新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1674、2016/02/25 17:12 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

【民事、強姦罪の被害者から加害者に対する損害賠償請求の方法、東京地方裁判所平成24年8月8日判決】

強姦被害の損害賠償請求


質問:強姦の被害者から取りうる法的手段について教えて下さい。
実は、私の娘が強姦の被害に遭ってしまいました。娘の話では、職場の上司と残業していたところ,個室で娘と二人っきりになったのに乗じて,突然後ろから羽交い絞めにされ,抵抗できないまま性交を強要させられてしまったということです。娘はそれ以来精神を病んでしまい,精神科に通院せざるを得ない状況です。この上司を許すことはできません。既に事件から2日が経過してしまったのですが,今後この上司に対して娘の慰謝料請求など,制裁を与えたいと思いますが,今後,どのように動いていけばよいでしょうか。



回答:
1 あなたの娘さんは,刑法上の強姦罪の被害者としての立場を有しています。したがって,まずは管轄の警察署(検察庁)に対して,強姦罪として刑事告訴をし,刑事事件として立件をしてもらうことが必要です。時間の経過により事件受理の可能性が低くなりますので,可能な限り早く警察署あるいは弁護士に相談することが重要です。
  強姦罪として刑事事件化することにより,先方に金銭支払(示談)をするインセンティブが働きます。強姦罪は,親告罪であり告訴が取り消された場合には,処罰条件を満たさないものとして不起訴処分となるからです。

2 刑事告訴に並行して,民事上の損害賠償請求を行うこととなります。請求できる損害項目としては,(1)治療費,(2)休業損害,(3)通院慰謝料,(4)強姦による慰謝料といったものが考えられます。まずは,請求のための損害を証明する証拠(診断書,通院領収書,休業損害証明書など)を集める必要があります。

  損害の金額の算定については、集めた資料に基づいて、(1)については、実際に支払った金額、(2)については、事件当時の収入を基準に休業した日数で計算、(3)については、交通事故の場合の通院慰謝料同様に計算します。(3)の強姦による慰謝料については,強姦行為の悪質性,受けた精神的苦痛の大きさなどの諸般の事情に鑑み,算定され相場というようなものはありません。特に刑事事件との関係で、告訴の取消を条件に高額の慰謝料で解決される場合もあります。

  損害賠償請求の方法としては,裁判外の示談交渉,民事訴訟,損害賠償命令(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」)といった手段があります。もっとも早期解決になるのは,裁判外の示談交渉になります。示談交渉の際には,刑事告訴を並行し示談に応じることとメリット(告訴取消による不起訴処分)を先方に認識させつつ,適切な額の損害の支払を認めさせる交渉態度が重要になります(慰謝料請求の民事裁判となると200万円程度の慰謝料しか認められないのが一般的です。刑事事件との関係もありますので、できるだけ高額の慰謝料を考えるのであれば、起訴前に示談するのが良いでしょう)。警察への被害申告(告訴状の作成及び警察への同行),加害者との示談交渉・訴訟手続については,専門的な経験も必要となりますので,お困りの場合には弁護士への相談をお勧めします。

3 性犯罪を受けた場合の慰謝料請求に関する事例集としては,その他792番1249番1615番等を参照してください。

解説:

第1 現在置かれている法的な地位

1 強姦罪の成立(犯罪被害者としての立場)

まず,前提としてあなたの娘様が置かれている法的な地位について説明していきます。

   あなたの娘さんの上司が,密室の中で娘さんを後ろから羽交い絞めにし,抵抗できない状態で,性交を強要したということですので,あなたの上司には刑法上の強姦罪(刑法177条)の成否が問題となります。

   強姦罪とは,暴行または脅迫を用いて13歳以上の上司を姦淫した場合に成立する犯罪であり,3年以上の有期懲役という法定刑が定められており,性犯罪の中でもかなり重い類型の犯罪になります。

   強姦行為は,強制わいせつの中でも,女性の性的自由の侵害する程度が著しく大きいため,更に重く処罰するために別罪として設けられたものです。

   強姦罪における「暴行・脅迫」とは,被害者(あなたの娘様)の反抗を著しく困難にする程度のものが必要とされており,暴行・脅迫の程度,時間的・場所的状況,被害者の年齢,精神状態などの諸般の事情を元に客観的に判断されることとなります(最判昭和33年6月6日判決)。

   今回のケースで言えば,夜遅くの誰もいない会社の密室という逃げられない状況の中で,突然後ろから羽交い絞めにされ抵抗ができない状態になり,そのまま性交を強要されているのですから,客観的な状況としては,被害者が抵抗することは著しく困難であり,強姦罪における「暴行・脅迫」として法的評価するには十分といえます。

2 強姦罪の被害者としての立場と刑事告訴

   以上の検討により,上司には強姦罪が成立し,今回のあなたの娘様は強姦罪の被害者としての立場を有することになります。強姦罪の被害者となった場合には,警察に対して刑事告訴をすることができます。刑事告訴とは,犯罪事実を申告し,加害者を処罰することを捜査機関に対して求める意思表示であり,所轄の警察署ないし検察庁にて行います。

   そして,強姦罪はいわゆる親告罪(刑法180条)というものであり,刑事告訴をしない限り,加害者の公訴を提起することができません。すなわち,告訴がない限り加害者に刑事処罰を与えることができないこととなります。

   強姦罪などの性犯罪が親告罪とされたのは,犯罪の性質上,これを刑事裁判にかけることによって被害者の望まない事実関係が明らかになり,被害者の名誉・プライバシーなどが害されることとなってしまうことから,刑事裁判にかけるか否かを被害者の意思に委ねるという目的で設けられています。

   被害者にて刑事告訴をした場合には,捜査機関が所定の捜査をした後,検察官が最終的な処分(公訴を提起するか,不起訴処分とするか)を決定することとなりますが,検察官が公訴を提起するまでは,告訴を取り消すこともできます(刑事訴訟法237条1項)。一方で,一度刑事告訴を取消した場合には,再度告訴をすることはできません(刑事訴訟法237条2項)。

3 強姦罪の立件,速やかな告訴の必要性

   上記のとおり,あなたの上司は強姦罪の加害者ともなり得る立場ですが,これに対する処罰を求める場合には,速やかに所轄の警察署に対して刑事告訴ないし被害届を出す必要があるでしょう。

   特に今回の強姦罪のように密室で行われる犯罪については,物的証拠が少なく,最終的には被害者であるあなたの娘様が述べている事実関係が正しいこと(供述の信用性があること)が捜査機関の側で立証しなければなりません。そこで重要になるのが,被害者の供述です。そして,人の記憶は時間の経過とともに薄れていくものであり,その供述の信用性が高いものと判断されるには,被害にあった直後に警察に相談して,事実関係を詳細に供述調書にしておく必要があるのです。また,警察等の現場検証なども必要になります。

   性犯罪は不起訴率が高い犯罪類型ともいわれていますが,これは上記のとおり立証手段が被害者の供述によるところが大きく,検察官としても起訴するのに慎重な判断を要することが大きな理由になります。

   以上より,本件で加害者である職場の上司を処罰することを求める場合には,速やかに刑事告訴をする必要があります。被害があってから時間が経過してしまった場合には,警察署から立件できないとして被害届及び告訴の受理をしない場合もありますので,この点からも速やかに警察への相談が必要になります。

   そして,この刑事告訴及びそれに伴って作成される捜査資料,刑事上加害者が処罰されたことは,後述の慰謝料を含めた民事上の損害賠償請求においても重要な証拠になります。

   強姦罪の刑事告訴に関しては、その後の取り調べや、裁判手続きにおいて被害者としていやな思いをするのではないかと心配されるかと思います。確かに、捜査の段階で事件のことに関して詳細な説明が必要になりますから、女性としていやな思いをされることは間違いありません。しかし、加害者に制裁を加えるためには必要な行為と考えて下さい。また、公の場所で裁判がどうしても嫌だという場合は、起訴されるまでは告訴の取消はいつでもでき、告訴が取り消されれば裁判はできなくなります。少しずるい考え方かもしれませんが、民事で慰謝料を請求する際、刑事告訴がされていると交渉を有利に進めることもできます。従って、早期に告訴だけはしておく方が良いと言えます。

4 強姦に伴う民事上の請求(慰謝料など)

   上記のとおり,刑事事件としては,強姦罪の被害者としての立場を有することになりますが,今回の強姦被害に伴って生じた精神的苦痛への損害賠償(慰謝料)については,民事事件となりますので捜査機関は関与することはできません。したがって,代理人弁護士を立てない限り,ご自身で請求するのが原則になります。しかし、請求の金額や方法によっては脅迫や恐喝罪に当たる場合も考えられますのでできる限り弁護士を依頼するのが良いでしょう。

   強姦被害に遭った被害者は,加害者による不法行為を受けたものとして,損害賠償請求が可能です(民法709条,710条)。賠償の対象となるのは,強姦行為と相当因果関係が認められる損害になります。すなわち,強姦の事実から通常生じることが社会通念上相当と認められるものに限られます。

   どのような損害が賠償対象として認められるかについては,東京地方裁判所平成24年8月8日判決が参考になります。同判例は,強姦による被害を受けた被害者がPTSD(ストレス障害)を生じたものとして,加害者に対して損害賠償請求をした事案でした。

   本判決では,被害者に認められた損害として,(1)治療費などの積極的に支出した費用,(2)通院を余儀なくされたことによる通院慰謝料,(3)通院により休業を余儀なくされたことによる休業損害,(4)強姦の被害を受けたことによる慰謝料といったものが損害として認められています。

   このうち,(4)の強姦行為を受けたことによる精神的苦痛への慰謝料ですが,この点は裁判所の裁量に委ねられるところが極めて大きいところです。すなわち,強姦に至った経緯,原因,強姦行為の悪質性,被害者の精神的苦痛の程度といった事情を総合的に考慮して決せられることになり,個別の事案によって内容が決まることとなります。慰謝料金額としては,200万円未満の事例が比較的多いものの,性犯罪の中でもかなり重い類型であることから,500万円以上の高額な慰謝料を認められた事案もあります。参考判例では,「何ら非もないにもかかわらず性的暴行を受け,これによって甚大な精神的苦痛を受けたことが認められる・・・。これらの事実,その他本件で認められる諸般の事情を総合考慮」の上,300万円の慰謝料が認められています。

   具体的な加害者への請求の方法については,弁護方法と合わせ第2以下において述べます。


第2 本件における具体的な弁護活動

1 強姦罪としての刑事告訴(刑事事件化の方法)

 (1)次に,具体的な加害者への刑事処罰及び民事上の具体的な請求方法を見ていきます。上に述べたとおり,強姦罪は親告罪であり早期の刑事告訴が重要になります。被害直後は精神的ショックで警察への相談などは困難である場合が多いですが,やはり本罪における被害者供述の重要性に鑑みると,早期の被害相談が極めて重要になります。警察においては,女性警察官による対応など,性犯罪被害者に対しては一定の配慮をしていただけることが通常です。

   そして,強姦罪における刑事告訴は,公訴の提起があるまではこれを取り下げることが可能であり,加害者もこの点は通常認識していることが多いです。すなわち,加害者が刑事告訴された場合,示談交渉を持ちかけ,相当額の慰謝料を支払う代わりに刑事告訴を取消してもらうという解決が可能であり,加害者にとって金銭支払のインセンティブを与えることができ,交渉を有利に進めることができます。

 (2)刑事告訴に際しては,適切な告訴状を作成して,警察署に提出し加害者の厳罰を求めていくことが必要になります。

   告訴状には,犯罪事実として,強姦罪の構成要件(犯罪の成立要件)を元に,いつ,誰が,どこで,どのようにして強姦行為をしたのかを明確に記載することが必要です。合わせ,証拠になるものがあれば,添付資料として付けておくべきでしょう。捜査の初期段階では,客観的な証拠というものは難しいですが,例えば,被害を受けた直後に第三者に相談したメール,第三者の目撃証言,先方が強姦(そうでなくても性行為自体)を認めるような一筆やメール,強姦による精神的苦痛等で通院した際の診断書などが挙げられます。もっとも,加害者の供述状況については,捜査を開始した後に警察等が明らかにすべきものですので,犯罪事実を正確に認めている明らかな証拠までは不要と思われます。

   この点,適切な告訴状の作成,及び警察に対する捜査の開始の説得と言った点については,代理人弁護士を通じて行うことも有用ですので,お困りの場合には,弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 (3)捜査が開始された後は,警察や検察庁から事情聴取があり,告訴調書の作成,被害状況について詳細に供述調書化がされることになります。現場調査など所定の捜査の上,加害者に対する事情聴取(場合によっては逮捕などの身体拘束)を行い,起訴が必要と検察庁が判断した場合には,公判請求がなされ,刑事裁判にて加害者の処罰が決せられることとなります。起訴が不要(事実関係が不明・刑事裁判で有罪の認定が難しいと判断された場合や,被害者からの告訴が取り消された場合)と判断された場合には,不起訴処分となります。

2 民事上の損害賠償請求

 (1)示談交渉及び民事訴訟

    次に,慰謝料などの民事上の損害賠償請求について検討していきます。

    まずは,裁判所を介さない訴訟外の示談交渉が事案の早期解決のためには有用です。

   ア まずは,加害者の住所,その他連絡先を調査する必要があります。今回は職場の上司が加害者ということで,連絡先を知っている場合には,そこへ連絡し,強姦罪で刑事告訴する(予定である)ことを告げつつ,慰謝料その他の損害賠償請求をしていくこと(請求内容を明らかにすること)となります。

     なお、加害者の連絡先が不明な場合には,捜査機関(警察署,検察庁)に対して所定の捜査が終結した後に,確認する必要があるでしょう。警察は被害者連絡制度を設けており,この制度を用いて確認することとなります。また,どうしても連絡先が不明な場合には,公訴提起後に加害者の供述調書の連絡先を確認したり,後述の損害賠償命令制度を利用することが考えられます。

   イ 次に,具体的な請求の内容について検討していきます。上記の参考裁判例のとおり,請求可能な損害としては,以下のものが考えられます。訴訟を見据え,立証のための証拠を収集しておくことが極めて重要になります。

   (ア)治療費などの積極的に支出したもの

     強姦行為によって強い精神的ショックを受け,精神科に通院せざるを得なくなった場合,治療費などの積極的に支出した費用については請求が可能です。この場合,治療に関する明細及び領収書は保管しておく必要があります。また,初期段階の診断書には,今回の強姦行為によって通院していること,それによってPTSDなどの症状が出ていることを診断書に明記していただく必要があるでしょう。

   (イ)通院慰謝料

     交通事故の基準では,通院に伴う慰謝料が損害として認められ,今回のような犯罪被害でも妥当するものです。実際に,参考裁判例では通院慰謝料が損害として認められています。通院慰謝料の金額は,通院期間に応じて決せられます。場合によっては,通院証明書などの発行を病院に求める必要があります。具体的な通院慰謝料の基準は,交通事故における日弁連交通事故センター発行の損害賠償額算定基準などが参考になるでしょう。

   (ウ)休業損害

     強姦行為によって精神的疾患を抱えるなどして,会社を欠勤せざるを得ない状態になった場合,その分の休業損害を請求することが可能です。この場合,会社の協力を得て,休業損害証明書,就労可否証明書などの証拠を作成してもらうことが必要になります。

   (エ)強姦による精神的苦痛に対する慰謝料

     また,強姦行為自体によって精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料も請求可能です。上に述べたとおり,様々な事情を考慮して,最終的には裁判所が決定することとなりますが,強姦罪は性犯罪の中でも悪質な類型であることから,請求額については比較的高額とする必要があるでしょう(200〜500万程度が目安)。その際,強姦行為に至った経緯,行為の悪質性,被害者として受けた精神的苦痛の程度など,慰謝料としての増額要素については詳細かつ説得的な主張が必要となります。

  ウ 以上の損害項目を積み上げた上で,加害者と示談交渉を進めていくことになります。その際は,1で述べたとおり刑事告訴と並行して進めた方が,先方にも示談による解決のインセンティブを与えられますし,示談が成立しなかったとしても供述調書などの証拠や刑事裁判になったという点は,後に裁判手続に移行した場合にも極めて有用な事実となります。

 (2)刑事裁判における損害賠償命令(加害者が公判請求された場合)

    仮に示談が成立しないままに加害者が起訴(公判請求)され,刑事裁判となった場合,その刑事裁判手続において,加害者に損害賠償を命じる手続を利用することもできます。損害賠償命令という制度で,「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」(以下「法」といいます)に規定があります。

    通常の民事訴訟では,刑事事件とは関係なく,訴状を作成し,証拠に基づいて損害等を立証していく必要があり,かなり長期間の手続ですが,子の損害賠償命令制度は,刑事裁判を行った裁判所が,有罪の言渡しをした後,引続いて損害賠償請求の審理をするものであり,刑事裁判の内容をそのまま民事手続に利用することができ,立証の負担を軽減するための手続になります。

    損害賠償命令は,起訴された後,第一審裁判所の弁論の終結までに刑事事件が継続している地方裁判所に申し立てる必要があります。その際,請求の趣旨,請求を特定するに足りる事項,損害の内訳を記載した申立書を裁判所に提出することとなります。

    損害賠償命令の申立てがあった場合,有罪判決が言い渡された後,直ちに損害賠償命令に関する審理期日が開かれます(法30条)。刑事裁判所が申立書の内容を考慮して,最終的な損害賠償命令を下すこととなります。なお,損害賠償命令は迅速な手続であり,審理期日は4回までしか開くことはできません(法30条)。

    ただし,損害賠償命令に対しては,加害者の方で異議を申し立てることができ,その場合には通常の民事訴訟手続に移行することとなります(法34条)。

 (3)以上,強姦罪の被害者として損害賠償をどのように行っていくかについて検討してきました。一番早期解決が見込めるのは,刑事告訴をしながらの訴訟外の示談交渉ということになりますが,その際には,速やかな警察への刑事告訴受理,加害者に対する損害賠償請求,損害の組立て(証拠の収集や慰謝料金額の大きさ),先方への交渉態度・内容といった点が重要になります。

   警察及び加害者との交渉,速やかな損害の回収については,専門的な経験を有する代理人弁護士の助力を得て行うことが有用ですので,お困りの場合には,弁護士に相談されることを強くお勧めします。


<参照条文>
刑法
(強姦)
第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
 第七章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
    第一節 損害賠償命令の申立て等

(損害賠償命令の申立て)
第二十三条  次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項 の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
一  故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
二  次に掲げる罪又はその未遂罪
イ 刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十六条 から第百七十八条 まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪
ロ 刑法第二百二十条 (逮捕及び監禁)の罪
ハ 刑法第二百二十四条 から第二百二十七条 まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
2  損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実
3  前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。

(審理)
第三十条  刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項 に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第二十三条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。
2  審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。
3  損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。
4  裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない

(訴え提起の擬制等)
第三十四条  損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第二十三条第二項の書面を訴状と、第二十四条の規定による送達を訴状の送達とみなす。
2  前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。
3  第一項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
4  前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。



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