新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1552、2014/10/14 12:00 https://www.shinginza.com/idoushin.htm
【行政事件、行政処分、薬物事件の特色と医道審対応、最高裁昭和63年7月1日判決】
薬物事件の医道審対応
質問:
私は,某県で医師をしていましたが,半年ほど前に麻薬及び向精神薬取締法違反の罪で懲役3年,執行猶予4年の判決を受けました。妹の死によるストレスから,患者用の麻酔薬を少量ずつ確保し,自分に注射してしまったのです。
先日,県の医療課から,行政処分を行うため,今月中に事件についての事案報告を求める通知が届きました。今後どのように対応したらよろしいでしょうか。
私は,事件当時の勤務先は解雇されていますが,現在は知人の要請を受け,医療過疎地域で内科医として勤務しています。仮に医師免許を取り消されるにしても,今すぐに取り消されると患者様に申し訳ありません。
処分の時期を考慮してもらえる場合はないのでしょうか。
↓
回答:
1.あなたは麻薬及び向精神薬取締法違反で懲役刑に処されていますので,医師法7条2項,4条3号の規定により,厚生労働大臣による行政処分の対象となります。
過去の覚せい剤取締法違反の事案では,医師免許取消処分又は3年以内の医業停止処分が下されています。
2.過去の事例をみると,行政処分の対象となるのが初めてであれば,3年間の医業停止処分となる例が最も多く存在します。しかし,医療現場に関連する犯罪には重い処分が下される傾向がありますので,あなたのように医療現場から麻酔薬を調達していた場合免許取消となる可能性も十分考えられます。
3.免許取消処分を回避し,医業停止期間も可能な限り短縮する為には,処分に先だって行われる意見聴取の手続において,あなたに有利な情状を多く主張する必要があります。その際は,単に口頭で弁明を行うのではなく,贖罪寄付証明書や嘆願書等の書面を証拠資料として豊富に準備することが有効です。
具体的にどのような準備をすべきかについては,医師の行政処分の経験が豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。
4.行政処分は,原則として可能な限り速やかに行う必要があり,対象者の事情によって行政処分の時期を調整することは基本的に不可能です。しかし,事案報告から聴聞までの期間が余りに短い場合等は,「聴聞期日に提出する書面の準備が必要である」と連絡して,極稀に,医道審議会の期日を一度飛ばして,次回の対象に回る場合もあります。
尚、刑事事件終了後医道審議会に備えるよりも、もっと大切なことは、刑事事件の弁護活動において、医道審議会を見据えた対策を十分に取っておくことです。単に執行猶予を得れば刑務所に行かなくてよいので量刑はそれほど考慮に入れないという考え方では例え執行猶予がついても判決内容により免許取消の可能性があり医師の生命ともいえる免許を失う結果になりかねないからです。刑事手続き段階から医道審議会に通じた弁護人との協議が必要です。
5.その他医道審議会における具体的な対応策については,弊所事例集538番,848番,1467番等もご参照ください。その他1538番、1523番、1510番、1489番,1485番,1411番,1343番,1325番,1303番,1268番,1241番,1144番,1085番,1102番,1079番,1042番,1034番,869番,735番,653番,551番,313番,266番,246番,211番,48番も参照。
解説:
1.医師免許に関する行政手続(医道審議会と行政処分決定にあたっての考慮要素)
医師が刑事事件を起こし,罰金以上の刑に処された場合,厚生労働大臣による行政処分の対象となります(医師法7条2項各号,4条3号)。行政処分の種類は,戒告・3年以内の医業停止・免許取消です。
現在,医師又は歯科医師が罰金刑以上の罪を犯した場合,全件が厚労省に通知される制度となっており(厚生労働省報道発表資料http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/02/h0224-1.html),あなたは,既に麻薬及び向精神薬取締法違反の罪で懲役刑の有罪判決を受けているとのことですので,ほぼ間違いなく行政処分が科されることになります。過去の例によれば,あなたには医師免許の取消処分又は3年以内の医業停止処分が科される可能性が高いといえます。
行政処分の対象となった場合,まず厚生労働省の委託を受けた都道府県の医療関係局から,対象者に対して事案報告の依頼通知が来ます。この際提出する事案報告は,判決文の内容等形式的な部分が殆どですが,事案の概要説明の部分等は各人が個別に記載するため,できる限り有利な事情も含めて記載する必要があります。
その後,1〜数か月の後,行政処分に先だって,都道府県の担当者から,処分対象者に意見陳述の機会が与えられる事になります。意見陳述の機会の種類は,医師免許取消処分が予定される場合「意見の聴取(医師法7条5項)」が,医業停止処分が予定される場合は「弁明の聴取(医師法7条11項)」が行われることになります。これらの手続は,行政手続法の「聴聞」及び「弁明の機会の付与」に対応するものであり,より厳しい医師免許取消処分の場合は,より手続的に厳格な「意見の聴取」が行われる事になります。
意見陳述の際には,処分対象者から有利な証拠資料を提出することが認められています(医師法7条6項,行政手続法20条2項,29条2項)。また,意見の聴取の際には弁護士等代理人の出席も認められています(行政手続法16条1項)。
当道府県の担当者は,主宰者として意見陳述の結果を調書として作成し,報告書と共に知事に提出します。知事は,報告書の内容をもとに,厚生労働省に対して処分に関する意見書を提出します。その意見書をもとに厚生労働省の審議会の一つで意思等の行政処分を決定する医道審議会で審議が行われ,処分が決定されることになります。 医道審議会の処分は,基本的に知事の意見書に沿って決定され,知事の意見書は主宰者の作成する意見陳述の報告書どおりに作成されます。従って,医師免許に対する行政処分を軽減するためには,意見陳述の機会に適切な証拠資料を提出し,処分対象者に有利な事情を主張することが必要です。処分に当たってはこの点がとても重要です。構造上時間的手続きを考えると、意見書が医道審議会の委員に与える影響が大きいと予想されるからです。
意見陳述に向けてどのような準備・活動をすべきかを以下で説明します。
2 医道審議会における判断の枠組み
医道審議会医道分科会が定める平成14年12月13日付で「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」(平成24年3月4日改正。以下「ガイドライン」といいます。)によれば,「医師,歯科医師の行政処分は,公正,公平に行われなければならないことから,処分対象となるに至った行為の事実,経緯,過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そのため,処分内容の決定にあたっては,司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし,その上で,医師,歯科医師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は,これを考慮して厳しく判断することとする。」とされています。
加えて最判昭和63年7月1日によれば,処分に当たっては「当該刑事罰の対象となった行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し」て判断すべきとしています。
すなわち,医師の行政処分の決定にあたっては,事件の前後に渡って,事件及び対象となる医師に関するあらゆる事情が考慮されることになります。
3.薬物事案における処分例
(1)取消処分の危険
過去の処分事例をみると,麻薬取締法違反に対する行政処分としては,医師免許取消処分から3年以下の医業停止処分まで幅があります。
上述の厚生労働省のガイドラインにおいても,「国民の健康な生活を確保する任務を負う医師,歯科医師として,麻薬等の薬効の知識を有し,その害の大きさを十分認識しているにも関わらず,自ら違反したということに対しては,重い処分とする。」とされており,非常に厳しい処分が想定される犯罪類型であるといえるでしょう。
薬物事件を起こすのが2回目であれば,ほぼ間違いなく取消処分が科されます。薬物事件の再犯の場合,薬物への親和性・中毒性が高いとして,刑事事件上も執行猶予が付かずに実刑となることが多く,医道審議会においても同様の考慮が働いているものと言えます。
一方で薬物事犯が初犯であれば,取消処分とはならず,医業停止処分に留めることが十分可能です。過去の事例においても,初犯で刑事上執行猶予がついている事案については,医業停止処分に留まる例が多いです。
ただし,適切な弁護活動を行わない場合,初犯であっても免許取消処分となる可能性は十分に考えられます。例えば,医療行為に類する犯罪,勤務中にも薬物の影響があったと疑わせる事情が存在する場合,処分相場が一般的な基準よりも重く捉えられるため,取消処分の可能性が大きくなります。上記ガイドラインにおいては,「医師や歯科医師が,医療を提供する機会を利用したり,医師,歯科医師としての身分を利用して行った行為についても,同様の考え方から処分の対象となる。」とされており,医師の職業倫理に反するものとしての独自の処分類型が定められています。
本件も,事件が患者の手術に付随するという点で,患者の生命身体にまで危険が及びかねない犯行態様ですから,取消処分の可能性が大きい事案であるといえるでしょう。
また,刑事事件の判決においては,手術を担当する外科医や麻酔医等は,特に麻薬に対する知識を有する半面責任も重いとして,厳しい責任追及がされています。
そして実際の医道審議会手続においては,覚せい剤事犯の場合,意見聴取の手法として「意見の聴取」の期日が開催されています。上述のとおり,「意見の聴取」期日は取消処分の可能性がある場合に開催される期日ですから,薬物事案における厳罰傾向は,今後一層高まってゆくものと考えられます。
医師免許取消の場合の不利益は,医業停止の場合の不利益に比べて著しく過大であるため,取消処分を回避するためには,万全の弁護か活動を行うべきでしょう。
(2) 医業停止処分危険の軽減
また,医業停止の期間は,刑事事件の量刑にも比例して,1年6か月〜3年まで異なります。医業停止の期間は,刑事事件の判決に比例して重くなる傾向があります。
そのため,贖罪寄付等の弁護活動は,可能な限り刑事事件の判決前に行い,刑事判決の量刑を可能な限り減じておく必要があります。
一方で,既に刑事判決が出てしまっている場合でも諦める必要はありません。上で揚げた判例のとおり,医師免許に関する行政処分を決定するに際しては,処分後の事情も考慮されるため,刑事判決後であっても,下記のような弁護活動を行うことによって,医業停止期間を相当程度減ずることが可能です。
4.医道審議会に向けた準備
(1) 薬物中毒からの脱出状況
覚せい剤事犯における特色として,薬物との親和性をどれだけ遮断できているかという点が判断の大きな分かれ目となります。薬物に対する依存は,それが刑事罰とは別の特別な処分項目として設けられていることからも分かる通り,医師としての適格性に大きな疑いを抱かせる事情となります。
もし,あなたが刑事裁判の際に,薬物依存に対する治療やカウンセリングを受けていなかったり,裁判後治療から遠のいているようであれば,直ぐに治療を開始又は再開すべきです。
例え自分として依存の後遺症が全くなかったとしても,処分を行う行政機関は原則として依存は消えないものと見なします。可能であれば,薬物依存から脱却しているとの医師の診断書が取得できると良いでしょう。
(2) 処分対象者に有利な事情の抽出作業(刑事確定記録の検討)
医道審議会は,弁明聴取時,判決書,起訴状及び処分対象者からの事案報告以外の刑事記録の内容については把握していない状態です。したがって,事件当時の経緯等について処分対象者に有利な事情のうち,判決書に現れていない事情は,処分対象者が自ら主張する必要があります。しかし,処分対象者本人の主張だけでは,医道審議会を説得することはできません。
そこで有効なことが,刑事確定記録を入手し,あなたの供述調書等の裁判上の証拠書類等を医道審議会に資料として提出する方法です。事件の当事者(又はその委任を受けた代理人の弁護士等)であれば,刑事事件が継続していた検察庁に対して,刑事確定記録の閲覧の手続を取ることができます。申請理由等によっては,被害者の氏名等一部の情報を黒塗り処理により秘匿される場合もありますので,申請の際は弁護士に依頼した方が良い場合もあります。検察官の面前で作成された供述調書その他の裁判証拠は医道審議会においても強い信用性を有するため,可能な限り入手し,有利なものは積極的に医道審議会にも提出すべきです。
なお,あなたに不利な証拠を提出する必要は一切ありません。日本の刑事手続においては,必ずしも被疑者の意図どおりに供述調書が作成されない場合もありますので,そのような場合は,むしろ医道審議会において,改めて自分の真の意図通りの主張を行うべきです。
上述のとおり,医道審議会は,起訴状と判決書以外の刑事記録の内容について把握しておりませんので,例え刑事裁判上は不幸にもあなたの主張通りの認定がされなかった部分があっても,あらためて真実に沿った主張を行うことができます。
最大限自己に有利な主張をするためにも,基本となる刑事記録を詳細に検討した上で,最大限自己に有利な主張を準備する必要があるでしょう。
(3) 贖罪寄付
覚せい剤事案は,社会の安定という公益に対する保護法益であり,特定の被害者に対する犯罪ではありません。従って被害者との間で示談を行うことによって,被害回復を達成することはできません。
そこで示談の代わりに考えられるのが,贖罪寄付を行う方法です。贖罪寄付とは,自らが社会全体に対して迷惑をあたえる罪を犯した事について,深い謝罪と反省の意を表明するために行う寄付のことです。贖罪寄付は,寄付者が深い反省の意思を有していることの証明として,裁判や行政処分の量刑に大きな影響を与えます。
主な贖罪寄付の受け入れ先としては,弁護士会等が考えられます。団体によっては弁護士を通じての寄付を要請される場合もありますので,弁護士に相談するとよいでしょう。
贖罪寄付の金額については、特に相場というものは無く、個々の事情によって決める必要がありますが、事案の軽重、あるいは処分対象者の収入から判断することになります。一般的には100万から200万円程度と考えられます。
(4) 嘆願書や反省文等の作成
上記引用判例でも指摘されているとおり,行政処分の対象となる医師の性格や反省の程度は,行政処分の決定の際の考慮要素となります。特に重要なことが,処分対象者の医師としての適格性です。これに対して刑事処分は、法益侵害を行った被告人に対する国家が有する司法権による生命、身体の自由、財産の強制的剥奪(処罰)です。
あなたに医師としての適格性があることを示す為には,あなたの上司や同僚,看護師,患者様等から,処分の軽減を求める嘆願書を提出することが有効です。刑事裁判の場合,厳格な法の適用という側面が強いため,嘆願書等の効果はそれほど大きくありませんが,道審議会は,処分対象者の医師としての適格性を審査する場所ですから,実際にあなたが医師として接した人たちの嘆願書には大きな効果があります。
その他,本人の資質に関連して薬物事犯で特に重要視されるのが,犯罪の動機,つまり薬物に手を出した理由です。薬物事犯は依存性が強く,再犯率も高いため,処分を決める側としては,なぜ薬物に手を出したのか,入手経路はどこか,今後薬物に手を染めないと認められるかの点を非常に重視します。
過去に行われた薬物事犯の医道審議会においても,意見の聴取の主宰者(都道府県の医事課担当者など)は,最も動機の点に重きを置いていたといっても過言ではありません。動機,現在の心境や医師としての今後の心構え,行動等を問う質問は弁明聴取の際,聞かれる可能性が非常に大きい事項です。専門家の指導を十分受け,十分な準備をして意見陳述に臨むことをお勧めいたします。
(5) 調書及び報告書の開示請求
意見の聴取期日の際に,都道府県の主宰者作成した調書や,知事に対する報告書等は,処分対象者又は代理人が閲覧の請求をすることができます(行政手続法18条1項,24条4項)。意見聴取の期日の後は,可能な限り調書の閲覧を行い,自分の主張で伝わっていないことがあれば,補充して書面を提出した方が良いでしょう。又、その意見聴取内容を県庁から書面で送付していただき、訂正して送り返すことも可能です。
この点,県の担当者が開示の手続について不慣れである場合,スムーズな開示が受けられない場合があります。意見の聴取の後,知事の意見書が作成され医道審議会に提出されるまでの時間は長くはありません(数週間です。)。手続を熟知した弁護士に予め依頼しておくのが安心です。
5.医道審議会の処分時期について
医道審議会は,例年2月又は9月に開催されることが多く,刑事事件の判決が出た次の医道審の対象となるのが一般的です。
しかし,刑事判決後,都道府県の担当局が処分対象者に事案報告をしてから聴聞までの期間が余りに短い場合等は,極稀に,医道審議会の期日を一度飛ばして,次回の対象に回る場合もあります。これは、県庁側との交渉になりますので代理人が必要です。十分な資料収集にこの点も重要です。
もし,示談の時間が足りない,自分が担当しなければならない患者がいる等の止むを得ない事情がある場合には,経験のある弁護士に相談してみてもよいかもしれません。
6.最後に
以上のとおり,医道審議会に向けて準備すべき事項は多岐にわたります。特に,薬物事犯の場合,医師免許の取り消しという最悪のケースも十分想定される罪名です。
医道審議会の処分量定には刑事事件の判決の内容が大きく影響しますので,医師が刑事事件を起こしてしまった場合,医道審も見据えた対応が可能な弁護士に,速やかに専門家に相談されることが重要です。
仮に本件のように刑事判決後であっても,事後的に有利な情状資料を作成することで,処分の軽減を達することが可能です。
近くの経験が豊富な弁護士を探し,ご相談されることをお勧めいたします。
≪参照条文≫
【医師法】
第四条 次の各号のいずれかに該当する者には,免許を与えないことがある。
一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬,大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか,医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
第七条 医師が,第三条に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許を取り消す。
2 医師が第四条各号のいずれかに該当し,又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは,厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
3 前二項の規定による取消処分を受けた者(第四条第三号若しくは第四号に該当し,又は医師としての品位を損するような行為のあつた者として前項の規定による取消処分を受けた者にあつては,その処分の日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても,その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき,その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは,再免許を与えることができる。この場合においては,第六条第一項及び第二項の規定を準用する。
4 厚生労働大臣は,前三項に規定する処分をなすに当つては,あらかじめ,医道審議会の意見を聴かなければならない。
5 厚生労働大臣は,第一項又は第二項の規定による免許の取消処分をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め,当該意見の聴取をもつて,厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。
6 行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章第二節
(第二十五条,第二十六条及び第二十八条を除く。)の規定は,都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において,同節
中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と,同法第十五条第一項
中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同条第三項
(同法第二十二条第三項 において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と,「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と,「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と,同法第十六条第四項
並びに第十八条第一項 及び第三項 中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同法第十九条第一項
中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは「都道府県知事が指名する職員」と,同法第二十条第一項
,第二項及び第四項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と,同条第六項
,同法第二十四条第三項 及び第二十七条第一項
中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
7 厚生労働大臣は,都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には,速やかにそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。
8 都道府県知事は,第五項の規定により意見の聴取を行う場合において,第六項において読み替えて準用する行政手続法第二十四条第三項
の規定により同条第一項 の調書及び同条第三項
の報告書の提出を受けたときは,これらを保存するとともに,当該調書及び報告書の写しを厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において,当該処分の決定についての意見があるときは,当該写しのほか当該意見を記載した意見書を提出しなければならない。
9 厚生労働大臣は,意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは,都道府県知事に対し,前項前段の規定により提出された調書及び報告書の写し並びに同項後段の規定により提出された意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる。行政手続法第二十二条第二項
本文及び第三項 の規定は,この場合について準用する。
10 厚生労働大臣は,当該処分の決定をするときは,第八項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなければならない。
11 厚生労働大臣は,第二項の規定による医業の停止の命令をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め,当該弁明の聴取をもつて,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。
12 前項の規定により弁明の聴取を行う場合において,都道府県知事は,弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて,当該処分に係る者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 第二項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
二 当該処分の原因となる事実
三 弁明の聴取の日時及び場所
13 厚生労働大臣は,第十一項に規定する場合のほか,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて,医道審議会の委員に,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては,前項中「前項」とあるのは「次項」と,「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて,同項の規定を適用する。
14 第十二項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は,代理人を出頭させ,かつ,証拠書類又は証拠物を提出することができる。
15 都道府県知事又は医道審議会の委員は,第十一項又は第十三項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは,聴取書を作り,これを保存するとともに,報告書を作成し,厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において,当該処分の決定についての意見があるときは,当該意見を報告書に記載しなければならない。
16 厚生労働大臣は,第五項又は第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては,都道府県知事に対し,あらかじめ,次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 当該処分に係る者の氏名及び住所
二 当該処分の内容及び根拠となる条項
三 当該処分の原因となる事実
17 第五項の規定により意見の聴取を行う場合における第六項において読み替えて準用する行政手続法第十五条第一項
の通知又は第十一項 の規定により弁明の聴取を行う場合における第十二項
の通知は,それぞれ,前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
18 第五項若しくは第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第十三項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については,行政手続法第三章
(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は,適用しない。
【行政手続法】
(代理人)
第十六条 前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は,代理人を選任することができる。
2 代理人は,各自,当事者のために,聴聞に関する一切の行為をすることができる。
3 代理人の資格は,書面で証明しなければならない。
4 代理人がその資格を失ったときは,当該代理人を選任した当事者は,書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。
(文書等の閲覧)
第十八条 当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は,聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間,行政庁に対し,当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において,行政庁は,第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ,その閲覧を拒むことができない。
2 前項の規定は,当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を更に求めることを妨げない。
3 行政庁は,前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。
(聴聞調書及び報告書)
第二十四条 主宰者は,聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し,当該調書において,不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
2 前項の調書は,聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに,当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
3 主宰者は,聴聞の終結後速やかに,不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し,第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4 当事者又は参加人は,第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。