活費として支払われたものである、あるいは(3)借りたお金である、など引き出し行為を正当化する理由が反論として主張されることが考えられます。借りたお金であるということであれば、借用書等を作成しておけば後日返済されますが、(1)、(2)とすると返還の必要はありません。そこで、「高齢者には判断能力がなく、すぐに制限行為能力者制度の申し立てをする」ということで、理由のいかんを問わず高齢者名義の預金口座から引き出すことは止めるよう警告しておく必要があります。
なお、借りたお金、あるいは理由がなく引き出されたお金であるということであれば借用証が有っても無くても、お母様の預金口座から現金が引き出され、その金額が、同じ日に、お兄様やお兄様の奥様の口座に入金されていれば、お母様から、お兄様ないし奥様に対し、貸金返還請求権ないし不当利得返還請求権が発生していることになります。この債権は、お母様の財産ですので、後日お母様が亡くなってしまった場合でも、相続人がその債権を相続することになります。貴方とお兄様が二人兄妹であったとしても、法定相続分として、半分を貴方が相続することになりますので、お母様の死亡後に、不当に処分された財産の半額について、貴方はお兄様に対して返還請求訴訟を提起することができますので、場合によってはその旨記載しておいても良いでしょう。
警告書は、代理人弁護士が作成した内容証明郵便の形式で送付することが望ましいでしょう。警告書には、悪質な財産処分が判明した場合は、例外的措置として、やむを得ず刑事告発することもあります、と付記しておくと良いでしょう。高齢の御両親の財産保全問題でお困りの場合は、お近くの法律事務所に御相談なさると良いでしょう。
※参考条文
家事事件手続法
第六十四条(証拠調べ)
家事審判の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節
から第六節 までの規定(同法第百七十九条 、第百八十二条、第百八十七条から第百八十九条まで、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条(同法第二百二十九条第二項
及び第二百三十二条第一項 において準用する場合を含む。)及び第二百二十九条第四項の規定を除く。)を準用する。
2 前項において準用する民事訴訟法 の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。
3 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、二十万円以下の過料に処する。
一 第一項において準用する民事訴訟法第二百二十三条第一項
(同法第二百三十一条 において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第一項において準用する同法第二百三十二条第一項
において準用する同法第二百二十三条第一項
の規定による提示の命令に従わないとき。
二 書証を妨げる目的で第一項において準用する民事訴訟法第二百二十条
(同法第二百三十一条 において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第二百三十一条
に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
4 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由なく第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第二項
(同法第二百三十一条 において準用する場合を含む。)において準用する同法第二百二十三条第一項
の規定による提出の命令に従わないとき。
二 対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
三 第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第三項
(同法第二百三十一条 において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。
5 家庭裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、家事審判の手続の期日に出頭することを命ずることができる。
6 民事訴訟法第百九十二条 から第百九十四条
までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第二百九条第一項
及び第二項 の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓又は陳述を拒んだ場合について準用する。
※民法
(後見開始の審判)
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第八条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年被後見人の法律行為)
第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
(保佐開始の審判)
第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(被保佐人及び保佐人)
第十二条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項
に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(補助開始の審判)
第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
(被補助人及び補助人)
第十六条 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
※高齢者虐待防止法
(定義等)
第二条 この法律において「高齢者」とは、六十五歳以上の者をいう。
2 この法律において「養護者」とは、高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等(第五項第一号の施設の業務に従事する者及び同項第二号の事業において業務に従事する者をいう。以下同じ。)以外のものをいう。
3 この法律において「高齢者虐待」とは、養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。
4 この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
5 この法律において「養介護施設従事者等による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三
に規定する老人福祉施設若しくは同法第二十九条第一項
に規定する有料老人ホーム又は介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第八条第二十一項
に規定する地域密着型介護老人福祉施設、同条第二十六項
に規定する介護老人福祉施設、同条第二十七項
に規定する介護老人保健施設若しくは同法第百十五条の四十六第一項
に規定する地域包括支援センター(以下「養介護施設」という。)の業務に従事する者が、当該養介護施設に入所し、その他当該養介護施設を利用する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
ホ 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
二 老人福祉法第五条の二第一項 に規定する老人居宅生活支援事業又は介護保険法第八条第一項
に規定する居宅サービス事業、同条第十四項
に規定する地域密着型サービス事業、同条第二十三項
に規定する居宅介護支援事業、同法第八条の二第一項
に規定する介護予防サービス事業、同条第十四項
に規定する地域密着型介護予防サービス事業若しくは同条第十八項
に規定する介護予防支援事業(以下「養介護事業」という。)において業務に従事する者が、当該養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者について行う前号イからホまでに掲げる行為
6 六十五歳未満の者であって養介護施設に入所し、その他養介護施設を利用し、又は養介護事業に係るサービスの提供を受ける障害者(障害者基本法
(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号
に規定する障害者をいう。)については、高齢者とみなして、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関する規定を適用する。
(国及び地方公共団体の責務等)
第三条 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに養護者に対する支援が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護に資するため、高齢者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
(国民の責務)
第四条 国民は、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければならない。
(高齢者虐待の早期発見等)
第五条 養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等、医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めなければならない。
2 前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止のための啓発活動及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。
(相談、指導及び助言)
第六条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及び養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護のため、高齢者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとする。
(養護者による高齢者虐待に係る通報等)
第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。
3 刑法 (明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。
第八条 市町村が前条第一項若しくは第二項の規定による通報又は次条第一項に規定する届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。
(通報等を受けた場合の措置)
第九条 市町村は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は高齢者からの養護者による高齢者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該高齢者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、第十六条の規定により当該市町村と連携協力する者(以下「高齢者虐待対応協力者」という。)とその対応について協議を行うものとする。
2 市町村又は市町村長は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は前項に規定する届出があった場合には、当該通報又は届出に係る高齢者に対する養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護が図られるよう、養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法第二十条の三
に規定する老人短期入所施設等に入所させる等、適切に、同法第十条の四第一項
若しくは第十一条第一項 の規定による措置を講じ、又は、適切に、同法第三十二条
の規定により審判の請求をするものとする。
(居室の確保)
第十条 市町村は、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十条の四第一項第三号
又は第十一条第一項第一号 若しくは第二号 の規定による措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとする。
(立入調査)
第十一条 市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の四十六第二項
の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
2 前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(警察署長に対する援助要請等)
第十二条 市町村長は、前条第一項の規定による立入り及び調査又は質問をさせようとする場合において、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、当該高齢者の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができる。
2 市町村長は、高齢者の生命又は身体の安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適切に、前項の規定により警察署長に対し援助を求めなければならない。
3 警察署長は、第一項の規定による援助の求めを受けた場合において、高齢者の生命又は身体の安全を確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、同項の職務の執行を援助するために必要な警察官職務執行法
(昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならない。
(面会の制限)
第十三条 養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十一条第一項第二号
又は第三号 の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る養介護施設の長は、養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護の観点から、当該養護者による高齢者虐待を行った養護者について当該高齢者との面会を制限することができる。
※精神保健福祉法
(医療保護入院)
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二 第三十四条第一項の規定により移送された者
(任意入院)
第二十二条の三 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
(保護者)
第二十条 精神障害者については、その後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は保護者とならない。
一 行方の知れない者
二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四 破産者
五 成年被後見人又は被保佐人
六 未成年者
2 保護者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、次のとおりとする。ただし、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人又は保佐人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。
一 後見人又は保佐人
二 配偶者
三 親権を行う者
四 前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者
第二十一条 前条第二項各号の保護者がないとき又はこれらの保護者がその義務を行うことができないときはその精神障害者の居住地を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)、居住地がないか又は明らかでないときはその精神障害者の現在地を管轄する市町村長が保護者となる。
※老人福祉法
(居宅における介護等)
第十条の四 市町村は、必要に応じて、次の措置を採ることができる。
一 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(厚生労働省令で定める部分に限る。第二十条の八第四項において同じ。)、夜間対応型訪問介護又は介護予防訪問介護を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者につき、政令で定める基準に従い、その者の居宅において第五条の二第二項の厚生労働省令で定める便宜を供与し、又は当該市町村以外の者に当該便宜を供与することを委託すること。
二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する通所介護、認知症対応型通所介護、介護予防通所介護又は介護予防認知症対応型通所介護を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者(養護者を含む。)を、政令で定める基準に従い、当該市町村の設置する老人デイサービスセンター若しくは第五条の二第三項の厚生労働省令で定める施設(以下「老人デイサービスセンター等」という。)に通わせ、同項の厚生労働省令で定める便宜を供与し、又は当該市町村以外の者の設置する老人デイサービスセンター等に通わせ、当該便宜を供与することを委託すること。
三 六十五歳以上の者であつて、養護者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難となつたものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する短期入所生活介護又は介護予防短期入所生活介護を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者を、政令で定める基準に従い、当該市町村の設置する老人短期入所施設若しくは第五条の二第四項の厚生労働省令で定める施設(以下「老人短期入所施設等」という。)に短期間入所させ、養護を行い、又は当該市町村以外の者の設置する老人短期入所施設等に短期間入所させ、養護することを委託すること。
四 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する小規模多機能型居宅介護又は介護予防小規模多機能型居宅介護を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者につき、政令で定める基準に従い、その者の居宅において、又は第五条の二第五項の厚生労働省令で定めるサービスの拠点に通わせ、若しくは短期間宿泊させ、当該拠点において、同項の厚生労働省令で定める便宜及び機能訓練を供与し、又は当該市町村以外の者に当該便宜及び機能訓練を供与することを委託すること。
五 六十五歳以上の者であつて、認知症(介護保険法第五条の二
に規定する認知症をいう。以下同じ。)であるために日常生活を営むのに支障があるもの(その者の認知症の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く。)が、やむを得ない事由により同法
に規定する認知症対応型共同生活介護又は介護予防認知症対応型共同生活介護を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者につき、政令で定める基準に従い、第五条の二第六項に規定する住居において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の援助を行い、又は当該市町村以外の者に当該住居において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の援助を行うことを委託すること。
六 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する複合型サービス(訪問介護等(定期巡回・随時対応型訪問介護看護にあつては、厚生労働省令で定める部分に限る。)に係る部分に限る。第二十条の八第四項において同じ。)を利用することが著しく困難であると認めるときは、その者につき、政令で定める基準に従い、第五条の二第七項の厚生労働省令で定めるサービスを供与し、又は当該市町村以外の者に当該サービスを供与することを委託すること。
2 市町村は、六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものにつき、前項各号の措置を採るほか、その福祉を図るため、必要に応じて、日常生活上の便宜を図るための用具であつて厚生労働大臣が定めるものを給付し、若しくは貸与し、又は当該市町村以外の者にこれを給付し、若しくは貸与することを委託する措置を採ることができる。
(老人ホームへの入所等)
第十一条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。
一 六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人ホームに入所を委託すること。
二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法
に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。