新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1705、2016/10/31 11:30 https://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm
【民事、都市再開発、最高裁判所平成4年11月26日判決】
第二種再開発事業への異議申立手続
質問:
親の代から駅前で持ち家の飲食店を経営しているのですが、駅前ロータリー周辺が、市役所主導で、第二種市街地再開発事業に掛かる計画があるようです。定期的に説明会が開催され、「再開発のしおり」というチラシが定期的に配布されるようになりました。第二種市街地再開発事業とは、どういうものなのでしょうか。私達は今のままの建物で飲食店を継続したいのです。地権者として、この計画に異議を申し立てることはできませんか。
↓
回答:
1、第二種市街地再開発事業は、従前建物の耐震性や耐火性を高め、公共施設や商業施設などの利便性を高めるために、都市計画決定を経た上で、地区町村などの地方自治体などが管理処分計画を定め、一旦従来の土地建物の権利を全て取得し、区域内を整備し、その後従来の地権者や賃借人に、譲り渡したり、賃貸させることにより、円滑に建て替えを進める事業です。用地買収方式、また、管理処分方式とも呼ばれる再開発の手法です。
2、第二種再開発事業では、建て替え(再整備)に際して、一旦事業主体である地方自治体が、全ての土地建物の権利を取得してしまいますが、この取得は、任意の売買契約による移転か、もしくは、土地収用法の規定による強制収用により取得されます。この取得時の対価は、路線価や地価公示など、相当価格による取得となりますが、通常の不動産市場における売買契約のような自由な交渉は困難ですし、「現在の2階建てのまま飲食店を継続したい」というような希望を貫くことは困難です。
3、このような再開発事業の対象区域内の地権者の置かれた立場を、不利益処分を受けた立場であると考えて、第二種市街地再開発事業の事業計画決定に対して、取消訴訟(抗告訴訟)を提起することができます。同旨の最高裁判例がありますので、解説で紹介致します。
但し、計画決定の取消が認められるのは、手続が法令に違反しているという特殊な事案や、事業決定における裁量権の逸脱や濫用が認定される場合に限られます。
4、実際の第二種市街地再開発事業においては、土地収用法の規定による強制収用により土地の権利が取得されるケースはほとんどありません。任意の売買契約(従前資産買収契約)によって取得されるのが通例です。また、地権者は、第二種市街地再開発事業の事業計画決定の公告から30日以内に、都市再開発法118条の2第1項に基づき「譲り受け希望の申出」をすることができ、再開発後の新しい建物の区分所有権を取得することができます。この権利の詳細は管理処分計画の中に定められることになります。従って、事業決定自体を争うのではなく、この新しい区分所有権の建物の配置や床面積などについて、自らの権利を主張する方が現実的な解決となるでしょう。
5、入居希望者の買収契約と、管理処分計画における配置計画について、地方自治体主導とはなりますが、従来の地権者も自分の意見を要望することは可能です。ご心配な場合は、前記の行政取消訴訟を提起することも含めて、弁護士に御相談なさると良いでしょう。
6、都市再開発関連事例集1702番、1701番、1684番、1678番、1649番、1513番、1512番、1490番、1448番参照。
解説:
1、第二種市街地再開発事業は、従前建物の耐震性や耐火性を高め、公共施設や商業施設などの利便性を高めるために、都市計画決定を経た上で、地区町村などの地方自治体や、都市再生機構や、住宅整備公社などが、事業計画を定め、一旦従来の土地建物の権利を全て取得し、管理処分計画を定め、区域内を整備(建物を建て替え)し、その後従来の地権者や賃借人に、譲り渡したり、賃貸させることにより、円滑に建て替え整備を行い、都市機能の更新を進める土地再開発法に基づく事業です。用地買収方式、また、管理処分方式とも呼ばれる再開発の手法です。
第一種再開発事業の施行区域は、次の要件が求められております。法3条2号ロの耐用年限は、都市再開発法施行令で定められておりますが、例えば鉄筋コンクリート住宅の場合は47年とされています。従って築32年以上の居住用マンションは老朽化建築物に含まれる事になります。要するに、3分の2以上の建物が老朽化又は耐火・耐震上の問題を抱えている区域ということになります。
都市再開発法第3条(第一種市街地再開発事業の施行区域)
都市計画法第十二条第二項 の規定により第一種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、第七条第一項の規定による市街地再開発促進区域内の土地の区域又は次に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一 当該区域が高度利用地区、都市再生特別地区又は特定地区計画等区域内にあること。
二 当該区域内にある耐火建築物(建築基準法第二条第九号の二
に規定する耐火建築物をいう。以下同じ。)で次に掲げるもの以外のものの建築面積の合計が、当該区域内にあるすべての建築物の建築面積の合計のおおむね三分の一以下であること又は当該区域内にある耐火建築物で次に掲げるもの以外のものの敷地面積の合計が、当該区域内のすべての宅地の面積の合計のおおむね三分の一以下であること。
イ 地階を除く階数が二以下であるもの
ロ 政令で定める耐用年限の三分の二を経過しているもの
ハ 災害その他の理由によりロに掲げるものと同程度の機能低下を生じているもの
ニ 建築面積が百五十平方メートル未満であるもの
ホ 容積率(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計を算定の基礎とする容積率。以下同じ。)が、当該区域に係る高度利用地区、都市再生特別地区、地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画に関する都市計画において定められた建築物の容積率の最高限度の三分の一未満であるもの
ヘ 都市計画法第四条第六項 に規定する都市計画施設(以下「都市計画施設」という。)である公共施設の整備に伴い除却すべきもの
三 当該区域内に十分な公共施設がないこと、当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。
四 当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の更新に貢献すること。
第一種市街地再開発事業では、個人施行や再開発組合による施行も可能でしたが、土地収用法による権利の強制取得も可能である、第二種市街地再開発事業では、次の要件が追加され、事業主体も、地区町村などの地方自治体や、都市再生機構や、住宅整備公社などに制限されています。都市再開発法3条の2第2号イ(1)に定める割合は、都市再開発施行令により10分の7とされています。安全上又は防火上支障がある建築物は、接道義務を満たしていない建物や、耐火建築物となっていない建物を指します。
都市再開発法第3条の2(第二種市街地再開発事業の施行区域)
都市計画法第十二条第二項 の規定により第二種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、次の各号に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一 前条各号に掲げる条件
二 次のいずれかに該当する土地の区域で、その面積が〇・五ヘクタール以上のものであること。
イ 次のいずれかに該当し、かつ、当該区域内にある建築物が密集しているため、災害の発生のおそれが著しく、又は環境が不良であること。
(1) 当該区域内にある安全上又は防火上支障がある建築物で政令で定めるものの数の当該区域内にあるすべての建築物の数に対する割合が政令で定める割合以上であること。
(2) (1)に規定する政令で定める建築物の延べ面積の合計の当該区域内にあるすべての建築物の延べ面積の合計に対する割合が政令で定める割合以上であること。
ロ 当該区域内に駅前広場、大規模な火災等が発生した場合における公衆の避難の用に供する公園又は広場その他の重要な公共施設で政令で定めるものを早急に整備する必要があり、かつ、当該公共施設の整備と併せて当該区域内の建築物及び建築敷地の整備を一体的に行うことが合理的であること。
2、第二種再開発事業では、建て替え(再整備)に際して、一旦事業主体である地方自治体が、全ての土地建物の権利を取得してしまいますが、この取得は、任意の売買契約による移転か、もしくは、土地収用法の規定による強制収用により取得されます。
都市再開発法第6条(都市計画事業として施行する市街地再開発事業)
第1項 市街地再開発事業の施行区域内においては、市街地再開発事業は、都市計画事業として施行する。
都市計画法 第69条(都市計画事業のための土地等の収用又は使用)
都市計画事業については、これを土地収用法第三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。
土地収用法第3条(土地を収用し、又は使用することができる事業)
土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、次の各号のいずれかに該当するものに関する事業でなければならない。(各号省略)
第二種市街地再開発事業は、都市計画法69条により、土地収用法の適用をすることができる「収用適格事業」となります。つまり、土地収用法に基づいて、補償金を支払って、個々の土地や建物や借家権を収用(強制的に取得)することができる事業となります。前記の「第二種市街地再開発事業の施行区域」の要件を満たす限り、公益目的が認められますので、手続を拒否することは難しいと言えます。
この取得時の対価は、路線価や地価公示など、相当価格による取得となりますが、通常の不動産市場における売買契約のような自由な交渉は困難ですし、「現在の2階建てのまま飲食店を継続したい」というような希望を貫くことは困難です。
3、このような再開発事業の対象区域内の地権者の置かれた立場を、不利益処分を受けた立場であると考えて、第二種市街地再開発事業の事業計画決定に対して、取消訴訟(抗告訴訟)を提起することができます。同旨の最高裁判例がありますので紹介致します。都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の事業計画決定があった場合は、土地収用法に基づく収用事業の対象となった場合に準じて行政訴訟を提起できると判示しています。
最高裁判所平成4年11月26日判決
『都市再開発法五一条一項、五四条一項は、市町村が、第二種市街地再開発事業を施行しようとするときは、設計の概要について都道府県知事の認可を受けて事業計画(以下「再開発事業計画」という。)を決定し、これを公告しなければならないものとしている。そして、第二種市街地再開発事業については、土地収用法三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなして同法の規定を適用するものとし(都市再開発法六条一項、都市計画法六九条)、都道府県知事がする設計の概要の認可をもって土地収用法二〇条の規定による事業の認定に代えるものとするとともに、再開発事業計画の決定の公告をもって同法二六条一項の規定による事業の認定の告示とみなすものとしている(都市再開発法六条四項、同法施行令一条の六、都市計画法七〇条一項)。したがって、再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法二六条四項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。しかも、この場合、都市再開発法上、施行地区内の宅地の所有者等は、契約又は収用により施行者(市町村)に取得される当該宅地等につき、公告があった日から起算して三〇日以内に、その対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設の部分の譲受け希望の申出をするかの選択を余儀なくされるのである(同法一一八条の二第一項一号)。そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。』
ただし、この判例は、都道府県知事が第二種市街地再開発事業の事業計画認可決定が土地収用法に基づく収用事業に準じて、行政取消訴訟の対象となることを判断したに過ぎません。土地収用法に基づく事業認定の取消訴訟と同様に、行政訴訟においてこれを取り消すことは一般に困難と言えます。手続が法令に違反しているという特殊な事案を除けば、第二種市街地再開発事業の事業計画認可行為も行政庁の裁量行為と考えられるので、これが抗告訴訟において取消判決の対象となるには、裁量権の逸脱や濫用が認定される必要があるためです。
行政事件訴訟法第30条(裁量処分の取消し)
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
具体的に言えば、今回の第二種市街地再開発事業が、都市計画法や都市再開発法の制度趣旨を逸脱して、公共の利益になる側面が全く欠けているのに、行政担当者や一部地権者の恣意により無理矢理進められているというような特殊事情が必要となりますが、通常このような事情の主張立証は困難なことであると言えるでしょう。
従って、第二種市街地再開発事業の事業計画認可手続に際して、前記のように、この手続が土地収用法の事業認定手続同様に、地権者に対して不利益処分となる側面があることを前提に、事業主体である都道府県や市区町村などの地方自治体と、後記の「従前資産買収契約」の条件や、「譲受希望の申し出による管理処分計画」の条件面で、少しでも有利な条件で移転できるように、交渉していくことが有益であると考えられます。
4、このように第二種市街地再開発事業で、施行者である地方自治体は土地収用法に基づく収用権限を得ていますが、実際の第二種市街地再開発事業においては、強制収用により土地の権利が取得されるケースはほとんどありません。任意の売買契約によって取得されるのが通例です。通常3〜4年と言われる建て替え期間における仮設店舗の費用などについても、この売買契約に付随して補償を受ける事になります。
土地収用法による収用のためには、事前説明会を開催(土地収用法15条の第14)し、公聴会を経た上で(土地収用法23条)、国土交通大臣や都道府県知事の事業認定(土地収用法16条)を受けたり、権利取得のために収用委員会の裁決申請(土地収用法39条)をするなど、複雑な手続きが必要ですし、事業認定や裁決取り消しを求める行政訴訟を起こされるリスクもあるからです。土地収用法の手続きよりも、任意の売買契約を締結しながら進める都市再開発法の手続きの方が、一般的にハードルが低いと言えます。そのため、第二種市街地再開発事業であっても、できる限り権利者との事前協議や、都市再開発法の手続によって、再開発を進めて行こうとするのが一般的な流れとなります。
地権者は、第二種市街地再開発事業の事業計画決定の公告から30日以内に、都市再開発法118条の2第1項に基づき「譲り受け希望の申出」をすることができ、再開発後の新しい建物の区分所有権を取得することができます。この新しい区分所有権の建物の配置や床面積などが、重要な争点となってきます。戸建てから区分所有権に変更されますので、毎月の管理費や修繕積立金が必要となることに注意が必要です。
都市再開発法第118条の2
第1項 次に掲げる公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、その者が施行者から払渡しを受けることとなる当該宅地、借地権又は建築物の対償に代えて、建築施設の部分の譲受けを希望する旨の申出(以下「譲受け希望の申出」という。)をすることができる。
一号 再開発会社が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、規準及び事業計画の認可の公告
二号 地方公共団体が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、事業計画の決定の公告
三号 機構等が施行する第二種市街地再開発事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告
第2項 省略(既登記の権利について争いのある場合)
第3項 省略(未登記の権利について争いのある場合)
第4項 省略(争いがある場合の譲り受け希望の申し出の効果)
第5項 第一項の建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、同項の期間内に、施行者に対し、施設建築物の一部の賃借りを希望する旨の申出(以下「賃借り希望の申出」という。)をすることができる。
第6項 省略(事業計画変更の場合)
第7項 施行者は、譲受け希望の申出をした者の建築物について借家権を有する者から賃借り希望の申出があつたときは、遅滞なく、その旨を譲受け希望の申出をした者に通知しなければならない。
第8項 譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。
※国土交通省HPより、第2種再開発事業のフローチャート
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/06sigaichisai.html
都市再開発法51条で、地方公共団体が第二種市街地再開発事業を施行する場合には、「施行規程」及び「事業計画」を定めることとされ、次のような手順で手続きが進行します。
当該区域について、高度利用地区の都市計画決定
↓
当該区域について、市街地再開発事業の都市計画決定
↓
地方公共団体の議会により「施行規程」の議会決議(法52条)
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「事業計画」案を2週間公衆の縦覧に供する(法53条)
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縦覧後2週間の意見書提出期間(法16条2項)
↓
地方公共団体による、意見に対する通知(法16条3項)
↓
行政不服審査法に基づく異議申し立て、又は行政処分取り消し訴訟提起
↓
事業計画の決定の公告(官報又は地方公共団体の公報)
↓
30日以内に、土地建物所有者による「譲受け希望の申出」、借家権者による「賃借り希望の申出」(法118条の2)
↓
管理処分計画の作成(法118条の7)
(配置設計、従前資産見積、譲受希望者=権利床の概算、完了予定時期など)
↓
管理処分計画の縦覧2週間(法118条の10、法83条1項)
↓
管理処分計画に対する意見書の提出(法118条の10、法83条2項)
(意見書の提出期限は、縦覧期間内)
↓
市街地再開発審査会の議決(法118条の10、法84条)
(管理処分計画の決定、意見書の採否、過小床基準決定、借家条件裁定など)
↓
管理処分計画の認可決定(法118条の6)
(市区町村は都道府県認可、都道府県は国土交通大臣認可)
↓
従前資産買収契約(従前権利の消滅と、譲り受け権の取得)
↓
立ち退き
↓
建築工事(特定建築者、通常3〜4年程度の建築工事期間)
↓
工事完了公告(法100条)
↓
工事完了公告の翌日に、所有権の権利取得、借家権の取得(法118条の18)
↓
権利者の登記(法118条の21、所有権保存登記)
なお、管理処分計画の主な内容(法118条の7第1項各号)は次の通りです。
一 配置設計
二 譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることができるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその見積額並びにその者がその対償に代えて譲り受けることとなる建築施設の部分の明細及びその価額の概算額
四 賃借り希望の申出をした者で施設建築物の一部を賃借りすることができるものの氏名又は名称及び住所
五 前号に掲げる者が賃借りすることとなる施設建築物の一部
六 施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
七 特定事業参加者が譲り受けることとなる建築施設の部分の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所
八 第三号及び前号の建築施設の部分以外の建築施設の部分の明細及びその管理処分の方法
九 新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項
十 第三号の見積額並びに同号及び第六号の概算額の算定の基準日並びに工事完了の予定時期
管理処分計画が都道府県知事に提出されると、管理処分計画の縦覧が2週間なされ、この縦覧期間内に、施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者は、管理処分計画について施行者に意見書を提出することができます(法118条の10、法83条2項)。この意見書の採否に関して、市街地再開発審査会の議決を経て、管理処分計画認可決定がなされます。
市街地再開発審査会は、「土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者」、「施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者」から3名以上が選任されます。
都市再開発法第57条(市街地再開発審査会)
第1項 地方公共団体が施行する市街地再開発事業ごとに、この法律及び施行規程で定める権限を行なわせるため、その地方公共団体に、市街地再開発審査会を置く。
第2項 施行地区を工区に分けたときは、市街地再開発審査会は、工区ごとに置くことができる。
第3項 市街地再開発審査会は、五人から二十人までの範囲内において、施行規程で定める数の委員をもつて組織する。
第4項 市街地再開発審査会の委員は、次の各号に掲げる者のうちから、地方公共団体の長が任命する。
一 土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者
二 施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者
第5項 前項第一号に掲げる者のうちから任命される委員の数は、三人以上でなければならない。
5、さいごに
このように入居希望者の買収契約と、管理処分計画における配置計画等について、地方自治体主導とはなりますが、従来の地権者も自分の意見を要望することは可能です。飲食店を経営されておられるということであれば、仮設店舗の移転費用や運営費用、また、新しい建物において、どの場所で、どのような面積で、区分所有権を譲り受けることができるのかは、店舗にとって死活問題になると思います。ご心配な場合は、前記の行政取消訴訟を提起すること、管理処分計画の縦覧に対する意見書の提出も含めて、弁護士に御相談なさると良いでしょう。
※参考判例
法廷名 最高裁判所第一小法廷
事件番号 昭和63(行ツ)170
事件名 大阪都市計画事業等事業計画決定取消
裁判年月日 平成4年11月26日
裁判種別 判決
結果 棄却
民集 第46巻8号2658頁
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人色川幸太郎、同中山晴久、同夏住要一郎の上告理由について
都市再開発法五一条一項、五四条一項は、市町村が、第二種市街地再開発事業を
施行しようとするときは、設計の概要について都道府県知事の認可を受けて事業計
画(以下「再開発事業計画」という。)を決定し、これを公告しなければならない
ものとしている。そして、第二種市街地再開発事業については、土地収用法三条各
号の一に規定する事業に該当するものとみなして同法の規定を適用するものとし(
都市再開発法六条一項、都市計画法六九条)、都道府県知事がする設計の概要の認
可をもって土地収用法二〇条の規定による事業の認定に代えるものとするとともに、
再開発事業計画の決定の公告をもって同法二六条一項の規定による事業の認定の告
示とみなすものとしている(都市再開発法六条四項、同法施行令一条の六、都市計
画法七〇条一項)。したがって、再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土
地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法二六条四
項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、
その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の
所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。しかも、この場合、都市
再開発法上、施行地区内の宅地の所有者等は、契約又は収用により施行者(市町村)
に取得される当該宅地等につき、公告があった日から起算して三〇日以内に、その
対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設の部分の譲受け希望
の申出をするかの選択を余儀なくされるのである(同法一一八条の二第一項一号)。
そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の
所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる
行政処分に当たると解するのが相当である。
右と同旨の見解に立ち、上告人のした本件事業計画の決定の取消しを求める訴え
を適法なものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所
論の違法はなく、所論引用の最高裁昭和三七年(オ)第一二二号同四一年二月二三
日大法廷判決(民集二〇巻二号二七一頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。
論旨は採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 小 野 幹 雄
裁判官 大 堀 誠 一
裁判官 橋 元 四 郎 平
裁判官 味 村 治
裁判官 三 好 達
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