再開発組合設立の勧誘
民事|都市再開発法|参加組合員|対策と手続
目次
質問:
駅の近くに店舗を所有し、賃貸しています。このたび、近隣区画の建物を購入した不動産業者より、「区域の建物を建て替えるため、再開発組合を設立しませんか。建築費無料で、床面積1割増しで建てられますよ」と言われました。この区画の建物は築50年程度の建物も多く、近隣地権者の中には、「良い条件だから同意しようか」という動きもあります。本当にこのようなことが可能なのでしょうか。この条件に応じた方が良いでしょうか。大手不動産会社(デベロッパー)が事業協力者として参加組合員になってくれるという話ですが、参加組合員ってどういうことですか?
回答:
1、都市再開発法に基づく市街地再開発事業では、行政と連携して都市計画決定を得て、「容積率の緩和」や、「補助金受給」などの手段により、「建築費無料で床面積1割増しでの建替え」ということも十分に可能性があります。
2、ただし、建築費無料で更に床面積の割り増しを受けることが出来ると言っても、それが最終的にどれくらいの条件になるかは、地権者である相談者の方々と、デベロッパーとの交渉内容次第です。市街地再開発事業を進めるにしても、デベロッパーとの間の建設費や事業費の見積もりについては、交渉の余地があります。交渉により、「建築費無料で床面積2割増し」という可能性もあるのです。
3、市街地再開発事業における「事業協力者」とは、都市再開発事業に関するノウハウを有する不動産会社、建設会社で、再開発の施行者(権利者の組合)に対して、企画提案、手続遂行の助言や、資金調達の協力を行い、再開発事業が円滑に進むよう協力する事業者を言います。
「参加組合員」とは、再開発施行区域内に土地建物の権利を有していない場合でも、権利者の組合の定款で、再開発事業に参加することを認められた組合員であって(都市再開発法21条)、「市街地再開発事業に参加するのに必要な資力及び信用を有するもの(都市再開発法施行令6条)」とされています。通常は、不動産デベロッパーや、大手建設会社(ゼネコン)が、再開発により生じた余剰の床面積を譲り受け、その対価として様々なノウハウを提供したり、解体費用・建築費用を含む事業費の負担をすることになります。
4 再開発に関する関連事例集参照。
解説:
1、市街地再開発事業における地権者のメリット
市街地再開発事業は、都市再開発法第1条の目的に従って施行される事業です。
都市再開発法、第1条(目的)この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
ここで、「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もって公共の福祉に寄与すること」というのは、要するに、市街地の建物の利便性と安全性を高めて、建物の所有者だけでなく、近隣住民も含めた地域全体の利益になるようにしていくということです。
建物の利便性の観点では、新たな建築材料や建築技術や建築工法の開発により、従来は実現出来なかったような建物が建築できるようになったことがあります。例えば、駅前ロータリーの真上に巨大な円形のバリアフリーの歩道橋を設け、ロータリーの周りの高層ビルに、歩道橋から直接アクセス出来るようにしたり、建物の柱を細くして柱の本数を少なくして大空間の利用を可能にしたり、フロアの天井を高くしたり、高層階を増やしたりすることができるようになりました。20階以上の高層建物を建築することが可能となったので、敷地のうち、建物の周りの部分を公開広場として開放することができるようになり、近隣住民も含めた避難経路として広場を活用することができるようになりました。
建物の安全性の観点では、従来の建物を、耐震基準の更新に適合させることがあります。我が国では、宮城県沖地震や、阪神大震災や、東日本大震災など、大きな震災が起こるたびに、建物の耐震基準の見直しがなされ、建築基準法の耐震基準が更新されてきました。見直し前に建てられた建物は、建築当時の耐震基準には適合しているものの、更新後の基準には適合していない状態(いわゆる既存不適格建物)となります。新たな建築技術や解析技術を取り入れた耐震基準に適合させることが望ましいものの、法令では、過去の建物の建て替えまで強制することはできないため、耐震基準の改訂の際には常に、改訂後に新たに建築確認申請を行う建物が新基準の適用対象とされてきました。老朽化した建物を更新することにより、市街地全体として、新たな耐震基準に適合している建物の割合を高めることができ、地域一帯の防災機能を高めることができます。
これらの目的を達成することは地権者(底地所有者)にも利益のあることですが、実際に建物を更新するとなると、「入居者(賃借人)の立ち退き費用、明け渡しの訴訟、それに伴う必要期間」「取り壊し費用」「工事期間の転居先確保」「建物建築費用」が掛かることになり、これらの費用負担が重しとなって、従来なかなか市街地の再開発は進展しない状況がありました。
そこで、国と地方自治体では、都市再開発法を利用しやすくする法令改正に加え、様々な施策を導入することにより、市街地の再開発が円滑に進むように、地権者に対する再開発のメリットを提供しています。国や地方自治体としても、都市機能が更新されることにより、国民経済や地域経済が発展すれば、所得税や法人税や固定資産税の増収が期待できることになりますから、行政目的にも合致する施策ということになります。
(1)容積率の緩和(容積率の割り増し措置)
敷地の容積率は、都市計画に基づき、住居地域や工業地域や商業地域などの用途地域が定められ、それぞれの用途に合わせて容積率の限度も定められていますが、再開発を促進するために、様々な緩和措置が用意されています。従来の建物が、最大容積率の限度一杯で建てられている場合でも、容積率の割り増しを受けることができれば、余った容積率に基づく床面積を、デベロッパーやゼネコンに対して売却することができ、この売却費用と建築費用を等価交換することにより、建築費無料で(あるいは建築費を大幅減額して)建て替えすることができることになります。
(あ)再開発等促進区を定める地区計画
これは建築基準法68条の3で定められた様々な規制緩和で、次のような緩和措置があります。
建築基準法68条の3第1項、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、第五十二条の規定(容積率の限度に関する規定)は、適用しない。第2項、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、第五十三条第一項から第三項まで及び第六項の規定(建蔽率の限度に関する規定)は、適用しない。
第3項、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、第五十五条第一項及び第二項の規定(建築物の高さの限度に関する規定)は、適用しない。
第4項、敷地内に有効な空地が確保されていること等により、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については、第五十六条の規定(斜線制限に関する規定)は、適用しない。
容積率や建蔽率などの制限に関する規定を「適用しない」という過激な条文となっていますが、実際には、再開発促進区を定める地区計画(都市計画)の中で、必要な規制は定められており、無制限に規制が撤廃されているわけではありません。都市計画決定を得る必要がありますので、自治体と協議して、都市計画審議会の決定を経て、都市計画決定がなされることになります。東京では、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンが、この制度を利用して開発されました。3haを超えるものについて運用基準も定められています。
※参考URL、東京都の再開発等促進区を定める地区計画運用基準
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/new_ctiy/katsuyo_hoshin/sai_tiku_1904.html
※参考URL、国土交通省による「再開発促進区」解説ページ
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/68-3saikaihatsu.html
(い)特定街区
特定街区(都市計画法9条19項)は、住居地域や工業地域や商業地域などの用途地域による規制を排除して、「容積率」と「高さの最高限度」と「壁面の位置の制限」を独自に定めることができる街区です。東京では、新丸ビル、日本橋三井タワーなどがこの制度を利用して開発されました。1haを超えるものについて運用基準も定められています。
都市計画法9条19項 特定街区は、市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区とする。
※参考URL、東京都の特定街区運用基準
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/new_ctiy/katsuyo_hoshin/koudo_unyo-kijun_1904.html
(う)高度利用地区
高度利用地区(都市計画法9条18項)は、市街地において細分化した敷地等の統合を促進し、防災性の向上と合理的かつ健全な高度利用を図ることを目的として指定される地区です。壁面の位置の制限、建ぺい率の低減や住宅の確保など、市街地の整備改善と併せて、容積率が緩和されます。都市再開発法に基づく市街地再開発事業は、高度利用地区内等において行われることとなっています。東京では、晴海トリトンスクエア、代官山アドレスなどがこの制度を利用して開発されました。
都市計画法9条18項 高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区とする。
第1種市街地再開発事業を行うための再開発組合は、都市再開発法11条1項で、区域内の敷地所有権または借地権を有する者が5名以上共同して設立申請することが必要です。設立認可申請にあたって、区域内の土地所有権者と借地権者のうち、人数と面積で3分の2以上の同意を得ることが必要です(都市再開発法14条1項)。逆に言えば、3分の2以上の同意と、5名以上の賛同者があれば、組合設立を申請出来るということになります。
※参考URL、東京都の高度利用地区指定方針及び指定基準
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/new_ctiy/katsuyo_hoshin/koudo_riyuu_1904.html
(え)総合設計制度
総合設計制度(建築基準法59条の2)は、一定規模以上の敷地面積及び一定割合以上の空地を有する建築計画について、その計画が、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、市街地環境の整備改善に資すると認められる場合に、各特定行政庁の許可により、容積率、斜線、絶対高さの各制限を緩和する制度です。東京23区内においては、延べ面積(棟単位)が10,000平方メートルを超える場合は都、10,000平方メートル以下の場合は各区での許可で運用されています。総合設計制度の制度趣旨は、土地の有効かつ合理的な利用の促進と、公開空地等公共的な空地・空間の確保によって、市街地環境の改善を図ることです。
東京では、「東京都総合設計許可要綱」が定められています。敷地面積の最低限度は、第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域では1000平米、その他の地域では500平米以上となっています。割増容積率の限度は、例えば、都心居住型総合設計においては、基準容積率の2.0倍以内かつ、400パーセント以内の増加で、かつ、割増後の容積率は1000パーセントを超えることができないとされています。
建築基準法第59条の2第1項(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第五十二条第一項から第九項まで、第五十五条第一項、第五十六条又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。
参考URL、東京都総合設計許可要綱
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kijun/sougou_sinyoukou.pdf
参考URL、千代田区総合設計許可要綱
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4177/r304k-yoko.pdf
※参考URL、国土交通省による総合設計制度解説ページ
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/59-2sogo.html
(お)都市再生特別地区
都市再生特別地区は、都市再生特別措置法36条1項で定められた、都市計画上の特別地区で、「容積率の最高限度(400%以上)及び最低限度」、「建ぺい率の最高限度」、「建築面積の最低限度」、「高さの最高限度」、「壁面の位置の制限」を目的に合わせて従来の規制から離れて独自に策定することができる制度です。従来の用途地域に基づく規制を適用除外できるため、斜線制限や日影規制も適用除外することができます。
都市再生特別地区は、政令(国土交通大臣所管)によって指定された、緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として指定されている都市再生緊急整備地域の中で、地方自治体が都市計画決定して指定することができます。都市再生緊急整備地域は、東京では、平成27年7月現在、「東京・有楽町駅周辺」、「池袋駅周辺」、「新宿駅周辺」、「渋谷駅周辺」など、8地域、約2900haが指定されています。
都市再生特別措置法第2条(定義)
第1項 この法律において「都市開発事業」とは、都市における土地の合理的かつ健全な利用及び都市機能の増進に寄与する建築物及びその敷地の整備に関する事業(これに附帯する事業を含む。)のうち公共施設の整備を伴うものをいう。
第2項 この法律において「公共施設」とは、道路、公園、広場その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
第3項 この法律において「都市再生緊急整備地域」とは、都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で定める地域をいう。
第36条(都市再生特別地区)
第1項 都市再生緊急整備地域のうち、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域については、都市計画に、都市再生特別地区を定めることができる。
第2項 都市再生特別地区に関する都市計画には、都市計画法第八条第三項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の誘導すべき用途(当該地区の指定の目的のために必要な場合に限る。)、建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。第百九条第二項において同じ。)の最高限度(十分の四十以上の数値を定めるものに限る。)及び最低限度、建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)の最高限度、建築物の建築面積の最低限度、建築物の高さの最高限度並びに壁面の位置の制限を定めるものとする。
第3項 前項の建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限は、当該地区にふさわしい高さ、配列等を備えた建築物の建築が誘導されること、建築物の敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。次条第一項において同じ。)に接する有効な空地が確保されること等により、当該都市再生特別地区における防災、交通、衛生等に関する機能が確保されるように定めなければならない。
※参考URL、東京都都市整備局の「都市再生緊急整備地域」解説
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/toshisaisei/toshisaisei_suishin.html
※参考URL、東京都都市整備局の「都市再生特別地区の運用について」解説
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/tokku/index.html
※参考URL、東京都都市整備局の「都市開発諸制度」解説ページ
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/cpproject/intro/description_1.html
(2)再開発事業費の公的援助(補助金支給)
市街地再開発事業では、国の社会資本整備総合交付金を活用して、概ね、調査計画費、土地整備費、共同施設整備費の3分の2を限度として補助金の交付を受けることができます。補助金の対象となる費目を列挙します。
① 調査設計計画
ア 事業計画作成
イ 地盤調査
ウ 建築設計
エ 権利変換計画作成
② 土地整備
ア 建築物除去等
イ 仮設店舗等設置
ウ 補償費等
③ 共同施設整備
ア 空地等の整備
イ 供給処理施設の整備
ウ その他の施設の整備
結局、再開発にあたって、地権者が取得する権利床の建設費の他の経費は建物除却費も含めて3分の2が補助されるということになります。
※参考URL、荒川区の市街地再開発事業補助金交付要綱
https://www.city.arakawa.tokyo.jp/documents/7518/saikaihatuhojokinnyoukou.pdf
※参考URL、国土交通省、社会資本整備総合交付金の解説
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000213.html
(3)税金の優遇措置
再開発に関して、次のような優遇税制措置があります。優遇税制は随時改訂されますので、検討の上で、優遇措置を受けるための申請などを行って下さい。
○市街地再開発事業により建築された施設建築物の取得者に対する割増償却制度(所得税・法人税)
○市街地再開発事業により一定の規模の施設建築物が与えられる従前の権利者に対する税額の軽減措置(固定資産税)
○優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽
減税率、所得税、法人税、個人住民税)
※参考URL、再開発関係税制
http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/information/budget/budget/images/H21sg6.pdf
2、権利床の面積
今回、「再開発組合を設立しませんか。建築費無料で、床面積1割増しで建てられますよ」と勧誘を受けているということですが、再開発の権利変換手続により実際に取得できる権利床の面積は、様々な要素により計算される複雑なものです。
例えば、容積率の割増が1.8倍で、建築費用を坪100万円、売却される保留床の価格を坪300万円、従来の建物の床面積をα坪、取得出来る権利床の面積をβ坪とすると、
当該組合員の保留床の面積=1.8α-β
当該組合員の保留床の売却額=(1.8α-β)×300=540α-300β(万円)
当該組合員の建物を建築する費用=1.8α×100=180α(万円)
仮に、保留床売却額と建築費用を同額(等価交換、他の事業費を無視)とすると、
540α-300β=180α
360α=300β
β=360α÷300=1.2α
となり、付帯経費を一切無視した計算ですが、1.2倍(20パーセント増し)の床面積を取得出来る可能性があるということになります。
建築費無料で権利床の面積1割増しであっても、それが最高限度の条件といえるかどうかは分からないことになります。当然、建築費や保留床売却額は、再開発事業進行時の経済状況により変化しますし、保留床の売却も一種の売買契約ですから、当然ながら、売却条件については交渉することができます。
実際に再開発組合を設立して、事業計画を作成していく過程で、参加組合員との間で、参加組合員に与えられる保留床面積と建築費の概算について、協議して合意して、権利変換計画の中に反映させていくことになります。このときの、合意条件について、デベロッパーの提案を無条件に受け入れるのではなく、再開発組合で顧問弁護士を依頼するなどして、条件が適正・妥当かどうか鑑定して貰うと良いでしょう。場合によっては、弁護士の他に、不動産鑑定士を依頼することが必要となる場合も考えられます。
大切なことは、市街地再開発組合の構成員である各地権者それぞれが、再開発に関する法令や制度や優遇措置などについて勉強し、デベロッパー等の提案に対して具体的に反論できるようになることです。そのために、弁護士が助力出来る場面があるでしょう。
また、再開発組合の手続では、事業計画案の作成や権利変換計画案の作成を、再開発コンサルタント会社と業務委託契約を締結して依頼することになりますし、建て替え期間の移転費用などは再開発の補償見積もり会社に補償額の算出を依頼することになります。これらの依頼時の契約書を、再開発組合にとって不利な条件はないかどうか、法的にチェックすることも必要です。再開発組合の設立にあたって、不動産会社から紹介されている再開発コンサルタント会社とは別に、法律専門家である弁護士事務所との間で法律顧問契約を締結し、弁護士と一緒に再開発の手続を考えて進めていくこともお勧め致します。
実際の管理組合の運営は、地権者の中から選任された理事が定期的に理事会を開催し、総会の議題を作成し、総会決議を経て手続を進めていくことになりますが、実際には、参加組合員からの紹介で、再開発のコンサルタント会社と管理組合が業務委託契約を締結し、管理組合の運営についてサポートを受けることが実態として多くなっています。理事会の議題や、総会の議題も全て、コンサルタント会社が準備することになります。管理組合の理事長や理事といえども、提案に対する批評する経験や知識が無ければ、提案を丸呑みすることになってしまいます。
保留床の売買という観点では、参加組合員となるデベロッパーやゼネコンは、従来の地権者の集まりである管理組合とは契約当事者の関係に立ち、利害が相互に対立する関係になります。デベロッパーやゼネコンから、顧問弁護士を採用した方が良いですよと提案してくることは絶対にありません。自分達の利益を守るために、自分達で発議して決めていかなければならないのです。ご心配な場合は、一度お近くの法律事務所にご相談なさって下さい。
以上