強姦罪の無罪主張

刑事|ラブホテルにおける強姦罪の成否|無罪主張|刑法177条|

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

都内で勤務する会社員(32歳・男性)です。本日早朝、突然自宅に警察がやって来て、自宅の捜索差押えを受け、そのまま警察署への任意同行を求められ、取調べ を受けました。警察の話によれば、私が以前交際していた女性(結婚している方なので、いわゆる不倫ということになると思います。)から、私の運転する軽自動車 の助手席でその女性を強姦したということで、刑事告訴されているとのことでした。しかし、交際期間中、確かに何度か性行為を行ったことはありますが、いずれも 都内のラブホテル内でのことであり、自動車内で性行為を行ったことなど一切ありません。彼女が強姦の被害にあったと主張している日に一緒に軽自動車に乗ってい たのは確かですが、その日に性行為はしていませんし、そもそも自動車内は狭くて、性行為を行えるようなスペースなどありません。一切身に覚えのないことで、大 変困惑しているとともに、してもいない強姦の犯人として逮捕、起訴されるような事態にならないか大変不安です。対応方法についてご教示頂きたいです。

回答:

1. 一切身に覚えがない、ということであれば、強姦罪の被疑事実がないことを証明できるように準備し、かつ逮捕勾留等の強制捜査が行われないよう対応策を取っておくことが第一 です。併せて、告訴人が不倫相手ということですから、何か虚偽の告訴をする理由があるかと考えられことから相手と話し合って告訴を取消してもらう交渉をするこ とが考えられます。いずれの方法についても弁護人の選任が必要ですので、早期に弁護士に相談すべきです。

2.告訴事実とされている強姦が事実無根ということですので、あなたには何ら犯罪が成立しておらず、無実ということになります。元交際相手が内容虚偽の告訴 をした理由については、様々な推測が成り立ちうるところですが、いずれにしても被疑者として取り調べを受けている状況である以上、起訴を回避するために可能な 限りの防御を行う必要があります。

あなたの被疑罪名は強姦罪という重罪であるにもかかわらず、逮捕されることなく在宅で取り調べを受けているとのことですが、捜査機関が、逮捕の要件の1つで ある「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項、2項)が不十分であると考えている可能性を指摘できるように思います。す なわち、本件で強姦の事実を直接示すことのできる証拠としては、元交際女性の供述のみと考えられるところ、当該供述の信用性が現時点で不十分であると判断され ている可能性があります。

3.検察官は、証拠関係に照らして、裁判で確実に有罪にできると判断した場合でなければ起訴しないため、強姦の事実を立証するための唯一の直接証拠と考えら れる元交際女性の信用性が不十分であると判断されれば、あなたは嫌疑不十分として不起訴処分になるものと考えられます。そのため、身柄拘束を回避する上でも、 終局処分として不起訴処分を獲得する上でも、元交際女性の供述の信用性を弾劾する活動が極めて重要となってきます。その具体的手法について、解説で詳述してあ りますので、ご参照ください。

4.強姦罪は、告訴がなければ起訴することができない親告罪とされていますが(刑法180条1項)、告訴は一度取り消してしまうと再度告訴することが出来な くなるため(刑事訴訟法237条2項)、元交際女性から自発的に告訴を取り消してもらうことができれば、あなたが強姦罪で起訴される可能性は完全になくなるこ とになります。そこで、話し合いによって元交際女性より自発的な告訴取り消しをしてもらえる可能性が少しでもあるようであれば、無実主張の活動と並行して、元 交際女性との折衝を試みるべきことになるでしょう。ただし、あなたが直接接触を図ったのでは、懇願や威迫等による罪証隠滅を疑われ、逮捕の可能性を高めること になってしまうため、必ず弁護人を付けて対応する必要があります。

5.直ちに無実主張弁護の経験のある弁護士を弁護人に選任し、早急に対応されることをお勧めします。

6.強姦に関する関連事例集参照。

解説:

1.(被疑罪名について)

あなたが被疑者として嫌疑をかけられている強姦罪とは、被害者の犯行を著しく困難にする程度の暴行又は脅迫を用いて女子を姦淫することによる成立する犯罪 であり、刑法177条で以下のように規定されています。

刑法第177条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

本罪は、法定刑が3年以上の有期懲役のみとされる重罪であり、本罪で起訴されて刑事裁判で有罪となった場合、実刑となる危険性が非常に高い犯罪類型です。た だし、それは裁判所によって証拠から有罪と認定された場合の話であって、あなたは元交際女性に対して、暴行や脅迫を加えた事実がなく、そもそも自動車内で性行 為を行った事実すらないわけですから、実際には何ら犯罪が成立していないことになります。

元交際女性がなぜ故に内容虚偽の犯罪被害を訴え、刑事告訴までするに至ったのかは定かではありませんが、例えば、夫に不貞の事実が発覚した際、説明に窮し て、強姦被害にあったと内容虚偽の説明をしてしまい、引っ込みがつかなくなったとか、何らかの理由であなたを陥れようとして、進んで虚偽の告訴を行った等、可 能性としては様々なものが考えられ、世間一般に凡そあり得ないようなシチュエーションとは言えないように思います。

2.(刑事手続等の状況と見通し)

(1)在宅での取調べとされていることについて

強姦罪は、その法定刑の重さ故、類型的に罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが高いとされる犯罪であり、被疑者に対する身柄拘束(逮捕、勾留)が行われること が非常に多い事件類型といえます(刑事訴訟法199条1項、刑事訴訟規則143条の3参照)。それにもかかわらず、あなたの場合、なぜ現時点で身柄拘束される ことなく、在宅での取調べとされているのか、その意味を考える必要があります。

あくまで、あなたから伺った事実関係を基にした推測ではありますが、捜査機関が、現時点ではあなたを逮捕するにあたって必要となる要件が不十分であると考 えている可能性が考えられると思います。刑事訴訟法上、被疑者を通常逮捕(裁判官が発付する逮捕状による逮捕)するためには、「被疑者が罪を犯したことを疑う に足りる相当な理由」が必要であるとされています(刑事訴訟法199条1項、2項)。そして、かかる「相当な理由」の有無は、捜査機関が把握している証拠に よって判断されるわけですが、ここで本件に関して捜査機関が把握していると推測される主要な証拠関係としては、元交際女性の供述が殆どであり、あなたが彼女を 姦淫したことを示す客観的な証拠は何ら存在していないものと考えられます(姦淫した事実がないのですから、当然のことです。)。そして、強姦の事実を示すため の主要な証拠が元交際女性の供述のみである場合、当然ながらその供述の信用性が吟味されることになります。

告訴人が実際には体験していない虚偽の被害事実について供述する場合、供述内容が具体性を欠いていたり、不自然な部分や不合理な部分が含まれていることが 通常であり、経験則等に照らして供述に不自然ないし不合理な内容が含まれているような場合、直ちにその信用性を認めることはできないことになります。また、供 述内容に動かし難い客観的事実と整合しない部分があったり、警察での供述内容に合理的理由のない変遷が認められたり、内容虚偽の被害申告をするだけの動機があ ると見られる事情があったりする場合、当該供述の信用性判断にあたっては慎重な姿勢で臨むべきことになります。

警察としては、こうした供述内容の信用性を検討した結果、現時点での元交際女性の供述のみでは強姦被害の有無に関して確証が得られなかったため、捜索差押 えの結果や、取調べでのあなたの供述内容を踏まえて、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無、すなわち逮捕の可否を判断しようとしている 可能性が考えられます。

(2)今後の刑事手続の流れについて

あなたに対する身柄拘束(逮捕、勾留)を行うか否かにかかわらず、警察としては、あなたに対する取調べ、その他の必要な捜査を行った上、事件を検察庁に送 致することになります(刑事訴訟法246条本文)。そして、検察官において必要に応じて関係者の取調べ等を行い、証拠関係を検討して本件を起訴するか否かの決 定をすることになります(刑事訴訟法247条、248条)。

身柄拘束されることなく、在宅での取調べが継続する場合であれば、送検や終局処分決定までの期間的制限はありませんが、捜査機関が身柄拘束に踏み切った場 合、逮捕から48時間以内に事件が検察官送致された上、送検から24時間以内(逮捕と合わせて72時間以内)に検察官において裁判官に被疑者の勾留を請求する ことになり(刑事訴訟法203条1項、205条1項、2項、4項)、検察官の勾留請求が認められた場合、原則10日間(刑事訴訟法208条1項)、検察官が終 局処分の決定にあたってさらに取調べや証拠収集をする必要があると判断した場合、さらに10日間身柄拘束が続くことになります(刑事訴訟法208条2項)。勾 留期間満期のタイミングで処分保留若しくは不起訴処分となれば、速やかに釈放されることになりますが、起訴された場合、さらに長期間勾留が続くことになりま す。

もっとも、検察官は、裁判で必ず有罪にできる(犯罪事実を立証するに足りる証拠が十分にある)と判断した場合にしか被疑者を起訴しませんので、前述したと おり、身柄拘束の回避の可否という観点からも、終局処分の段階で起訴を回避できるか否かという観点からも、捜査機関に対して、告訴された強姦の事実が疑わしい のではないかと思ってもらえる状況を維持していくこと(本件を起訴したとしても証拠不十部で無罪になるかもしれないと思わせておくこと)が非常に重要となって きます。日本の刑事司法においては、起訴されると99.9パーセント以上が有罪となる現状がありますので、無実の主張が認められるか否かの主戦場は、起訴され る前の被疑者段階ということになります。

そのためには以下で述べるような活動が重要となってくるものと思われます。いずれについても、速やかに弁護人を選任した上、その協力を得ることが不可欠と いえるでしょう。

3.(具体的対応)

(1)身柄拘束の回避

まず、今後被疑者として取調べを受けていくにあたって、身柄拘束(逮捕及びそれに続く勾留)を回避できるよう、対応をしていかなければなりません。刑事訴 訟法上、被疑者を逮捕するにあたっては、前述の「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要とされている他(刑事訴訟法199条1項、2項)、 「諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」には、逮捕状の請求は却下されるこ ととされています(刑事訴訟規則143条の3)。

そこで、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを示す資料を捜査機関に提出しておくことが必要といえます。逃亡のおそれとの関係では、あなた自身の出 頭誓約書(取調べ等のために呼び出しがあった際には必ず応じることを誓約する書面)や家族の身元引受書(あなたに対する監督を誓約する書面)が最低限準備すべ き書類になるでしょう。また、後述するとおり、元交際相手による告訴の自発的取消しを促すために何らかの折衝を行うことを検討するのであれば、必ず弁護人を通 して行うこととし、あなた自身が元交際女性に対して直接接触することのないよう誓約する書面の提出も最低限必要になってくるでしょう。あなた自身が接触を図ろ うとすると、懇願や威迫等によって告訴人の供述を変遷させようとしていると捉えられ、罪証隠滅のおそれがあるとして、捜査機関が逮捕に踏み切る危険性があるた めです。

また、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」との関係では、まず取調べの際に、内容虚偽の自白をしてしまわないよう、細心の注意を持って対 応していく必要があります。捜査機関は、基本的に被疑者を追及する立場にあることから、取調担当官の不当な誘導や威迫等によって、告訴人の供述内容にさや寄せ するような形で真実と異なる供述調書が作成されたり、真実に反する自白を迫られたり、といった事態となる可能性に留意する必要があります。あなたの言い分をき ちんと調書に反映してもらえないような場合、躊躇せず、調書の訂正申立権(刑事訴訟法198条4項)や調書への署名押印拒否権(刑事訴訟法198条5項)の行 使によって対応していく必要があります。かかる事態に陥ったときに何時でも弁護士と相談して正しく対応できるようにしておく意味でも、早い段階から弁護人を選 任しておくことが望ましいといえます。

さらに、後述の無実を争う具体的方法とも関連してきますが、弁護人において、捜査機関との折衝によって元交際女性の供述内容を把握できた場合、その中に不 自然な点、不合理な点、客観的事実と整合しない点等があれば、積極的に指摘して、元交際女性の供述が信用できないこと(すなわち、証拠上「被疑者が罪を犯した ことを疑うに足りる相当な理由」が認められないこと)を詳細な意見書等によって主張していくべきことになります。その前提として、元交際相手が強姦被害に遭っ たと主張する当時、あなたがどこでどのような行動をとっていたか、元交際相手の主張事実に対する反論、元交際相手が虚偽の被害申告をする動機として考えられる 事情等について、あなたの主張内容を詳細に記載した調書を弁護士に作成してもらい(いわゆる弁面調書)、随時捜査機関に提出していく必要があるでしょう。

(2)無実を争う方法

起訴前の段階で無実を主張する手法は、何も特別なものではありません。捜査機関は、通常、起訴後の裁判で被疑者を追及し、有罪とするための準備として、被 疑者に不利な供述調書を作成し、被疑者に不利な事実を示すような証拠を収集し、被疑者の弁解の信用性を弾劾するような事情がないか検討することになります。起 訴前の段階で無実を主張する場合、弁護人において、かかる捜査機関と同様の手法で逆のことをすればよいわけです。すなわち、被疑者にとって有利な供述調書を作 成し、被疑者に有利な証拠を収集し、ありもしない犯罪被害を主張する者の供述の信用性を弾劾するような事情を主張していけばよいのです。

本件に即して見ていくと、まず、本件であなたの有罪を直接示すことのできる主たる証拠としては元交際女性の供述以外に考え難いわけですから、その供述の信 用性を弾劾するための活動が非常に重要です。供述の信用性を弾劾するためには、まず元交際女性の供述内容を把握しなければなりません。捜査機関は捜査の秘密の 観点から、起訴前の段階で元交際女性の供述調書を開示することはないので、その供述内容は取り調べでの際の捜査担当官とのやりとりや、弁護人と担当刑事との折 衝を重ねることによって、少しずつ把握していく必要があります。供述内容に不合理な点や不自然な点がみられる場合、その旨を指摘する意見書や、あなたの言い分 と食い違いが生じている点につき、元交際女性に追加聴取の上、その報告を求める上申書等を作成、送付していく必要があります。その際には、後から元交際女性の 供述調書を破棄したり、内容の異なる供述証書に作り替えられたりしないように、把握した元交際女性の供述内容がどのようなものか、その供述内容をどのようにし て把握したか等を必ず記載し、不自然ないし不合理な供述をしていたことを動かし難い事実にしておくことが重要です。

また、本件では、元交際女性はあなたの軽自動車の助手席で強姦されたと主張しているわけですから、その時間、その場所で、元交際女性の主張するような態様 での暴行、そして姦淫が可能なのかどうか、検証する作業が最低限必要といえます。例えば、元交際女性が強姦被害を受けたと主張する時間帯、場所では、人通りが 多く、そのような場所で強姦に及ぼうとすること自体不自然であるといった事情がある場合、現場の状況を写真撮影報告書等の形で証拠化し、元交際女性の供述の信 用性を弾劾する証拠として捜査機関に提出すべきことになります。さらに、あなたの言い分では、そもそも助手席のスペースの問題から性行為自体不可能であるとの ことですが、この点についても、実際に助手席での性行為が可能なのかどうか検証して、証拠化する作業が不可欠といえるでしょう。元交際女性が主張するような態 様での強姦が不可能もしくは著しく困難であることを証拠でもって示すことが出来れば、元交際女性の供述の信用性を崩す上で決定的なものとなるでしょう。

さらに、本件に関するあなた自身の事実認識についても詳細な供述調書(弁面調書)として証拠化しておく必要があります。あなたの供述に信用性を持たせるた め、供述内容は具体性、迫真性を持つような詳細なものとして作成する必要があり、また、あなた自身の主張に一貫性を持たせるため、できる限り速やかに作成して おく必要があります。あなたの供述内容とその供述を行った時点とを後から対比できるよう、弁面調書は作成した都度、公証役場で確定日付を付してもらうことが望 ましいでしょう。

これらの活動により、元交際女性の供述の信用性を減殺するだけのあなたに有利な証拠を作成して捜査機関に提出し、起訴、不起訴を判断する検察官を納得させ ることができれば、証拠不十分として、起訴を回避できることになります。

(3)告訴取消しの可能性

強姦罪は、告訴がなければ起訴することができない親告罪とされていますが(刑法180条1項、177条)、告訴は一度取り消してしまうと再度告訴すること が出来なくなるため(刑事訴訟法237条2項)、元交際女性から自発的に告訴を取り消してもらうことができれば、あなたが強姦罪で起訴される可能性は完全にな くなることになります。内容虚偽の告訴をするくらいですから、元交際女性の側にも相応の動機があるのでしょうが、具体的状況の下で、話し合いによって自発的な 告訴取り消しを促すことのできる余地が少しでもあるのであれば、あなたの弁護人としては、元交際女性との折衝を試みるべきことになるでしょう。

その際も、元交際女性の供述の信用性を争うべき立場にあることに変わりはないわけですから、元交際女性とのやり取りは可能な限り証拠化しておき、無実主張 の活動に備えるべきことになります。

4.(最後に)

以上はあくまで最低限の一般論を述べたものであり、実際にいかなる活動をどのように行っていくべきか、いかなる主張をどのように展開していくべきかについ ては、具体的事情の下で個別的に検討していく他ありません。刑事弁護は、その多くが事実関係に大きな争いのない情状弁護のケースであり、無実主張の弁護が必要 とされる場面は限られているため、本件は弁護人に就任する弁護士の経験の差によって弁護技術の巧拙が分かれるケースといえるかもしれません。無実主張弁護の経 験のある適任者を弁護人に選任し、早急に対応されることをお勧めします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

刑法

(強姦)

第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

(親告罪)

第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

刑事訴訟法

第百九十八条

○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することがで きる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定 まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

○2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県 公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、こ の限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告 げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時 間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思 料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。

○4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第二百三十七条 告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。

○2 告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官 が指定した事件については、この限りでない。

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。

第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

刑事訴訟規則

(明らかに逮捕の必要がない場合)

第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞 がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。