新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1649、2015/11/02 17:20 https://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm
【民事、都市再開発法】
第二種都市再開発事業における借家権の保護について
質問:
私が賃借している事務所の敷地が、再開発に掛かることになりました。オリンピックや国際大会に使える競技場も含めた周辺の再開発事業の様です。大家から、「借家契約更新拒絶通知」という内容証明郵便が来てしまいました。更に、再開発の取りまとめをしているという不動産業者から連絡があり、「どうせ残ることはできないのだから、今なら立ち退き料を提示できるので、今すぐこれを受領して退去した方が良い」と言われてしまいました。本当に退去しなければならないのでしょうか。これからどうしたらよいでしょうか。
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回答:
1、再開発事業だとすると、工事のための強制的な退去は認められますが、「賃借り希望の申出」をすれば、工事完了後の新しい建物に再度入居することは可能です。
ご相談のケースは、都市再開発法による第二種再開発事業である可能性が高いでしょう。地方自治体などが主体となって、再開発区域内の権利を全て取得して事業を進める方式です。これは、収用適格事業と言って、土地収用法に基づいて個々の土地や建物や借家権を収用して、補償金を支払うことができる事業となります。
2、収用により強制的に退去させられる可能性があるという意味では、コーディネーター不動産業者が言っていることは完全に間違いというわけではありません。
3、他方、第二種市街地再開発の管理処分手続きでは、「賃借り希望の申出」という制度があり、この手続きで、再開発施工後の施設内に事務所を賃借することができますので、可能な限りこの手続きを試みることをお勧め致します。賃借り希望の場合建て替え中の居住費用、引越し費用等の損失も補償の対象になる可能性があり有利な条件で対応することができると思われます。
4、なお、大家さんや不動産業者からあった「借家契約更新拒絶通知」は、再開発の手続きに入る前に、賃借権の消滅を目的とする大家さんの行動で再開発の手続きとは別に借地借家法の適用の問題となります。そこで、立退きを完了して正当事由を補完する要素となる立ち退き料の提示が妥当なものであるかどうか、法的に検討した上で、相手方に返答を行うべきでしょう。更新拒絶が無効であると考えるなら、その旨、内容証明郵便で通知し、大家が更新期日後の家賃を受領しないということであれば、家賃供託を継続して下さい。大家さんとしては、時間的なこともあり、更新拒絶による賃貸借契約の終了、更には明渡、立退きの請求ということは、時間的なこともあり、しないと考えて良いでしょう。再開発の手続きに入るのを待って前記の「賃借希望の申し出」手続きなどを行うと良いでしょう。
5、都市再開発関連事例集 1513番、1490番、1448番参照。
解説:
1、 ご相談のケースは、都市再開発法による第二種再開発事業である可能性が高いでしょう。管理処分方式と言って、地方自治体などが主体となって、再開発区域内の権利を全て取得して事業を進める方式です。
再開発事業か否かについては、当該区域の都市計画決定の状況をの調査によって確認できます。市区町村の都市計画課に確認し、「○○地区第一種市街地再開発事業」もしくは、「○○地区第二種市街地再開発事業」の都市計画決定が出ているかどうかを調べることができます。
第二種市街地再開発事業であれば、地方公共団体などが事業主体となって、競技場などの公共施設を含めた再開発事業が予定されていることになります。オリンピックやワールドカップや、世界選手権などの国際大会に向けて、競技場の整備が行われている可能性があります。
都市計画法 第69条(都市計画事業のための土地等の収用又は使用)
都市計画事業については、これを土地収用法第三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。
更に、これは都市計画法69条により、土地収用法の適用をすることができる「収用適格事業」となります。つまり、土地収用法に基づいて、補償金を支払って、個々の土地や建物や借家権を収用(強制的に取得)することができる事業となります。
2、 従って、収用により強制的に退去させられる可能性があるという意味では、コーディネーター不動産業者が言っている「どうせ残ることはできない」ということは完全に間違いというわけではありません。建物借家権の収用についての根拠規定は、土地収用法5条2項です。
土地収用法第5条(権利の収用又は使用)
第2項 土地の上にある立木、建物その他土地に定着する物件をその土地とともに第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらの物件に関する所有権以外の権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。
しかし、都市計画決定された第二種市街地再開発事業が、法令上、土地収用法の規定を適用することができるとしても、実際の市街地再開発事業において、土地収用法による強制取得の手続きだけで用地買収が行われることは一般的に稀なことです。
すなわち、土地収用法による、収用のためには、事前説明会を開催(土地収用法15条の第14)し、公聴会を経た上で(土地収用法23条)、国土交通大臣や都道府県知事の事業認定(土地収用法16条)を受けたり、権利取得のために収用委員会の裁決申請(土地収用法39条)をするなど、複雑な手続きが必要ですし、事業認定や裁決取り消しを求める行政訴訟を起こされるリスクもあるからです。土地収用法の手続きよりも、都市再開発法の手続きの方が、一般的にハードルが低いと言えます。そのため、第二種市街地再開発事業であっても、できる限り権利者との事前協議や、都市再開発法の手続によって、再開発を進めていこうとするのが一般的な流れとなります。
3、 都市再開発法では、再開発後も同様の建物の賃借を希望する賃借人の希望を尊重し第118条の2第5項で「賃借り希望の申出」という制度を定めています。この手続きで再開発施工後の施設内に事務所を賃借することができますので、再開発により建築される新しい建物の賃借希望する場合、この手続きを試みることをお勧め致します。
都市再開発法第118条の2
第1項 次に掲げる公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、その者が施行者から払渡しを受けることとなる当該宅地、借地権又は建築物の対償に代えて、建築施設の部分の譲受けを希望する旨の申出(以下「譲受け希望の申出」という。)をすることができる。
一号 再開発会社が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、規準及び事業計画の認可の公告
二号 地方公共団体が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、事業計画の決定の公告
三号 機構等が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告
第2項 省略(既登記の権利について争いのある場合)
第3項 省略(未登記の権利について争いのある場合)
第4項 省略(争いがある場合の譲り受け希望の申し出の効果)
第5項 第一項の建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、同項の期間内に、施行者に対し、施設建築物の一部の賃借りを希望する旨の申出(以下「賃借り希望の申出」という。)をすることができる。
第6項 省略(事業計画変更の場合)
第7項 施行者は、譲受け希望の申出をした者の建築物について借家権を有する者から賃借り希望の申出があつたときは、遅滞なく、その旨を譲受け希望の申出をした者に通知しなければならない。
第8項 譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。
(建築施設の部分等)
第百十八条の八 管理処分計画においては、譲受け希望の申出をした者及び特定事業参加者に対しては建築施設の部分を譲り渡すように定め、賃借り希望の申出をした者のうち、譲受け希望の申出をした者の所有する建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)に対してはその所有者が譲り受けることとなる施設建築物の一部を、その他の者に対しては施行者に帰属することとなる施設建築物の一部を賃借りすることができるように定めなければならない。
※国土交通省HPより、第2種再開発事業のフローチャート
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/06sigaichisai.html
都市再開発法51条で、地方公共団体が第二種市街地再開発事業を施行する場合には、「施行規程」及び「事業計画」を定めることとされ、次のような手順で手続きが進行します。
当該区域について、高度利用地区の都市計画決定
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当該区域について、市街地再開発事業の都市計画決定
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地方公共団体の議会により、「施行規程」の議会決議(法52条)
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「事業計画」案を2週間公衆の縦覧に供する(法53条)
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縦覧後2週間の意見書提出期間(法16条2項)
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地方公共団体による、意見に対する通知(法16条3項)
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必要に応じて、行政不服審査法に基づく異議申し立て、又は行政処分取り消し訴訟提起
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事業計画の決定の公告(官報又は地方公共団体の公報)
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30日以内に、土地建物所有者による「譲受け希望の申出」、借家権者による「賃借り希望の申出」(法118条の2)
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管理処分計画の決定(法118条の6)
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契約又は管理処分計画により、施行区域内の土地建物所有権の消滅と対償の給付。
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建築工事
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工事完了公告(法100条)
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工事完了公告の翌日に、所有権の権利取得、借家権の取得(法118条の18)
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権利者の登記(法118条の21)
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借家条件の協議と裁定(法118条の22)
なお、管理処分計画の主な内容(法118条の7第1項各号)は次の通りです。
一 配置設計
二 譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることができるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその見積額並びにその者がその対償に代えて譲り受けることとなる建築施設の部分の明細及びその価額の概算額
四 賃借り希望の申出をした者で施設建築物の一部を賃借りすることができるものの氏名又は名称及び住所
五 前号に掲げる者が賃借りすることとなる施設建築物の一部
六 施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
七 特定事業参加者が譲り受けることとなる建築施設の部分の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所
八 第三号及び前号の建築施設の部分以外の建築施設の部分の明細及びその管理処分の方法
九 新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項
十 第三号の見積額並びに同号及び第六号の概算額の算定の基準日並びに工事完了の予定時期
施行区域内の建物に賃借権を有する賃借人が、開発事業により新築される新しい建物を借りたいという場合は、家賃その他の借家条件に留意しつつ、できる限り、再開発完了後も賃借し続けることができるように、都市再開発法118条の2に定められている「賃借り希望の申出」手続きを着実に行うことをお勧め致します。この申出は、都市再開発法施行規則37条の2第2項で、借家権を有する者であることを証する書面を添付して法令書式に従って手続きすべきことが定められており、法律事務所に相談し、代理人弁護士を依頼して手続きされることをお勧め致します。
4、「借家契約更新拒絶通知」については、借地借家法の適用される場面ですから、正当事由を補完する要素となる立ち退き料の提示が妥当なものであるかどうか、法的に検討した上で、相手方に返答を行うべきでしょう。
借家契約は、建物という居住者や事業者にとって重要な資産を貸借する契約ですので、判例の集積により、貸主の一方的な意思表示により契約を終了させることは原則としてできないこととされ、借地借家法の改正で条文(借地借家法28条)にも明定されています。契約期間が定められている場合でも、特別な事情が無い限り、従前と同じ条件で法定更新(借地借家法26条1項)されるのが原則です。貸主(大家側)からの契約解除又は更新拒絶が有効となる正当事由を具備するためには、借主の損失を補償する相当な経済的な提案(いわゆる立ち退き料の提示)が必要とされています。
正当事由には、貸主側の事情と借主側の事情が相互に影響しますが、借主側の建物を利用する利益が大きい場合は、いわゆる「借家権価格」に基づいた正当事由の提案が必要になると解される事例もあります。借主側としては、借家権価格に基づいた相当額の立退き料の提示の無い更新拒絶意思表示は無効である、という法的な主張をしていくことになります。特殊な地理的条件に基づく営業を行っており、退去することにより事業の営業が成り立たなくなってしますような特殊事情がある場合は、借家権価格に対する割り増しが相当であると判断される可能性もあります。
借家権価格とは、相続税評価基準や、道路収用時の損失補償基準などで用いられる、借家人の経済的利益を算定するための計算により算出される、借家人の有する経済的価値であり、主な計算方法として、「割合方式」、「補償方式」、「差額賃料還元法」の3種類があります。不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合は、それぞれの方式で借家権価格を算出した後で、例えば差額還元7、割合方式1.5、補償方式1.5などの加重平均を行い、鑑定士の評価として金額を出すことが多いようです。この重み付けは、評価対象地の特性を踏まえて算出されます。(参考判例=銀座のビルの立ち退き事案で8億円の立退き料と引き換えに明け渡しを命じた東京地裁平成3年5月30日判決。)
その他、借家権価格の算定などについて、詳しいことは当事務所事例集1448番を御参照下さい。
更新拒絶の通知が無効であると考えるなら、その旨、内容証明郵便で通知し、大家が更新期日後の家賃を受領しないということであれば、家賃供託をすると良いでしょう。
ほとんどのケースで、再開発に先立って、このような賃貸借契約の終了通知や更新拒絶通知が行われることになります。通知に書いてあることを真に受けてしまうと、「自分には賃借権が無い」と思ってしまいますが、賃借権が法的に消滅しているかどうかを決めるのは、最終的には裁判所になります。諦めないで、弁護士に相談して、賃料供託を続けながら前記の「賃借希望の申し出」手続きなどを行うと良いでしょう。
<参照条文>
都市再開発法
(第一種市街地再開発事業の施行区域)
第三条 都市計画法第十二条第二項 の規定により第一種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、第七条第一項の規定による市街地再開発促進区域内の土地の区域又は次に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一 当該区域が高度利用地区、都市再生特別地区又は特定地区計画等区域内にあること。
二 当該区域内にある耐火建築物(建築基準法第二条第九号の二
に規定する耐火建築物をいう。以下同じ。)で次に掲げるもの以外のものの建築面積の合計が、当該区域内にあるすべての建築物の建築面積の合計のおおむね三分の一以下であること又は当該区域内にある耐火建築物で次に掲げるもの以外のものの敷地面積の合計が、当該区域内のすべての宅地の面積の合計のおおむね三分の一以下であること。
イ 地階を除く階数が二以下であるもの
ロ 政令で定める耐用年限の三分の二を経過しているもの
ハ 災害その他の理由によりロに掲げるものと同程度の機能低下を生じているもの
ニ 建築面積が百五十平方メートル未満であるもの
ホ 容積率(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計を算定の基礎とする容積率。以下同じ。)が、当該区域に係る高度利用地区、都市再生特別地区、地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画に関する都市計画において定められた建築物の容積率の最高限度の三分の一未満であるもの
ヘ 都市計画法第四条第六項 に規定する都市計画施設(以下「都市計画施設」という。)である公共施設の整備に伴い除却すべきもの
三 当該区域内に十分な公共施設がないこと、当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。
四 当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の更新に貢献すること。
(第二種市街地再開発事業の施行区域)
第三条の二 都市計画法第十二条第二項 の規定により第二種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、次の各号に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一 前条各号に掲げる条件
二 次のいずれかに該当する土地の区域で、その面積が〇・五ヘクタール以上のものであること。
イ 次のいずれかに該当し、かつ、当該区域内にある建築物が密集しているため、災害の発生のおそれが著しく、又は環境が不良であること。
(1) 当該区域内にある安全上又は防火上支障がある建築物で政令で定めるものの数の当該区域内にあるすべての建築物の数に対する割合が政令で定める割合以上であること。
(2) (1)に規定する政令で定める建築物の延べ面積の合計の当該区域内にあるすべての建築物の延べ面積の合計に対する割合が政令で定める割合以上であること。
ロ 当該区域内に駅前広場、大規模な火災等が発生した場合における公衆の避難の用に供する公園又は広場その他の重要な公共施設で政令で定めるものを早急に整備する必要があり、かつ、当該公共施設の整備と併せて当該区域内の建築物及び建築敷地の整備を一体的に行うことが合理的であること。
(第一種市街地再開発事業又は第二種市街地再開発事業に関する都市計画に定める事項)
第四条 第一種市街地再開発事業又は第二種市街地再開発事業に関する都市計画においては、都市計画法第十二条第二項
に定める事項のほか、公共施設の配置及び規模並びに建築物及び建築敷地の整備に関する計画を定めるものとする。
2 第一種市街地再開発事業又は第二種市街地再開発事業に関する都市計画は、次の各号に規定するところに従つて定めなければならない。
一 道路、公園、下水道その他の施設に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合するように定めること。
二 当該区域が、適正な配置及び規模の道路、公園その他の公共施設を備えた良好な都市環境のものとなるように定めること。
三 建築物の整備に関する計画は、市街地の空間の有効な利用、建築物相互間の開放性の確保及び建築物の利用者の利便を考慮して、建築物が都市計画上当該地区にふさわしい容積、建築面積、高さ、配列及び用途構成を備えた健全な高度利用形態となるように定めること。
四 建築敷地の整備に関する計画は、前号の高度利用形態に適合した適正な街区が形成されるように定めること。
(譲受け希望の申出及び賃借り希望の申出)
第百十八条の二 次に掲げる公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、その者が施行者から払渡しを受けることとなる当該宅地、借地権又は建築物の対償に代えて、建築施設の部分の譲受けを希望する旨の申出(以下「譲受け希望の申出」という。)をすることができる。
一 再開発会社が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、規準及び事業計画の認可の公告
二 地方公共団体が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、事業計画の決定の公告
三 機構等が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告
2 前項の宅地若しくは建築物の所有権又は同項の借地権で既登記のものの存否又は帰属について争いがある場合においては、争いの当事者のうち当該権利の登記名義人又は当該権利に関する仮登記若しくは処分の制限の登記を有する者に限り、同項の譲受け希望の申出をすることができる。
3 第一項の借地権で未登記のものの存否又は帰属について争いがある場合においては、争いの当事者は、同項の譲受け希望の申出をすることができる。
4 前二項の規定により、争いの当事者の一方が譲受け希望の申出をしたときは、争いの他方の当事者は、譲受け希望の申出をしたものとみなす。
5 第一項の建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、同項の期間内に、施行者に対し、施設建築物の一部の賃借りを希望する旨の申出(以下「賃借り希望の申出」という。)をすることができる。
6 前五項の規定は、事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合について準用する。この場合において、第一項中「施行地区」とあるのは「施行地区に編入された土地の区域」と、同項第一号中「規準及び事業計画の認可の公告」とあるのは「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告」と、同項第二号中「事業計画の決定の公告」とあるのは「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告」と、同項第三号中「施行規程及び事業計画の認可の公告」とあるのは「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告」と読み替えるものとする。
7 施行者は、譲受け希望の申出をした者の建築物について借家権を有する者から賃借り希望の申出があつたときは、遅滞なく、その旨を譲受け希望の申出をした者に通知しなければならない。
8 譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。
(管理処分計画の内容)
第百十八条の七 管理処分計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 配置設計
二 譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることができるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその見積額並びにその者がその対償に代えて譲り受けることとなる建築施設の部分の明細及びその価額の概算額
四 賃借り希望の申出をした者で施設建築物の一部を賃借りすることができるものの氏名又は名称及び住所
五 前号に掲げる者が賃借りすることとなる施設建築物の一部
六 施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
七 特定事業参加者が譲り受けることとなる建築施設の部分の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所
八 第三号及び前号の建築施設の部分以外の建築施設の部分の明細及びその管理処分の方法
九 新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項
十 第三号の見積額並びに同号及び第六号の概算額の算定の基準日並びに工事完了の予定時期
十一 その他国土交通省令で定める事項
2 前項第三号の見積額は、同項第十号の基準日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として定めなければならない。
3 第一項第十号の基準日は、第百十八条の二第一項各号に掲げる公告(事業計画を変更して新たに編入した施行地区については、同条第六項において準用する同条第一項各号に掲げる公告)の日(都市計画法第七十一条第一項
に規定する理由があるときは、同項 の規定により事業の認定の告示があつたものとみなされる日)とする。
(建築施設の部分等)
第百十八条の八 管理処分計画においては、譲受け希望の申出をした者及び特定事業参加者に対しては建築施設の部分を譲り渡すように定め、賃借り希望の申出をした者のうち、譲受け希望の申出をした者の所有する建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)に対してはその所有者が譲り受けることとなる施設建築物の一部を、その他の者に対しては施行者に帰属することとなる施設建築物の一部を賃借りすることができるように定めなければならない。
都市再開発法施行規則
第37条の2(譲受け希望の申出等の方法)
第1項 法第百十八条の二第一項 (同条第六項
において準用する場合を含む。)の申出をしようとする者は、別記様式第十七の譲受け希望申出書に、自己が施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者であることを証する書面を添付して、これを施行者に提出しなければならない。
第2項 法第百十八条の二第五項 (同条第六項
において準用する場合を含む。)の申出をしようとする者は、別記様式第十八の賃借り希望申出書に、自己が施行地区内の建築物について借家権を有する者であることを証する書面を添付して、これを施行者に提出しなければならない。
第3項 法第百十八条の五第一項 の規定による申出の撤回をしようとする者は、別記様式第十九の譲受け希望申出撤回書又は別記様式第二十の賃借り希望申出撤回書を施行者に提出しなければならない。
借地借家法
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。