新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1510、2014/05/03 00:00 https://www.shinginza.com/idoushin.htm
【行政処分,道路運送車両法違反(車検切れ),自動車損害賠償保障法違反(無保険の自動車運転),自動車運転過失傷害罪を犯した場合の医道審議会弁護,対策,最高裁判所昭和63年7月1日判決】
医師が車検切れで交通事故を起こしてしまった場合
質問:私は,50歳の医師です。私の勤務地は交通の便が悪く,車で出勤することが必要不可欠で,この日も,自動車を運転していました。時間がなくて急いでいたこともあり,左右を確認しないで車を発車させたところ,歩行者とぶつかり,怪我をさせてしまいました。その場で警察を呼んだのですが,その際に私の車の車検が切れていること,併せて自賠責保険の有効期限が切れていることが発覚しました。私は,その場で逮捕され自動車運転過失傷害,自動車損害賠償保障法,道路運送車両法違反で起訴され,懲役1年6月,執行猶予4年の判決が下されました。半年たった現在,厚生労働省から医師免許に対する行政処分についての通知がきました。業務停止が長くなってしまうと大変困るのですが,私の行政処分はどの程度になるのでしょうか,また,少しでも有利な行政処分となるためすべきことを教えて下さい。
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回答:
1 あなたは,自動車運転過失傷害,自動車損害賠償保障法,道路運送車両法違反で起訴され,懲役1年6月,執行猶予4年の有罪判決を受けているところ,厚生労働省の処分指針によれば,司法処分の量刑を参考にして医師資格の行政処分が決まることが通例となっています。
医道審議会におけるこれまでの処分例と比較した場合,量刑が比較的重いことからすると,このままでは比較的長期間の医業停止処分が見込まれ,このまま何もしないで医道審議会の処分を待っている場合には,6月程度以上の業務停止もあり得るところです。
2 もっとも,医道審議会の弁明聴取において,自己に有利な様々な事情を主張することにより処分を軽減することが可能です。
例えば,@自動車運転過失傷害においては,被害者と適切な示談交渉を行い、被害者の医道審議会における一切の行政処分を求めない旨の上申を得ること,A自動車損害賠償保障法,道路運送車両法違反においても,贖罪寄付,多数の者の嘆願書の取得,運転免許の自主返納,真摯な反省の態度を示すことなどが有利な事情として挙げられます。
さらに,弁明聴取期日において,厚生労働省の指針に照らし,「救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案」といえないこと,「医師,歯科医師としての業務と直接の関連性はなく,その品位を損する程度も低いこと」を,適切に主張することができれば,比較的短期の医業停止処分(1月程度)や戒告処分に留めることも十分可能であると考えられます。
3 もっとも,被害者との示談については医道審議会を視野に入れた交渉が必要となりますし,その他有利な事情の収集活動,また,医道審議会の弁明聴取に向けた意見書の作成については,専門の弁護士の助言が必要不可欠になると思われますので,一度,そのような弁護士へ相談されることをお勧めいたします。
4 交通事故を犯した場合の医道審議会弁護に関する事例集としては,1489番,医道審議会の事例集としては,その他1485番,1411番,1343番,1325番,1303番,1268番,1241番,1144番,1085番,1102番,1079番,1042番,1034番,869番,735番,653番,551番,313番,266番,246番,211番,48番参照。
解説:
第1 本件で想定される行政処分の概要
1 医道審議会による行政処分
現在,厚生労働省から医師資格に関する行政処分の通知が来ているとのことですので,想定される行政処分の内容について説明します。
医師が刑事事件を犯し,有罪判決となった場合,検察庁から厚生労働省に対して連絡がなされます。厚生労働省は,検察庁からの連絡を受けて,当該医師に対し医師法7条2項に基づき医師資格に対する行政処分を行うこととなります。行政処分に先立ち,厚生労働省から委託を受けた都道府県庁において,弁明聴取期日が設けられます。弁明聴取に置いては,あなたが主張したい言い分について主張立証することができます。
行政処分の内容としては,戒告処分,3年以内の医業停止,免許取消となります。また,厚生労働省が行政処分の必要性まではないと判断した事案については,行政指導(不処分)とすることもあります。ただし,行政指導はあくまで例外的な措置です。
2 道路運送車両法,自動車損害賠償保障法,自動車運転過失傷害罪について
では,本件では,どのような行政処分となる可能性が高いのでしょうか。その前提として,刑事裁判において問題となった犯罪事実について検討する必要があります。本件では刑事罰として,道路運送車両法違反,自動車損害賠償保障法違反,自動車運転過失傷害罪の3点が罪に問われているところです。
なお,自動車運転過失傷害罪を犯した場合の医道審議会弁護については,No1489の事例集について詳しく説明していますので,ここでは道路運送車両法違反,自動車損害賠償保障法違反の2点(車検切れ,無保険車運転)について主にみていきます。
(1)道路運送車両法違反(車検切れ)
自動車を運転する場合には,道路運送車両法上の自動車検査証(車検)の交付を受けなければなりません(法58条)。自動車検査証には,有効期間というものが定められており,更新をせずに放置すると車検は失効してしまいます。
車検切れの自動車を運転した場合には,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処せられることとなります(法58条1項,108条1号)。
自動車検査証(車検)は,@検査をすることによって自動車が安全性を有しているかを判断すること,A公害防止面の基準を満たしているかどうかを判断するための制度であり,全ての自動車に車検を通すことによって,危険な自動車を走行させないこと,ひいては,国民の安全を守ることを目的としています。
(2)自動車損害賠償保障法違反(無保険車運転)
自動車を運転する際には,法律上,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入することが義務付けられています(法5条)。通常は,自動車検査証の交付を受ける際に,同時に自賠責保険の加入契約をすることが多く,また車検更新の際に同様に保険も更新することが多いでしょう。
自動車は,人の生命身体に重大な危険を与えることの多い危険なものですから,事故が生じてしまった場合には,被害者の十分な救済が必要不可欠になります。自動車損害賠償法は,運転者に自賠責保険の加入を義務付けることによって,損害賠償を保障する制度を確立し,全ての被害者の保護を図ること,自動車運送の健全な発達に資することを目的としています(法1条)。無保険車の運転に対して,強い社会的非難がなされるのはそのためです。
無保険状態で自動車を運転した場合には,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることとなります(法86条の3)。
(3)自動車運転過失傷害(人身事故)
さらに,本件では自動車の運転に起因して人身事故を起こし,被害者に傷害結果を負わせていますので,刑法上の自動車運転過失傷害罪にも該当することとなります(刑法211条2項)。これらの罪は,併合罪となり法定刑が1.5倍に加重されます(刑法45条,刑法47条)。
(4)自動車検査証の更新については,更新手続について失念することも多く,特に手続の更新通知について,自動車を購入したディーラーからの連絡に任せていると,いつの間にか車検切れ,無保険の自動車を運転してしまうという事態になることが多々あります。
もっとも,上記の自動車の安全確保による国民の安全を守る,人身事故に遭ってしまった被害者を保護するという法の趣旨を考え合わせると,車検切れ,無保険の状態で自動車を運転していたという事実自体は,裁判所,国民から極めて悪質なものと評価されることも多いといえます。また,これらの罪は併合罪ですので,刑事裁判においては自分が想定していた以上に量刑が重くなってしまうことがあります。
本件も,行為態様が悪質であったものと評価され,略式罰金ではなく正式裁判になり,しかも比較的重い量刑が下されてしまったものと考えられます。
なお,自動車損害賠償保障法違反,道路運送車両法違反は故意犯であり,過失でこれを行った場合は無罪となります。既に刑事裁判では有罪判決が確定しているので,車検切れ、無保険という事実を認識して自動車の運転をしたという事実認定のもと刑事裁判が行われたことになります。もし事実関係が異なる(車検切れについて知らないで運転した)ということを主張したいのであれば,医道審議会における弁明聴取期日における対応を検討しておく必要があります。この点は,第2・1以下において述べます。
3 本件で想定される行政処分の内容
では,本件において想定される行政処分の内容について,現状を説明します。
(1)医道審議会における行政処分の指針としては,医道審議会医道分科会が定めた平成14年12月13日付(平成24年3月4日改正)の「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」の(基本的考え方)が極めて重要です。基本的には当該指針にしたがって行政処分が決められることとなります。
交通事故について,「自動車等による業務上過失致死(傷害)等については,医師,歯科医師に限らず不慮に犯し得る行為であり,また,医師,歯科医師としての業務と直接の関連性はなく,その品位を損する程度も低いことから,基本的には戒告等の取扱とする」とされています。
「ただし,救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については,行政処分の対象とし,行政処分の程度は,基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが,人の命や身体の安全を守るべき立場にある医師,歯科医師としての倫理が欠けていると判断される場合には,重めの処分とする。」ともされています。
(2)以上をまとめると,基本的には交通事故事案においては,医師としての業務との関連性が低いものについては,基本的にさほど重い処分はなされず,戒告,比較的短期間の業務停止処分が選択されることが多いでしょう。
ただし,比較的軽い処分が選択されるのは,司法処分(刑事裁判)の内容が軽微なものであって,罰金刑にとどまった事案がほとんどを占めています。比較的長期間の懲役刑となった事案においては,医道審議会においてもそのまま悪質な事案とみなされ,比較的長期の業務停止処分が選択されることが多くなってきます。
実際の処分例でも,他の道路交通法違反と自動車運転過失傷害が組み合わさった事案で,懲役刑が選択された事案では3月以上の比較的長期の業務停止となることが多く,長いものでは1年程度の業務停止処分が選択された事例もあります。例えば,救護義務を怠り道路交通法違反も併せて起訴され懲役1年4月(執行猶予)となった事案では,以下のとおり医業停止6月という重い処分が選択されています。
<例> 平成17年2月3日医道審議会処分例
〇 罪名 自動車運転過失傷害,道路交通法違反
〇 量刑 懲役1年4月,執行猶予4年
〇 事案
1 平成15年6月28日午前4時10分ころ、業務として普通乗用自動車を運転し、長野市内の信号機により交通整理が行われている交差点を直進するに当たり、同交差点の対面信号機の信号表示に留意し、これに従って進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、考え事をしていて、同信号が赤色信号を表示しているのを看過し、漫然時速約40キロメートルで進行した過失により、同交差点入り口の停止線位置の手前約8キロメートルに迫ってようやく同信号表示に気付いたが、同速度のまま同交差点に進入し、折から、左方道路から青色信号表示に従って右折進行してきたA(当時39歳)運転の普通乗用自動車を左斜め前方約8.3メートルの地点に認め、急ブレーキをかけたが間に合わず、同車右前部に自車右前部を衝突させ、よって、同人に全治約3週間を要する右胸部挫傷、右手挫傷、頸椎捻挫の傷害を負わせ、
2 前記日時・場所において、前記のとおり、Aに傷害を負わせる交通事故を起こしたのに、直ちに車両の運転を停止して、同人を救護する等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に通報しなかった
〇 処分 医業停止6月
本件は,刑事裁判に置いて懲役1年6月,執行猶予4年という比較的重い量刑が下されていることもあり,比較的長期間の医業停止処分が見込まれる可能性が高いといえます。
もっとも,司法処分の重さのみで医道審議会の行政処分内容が全て決まるという関係にはありません。
最高裁判所昭和63年7月1日判決によれば,「当該刑事罰の対象となった行為の種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響のほか、当該医師の性格、処分歴、反省の程度等、諸般の事情を考慮し、同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべき」とされており,医道審議会の弁明聴取期日において,自己に有利な様々な事実を積極的に主張立証することが必要不可欠になります。
各都道府県庁において行われる弁明聴取において,これまでの医道審議会の処分例,特に救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案と比較して,違法性,責任の程度は極めて低いものであり,医師としての倫理に欠ける事情がないことを納得してもらえれば,業務停止期間を短期のものに変更させることは十分に可能といえますし,さらには,戒告等のより軽い処分も視野に入れることが可能です。
第2 医道審議会に向けた具体的な活動について
以上を踏まえ,医道審議会に向けて行うべき具体的な活動を検討してきます。
1 道路運送車両法,自動車損害賠償保障法違反について(車検切れ,無保険車運転)
(1)有利な情状の収集活動
上記判例が示すとおり,医道審議会の処分選択に置いては,反省の態度など諸般の事情を考慮するものとされていますので,自己に有利な情状を可能な限り提出し,医道審議会において主張すべきです。刑事裁判後における証拠であっても,医道審議会に提出することは当然可能です。
同罪において主張すべき有利な情状としては,例えば以下のような事情が一例として挙げられます。
ア 自動車運転免許の自主返納
無効な車検証,自賠責保険未加入の自動車を運転することによって,国民の生命身体に対して危険を与えかねない行為をしてしまったのですから,免許を自主返納することによって,二度と自動車を運転しないことを誓約し,再犯を犯さないこと,強い反省の意思を示すことが可能です。
イ 贖罪寄付
直接の被害者のいない本件のような犯罪では,贖罪寄付が有効といえます。贖罪寄付によって,本件についての改悛の情を具体的に示すことが可能です。日弁連交通事故センターなどでは,交通事故による被害者のための支援などに使用する専用の贖罪寄付申込みが可能です。
ウ 嘆願書の取得
周囲の者が二度と再犯を犯さないように,あなたを監督できる体制が整っていることを示せることが重要になります。
さらに,病院の同僚,上司,従業員,患者,家族等から,医道審議会において一切の行政処分をしないように強く希望する旨の嘆願書を書いてもらい,医道審議会に多数提出することも,有利な事情となります。
エ 本人の反省の態度,医師としての適格性を示す事情
また,医道審議会の処分選択には,医師としての適格性等も考慮事情となります。嘆願書において,あなたの医師としてのこれまでの経歴,実際の職務内容,医師としての必要性といった内容が,他者の客観的な意見として記載されていることが望ましいでしょう。
さらに,本件において行ってしまった動機,反省の意思を示したい場合には,処分対象者である本人が医道審議会に向けて反省文などを作成し,改悛の意思が強いことを述べることも有効です。
(2)車検切れ等の故意がなかったことを主張したい場合
上で述べた通り,道路運送車両法,自動車損害賠償保障法違反は故意犯であり,過失(不注意)によって犯したといえる場合には,同罪が成立することはありません。しかし、既に刑事事件で上記の法律違反があったと認定されているので、刑事事件とは別に犯罪の不成立について主張できるか検討が必要です。
ア 医道審議会において,刑事裁判で認められなかったが、本当は無罪であると主張をすることは可能です。医師資格に関する行政処分と刑事処分とは,証拠の採用手続からその判断の目的が異なり,行政手続においては,処分対象者がたとえ刑事手続で有罪になったとしても,刑事手続とは異なり自由に証拠の提出,採用ができる構造が採用されているためです。
もっとも,既に刑事裁判で有罪判決が確定している以上,その立証は容易ではありません。少なくとも,刑事裁判の記録を取得,精査し,有罪判決が出てしまった原因を探求し,無実を主張できるような有力な間接的事実を多数提出する必要があるでしょう。この点は,個別の具体的事案の内容によるといえます。これまでディーラーに車検関係の更新をすべて任せ,更新時期には必ず連絡が来ていたのに,やむをえない住所変更などで,これまで来ていた連絡が更新期間まで一切こなかったことは,こちらに有利な事実として主張できる可能性があります。もちろん,それ以外にも様々な事情,間接的な事実を主張することが望ましいといえます。
イ また,捜査機関や公判廷で虚偽の供述をしてしまったような場合には,なぜそのような供述をしてしまったのかといった理由を探求する必要があります。
その上で,取調べ・捜査の経緯について刑事記録を詳細に検討の上,当時の自白調書に信用性が全くないことを主張する必要があるでしょう。この点につき医道審議会に説得的な主張を行い,それが認められるためには,専門的な弁護士と相談の上,綿密な準備活動が必要不可欠となります。
2 自動車運転過失傷害について有利な情状の収集活動
(1)被害者との示談活動
自動車運転過失傷害罪は,被害者のいる犯罪ですから,医道審議会に向けた示談活動は必須といえます。
被害弁償にかかる示談活動については,通常の交通事故であれば保険会社が代行して行っていることが多いですが,保険会社の示談書は金銭面についてしか記載されておらず,被害者の宥恕(加害者を許し,法的責任を追及しない意思)などといった記載はありません。
医道審議会における処分については被害者の処罰感情が極めて重要になります。医道審議会に提出できるような書類を保険会社は作成することはありませんので,専門の弁護士に依頼し示談交渉を行い,可能であれば医道審議会における行政処分を一切希望しないといった示談書,上申書を作成してもらうべきでしょう。このような書面の作成のためには保険会社が支払った示談金だけでなく別途示談金を用意する必要があります。
(2)被害者にも一定の落ち度がないか
交通事故においては,被害者にも一定の落ち度があることが通常です。この点を強調することは,被害者との示談の関係で望ましくない場合もありますが,刑事事件における捜査段階や裁判の場合とことなり、被害者が医道審審議会における医師の主張を確認するということはありませんので、被害者に大きな過失があるような場合にはこれを主張することも必要でしょう。
この点についても,上記と同様に刑事記録を取り寄せ,実況見分調書を詳細に検討する必要があると思われます。
3 医道審議会意見書の作成,弁明聴取期日における主張
以上の有利な情状を収集した上で,医道審議会の弁明聴取期日に先立ち,詳細な意見書を作成,提出すべきです。意見書の内容については,上記有利な事実を記載することはもちろん,これまでの医道審議会の処分例との詳細な比較を行った上で,厚生労働省「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」に従ったとしても,医師としての品位を害する程度が極めて低いことを主張していく必要があります。意見書の作成,医道審議会における主張については,医道審議会の手続について造詣の深い弁護士に依頼する等する必要があるでしょう。
4 終わりに
本件において医道審議会に向けて必要な主張立証活動は以上のとおりです。何もしない場合には,比較的長期の医業停止処分(6月程度以上)も見込まれるところですが,十分な主張立証活動を行えば,医業停止期間の短縮,さらには医業停止を伴わない戒告処分も獲得することが可能です。
もっとも,上記のとおり医道審議会についての専門的な知識も必要なところですので,まずは,経験のある弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。
<参照条文>
道路運送車両法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進することを目的とする。
(自動車の検査及び自動車検査証)
第五十八条 自動車(国土交通省令で定める軽自動車(以下「検査対象外軽自動車」という。)及び小型特殊自動車を除く。以下この章において同じ。)は、この章に定めるところにより、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
2 自動車検査証に記載すべき事項は、国土交通省令で定める。
(自動車検査証の有効期間)
第六十一条 自動車検査証の有効期間は、旅客を運送する自動車運送事業の用に供する自動車、貨物の運送の用に供する自動車及び国土交通省令で定める自家用自動車であつて、検査対象軽自動車以外のものにあつては一年、その他の自動車にあつては二年とする。
2 次の各号に掲げる自動車について、初めて前条第一項又は第七十一条第四項の規定により自動車検査証を交付する場合においては、前項の規定にかかわらず、当該自動車検査証の有効期間は、それぞれ当該各号に掲げる期間とする。
一 前項の規定により自動車検査証の有効期間を一年とされる自動車のうち車両総重量八トン未満の貨物の運送の用に供する自動車及び国土交通省令で定める自家用自動車であるもの 二年
二 前項の規定により自動車検査証の有効期間を二年とされる自動車のうち自家用乗用自動車(人の運送の用に供する自家用自動車であつて、国土交通省令で定めるものを除く。)及び二輪の小型自動車であるもの 三年
3 国土交通大臣は、前条第一項、第六十二条第二項(第六十三条第三項及び第六十七条第四項において準用する場合を含む。)又は第七十一条第四項の規定により自動車検査証を交付し、又は返付する場合において、当該自動車が第一項又は前項の有効期間を経過しない前に保安基準に適合しなくなるおそれがあると認めるときは、第一項又は前項の有効期間を短縮することができる。
4 第七十条の規定により自動車検査証の再交付をする場合にあつては、新たに交付する自動車検査証の有効期間は、従前の自動車検査証の有効期間の残存期間とする。
第百八条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第四条、第十一条第四項、第二十条第一項若しくは第二項、第三十五条第六項、第三十六条、第三十六条の二第六項(第七十三条第二項において準用する場合を含む。)、第三十六条の二第八項(第七十三条第二項において準用する場合を含む。)、第五十四条の二第七項、第五十八条第一項、第六十九条第二項又は第九十九条の二の規定に違反した者
二 第五十四条第二項又は第五十四条の二第六項の規定による処分に違反した者
三 第五十四条の三第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
自動車損害賠償保障法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
(責任保険又は責任共済の契約の締結強制)
第五条 自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
(責任保険及び責任共済の契約)
第十一条 責任保険の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。
2 責任共済の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を組合がてん補することを約し、共済契約者が組合に共済掛金を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。
第八十六条の三 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第五条の規定に違反した者
二 第二十三条の九第一項の規定に違反して、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は自己の利益のために使用した者
三 第八十四条の二第二項又は第三項の規定に違反した者
医師法
医師法
第1条 医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
第7条 医師が、第3条に該当するときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2 医師が第4条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 3年以内の医業の停止
三 免許の取消し
3 前2項の規定による取消処分を受けた者(第4条第3号若しくは第4号に該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつた者として前項の規定による取消処分を受けた者にあつては、その処分の日から起算して5年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第6条第1項及び第2項の規定を準用する。
4 厚生労働大臣は、前3項に規定する処分をなすに当つては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。
5 厚生労働大臣は、第1項又は第2項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、当該意見の聴取をもつて、厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。
6 行政手続法(平成5年法律第88号)第3章第2節(第25条、第26条及び第28条を除く。)の規定は、都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同節中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と、同法第15条第1項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同条第3項(同法第22条第3項において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と、「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と、「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と、同法第16条第4項並びに第18条第1項及び第3項中「行政庁」とあるのは、「都道府県知事」と、同法第19条第1項中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは、都道府県知事が指名する職員」と、同法第20条第1項、第2項及び第4項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と、同条第6項、同法第24条第3項及び第27条第1項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
7 厚生労働大臣は、都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やかにそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。
8 都道府県知事は、第5項の規定により意見の聴取を行う場合において、第6項において読み替えて準用する行政手続法第24条第3項の規定により同条第1項の調書及び同条第3項の報告書の提出を受けたときは、これらを保有するとともに、当該調書及び報告書の写しを厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該写しのほか当該意見を記載した意見書を提出しなければならない。
9 厚生労働大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、前項前段の規定により提出された調書及び報告書の写し並びに同項後段の規定により提出された意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる。行政手続法第22条第2項本文及び第3項の規定は、この場合について準用する。
10 厚生労働大臣は、当該処分の決定をするときは、第8項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなければならない。
11 厚生労働大臣は、第2項の規定による医業の停止の命令をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、当該弁明の聴取をもつて、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。
12 前項の規定により弁明の聴取を行う場合において、都道府県知事は、弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 第2項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
二 当該処分の原因となる事実
三 弁明の聴取の日時及び場所
13 厚生労働大臣は、第11項に規定する場合のほか、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて、医道審議会の委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては、前項中「前項」とあるのは「次項」と、都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて、同項の規定を適用する。
14 第12項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は、代理人を出頭させ、かつ、証拠書類又は証拠物を提出することができる。
15 都道府県知事又は医道審議会の委員は、第11項又は第13項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載しなければならない。
16 厚生労働大臣は、第5項又は第11項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては、都道府県知事に対し、あらかじめ、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 当該処分に係る者の氏名及び住所
二 当該処分の内容及び根拠となる条項
三 当該処分の原因となる事実
17 第5項の規定により意見の聴取を行う場合における第6項において読み替えて準用する行政手続法第15条第1項の通知又は第11項の規定により弁明の聴取を行う場合における第12項の通知は、それぞれ、前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
18 第5項若しくは第11項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第13項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については、行政手続法第3章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。