新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1576、2015/01/05 14:55

【商事、会社法、全部取得条項付種類株式の意義、問題点、宇都宮地方裁判所平成22年3月30日判決】

特定株主の株式を買い取る方法

質問:
30年前に友人と会社を設立し運営してきましたが、5年前に友人とケンカしてしまい、その友人は退職してしまいました。身内でやってきた会社なので、株主総会の連絡や、臨時株主総会の運営など、やりにくさを感じています。そこで、退職した友人に株式の買取を打診しましたが拒否されてしまいました。このような場合、株式を強制的に買い取る手段はないのでしょうか。



回答:

1、 平成18年に施行された会社法で、「全部取得条項付種類株式」の制度が導入されており、株主式総会で定款変更を行い、現在の普通株式を全て「全部取得条項付種類株式」に変更した上で、この株式を取得することを株主総会で決議すれば取得することができます。

2、 ただし、これらの手続きは、相手方株主の意思に反して行われるものですので、相手方の反発が予想されます。株主総会の決議にあたって、取締役は全部取得条項付株式の全部を取得することが必要な理由を説明する義務が課せられています。一連の株主総会の決議が無効であるとか、また、取消請求するという主張や裁判が提起される可能性がありますので、十分な準備が必要です。

3、 会社法関連事例集864番816番899番861番708番862番764番607番参照。

解説:

1、全部取得条項付種類株式

  平成18年に施行された会社法で、「全部取得条項付種類株式」の制度が導入されており、株式総会で定款変更を行い、現在の普通株式を全て「全部取得条項付種類株式」に変更した上で、この株式を取得することを株主総会で決議すれば取得することができます。

  全部取得条項付種類株式は、会社法107条1項3号および108条1項7号で定められた種類株式で、株主総会の特別決議により会社が、当該株式を取得することができる旨が定款に定められた種類株式です。会社再編、企業買収、M&A、営業譲渡の手段として、いわゆる「100パーセント減資」を可能にするために導入された制度です。従来株主の株式を全て会社が一旦取得して、これを、第三者に一括して売却したり、他の会社に合併させたりすることができる制度です。会社の経営がおもわしくない時にこれを再生、する方法は、前述のようにいろいろありますが、経営方針について株主間に対立があり迅速な経営刷新ができない場合、本来であれば個々の株主から個別的に同意を得て株式を取得しなければならないのですが、それでは迅速な会社内の意思統一、経営方針の迅速な転換、負債脱却ができませんので一定の割合の決議要件(株主の過半数が株主総会に出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数)で株式を会社側が強制的に取得することができる制度(株式)です。

会社法107条(株式の内容についての特別の定め)
第1項 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
三号 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

108条(異なる種類の株式)
第1項 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
七号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。

  会社が定款変更する場合も、全部取得条項付株式の取得を決定する場合も、株主総会の特別決議が必要です(会社法309条2項3号、11号)。「株主総会の特別決議」とは議決権を行使することができる株主の過半数が株主総会に出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で決議することです。従前からの普通株式の株主にとっては、全部取得条項付株式への変更は意思に反して株式を失うことになり不利益と言えます。そこで、従前の株主の利益を保護する必要があることから、定款変更の特別決議を必要としています。更に、具体的な会社の株式取得に際しても、株主に不利益がないように次のとおり株式取得の対価等についての説明義務を会社に貸し、更に株主総会の特別決議が必要としています。

  全部取得条項付種類株式の取得を決議する株主総会では、次の事項を定める必要があります(会社法171条1項)。また、この議題を提案する取締役は、株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法171条3項)。

一  全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(取得対価)についての次に掲げる事項
イ 当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法
ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
二  全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項
三  株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日

  取得対価が金銭等であるときは、いわゆる財源規制が掛かり、対価の総額が、効力発生日における分配可能額を超えることはできません(会社法461条1項4号)。

第461条(配当等の制限)
第1項 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
四号 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得

  このため、実務上は、全ての株主に対して、財源規制の対象外となる当該株式会社の別の種類の株式を交付し、一部の株主に対して、1株未満の株主に対する対価を交付する手段が採られることがあります(会社法234条1項2号)。対価は競売による売却額が原則ですが、上場株式など市場価格の存在する株式については市場価格、市場価格のない株式については、裁判所の許可を得て一株純資産に相当する金額を交付することができます(会社法234条2項)。1株未満の株主に対する交付対価についても財源規制が掛かります(会社法461条1項7号)。

第234条(一に満たない端数の処理)
第1項 次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。
二号 第百七十三条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主

過去に上場企業などで行われた全部取得条項付種類株式への定款変更についての告知(プレスリリース)をいくつかご紹介します。
http://www.macromill.com/company/archive/pdf/release_20140327.pdf
http://www.fielding.co.jp/ir/press/2014/pdf/20140520_1.pdf
http://www.toho-re.co.jp/ir/pdfs/h24_kaijijyouhou06.pdf
https://www.toyama-chemical.co.jp/news/pdf/news167.pdf


2、全部取得条項付種類株式への定款変更決議に関する問題点

  ただし、これらの手続きは、相手方株主の同意がなくても行われるものですので、相手方の反発が予想されます。株主総会の決議にあたって、取締役は全部取得条項付株式の全部を取得することが必要な理由を説明する義務が課せられています。これらの説明に納得しない株主からは、一連の株主総会の決議が無効であるとか(株主総会決議無効確認の訴え、会社法830条)、また、取消請求するという主張や裁判(株主総会決議取消の訴え、会社法831条)が提起される可能性があります。

第830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第1項 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
第2項 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。
第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一号 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二号 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三号 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
第2項 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

  株主総会決議無効の訴えの原因は、「決議内容の法令違反」があり、株主総会決議取消の訴えの原因は、「株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」、「株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき」、「株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき」というものがあります。

  なお、総会決議取消の訴えでは、原告適格が株主等に限定されていることから(会社法831条1項)、株主総会の決議により全部取得条項付種類株式の取得によって株主の地位を失った株主が原告となりうるかという疑問が生じます。しかし、当該決議取消の訴えが認容されれば株主の地位を回復すること、また、訴え提起時に厳格に株主の地位を要求すると少数株主の地位が著しく不安定となってしまうとの理由とから、決議取消の訴えの原告適格があると解されています。

  株主の原告適格の問題、株主総会の決議が著しく不当として決議無効といえるか、株主総会の決議が著しく不当として決議取り消しとなるかどうかに関する判例を紹介しますので、参考にして下さい。

宇都宮地方裁判所平成22年3月30日判決、株主総会決議無効確認及び取消請求事件

「2 全部取得条項付種類株式制度を利用して原告らの持株を零にする一連の株主総会特別決議の決議取消事由

(1)特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議
ア 株主総会決議取消しの訴えの原告適格は株主には認められるところ,原告らは,全部取得条項付種類株式制度を利用した株主総会特別決議による自己株式の強制取得により,被告の株主たる地位を失ったことが認められる。しかしながら,〔1〕全部取得条項付種類株式制度を利用した株主総会特別決議の成立要件としては正当な事業目的の存在が法定されていないことから,株主たる地位を失った者が株主総会決議無効確認の訴えによらない限り決議の瑕疵を争うことができないとすると,少数株主の地位が著しく不安定になること,〔2〕全部取得条項付種類株式制度を利用した株主総会特別決議により株主たる地位を失った者は,決議取消しの訴えが認容されることによって直接株主の地位を回復する地位にあること,以上にかんがみると,全部取得条項付種類株式制度を利用した株主総会特別決議により株主たる地位を失った者については,株主総会決議取消しの訴えの原告適格を認めるのが相当である。

イ C及びBは,本件両株主総会において,議決権を行使したことが認められるところ(本件臨時株主総会として審理し採決された議案は,実質的にこれと重複する本件種類株主総会の議案としても審理し採決されたものというべきである。),C及びBは,いずれも本件両株主総会により自己株式を取得する被告から株式の割当てを受ける立場にあった者であるから,上記両名が特別利害関係人に該当することが認められる。

ウ そこで,本件両株主総会の決議が著しく不当であるかどうかについて検討するに,前記認定事実によれば,本件両株主総会における特別決議の目的が,原告らの持株を零にして被告から排除することにあったことが認められるが,他方,〔1〕原告X1が責任者であったF営業所は,被告の会社内部においても独立した立場にあり,被告取締役側とかねてから対立関係にあったこと,〔2〕被告は,原告X1からの借入金の存否を調査し,原告X1に対し債権放棄を求めていたが,原告X1はこれに応じず,会計処理の仕方についても意見を述べていたこと,〔3〕原告X1は,被告がしたF営業所の営業を廃止する臨時株主総会決議の招集手続の瑕疵を争い,株主総会決議取消の訴えを提起し,長男を代表取締役,原告らを取締役とする別会社を設立し,従前と同様の営業を続けたこと,〔4〕被告において,決算上もF営業所分を完全に分離する方針が決定された中,原告らは,本件両株主総会の開催直前に,被告に対し貸付金の返還等を求めて訴えを提起したこと,以上の事実関係のもとでは,本件両株主総会の決議は,F営業所を廃止し,決算からF営業所分を分離するという会社の経営方針の一環として行われたものというべきであり,この点を併せ考慮すると,被告取締役らが原告らを被告から排除することを目的としていたことを踏まえても,決議が直ちに著しく不当であるとまでいうことはできない。

 この点,原告X1は,本人尋問において,被告取締役らは,原告X1が経理に詳しいことから,決算報告書等を原告X1に見せようとせず,被告の決算処理の不正不備を原告X1から指摘されることをおそれて原告X1を排除しようとしたと思うと述べるものの,原告X1のこの推測を裏付ける的確な証拠は見当たらない。また,原告X1は,Yを頼むぞとの先代の言を守って会社のために尽くしてきたものであり,F営業所の廃止決議の後も営業を継続したのは,F営業所の従業員や顧客のことを考えて,そのまま営業を停止するわけにはいかなかったと供述するが,原告X1のそのような行動は,原告X1の会社に対する思いとは別のところで,被告の経営方針であるF営業所を廃止して会社の決算からF営業所分を分離する方向性と真っ向から対立するものとなったといえるから,当裁判所の上記判断を左右することにはならない。

(2)説明義務違反
 決議取消事由の根拠となる説明義務違反を判断するに当たっては,決議事項の内容,質問事項と当該決議事項との関連性,質問前後の説明の内容等に加えて,質問株主が保有する知識ないし判断資料の有無・内容等をも総合的に考慮した上で,平均的な株主が議決権行使の前提として当該決議事項について合理的な理解及び判断を行うことができる状態に達しているかどうかを検討すべきである。
 そこで本件についてみると,〔1〕決議事項の内容は,全部取得条項付種類株式制度を利用して被告が自己株式を全て取得して原告ら以外の者に割り当てることにあること,〔2〕議長のAは,「いったん株主を集約することにより,業務執行体制を強化することが不可欠である」と説明するほか,自己株式の取得対価,割当先,処分価格等についても具体的に説明しており,その説明内容は,原告X1が被告に送付した事前質問状に対する回答にも相当するものであったこと,〔3〕前記認定のF営業所に関する営業や決算を巡る被告取締役らと原告X1との対立の経緯を前提とすれば,原告X1においても,決議事項の内容が原告らを被告から排除することにあることは理解していたものと認めるのが相当であること,以上によれば,本件両株主総会における説明は,その場で上記決議事項の案件について採決した場合においても,株主がその決議事項に関連する事項の意味を理解した上で,これに賛成するか否かについての株主の意思を形成するに足りる程度のものであったということができるから,原告X1の事前質問状に対する被告の回答書を原告X1が本件両株主総会前に受領していなかったことを踏まえても,上記の説明の程度であっても,決議取消事由の根拠となる説明義務違反に当たるとまでいうことはできない(臨時計算書類承認決議に関する説明義務違反については後述する。)。

(3)特別決議に必要な賛成議決権の不足
 前記認定事実及び前掲証拠によれば,本件両株主総会における株主構成は,A1200株,B1万5980株,原告X1 1万6335株,C2万8660株,原告X2 1725株,G100株であったことが認められ,本件両株主総会に出席して賛成したC及びBの議決権数に照らすと,特別決議に必要な賛成議決権が不足していたものと認めることはできない。
3 別紙臨時株主総会決議目録記載3の決議の決議無効事由(取得財源規制違反)
 原告らは,取得財源規制違反の根拠として,第41期(平成17年3月1日から平成18年2月28日まで)までの被告の決算報告書(甲32の1〜4)に計上されていた原告X1の被告に対する貸付金の存在を主張し,裏付証拠として原告X1の流動性預金取引明細表(甲44の1〜19)や足利銀行の被告名義の流動性預金取引明細表等(甲22ないし31)を挙げ,原告X1も本人尋問においてこれに沿う供述をする。
 しかしながら,取得財源規制違反があるというためには,自己株式取得の分配可能額がないことの立証が必要であるところ,前記認定事実及び関連証拠によれば,被告は,原告X1の被告に対する貸付金債権の存在を疑い,原告X1に対し債権放棄を求めており,原告らが被告に対し貸付金等の返還を求める別件訴訟において貸付金の発生原因及びその内容が争われていること(乙10ないし12,20),第44期からは,原告X1を含む親族からの借入金が負債から消去され決算報告書に計上されていないこと(乙19)が認められ,以上に照らすと,原告X1の流動性預金取引明細表や足利銀行の被告名義の流動性預金取引明細表等の入出金の金額において決算報告書の借入金の期末現在高に沿うものがあったとしても,これをもって,原告X1の貸付金債権が存在するものとして,臨時計算書類の臨時損益計算書に計上された1億2389万7409円の特別利益(前期損益修正益)が架空のものであることを裏付ける的確な証拠ということはできず,他に原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。
 したがって,原告らの主張を採用することはできない。」


3、 まとめ

  以上のとおり、特定株主の株式を強制的に買い取るための会社法の規定は整備されていますが、前記の裁判リスクを考慮すると、全部取得条項付種類株式への定款変更、あるいは全部取得条項付種類株式の取得の特別決議には会社経営上の具体的かつ合理的な理由が必要と思われます。現実に、対象となる株主が存在することによって会社経営上の不都合を生じているとか、経営環境の悪化により会社を身売り・合併する必要がある(そうしないと会社が倒産してしまう)などの具体的理由が必要と言えるでしょう。例えば、特定の株主が当該会社の営業と競合する営業を独自に行っており、株主の地位を悪用して社内機密を盗用しようとしているのでこれを阻止したい、というような事情が考えられます。

  ご質問にあるような「身内でやってきた会社なので、株主総会の連絡や、臨時株主総会の運営など、やりにくさを感じています。」という程度の理由では手続きが認められない可能性もあります。具体的事情を弁護士にお話され、手続きが可能かどうか、検討されると良いでしょう。

※参照条文
会社法
(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定)
第百七十一条  全部取得条項付種類株式(第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定めがある種類の株式をいう。以下この款において同じ。)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは、当該金銭等(以下この条において「取得対価」という。)についての次に掲げる事項
イ 当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法
ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
二  前号に規定する場合には、全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項
三  株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(以下この款において「取得日」という。)
2  前項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社を除く。)の有する全部取得条項付種類株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3  取締役は、第一項の株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければならない。
(裁判所に対する価格の決定の申立て)
第百七十二条  前条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、同項の株主総会の日から二十日以内に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一  当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二  当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2  株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
(効力の発生)
第百七十三条  株式会社は、取得日に、全部取得条項付種類株式の全部を取得する。
2  次の各号に掲げる場合には、当該株式会社以外の全部取得条項付種類株式の株主は、取得日に、第百七十一条第一項の株主総会の決議による定めに従い、当該各号に定める者となる。
一  第百七十一条第一項第一号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主
二  第百七十一条第一項第一号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者
三  第百七十一条第一項第一号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者
四  第百七十一条第一項第一号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者

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