新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1665、2016/01/22 12:00 https://www.shinginza.com/rikon/qa-rikon-zaisanbunyo.htm

【親族 広島高裁昭和38年6月19日決定 大阪高裁昭和40年7月6日決定 】

内縁関係における準財産分与

質問: 20年ほど内縁関係にあった男性と内縁関係を解消することになりました。内縁関係ではありましたが、私は男性の商売を一緒に盛り立てて、その事業の拡大に貢献してきました。内縁関係を解消するに当たり、男性に内縁関係中に築いた財産の分与を請求したところ、婚姻関係にないから、という理由で拒絶されてしまいました。内縁関係では財産分与を請求することはできないのでしょうか。
 内縁の解消の原因が主に私にある場合はどうでしょうか。



回答:
1 婚姻届を提出しない内縁関係の夫婦がその関係を解消する場合にも、離婚をする際と同様に民法の「財産分与」の規定が類推適用されます。このような内縁関係解消時における財産分与を「準財産分与」といいます。

2 婚姻関係にあることを前提とする財産分与の規定が内縁関係の男女においても適用されるのは、財産分与の法的趣旨によると考えられているからです。

 財産分与が認められた趣旨ですが、憲法24条、民法1条の2が定める家庭生活における両性の平等、個人の尊厳保障にあります。本来であれば、離婚により財産的清算を行う場合、夫婦間の財産の清算は不当利得(民法703条)、また一方に精神的被害を負わせた違法行為があれば不法行為(民法709条)により、離婚後の生活に窮する相手方への生活保障は、信義則(民法1条 )、により個別的に請求することになるのですが、これらの請求を夫婦当事者の一般の個別訴訟方式に任せては、離婚により経済的、精神的不利益を受けやすい相手方(特に女性側)に取り不公平な結果になりますので離婚に際しても実質的に両性の平等、個人の尊厳を守るために、 以上の権利を財産分与請求権として一括して請求する権利を認めて 家事事件手続法によりまず裁判所が後見的に介入し当事者主義、弁論主義を制限して職権探知主義(証拠等の収集等が裁判所の裁量的権能として認められる。)を基本的に取り入れ審理します(家事事件手続法 150条、第5項。調停又は審判を選べます。)。すなわち、一般訴訟の勝ち負けではなく両性の本質的平等の実現という合目的目的のもとに手続きが遂行されます。しかし内容は財産的請求の色彩が濃く、最終的には訴訟により請求できることになっています。

判例は、財産分与の性質について、@夫婦が共同で婚姻期間中に築いた財産の清算、A離婚後に経済的弱者となる配偶者の扶養、B有責配偶者からの離婚による慰謝料、であるとしています。そして、これらの財産分与の性質を考えた場合、それが戸籍法上の届出を出さないだけの内縁関係の夫婦に関する場合であっても、法律婚と同様に財産分与の規定を適用させることは問題ないものとしています(広島高裁昭和38年6月19日決定、大阪高裁昭和40年7月6日決定など)。内縁は、役所への届け出以外は法律上の婚姻関係と実体は同一ですから両性の平等、個人の尊厳の実現という財産分与の趣旨から当然類推適用がみとめられることになります。

3 以上のとおり、内縁関係の夫婦であっても、その解消に際して通常の離婚と同様に相手に対して財産分与請求権を有することになります。この内縁関係解消時における財産分与を「準財産分与」と呼びます。

4 財産分与の制度趣旨から考えて、準財産分与が認められるのは、内縁関係の解消の責任があなたにある場合も変わりありません。但し、慰謝料的な財産分与は認められないことになります。

5 なお、財産分与請求権は離婚から2年経過すると時効により消滅するとされていますので、内縁関係の解消についても同様と考えられます。

 具体的にどの財産が準財産分与の対象となるのかなどを含めて、お早めにお近くの法律事務所にご相談されることをお勧めします。

6 関連事例集内縁の関連事例集。1471番,1428番,1235番,1027番,921番,919番,783番,757番,753番,729番,670番,660番,442番,278番,233番,191番,186番,126番,118番,115番,79番,59番,37番参照。

家事事件手続法・家事審判事項に関連する事例集論文1399番,1236番,1132番,1056番,1043番,983番,981番,790番,684番,676番,427番参照。


解説:

1 民法は離婚に際して、夫婦の一方から相手方に対する財産分与に関する規定を設けています(民法第768条)。

(財産分与)
第七百六十八条  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2、3(略)

 この財産分与請求権には一般に以下の3つの性質が含まれていると解されています。
@ 婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産関係の清算
A 離婚後に経済的弱者となる一方配偶者の扶養
B 暴力や浮気など離婚の原因となった有責配偶者からの慰謝料

2 @ 婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産関係の清算

財産分与の話し合いの中で中心となるのは、婚姻期間中に形成された財産の精算です。婚姻期間中に購入した不動産や通常の生活の中で築いた預貯金などが対象となります。これらの財産を夫婦公平に分けます。婚姻期間中に形成された財産であればその名義は問題となりません。

妻が専業主婦であった場合でも、その資産形成については夫婦の協力の上で形成されたものと考え、夫名義の財産についても夫婦共有の財産として財産分与の対象となります。これは、婚姻の効力として、夫婦が互いに協力し扶助しあって生活していくことから、たとえ夫婦の一方の名義で収入があって資産形成されていたとしても、それは夫婦の協力の結果として獲得したものであるから、夫婦共同の財産であるとする考え方によるものです。本邦では昔から「内助の功」という諺があり、家庭内の協力体制によって、外部的な仕事の成功も可能になると考えられてきましたが、これを法律面から評価すると、離婚する際の財産分与請求権(民法768条1項)や、配偶者の法定相続分(総相続財産の2分の1、3分の2、4分の3、民法900条)として現在に受け継がれていることになります。

民法第752条(同居、協力及び扶助の義務) 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

ここで分与の対象となる財産は、あくまでも、婚姻中に協力し合って形成した財産についてのみですので、一方が婚姻前から有している財産や婚姻期間中に(夫婦の協力とは無関係に)相続で取得した財産については、その名義人の固有財産・特有財産とされ、財産分与の対象財産とはなりませんので注意が必要です。

財産分与請求権の行使は、一般民事訴訟手続きではなく、まず家庭裁判所の家事事件手続(家事審判)により行われます。

  家事審判とは、個別的に定められた家庭に関する事件(本件財産分与の決定等)について訴訟手続である民事訴訟法ではなく、非訟事件手続である家事事件手続法に基づき家庭裁判所が判断する審判を言います。私的な権利、法律関係の争いは訴訟事件といい、民事訴訟手続により行われます。民事訴訟とは、国民の私的な紛争について裁判所が公的に判決等により判断を行い強制的に解決するものですから、当事者にとり適正(より真実にあっていること)公平で、迅速性、費用のかからないものでなければなりません(訴訟経済)。

  従って、訴訟事件は、原告被告を相対立する当事者と捉え、公正を担保するため公開でなければいけませんし、当事者の公平を保つため主張、立証、証拠収集について当事者の責任とし(当事者主義、弁論主義といいます。)、裁判所は仮に真実、証拠を発見し気づいたとしても、勝手に当事者の主張を変更し、証拠を提出、収集できないことになっています。更に、紛争の公的早期解決のため迅速に、費用がかからないようにその進行について積極的に訴訟指揮が行われます。しかし、事件の内容によってはこのような対立構造になじまない紛争があります。権利の存否(事実関係の有無、当事者の勝ち負け)が問題となる紛争ではなく、離婚時に親権者を定めたり、両親の養育費を定めたり、当事者の実質的利害をどのように調整すべきか問題となるような紛争です。

  すなわち、当事者に任せておいては事件の真の解決につながるか問題があり、国家、裁判所が後見的、裁量的判断を求められる事件があります。これが非訟事件です。非訟事件については、基本的には非訟事件手続法があり、個々の非訟事件について個別的に法令を定めて事件の性質に合った非訟手続を用意しています。家事審判とは非訟事件の中の、家庭に関する事件をさし、家事事件手続法はその手続を規定しています。非訟事件の基本構造は、事件の性質上合理的解決のため裁判所が裁量権を有し、後見的に介入し民事行政的作用の面があり、攻撃し相対立する当事者という形は取っていません。当事者の意見にとらわれず合理的解決を目指しているので、事件の内容を公開せず(非公開、非訟事件手続法13条)、国家が後見的立場から主張、証拠、収集について介入し自ら証拠収集ができ、主張に対するアドヴァイスができる事になっています(職権探知主義といいます。非訟事件手続法11条、当事者主義に対立する概念です。)。訴訟の指揮、進行も迅速性を最優先にせず、訴訟経済もさほど強調されません。この趣旨から本件も判断されます。本件の財産分与請求も家事審判事項ですが(協議が出来ないときは調停又は審判を求めることができるます。財産的色彩が強く離婚が前提になりますから離婚訴訟においても請求することが可能です。


なお、有責配偶者から財産分与請求ができるか否かについて、広島高裁昭和38年6月19日決定は、

「よつて一件記録を精査し、抗告人及び相手方各本人審尋の結果をも斟酌して考えるに、凡そ離婚による財産分与の制度は、婚姻中に夫婦の一方が取得した財産はもとより、婚姻生活を通じて維持し得た財産も、夫婦という共同生活における協力関係からいつて、実質的には夫婦の共有に属するものとみて、離婚の場合これを精算するというのが中心的な根拠をなすものであるから、離婚による財産分与請求権は、離婚につき有責不法の行為のあつたことを要件とする慰藉料請求権とその本質を異にする。従つて、夫婦の一方に離婚につき有責不法の行為がなかつたとしても、これを理由に財産分与を拒否し得ない」

として、有責配偶者からの財産分与請求を認めています。財産分与の両性の本質的平等、個人の尊厳の確保という趣旨から当然適用されます。


3 A 離婚後に経済的弱者となる一方配偶者の扶養

 離婚によりどちらか一方が経済的に困窮するような場合、例えば、病気で就労が困難な状況にある、専業主婦だったので直ちに生活していくだけの経済的基盤を整えられない場合などに、一方当事者からその生計を助けるため、定期的に一定額が支払われることになります。憲法24条の内容を具現する財産分与の趣旨から認めらることになります。

4 B 暴力や浮気など離婚の原因となった有責配偶者からの慰謝料

 これは離婚の原因を作った有責配偶者から相手方に支払われるものです。離婚時に相手方に財産を請求する権利としては、財産分与請求権以外に一方当事者から有責配偶者への慰謝料請求権もありますが、この慰謝料請求権は、財産分与請求権に含まれるものとは異なる性質を持つと考えられています(最判昭和46年7月23日判決。制度趣旨から当然の判断です。)。しかし、いずれにしても金銭による解決を図られるため、両方をあわせて請求し、支払われるケースがほとんどです。なお、財産分与において有責配偶者から支払われる慰謝料の額が精神的苦痛を慰藉するに足らないと考える場合には、別途慰謝料請求を行うことも可能ですが、財産分与の審判の中で判断されたとされる場合には、追加で請求することはできないとされています(大阪高裁昭和40年7月6日決定)。

最判昭和46年7月23日判決

『離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。』


4 財産分与規定の内縁関係への適用

 では上記のような性質を含む財産分与請求権が内縁関係の解消に際しても認められるか否かについて、裁判所は次の様に判断しています。

広島高裁昭和38年6月19日第三部決定

「ところで、原審の右措置は、内縁解消による財産分与の申立が同法第九条第一項乙類第五号に該当するとすれば適法であるが、しからざる限り不適法というべきところ、右は結局内縁関係においても法律上の婚姻について認められる民法の財産分与に関する諸規定が準用せられるかどうかによつて決せられるべきものと解するから、右準用の当否について当審の見解を明らかにする。
 およそ、内縁が実質的には法律上の婚姻と同一の夫婦共同生活関係を意味するものであり、ただ単に届出を欠くに過ぎないというものであるとすれば、戸籍法所定の届出を婚姻の成立要件とした民法の理念に反しないかぎりこれに対し婚姻と同一の法律的取扱いをすることは、あながち不当とはいえない。現行民法が制度として法律婚主義を採用している以上、事実婚である内縁に法律婚である婚姻について認められるすべての法律効果を与えることのできないことは、当然というべきで、例えば、氏の変更、出生子の嫡出子たること、姻族関係の発生等の婚姻の効果は内縁については認めるべきではない。けだし、これらは戸籍法による婚姻の届出を前提とするものであり、かつ夫婦以外の第三者の身分関係にも影響を及ぼすものであるから、法律上の婚姻についてのみこれを認むべきことは、法律婚主義による現行制度の基本的要請のひとつといえるからである。これに反し、夫婦間の同居、協力、扶助の義務、婚姻費用の負担、日常家事債務の連帯責任、帰属不明財産の共有推定等の婚姻の効果は、いずれも内縁についてもこれを認めてしかるべきである(婚姻費用の負担につき最高裁判所昭和三二年(オ)第二一号、同三三年四月一一日第二小法廷判決参照)。けだし、これらは夫婦間の共同生活関係自体を規整するものであつて、これによつて第三者に不利益を与える虞れもないから、戸籍簿上公示された婚姻に限つてこれを認めるべき絶対の必要なく、一方内縁も事実上の夫婦共同生活関係である以上、これらの法律効果を認めてその妥当な規整をはかる必要のあることは法律上の婚姻と同様であるからである。
 そこで、財産分与請求権について考えるに、財産分与の本質は第一義的には離婚の際における夫婦共同生活中の財産関係の清算であり、第二義的には離婚後の扶養及び有責配偶者から無責配偶者に対する離婚に伴う損害の賠償であると解されるが、そうだとすれば、財産分与は、婚姻の解消を契機としてなされるものではあつても、現に存した夫婦共同生活関係を最終的に規整するものともいうべく、かつこれによつて直接第三者の権利に影響を及ぼすものではないから、内縁についても、これを認めるのが相当であるこの点に関し、内縁配偶者の相続権の有無が、権衡上一応考慮されるが、右相続権の有無は当然他の相続人の権利に影響を及ぼす関係上、その地位の公示が望まれる点において財産分与請求権とは異る面を有するから、内縁配偶者の相続権が否定せらるべきであるとしても、同様にその財産分与請求権が否定せられるべきであるとの論拠にはならない。そして、右の解釈は、死別における内縁配偶者は、相手配偶者からの生前贈与、遺贈等により、或いは相手配偶者の相続人からの法律上または事実上の扶助によりその地位を保護されることを予想し得るに反し、不和による内縁解消における配偶者は右の如き保護を通常期待できない点からみて、内縁配偶者にとつては相続権以上に財産分与請求権を必要とする事情が切実であるという実際問題にもこたえるものであると考える。
 以上述べた如く、内縁においても配偶者は法律上の婚姻におけると同様財産分与請求権を有するのであるから、本件について適法な審判の申立があるものとした原審の前記措置には何等違法はなく、この点に関する抗告人の主張は採用できない。」


これは単に婚姻届を提出していないことだけをもって、夫婦としての共同生活関係を維持している内縁関係について「夫婦間の同居、協力、扶助の義務、婚姻費用の負担、日常家事債務の連帯責任、帰属不明財産の共有推定等の婚姻の効果は、いずれも内縁についてもこれを認めてしかるべき」としている以上、「財産分与の本質は第一義的には離婚の際における夫婦共同生活中の財産関係の清算であり、第二義的には離婚後の扶養及び有責配偶者から無責配偶者に対する離婚に伴う損害の賠償である」と解されるので、「現に存した夫婦共同生活関係を最終的に規整するものともいうべく、かつこれによつて直接第三者の権利に影響を及ぼすものではないから、内縁についても、これを認めるのが相当である」と考えるからです。つまり、婚姻関係を提出したことによる効果(嫡出子や相続等)を受けられないのは仕方がないとしても、築いた財産を関係解消時に二人で分けることは第三者の権利に影響を与えるものではないから婚姻届を提出したか否かの違いによって、規定の適用の有無を問わないということになります。


5 具体的手続き

 以上のように、実体法において、財産分与規定の準用が認められますので、裁判所を通じた手続きを利用して、請求することができます。

 管轄は相手方住所地の家庭裁判所で、「内縁関係調整調停」を申し立てることができます。調停での話し合いが不調のときは、家事審判に移行し、裁判所の審判が下されることになります。

参考URL、家庭裁判所解説ページ
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_19/
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_04/

6 終わりに

 以上の通り、財産分与の性質と内縁関係解消においても離婚と同じように財産分与の規定が適用(類推適用、準用)されることになり、相手の男性から財産の分与を受けることは可能です。なお、ここで類推適用というのは、法律に規定されていない事項(本件では内縁関係における財産分与請求権)について、当該法律の制度趣旨を考慮して、裁判所が、類似する事案についての法令(本件では法律婚における離婚時の財産分与請求権)を、法解釈によって適用することを言います。また、準用というのは、当該法律(法律婚における離婚時の財産分与請求権に関する民法768条)に直接規定されていないものの、他の法令や法解釈により、当該法令を適用することを言います。

 内縁関係にあることは、健康保険証や住民票などで証明することが可能です。例えば、住民票に同一世帯に内縁配偶者として転入したときは、「夫(未届)、妻(未届)」などと記載されます。しかし、婚姻届を提出し、婚姻開始日及び解消日がはっきりしている離婚の際の財産分与と異なり、内縁関係解消における準財産分与の場合には、いつから内縁関係にあるのか、あるいは、内縁関係が解消されたのはいつなのかについて具体的な日時を証明することが難しいケースも考えられます。はっきりとした内縁関係にあった期間を証明することが難しいような場合には、分与の対象となる財産の範囲の特定に影響を及ぼします。また、準財産分与については、重婚的内縁関係の場合にも適用されますので、この場合にはさらに複雑となる場合も考えられます。

 いずれにしても、相手が渡さないと主張している以上紛争となることは明らかですので、早急に財産に関する資料を集め、お近くの法律事務所にご相談にいかれることをお勧めします。


≪関連判例≫

@慰謝料請求関連の判断

大阪高裁昭和40年7月6日決定

『内縁関係の生前解消につき,事情によつて、内縁の夫婦の一方から他方に対し、財産分与に類した財産的供与を請求することができ、これにつき、財産分与の規定を類推すべく、右請求につき、財産分与を手続上規定した家事審判法第九条第一項乙類の審判を類推し、準財産分与の審判を求めることができるものと解すべく、これと同趣旨の原審の判断は相当であり、これに反する抗告人の主張は採用しない。
 本来の財産分与の請求には、(1)夫婦共同生活中の共通財産の清算、(2)離婚を惹起した有責配偶者の離婚そのものに起因する相手方配偶者の損害の賠償、(3)離婚後の生活についての扶養の三つの内容を含み、家庭裁判所が財産分与の審判をなすときは、前記三つの事情を審理して審判をするのが相当であると解せられ、右審判が確定した後は、慰藉料の請求は許されないものと解すべきものであつて、本件のような準財産分与の請求の審判には、以上のことが類推されるものと解すべきであるから、原審が慰藉料請求を包含して審判したことは相当である。』


A内縁についての判断

広島高裁昭和38年6月19日決定

『およそ、内縁が実質的には法律上の婚姻と同一の夫婦共同生活関係を意味するものであり、ただ単に届出を欠くに過ぎないというものであるとすれば、戸籍法所定の届出を婚姻の成立要件とした民法の理念に反しないかぎりこれに対し婚姻と同一の法律的取扱いをすることは、あながち不当とはいえない。現行民法が制度として法律婚主義を採用している以上、事実婚である内縁に法律婚である婚姻について認められるすべての法律効果を与えることのできないことは、当然というべきで、例えば、氏の変更、出生子の嫡出子たること、姻族関係の発生等の婚姻の効果は内縁については認めるべきではない。けだし、これらは戸籍法による婚姻の届出を前提とするものであり、かつ夫婦以外の第三者の身分関係にも影響を及ぼすものであるから、法律上の婚姻についてのみこれを認むべきことは、法律婚主義による現行制度の基本的要請のひとつといえるからである。これに反し、夫婦間の同居、協力、扶助の義務、婚姻費用の負担、日常家事債務の連帯責任、帰属不明財産の共有推定等の婚姻の効果は、いずれも内縁についてもこれを認めてしかるべきである(婚姻費用の負担につき最高裁判所昭和三二年(オ)第二一号、同三三年四月一一日第二小法廷判決参照)。けだし、これらは夫婦間の共同生活関係自体を規整するものであつて、これによつて第三者に不利益を与える虞れもないから、戸籍簿上公示された婚姻に限つてこれを認めるべき絶対の必要なく、一方内縁も事実上の夫婦共同生活関係である以上、これらの法律効果を認めてその妥当な規整をはかる必要のあることは法律上の婚姻と同様であるからである。
 そこで、財産分与請求権について考えるに、財産分与の本質は第一義的には離婚の際における夫婦共同生活中の財産関係の清算であり、第二義的には離婚後の扶養及び有責配偶者から無責配偶者に対する離婚に伴う損害の賠償であると解されるが、そうだとすれば、財産分与は、婚姻の解消を契機としてなされるものではあつても、現に存した夫婦共同生活関係を最終的に規整するものともいうべく、かつこれによつて直接第三者の権利に影響を及ぼすものではないから、内縁についても、これを認めるのが相当であるこの点に関し、内縁配偶者の相続権の有無が、権衡上一応考慮されるが、右相続権の有無は当然他の相続人の権利に影響を及ぼす関係上、その地位の公示が望まれる点において財産分与請求権とは異る面を有するから、内縁配偶者の相続権が否定せらるべきであるとしても、同様にその財産分与請求権が否定せられるべきであるとの論拠にはならない。そして、右の解釈は、死別における内縁配偶者は、相手配偶者からの生前贈与、遺贈等により、或いは相手配偶者の相続人からの法律上または事実上の扶助によりその地位を保護されることを予想し得るに反し、不和による内縁解消における配偶者は右の如き保護を通常期待できない点からみて、内縁配偶者にとつては相続権以上に財産分与請求権を必要とする事情が切実であるという実際問題にもこたえるものであると考える。
 以上述べた如く、内縁においても配偶者は法律上の婚姻におけると同様財産分与請求権を有するのであるから、本件について適法な審判の申立があるものとした原審の前記措置には何等違法はなく、この点に関する抗告人の主張は採用できない。』


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