医師に対する行政処分と審査請求、取消訴訟

行政|医道審議会|医業停止|最高裁昭和63年7月1日第二小法廷判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

質問:私は医師をしていますが,1年ほど前,酒に酔って友人を殴ってけがを負わせた,という傷害罪で罰金50万円の刑事処分を受けました。これが初めての刑事処分です。刑事処分を受けた後,半年くらいしてから,医道審議会にかけられて,先週,医業停止3ヵ月の処分を受けました。医道審議会に対する弁明は,現在は真面目に医師として働いていること,怪我を負わせてしまった被害者とは刑事処分後に和解したこと等を口頭で説明しましたが,どこまで分かってもらえたかは分かりません。

処分を受けること自体には勿論納得しているのですが,インターネット等で調べているうちに,傷害罪で刑事処分を受けても不処分や戒告にとどまっている例があることを知り,医業停止3ヵ月は重すぎるのではないか,と思うようになりました。今から何か採ることのできる手段はありますでしょうか。

回答:

1 詳しい事情を伺わないと判断できかねるところではありますが,確かに本件で被害者との和解が成立したにもかかわらず,医業停止3ヵ月の処分は重過ぎるとも思われます。あなたの場合,弁明の機会において口頭で説明しただけですから,もしかしてそういった有利なご事情が十分に反映されていないのかもしれません。そういった意味では,今回の処分について争う余地もある可能性はあります。

2 今回科せられた行政処分に対して不服がある場合に,採ることのできる手段は①行政不服審査法に基づく審査請求(以下では単に「審査請求」といいます。)と,②行政事件訴訟法に基づく取消訴訟(以下では単に「取消訴訟」といいます。)の大きく分けて2つが考えられます。

3 審査請求と取消訴訟は大きく①判断機関,②申立ての期間及び③判断対象等において違いがありますが,特に本件のようなケースでは③判断対象の違いが重要です。

取消訴訟は,違法な行政処分を取り消す訴訟であるところ,裁判例上,医師に対する行政処分に違法性が認められるケースが極めて限定されている一方,審査請求は,処分の違法性だけではなく,その不当性も判断の対象となっています。つまり,「違法とまでは言えないが不当な行政処分」がなされた場合,理屈の上では,取消訴訟では当該処分の取り消しが認められなくとも,審査請求は認められる可能性がある,ということになります。

4 したがって,認定事実や行政処分の手続に問題があったというわけではなく,処分が相対的に重すぎる,という主張をするような場合は,不当性を争うために審査請求がまず考えられるところです。

5 なお,審査請求及び取消訴訟のいずれについても,申立てただけでは医業停止の効力は止まりません。そのため,別途執行停止という手続きをとる必要があります。執行停止については,本ホームページの法律相談事例集の1263番に詳しい記載がありますのでご参照ください。

6 いずれにしても,あなたに対する処分が不当であるのかどうか,審査請求と取消訴訟のいずれを選択するべきなのか,見通しはどうか等については,期間制限の関係上,早急に専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

7 医道審議会に関する関連事例集参照。

解説:

1 はじめに

(1)本件のように,すでに行政処分を受けてしまった医師が,受けた行政処分に対して不服を申立てる手段としては,①行政不服審査法に規定のある,審査請求という手続と,②行政事件訴訟法に規定のある,取消訴訟(無効訴訟を含む)という手続が考えられるところです。

この二つの手段は,行政上の不服申立ての手続(審査請求)と司法上の不服申立ての手続(取消訴訟)という点でその大本から異なる手続なので,様々な点で違いがあります。

そこで,以下では,本件において重要な点に限って審査請求と取消訴訟のメリット・デメリットを挙げた上で,本件ではいずれの選択をするべきであるのか,という点について説明します。

(2)なお,本件は,①刑事処分として傷害罪(刑法204条)の最大額である50万円の罰金を科されている点,②弁明の機会において,和解等の有利な事情について整理した書面等を提出せず,単に口頭で説明するだけで,担当者に内容が把握されたかどうかについて確認していない点にそもそもの問題があります。刑事処分段階の適切な弁護人活動,あるいは弁明の機会における適切な代理人活動が,医師に対する行政処分を決める上で大きく影響することについては,本ホームページの他の法律相談事例集(1245番1144番1102番1079番1042番1034番等)をご参照ください。

2 審査請求について

(1)行政不服申立て制度一般について

ア 行政不服申立て制度は,行政庁による処分が,「違法又は不当」であった場合において,「簡易迅速な手続に」より是正を図ることで,「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的」とする制度です(括弧内は行政不服審査法1条1項)。

イ 行政不服申立てには,大きく分けて①審査請求,②再審査請求の2種類があります。

審査請求は処分庁の上級庁もしくは法律等で定められている行政庁(審査庁)に処分について「審査」するよう求める手続です。行政不服申立て制度の実効性を図る観点からは,当然,処分庁とは別の行政庁により,客観的な審査がなされた方が良いので,審査請求が中心(原則)となった制度設計となっています。

ウ 審査請求をする行政庁

医師に対する行政処分は,厚生労働大臣により行われます(医師法7条2項。歯科医師の場合も同様)。したがって,処分庁は厚生労働大臣ということになります。

そのため,「処分庁が主任の大臣」であるとして,行政不服審査法4条1号に該当することになり,当該処分庁である厚生労働大臣に対する審査請求を申し立てることになります。

処分庁と審査庁が同じになってしまうことによる弊害を防止するために、総務省に行政不服審査会が設置され(行政不服審査法67条1項)、審査庁は原則として行政不服審査会に対する諮問と答申を受けた上で裁決を下すことになっています(行政不服審査法43条1項)。

(2)申立てまでの期間について

審査請求は,処分があったことを知った日から3月以内におこなう必要があります(行政不服審査法18条1項)。医師に対する行政処分の効力は,通常処分が決定してから2週間後を始期としますから,医業停止期間をできるだけ作らないようにするためには,審査請求と執行停止(後述)の手続きをおこなうことが望ましいことになります。そのため,3月以内といっても猶予がある訳ではありません。

(3)判断対象について

上記のとおり,審査請求を始めとする行政不服申立てが対象とするのは,「違法又は不当」な行政処分です(行政不服審査法1条1項「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」)。

ここで重要なのは,行政不服申立てによれば,不当な行政処分の是正が可能だ,ということです。

3 取消訴訟について

(1)制度一般について

ア 取消訴訟は,抗告訴訟という訴訟の一種(行政事件訴訟法3条1項)です。同条によれば,抗告訴訟とは,「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」であり,取消訴訟は,そのうち,「処分」の取り消しを求める訴訟ということになります(同条2項)。

抗告訴訟でその違法性を問うのは行政の行為ですから,一方で行政活動の円滑な遂行という要請も観念することができ,この点で通常の民事訴訟とは異なります。

イ したがって,取消訴訟には,通常の民事訴訟とは異なる要件が課されています。取消訴訟(抗告訴訟)の要件としては,特に①処分性(後述),②原告適格(法9条1項参照)が特に問題となることが多く,その解釈や運用については裁判例,学説上の争いがあるところです。

もっとも,本件のような医師に対する医業停止・あるいは免許取消等の処分に対して,処分を受けた医師自身が取消訴訟を提起して当該処分の取り消しを求める,という場面においては,①処分性も②原告適格もあまり問題にはなりません。むしろ,後述のとおり,本件で問題となるのは,どのようなケースで処分の取り消しが認められるか,という本案の部分です。

ウ そこで,以下では,取消訴訟の要件には触れずに,審査請求との比較,という観点から検討されるべき特徴に絞って説明していきます。

(2)判断機関について

上記のとおり取消訴訟は,抗告訴訟という訴訟の一種(行政事件訴訟法3条1項)ですから,判断機関は裁判所ということになります(憲法76条1項参照)。

(3)申立てまでの期間(出訴期間)について

取消訴訟は,処分があったことを知った日から6か月以内,あるいは処分の日から1年以内に提起する必要があります(行政事件訴訟法14条1項,同条2項)。

もっとも,本件のような医師に対する行政処分において,医業停止期間を短くするためには,できる限り早く申し立てる必要がある点については,上記審査請求の場合と同様です。

(4)判断対象について

ア 取消訴訟の判断対象は,違法な行政処分です(行政事件訴訟法3条2項,同法10条1項参照)。上記のとおり取消訴訟においては,対象となる「行政処分」の範囲,いわゆる「処分性」が要件となっていて,その解釈について争いがあるのですが,本件のような医師に対する行政処分が取消訴訟の対象となる行政処分であることについては争いがありません。

イ ここで重要な点は,「違法」という部分です。上記審査請求の場合と異なり,不当性が含まれていません。したがって,不当な処分(裁量の範囲内ではあっても相当ではない処分)については,取消訴訟により取り消すことができない,ということになります。

ウ では,具体的に取消訴訟における「違法」で取り消すことのできる行政処分とはどのような場合を指すか,というと,裁量のある行政処分について取り消すことが認められるのは,「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合」とする旨の規定があります(行政事件訴訟法30条)。

エ そこで,本件のような医師に対する行政処分の場合ですが,医師に対する行政処分について,「免許を取消し、又は医業の停止を命ずるかどうか、医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは、当該刑事罰の対象となつた行為の種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響のほか、当該医師の性格、処分歴、反省の程度等、諸般の事情を考慮し、同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ、その判断は、同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで、医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」として,厚生労働大臣に裁量があると認めた最高裁判所の判例があります(下記参照判例)。

この判例は,続けて「それ故、厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならない」と判断しています。

オ 以上,取消訴訟によって医師に対する行政処分を取り消すためには,「社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる」必要があることになります。

4 両者の比較と主張の内容

(1)以上,ここまで審査請求と取消訴訟の主な特徴を挙げてきましたが,本件のようなケースではいずれの手段によるべきでしょうか。

本件のようなケースでは,いずれにしてもすぐに申立てをするべきである以上,出訴期間はあまり問題になりません。

結論としては,審査請求によることをお勧めいたします。確かに,審査請求の場合,処分庁である厚生労働大臣が再度判断する,という点で更正な審査に疑義が生じるところではありますが,上記のとおり取消訴訟によって裁量による行政処分が取り消される余地は極めて小さい(「社会観念上著しく妥当を欠く」必要がある)ためです。

本件のように,明確な違法性はないが,相対的に処分が重い,というような場合には,不当性を争うことができる審査請求によるべきである,ということになります。

(2)審査請求を選択した場合,不当性を主張していくことになりますので,書面で(行政不服審査法19条参照),あなたにとって有利な事情を改めて整理した上で,他の処分事例等と比較しながら,相対的に処分が重すぎる,ということ示していくことになります。

5 審査請求における執行停止について

(1)ここまで,医師に対してなされた行政処分に対する不服申立ての方法についてご説明してきましたが,ここで注意が必要なのは,審査請求をするにしても,取消訴訟を提起するにしても,申立てをしただけでは行政処分自体の効力が停止するわけではない,という点です。

これを,「執行不停止の原則」といいます(審査請求について行政不服審査法25条1項,取消訴訟について行政事件訴訟法25条1項)。これは,濫訴(理由のない申立て)によって行政活動の円滑な遂行が妨げられることを避けるための原則です。

(2)本件のように,医業停止3ヵ月という行政処分に対する審査請求(あるいは取消訴訟)をおこなう場合には,特に審理期間中に医業停止期間が経過してしまう,という事態が考えられるところです(特に取消訴訟の場合には,裁判にかかる時間が比較的長期間に亘ることが多いため,このような事態が予想されます)。少なくとも,医業停止処分を受けてから,その効力が生じるまでの間に,不服申立ての結果が出ることはありません。

そのため,医業停止処分を受けてしまうと大きな実害が生じる様な場合,具体的には個人で病院を開業していて,自分が医業停止処分を受けてしまうと,病院の運営に著しい支障が出る等の場合には,医業停止処分(の効力)をとりあえず止めるため,審査請求等の手続とは別の執行停止という手続をとる必要があります。

(3)取消訴訟における執行停止の手続きについては,本ホームページの№1263に詳細な説明がありますので,ここでは,審査請求の場合の執行停止の手続きについて簡単にご説明いたします。

審査請求の執行停止の手続は,行政不服審査法25条2項以下で定めています。

それによると,取消訴訟における執行停止とほぼ同様,申立人が処分庁に申立てをし,①「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき」に,②「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるとき」には処分庁が執行停止をしなければならない旨の規定があります(行政不服審査法25条4項)。

そして,その「重大な損害」については,「損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質」を考慮することになります(同条5項)。

本件のような医師に対する行政処分の場合,医業停止を受けることになると,その間の医療行為の停止により,患者に大きな損害が出ることや,患者が離れることにより医院の経営等に大きな支障が出ること等を,実際の1日の患者数等の具体的数値を示して主張することになります。

(4)執行停止は,その趣旨からしても,迅速な申立てが不可欠です。資料等を集める時間も考慮に入れれば,処分後からすぐに執行停止の準備を始めることが望ましいところです。長期に担当してきた患者の生死に関わる特別な事情があればそれを主張することも検討なさって下さい。

6 まとめ

以上が,既になされてしまった医師に対する行政処分への不服申立ての方法とその流れです。もちろん,取消訴訟と審査請求の手段選択や,選択した手段における主張の方法やその内容等については,それぞれのケースごとに異なります。申立てには事前の検討と準備が不可欠ですから,余裕をもって専門家にご相談されることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

【参照条文】

行政不服審査法

第一章 総則

(目的等)

第一条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

(処分についての審査請求)

第二条 行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

(不作為についての審査請求)

第三条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。

(審査請求をすべき行政庁)

第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。

一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等

二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長

三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣

四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁

(再調査の請求)

第五条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。

2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

一 当該処分につき再調査の請求をした日(第六十一条において読み替えて準用する第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合

二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

(再審査請求)

第六条 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。

2 再審査請求は、原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決をいう。以下同じ。)又は当該処分(以下「原裁決等」という。)を対象として、前項の法律に定める行政庁に対してするものとする。

(適用除外)

第七条 次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。

一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分

二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分

三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分

四 検査官会議で決すべきものとされている処分

五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの

六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分

七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分

八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分

九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院又は少年鑑別所において、収容の目的を達成するためにされる処分

十 外国人の出入国又は帰化に関する処分

十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分

十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。

(特別の不服申立ての制度)

第八条 前条の規定は、同条の規定により審査請求をすることができない処分又は不作為につき、別に法令で当該処分又は不作為の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げない。

第二章 審査請求

第一節 審査庁及び審理関係人

(審理員)

第九条 第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査請求がされた行政庁(第十四条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。以下「審査庁」という。)は、審査庁に所属する職員(第十七条に規定する名簿を作成した場合にあっては、当該名簿に記載されている者)のうちから第三節に規定する審理手続(この節に規定する手続を含む。)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる機関が審査庁である場合若しくは条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合又は第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合は、この限りでない。

一 内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項又は国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会

二 内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条又は国家行政組織法第八条に規定する機関

三 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第一項に規定する委員会若しくは委員又は同条第三項に規定する機関

2 審査庁が前項の規定により指名する者は、次に掲げる者以外の者でなければならない。

一 審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者

二 審査請求人

三 審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族

四 審査請求人の代理人

五 前二号に掲げる者であった者

六 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人

七 第十三条第一項に規定する利害関係人

3 審査庁が第一項各号に掲げる機関である場合又は同項ただし書の特別の定めがある場合においては、別表第一の上欄に掲げる規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとし、第十七条、第四十条、第四十二条及び第五十条第二項の規定は、適用しない。

4 前項に規定する場合において、審査庁は、必要があると認めるときは、その職員(第二項各号(第一項各号に掲げる機関の構成員にあっては、第一号を除く。)に掲げる者以外の者に限る。)に、前項において読み替えて適用する第三十一条第一項の規定による審査請求人若しくは第十三条第四項に規定する参加人の意見の陳述を聴かせ、前項において読み替えて適用する第三十四条の規定による参考人の陳述を聴かせ、同項において読み替えて適用する第三十五条第一項の規定による検証をさせ、前項において読み替えて適用する第三十六条の規定による第二十八条に規定する審理関係人に対する質問をさせ、又は同項において読み替えて適用する第三十七条第一項若しくは第二項の規定による意見の聴取を行わせることができる。

(法人でない社団又は財団の審査請求)

第十条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。

(総代)

第十一条 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、三人を超えない総代を互選することができる。

2 共同審査請求人が総代を互選しない場合において、必要があると認めるときは、第九条第一項の規定により指名された者(以下「審理員」という。)は、総代の互選を命ずることができる。

3 総代は、各自、他の共同審査請求人のために、審査請求の取下げを除き、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。

4 総代が選任されたときは、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、前項の行為をすることができる。

5 共同審査請求人に対する行政庁の通知その他の行為は、二人以上の総代が選任されている場合においても、一人の総代に対してすれば足りる。

6 共同審査請求人は、必要があると認める場合には、総代を解任することができる。

(代理人による審査請求)

第十二条 審査請求は、代理人によってすることができる。

2 前項の代理人は、各自、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。

(参加人)

第十三条 利害関係人(審査請求人以外の者であって審査請求に係る処分又は不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。

2 審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができる。

3 審査請求への参加は、代理人によってすることができる。

4 前項の代理人は、各自、第一項又は第二項の規定により当該審査請求に参加する者(以下「参加人」という。)のために、当該審査請求への参加に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求への参加の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。

(行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置)

第十四条 行政庁が審査請求がされた後法令の改廃により当該審査請求につき裁決をする権限を有しなくなったときは、当該行政庁は、第十九条に規定する審査請求書又は第二十一条第二項に規定する審査請求録取書及び関係書類その他の物件を新たに当該審査請求につき裁決をする権限を有することとなった行政庁に引き継がなければならない。この場合において、その引継ぎを受けた行政庁は、速やかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。

(審理手続の承継)

第十五条 審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。

2 審査請求人について合併又は分割(審査請求の目的である処分に係る権利を承継させるものに限る。)があったときは、合併後存続する法人その他の社団若しくは財団若しくは合併により設立された法人その他の社団若しくは財団又は分割により当該権利を承継した法人は、審査請求人の地位を承継する。

3 前二項の場合には、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は法人その他の社団若しくは財団は、書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。この場合には、届出書には、死亡若しくは分割による権利の承継又は合併の事実を証する書面を添付しなければならない。

4 第一項又は第二項の場合において、前項の規定による届出がされるまでの間において、死亡者又は合併前の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割をした法人に宛ててされた通知が審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は合併後の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割により審査請求人の地位を承継した法人に到達したときは、当該通知は、これらの者に対する通知としての効力を有する。

5 第一項の場合において、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者が二人以上あるときは、その一人に対する通知その他の行為は、全員に対してされたものとみなす。

6 審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる。

(標準審理期間)

第十六条 第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査庁となるべき行政庁(以下「審査庁となるべき行政庁」という。)は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁(当該審査請求の対象となるべき処分の権限を有する行政庁であって当該審査庁となるべき行政庁以外のものをいう。次条において同じ。)の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

(審理員となるべき者の名簿)

第十七条 審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるとともに、これを作成したときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

第二節 審査請求の手続

(審査請求期間)

第十八条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3 次条に規定する審査請求書を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便で提出した場合における前二項に規定する期間(以下「審査請求期間」という。)の計算については、送付に要した日数は、算入しない。

(審査請求書の提出)

第十九条 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。

2 処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所

二 審査請求に係る処分の内容

三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日

四 審査請求の趣旨及び理由

五 処分庁の教示の有無及びその内容

六 審査請求の年月日

3 不作為についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所

二 当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日

三 審査請求の年月日

4 審査請求人が、法人その他の社団若しくは財団である場合、総代を互選した場合又は代理人によって審査請求をする場合には、審査請求書には、第二項各号又は前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所又は居所を記載しなければならない。

5 処分についての審査請求書には、第二項及び前項に規定する事項のほか、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める事項を記載しなければならない。

一 第五条第二項第一号の規定により再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合 再調査の請求をした年月日

二 第五条第二項第二号の規定により再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合 その決定を経ないことについての正当な理由

三 審査請求期間の経過後において審査請求をする場合 前条第一項ただし書又は第二項ただし書に規定する正当な理由

(口頭による審査請求)

第二十条 口頭で審査請求をする場合には、前条第二項から第五項までに規定する事項を陳述しなければならない。この場合において、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認しなければならない。

(処分庁等を経由する審査請求)

第二十一条 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができる。この場合において、審査請求人は、処分庁等に審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第十九条第二項から第五項までに規定する事項を陳述するものとする。

2 前項の場合には、処分庁等は、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。第二十九条第一項及び第五十五条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。

3 第一項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、処分についての審査請求があったものとみなす。

(誤った教示をした場合の救済)

第二十二条 審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。

2 前項の規定により処分庁に審査請求書が送付されたときは、処分庁は、速やかに、これを審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。

3 第一項の処分のうち、再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書(第六十一条において読み替えて準用する第十九条に規定する再調査の請求書をいう。以下この条において同じ。)又は再調査の請求録取書(第六十一条において準用する第二十条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。以下この条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければならない。

4 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされた場合であって、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類その他の物件を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。この場合において、その送付を受けた行政庁は、速やかに、その旨を再調査の請求人及び第六十一条において読み替えて準用する第十三条第一項又は第二項の規定により当該再調査の請求に参加する者に通知しなければならない。

5 前各項の規定により審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。

(審査請求書の補正)

第二十三条 審査請求書が第十九条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。

(審理手続を経ないでする却下裁決)

第二十四条 前条の場合において、審査請求人が同条の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は、次節に規定する審理手続を経ないで、第四十五条第一項又は第四十九条第一項の規定に基づき、裁決で、当該審査請求を却下することができる。

2 審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも、前項と同様とする。

(執行停止)

第二十五条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

2 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。

3 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。

4 前二項の規定による審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

5 審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

6 第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない。

7 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から第四十条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。

(執行停止の取消し)

第二十六条 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

(審査請求の取下げ)

第二十七条 審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる。

2 審査請求の取下げは、書面でしなければならない。

第三節 審理手続

(審理手続の計画的進行)

第二十八条 審査請求人、参加人及び処分庁等(以下「審理関係人」という。)並びに審理員は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない。

(弁明書の提出)

第二十九条 審理員は、審査庁から指名されたときは、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書の写しを処分庁等に送付しなければならない。ただし、処分庁等が審査庁である場合には、この限りでない。

2 審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとする。

3 処分庁等は、前項の弁明書に、次の各号の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載しなければならない。

一 処分についての審査請求に対する弁明書 処分の内容及び理由

二 不作為についての審査請求に対する弁明書 処分をしていない理由並びに予定される処分の時期、内容及び理由

4 処分庁が次に掲げる書面を保有する場合には、前項第一号に掲げる弁明書にこれを添付するものとする。

一 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二十四条第一項の調書及び同条第三項の報告書

二 行政手続法第二十九条第一項に規定する弁明書

5 審理員は、処分庁等から弁明書の提出があったときは、これを審査請求人及び参加人に送付しなければならない。

(反論書等の提出)

第三十条 審査請求人は、前条第五項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(以下「反論書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

2 参加人は、審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(第四十条及び第四十二条第一項を除き、以下「意見書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、意見書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

3 審理員は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人及び処分庁等に、それぞれ送付しなければならない。

(口頭意見陳述)

第三十一条 審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。

2 前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。

3 口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

4 口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。

5 口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。

(証拠書類等の提出)

第三十二条 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。

2 処分庁等は、当該処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を提出することができる。

3 前二項の場合において、審理員が、証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

(物件の提出要求)

第三十三条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる。この場合において、審理員は、その提出された物件を留め置くことができる。

(参考人の陳述及び鑑定の要求)

第三十四条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実の陳述を求め、又は鑑定を求めることができる。

(検証)

第三十五条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。

2 審理員は、審査請求人又は参加人の申立てにより前項の検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を当該申立てをした者に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならない。

(審理関係人への質問)

第三十六条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。

(審理手続の計画的遂行)

第三十七条 審理員は、審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜そうしているなど事件が複雑であることその他の事情により、迅速かつ公正な審理を行うため、第三十一条から前条までに定める審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合には、期日及び場所を指定して、審理関係人を招集し、あらかじめ、これらの審理手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができる。

2 審理員は、審理関係人が遠隔の地に居住している場合その他相当と認める場合には、政令で定めるところにより、審理員及び審理関係人が音声の送受信により通話をすることができる方法によって、前項に規定する意見の聴取を行うことができる。

3 審理員は、前二項の規定による意見の聴取を行ったときは、遅滞なく、第三十一条から前条までに定める審理手続の期日及び場所並びに第四十一条第一項の規定による審理手続の終結の予定時期を決定し、これらを審理関係人に通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。

(審査請求人等による提出書類等の閲覧等)

第三十八条 審査請求人又は参加人は、第四十一条第一項又は第二項の規定により審理手続が終結するまでの間、審理員に対し、提出書類等(第二十九条第四項各号に掲げる書面又は第三十二条第一項若しくは第二項若しくは第三十三条の規定により提出された書類その他の物件をいう。次項において同じ。)の閲覧(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)にあっては、記録された事項を審査庁が定める方法により表示したものの閲覧)又は当該書面若しくは当該書類の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審理員は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。

2 審理員は、前項の規定による閲覧をさせ、又は同項の規定による交付をしようとするときは、当該閲覧又は交付に係る提出書類等の提出人の意見を聴かなければならない。ただし、審理員が、その必要がないと認めるときは、この限りでない。

3 審理員は、第一項の規定による閲覧について、日時及び場所を指定することができる。

4 第一項の規定による交付を受ける審査請求人又は参加人は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納めなければならない。

5 審理員は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、前項の手数料を減額し、又は免除することができる。

6 地方公共団体(都道府県、市町村及び特別区並びに地方公共団体の組合に限る。以下同じ。)に所属する行政庁が審査庁である場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「政令」とあるのは、「条例」とし、国又は地方公共団体に所属しない行政庁が審査庁である場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「政令で」とあるのは、「審査庁が」とする。

(審理手続の併合又は分離)

第三十九条 審理員は、必要があると認める場合には、数個の審査請求に係る審理手続を併合し、又は併合された数個の審査請求に係る審理手続を分離することができる。

(審理員による執行停止の意見書の提出)

第四十条 審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる。

(審理手続の終結)

第四十一条 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。

2 前項に定めるもののほか、審理員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審理手続を終結することができる。

一 次のイからホまでに掲げる規定の相当の期間内に、当該イからホまでに定める物件が提出されない場合において、更に一定の期間を示して、当該物件の提出を求めたにもかかわらず、当該提出期間内に当該物件が提出されなかったとき。

イ 第二十九条第二項 弁明書

ロ 第三十条第一項後段 反論書

ハ 第三十条第二項後段 意見書

ニ 第三十二条第三項 証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件

ホ 第三十三条前段 書類その他の物件

二 申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき。

3 審理員が前二項の規定により審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨並びに次条第一項に規定する審理員意見書及び事件記録(審査請求書、弁明書その他審査請求に係る事件に関する書類その他の物件のうち政令で定めるものをいう。同条第二項及び第四十三条第二項において同じ。)を審査庁に提出する予定時期を通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。

(審理員意見書)

第四十二条 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(以下「審理員意見書」という。)を作成しなければならない。

2 審理員は、審理員意見書を作成したときは、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。

第四節 行政不服審査会等への諮問

第四十三条 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、審査庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長である場合にあっては行政不服審査会に、審査庁が地方公共団体の長(地方公共団体の組合にあっては、長、管理者又は理事会)である場合にあっては第八十一条第一項又は第二項の機関に、それぞれ諮問しなければならない。

一 審査請求に係る処分をしようとするときに他の法律又は政令(条例に基づく処分については、条例)に第九条第一項各号に掲げる機関若しくは地方公共団体の議会又はこれらの機関に類するものとして政令で定めるもの(以下「審議会等」という。)の議を経るべき旨又は経ることができる旨の定めがあり、かつ、当該議を経て当該処分がされた場合

二 裁決をしようとするときに他の法律又は政令(条例に基づく処分については、条例)に第九条第一項各号に掲げる機関若しくは地方公共団体の議会又はこれらの機関に類するものとして政令で定めるものの議を経るべき旨又は経ることができる旨の定めがあり、かつ、当該議を経て裁決をしようとする場合

三 第四十六条第三項又は第四十九条第四項の規定により審議会等の議を経て裁決をしようとする場合

四 審査請求人から、行政不服審査会又は第八十一条第一項若しくは第二項の機関(以下「行政不服審査会等」という。)への諮問を希望しない旨の申出がされている場合(参加人から、行政不服審査会等に諮問しないことについて反対する旨の申出がされている場合を除く。)

五 審査請求が、行政不服審査会等によって、国民の権利利益及び行政の運営に対する影響の程度その他当該事件の性質を勘案して、諮問を要しないものと認められたものである場合

六 審査請求が不適法であり、却下する場合

七 第四十六条第一項の規定により審査請求に係る処分(法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分及び事実上の行為を除く。)の全部を取り消し、又は第四十七条第一号若しくは第二号の規定により審査請求に係る事実上の行為の全部を撤廃すべき旨を命じ、若しくは撤廃することとする場合(当該処分の全部を取り消すこと又は当該事実上の行為の全部を撤廃すべき旨を命じ、若しくは撤廃することについて反対する旨の意見書が提出されている場合及び口頭意見陳述においてその旨の意見が述べられている場合を除く。)

八 第四十六条第二項各号又は第四十九条第三項各号に定める措置(法令に基づく申請の全部を認容すべき旨を命じ、又は認容するものに限る。)をとることとする場合(当該申請の全部を認容することについて反対する旨の意見書が提出されている場合及び口頭意見陳述においてその旨の意見が述べられている場合を除く。)

2 前項の規定による諮問は、審理員意見書及び事件記録の写しを添えてしなければならない。

3 第一項の規定により諮問をした審査庁は、審理関係人(処分庁等が審査庁である場合にあっては、審査請求人及び参加人)に対し、当該諮問をした旨を通知するとともに、審理員意見書の写しを送付しなければならない。

第五節 裁決

(裁決の時期)

第四十四条 審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき(前条第一項の規定による諮問を要しない場合(同項第二号又は第三号に該当する場合を除く。)にあっては審理員意見書が提出されたとき、同項第二号又は第三号に該当する場合にあっては同項第二号又は第三号に規定する議を経たとき)は、遅滞なく、裁決をしなければならない。

(処分についての審査請求の却下又は棄却)

第四十五条 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。

2 処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

3 審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

(処分についての審査請求の認容)

第四十六条 処分(事実上の行為を除く。以下この条及び第四十八条において同じ。)についての審査請求が理由がある場合(前条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。

2 前項の規定により法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。

一 処分庁の上級行政庁である審査庁 当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二 処分庁である審査庁 当該処分をすること。

3 前項に規定する一定の処分に関し、第四十三条第一項第一号に規定する議を経るべき旨の定めがある場合において、審査庁が前項各号に定める措置をとるために必要があると認めるときは、審査庁は、当該定めに係る審議会等の議を経ることができる。

4 前項に規定する定めがある場合のほか、第二項に規定する一定の処分に関し、他の法令に関係行政機関との協議の実施その他の手続をとるべき旨の定めがある場合において、審査庁が同項各号に定める措置をとるために必要があると認めるときは、審査庁は、当該手続をとることができる。

第四十七条 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合(第四十五条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。

一 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。

二 処分庁である審査庁 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。

(不利益変更の禁止)

第四十八条 第四十六条第一項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。

(不作為についての審査請求の裁決)

第四十九条 不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。

2 不作為についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

3 不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。

一 不作為庁の上級行政庁である審査庁 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二 不作為庁である審査庁 当該処分をすること。

4 審査請求に係る不作為に係る処分に関し、第四十三条第一項第一号に規定する議を経るべき旨の定めがある場合において、審査庁が前項各号に定める措置をとるために必要があると認めるときは、審査庁は、当該定めに係る審議会等の議を経ることができる。

5 前項に規定する定めがある場合のほか、審査請求に係る不作為に係る処分に関し、他の法令に関係行政機関との協議の実施その他の手続をとるべき旨の定めがある場合において、審査庁が第三項各号に定める措置をとるために必要があると認めるときは、審査庁は、当該手続をとることができる。

(裁決の方式)

第五十条 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。

一 主文

二 事案の概要

三 審理関係人の主張の要旨

四 理由(第一号の主文が審理員意見書又は行政不服審査会等若しくは審議会等の答申書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を含む。)

2 第四十三条第一項の規定による行政不服審査会等への諮問を要しない場合には、前項の裁決書には、審理員意見書を添付しなければならない。

3 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁及び再審査請求期間(第六十二条に規定する期間をいう。)を記載して、これらを教示しなければならない。

(裁決の効力発生)

第五十一条 裁決は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における第四十六条第一項及び第四十七条の規定による裁決にあっては、審査請求人及び処分の相手方)に送達された時に、その効力を生ずる。

2 裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによってする。ただし、送達を受けるべき者の所在が知れない場合その他裁決書の謄本を送付することができない場合には、公示の方法によってすることができる。

3 公示の方法による送達は、審査庁が裁決書の謄本を保管し、いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨を当該審査庁の掲示場に掲示し、かつ、その旨を官報その他の公報又は新聞紙に少なくとも一回掲載してするものとする。この場合において、その掲示を始めた日の翌日から起算して二週間を経過した時に裁決書の謄本の送付があったものとみなす。

4 審査庁は、裁決書の謄本を参加人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に送付しなければならない。

(裁決の拘束力)

第五十二条 裁決は、関係行政庁を拘束する。

2 申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され、又は申請を却下し、若しくは棄却した処分が裁決で取り消された場合には、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。

3 法令の規定により公示された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合には、処分庁は、当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示しなければならない。

4 法令の規定により処分の相手方以外の利害関係人に通知された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合には、処分庁は、その通知を受けた者(審査請求人及び参加人を除く。)に、当該処分が取り消され、又は変更された旨を通知しなければならない。

(証拠書類等の返還)

第五十三条 審査庁は、裁決をしたときは、速やかに、第三十二条第一項又は第二項の規定により提出された証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件及び第三十三条の規定による提出要求に応じて提出された書類その他の物件をその提出人に返還しなければならない。

第三章 再調査の請求

(再調査の請求期間)

第五十四条 再調査の請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 再調査の請求は、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(誤った教示をした場合の救済)

第五十五条 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、審査請求がされた場合であって、審査請求人から申立てがあったときは、審査庁は、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書を処分庁に送付しなければならない。ただし、審査請求人に対し弁明書が送付された後においては、この限りでない。

2 前項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書の送付を受けた処分庁は、速やかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。

3 第一項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書が処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がされたものとみなす。

(再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合)

第五十六条 第五条第二項ただし書の規定により審査請求がされたときは、同項の再調査の請求は、取り下げられたものとみなす。ただし、処分庁において当該審査請求がされた日以前に再調査の請求に係る処分(事実上の行為を除く。)を取り消す旨の第六十条第一項の決定書の謄本を発している場合又は再調査の請求に係る事実上の行為を撤廃している場合は、当該審査請求(処分(事実上の行為を除く。)の一部を取り消す旨の第五十九条第一項の決定がされている場合又は事実上の行為の一部が撤廃されている場合にあっては、その部分に限る。)が取り下げられたものとみなす。

(三月後の教示)

第五十七条 処分庁は、再調査の請求がされた日(第六十一条において読み替えて準用する第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあっては、当該不備が補正された日)の翌日から起算して三月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

(再調査の請求の却下又は棄却の決定)

第五十八条 再調査の請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を却下する。

2 再調査の請求が理由がない場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を棄却する。

(再調査の請求の認容の決定)

第五十九条 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。

2 事実上の行為についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更する。

3 処分庁は、前二項の場合において、再調査の請求人の不利益に当該処分又は当該事実上の行為を変更することはできない。

(決定の方式)

第六十条 前二条の決定は、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印した決定書によりしなければならない。

2 処分庁は、前項の決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消し、又は撤廃する決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあっては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。

(審査請求に関する規定の準用)

第六十一条 第九条第四項、第十条から第十六条まで、第十八条第三項、第十九条(第三項並びに第五項第一号及び第二号を除く。)、第二十条、第二十三条、第二十四条、第二十五条(第三項を除く。)、第二十六条、第二十七条、第三十一条(第五項を除く。)、第三十二条(第二項を除く。)、第三十九条、第五十一条及び第五十三条の規定は、再調査の請求について準用する。この場合において、別表第二の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

第四章 再審査請求

(再審査請求期間)

第六十二条 再審査請求は、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して一月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 再審査請求は、原裁決があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(裁決書の送付)

第六十三条 第六十六条第一項において読み替えて準用する第十一条第二項に規定する審理員又は第六十六条第一項において準用する第九条第一項各号に掲げる機関である再審査庁(他の法律の規定により再審査請求がされた行政庁(第六十六条第一項において読み替えて準用する第十四条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。)をいう。以下同じ。)は、原裁決をした行政庁に対し、原裁決に係る裁決書の送付を求めるものとする。

(再審査請求の却下又は棄却の裁決)

第六十四条 再審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を却下する。

2 再審査請求が理由がない場合には、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。

3 再審査請求に係る原裁決(審査請求を却下し、又は棄却したものに限る。)が違法又は不当である場合において、当該審査請求に係る処分が違法又は不当のいずれでもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。

4 前項に規定する場合のほか、再審査請求に係る原裁決等が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、再審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、原裁決等を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却することができる。この場合には、再審査庁は、裁決の主文で、当該原裁決等が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

(再審査請求の認容の裁決)

第六十五条 原裁決等(事実上の行為を除く。)についての再審査請求が理由がある場合(前条第三項に規定する場合及び同条第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、再審査庁は、裁決で、当該原裁決等の全部又は一部を取り消す。

2 事実上の行為についての再審査請求が理由がある場合(前条第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁に対し、当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃すべき旨を命ずる。

(審査請求に関する規定の準用)

第六十六条 第二章(第九条第三項、第十八条(第三項を除く。)、第十九条第三項並びに第五項第一号及び第二号、第二十二条、第二十五条第二項、第二十九条(第一項を除く。)、第三十条第一項、第四十一条第二項第一号イ及びロ、第四節、第四十五条から第四十九条まで並びに第五十条第三項を除く。)の規定は、再審査請求について準用する。この場合において、別表第三の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

2 再審査庁が前項において準用する第九条第一項各号に掲げる機関である場合には、前項において準用する第十七条、第四十条、第四十二条及び第五十条第二項の規定は、適用しない。

第五章 行政不服審査会等

第一節 行政不服審査会

第一款 設置及び組織

(設置)

第六十七条 総務省に、行政不服審査会(以下「審査会」という。)を置く。

2 審査会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

(組織)

第六十八条 審査会は、委員九人をもって組織する。

2 委員は、非常勤とする。ただし、そのうち三人以内は、常勤とすることができる。

(委員)

第六十九条 委員は、審査会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は行政に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。

2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、総務大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、総務大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

4 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 委員は、再任されることができる。

6 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。

7 総務大臣は、委員が心身の故障のために職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合には、両議院の同意を得て、その委員を罷免することができる。

8 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

9 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

10 常勤の委員は、在任中、総務大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

11 委員の給与は、別に法律で定める。

(会長)

第七十条 審査会に、会長を置き、委員の互選により選任する。

2 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。

3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

(専門委員)

第七十一条 審査会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、総務大臣が任命する。

3 専門委員は、その者の任命に係る当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。

4 専門委員は、非常勤とする。

(合議体)

第七十二条 審査会は、委員のうちから、審査会が指名する者三人をもって構成する合議体で、審査請求に係る事件について調査審議する。

2 前項の規定にかかわらず、審査会が定める場合においては、委員の全員をもって構成する合議体で、審査請求に係る事件について調査審議する。

(事務局)

第七十三条 審査会の事務を処理させるため、審査会に事務局を置く。

2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。

3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。

第二款 審査会の調査審議の手続

(審査会の調査権限)

第七十四条 審査会は、必要があると認める場合には、審査請求に係る事件に関し、審査請求人、参加人又は第四十三条第一項の規定により審査会に諮問をした審査庁(以下この款において「審査関係人」という。)にその主張を記載した書面(以下この款において「主張書面」という。)又は資料の提出を求めること、適当と認める者にその知っている事実の陳述又は鑑定を求めることその他必要な調査をすることができる。

(意見の陳述)

第七十五条 審査会は、審査関係人の申立てがあった場合には、当該審査関係人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、審査会が、その必要がないと認める場合には、この限りでない。

2 前項本文の場合において、審査請求人又は参加人は、審査会の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

(主張書面等の提出)

第七十六条 審査関係人は、審査会に対し、主張書面又は資料を提出することができる。この場合において、審査会が、主張書面又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

(委員による調査手続)

第七十七条 審査会は、必要があると認める場合には、その指名する委員に、第七十四条の規定による調査をさせ、又は第七十五条第一項本文の規定による審査関係人の意見の陳述を聴かせることができる。

(提出資料の閲覧等)

第七十八条 審査関係人は、審査会に対し、審査会に提出された主張書面若しくは資料の閲覧(電磁的記録にあっては、記録された事項を審査会が定める方法により表示したものの閲覧)又は当該主張書面若しくは当該資料の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審査会は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。

2 審査会は、前項の規定による閲覧をさせ、又は同項の規定による交付をしようとするときは、当該閲覧又は交付に係る主張書面又は資料の提出人の意見を聴かなければならない。ただし、審査会が、その必要がないと認めるときは、この限りでない。

3 審査会は、第一項の規定による閲覧について、日時及び場所を指定することができる。

4 第一項の規定による交付を受ける審査請求人又は参加人は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納めなければならない。

5 審査会は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、前項の手数料を減額し、又は免除することができる。

(答申書の送付等)

第七十九条 審査会は、諮問に対する答申をしたときは、答申書の写しを審査請求人及び参加人に送付するとともに、答申の内容を公表するものとする。

行政事件訴訟法

(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

(取消しの理由の制限)

第十条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。

2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

(出訴期間)

第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(執行停止)

第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。

3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。

5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。

6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。

7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。

(裁量処分の取消し)

第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

【参考裁判例】

最判昭和63年7月1日第二小法廷判決・裁判集民事154号261頁,判例時報1342号68頁(抜粋)

「医師法七条二項によれば、医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号)に該当するときは、被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は、その免許を取り消し、又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが、この規定は、医師が同法四条二号の規定に該当することから、医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し、そうまでいえないとしても、医師としての品位を損ない、あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし、これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。したがつて、医師が同号の規定に該当する場合に、免許を取消し、又は医業の停止を命ずるかどうか、医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは、当該刑事罰の対象となつた行為の種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響のほか、当該医師の性格、処分歴、反省の程度等、諸般の事情を考慮し、同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ、その判断は、同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで、医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故、厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。」