先行買収の提案に対する対応

民事|都市再開発法|不動産デベロッパー参加組合員側からの先行買収の提案|福岡地裁平成2年10月25日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

所有している土地建物(商店街の一角)が第一種市街地再開発事業の施行区域に掛かることになり、再開発準備組合が設立され、再開発のコーディネーターとなる参加組合員(不動産デベロッパー)が選定されました。

参加組合員(不動産デベロッパー)は、区域内の土地を、現在の地価の1.5倍程の価格で先行買収する提案 をしています。有利な条件であるというので実際に先行買収に応じ、店舗を移転した店主も現れました。当方に提案に来た担当者から「有利な条件で買い取りできるのは正式組合設立前だけである」などと、かなり強引な勧誘を受けています。

周りの権利者同様、先行買収に応じるべきでしょうか。先行買収の提案に対してどのように考えたら良いでしょうか。

回答:

1、第一種市街地再開発事業は、従前建物の耐震性や耐火性を高め、公共施設や商業施設などの利便性を高めるために、都市計画決定を経た上で、区域内の地権者5名以上で、区域内の宅地所有者及び借地権者の3分の2以上(面積及び人数)の同意により、市街地再開発組合を設立し、権利変換計画を定め、従来の土地建物の権利を、新しい建物の敷地権と区分所有権に変換させて、円滑に建て替えを進める事業です。

2、市街地再開発事業は、不燃建物率の向上や、建物の耐震性強化による住民の安全性向上という、各自治体の行政目的にも合致するメリットがありますので、通常、都市計画決定を経ることにより、容積率の向上というボーナスを受けることができます。再開発における最終的な計画容積率は、従前の指定容積率の5倍以上となることもあります。

3、再開発組合が設立されると、都市再開発法70条1項により、再開発施行区域内の全ての土地・建物・借地権について、権利変換手続開始の登記が申請されます。この登記後に当該区域内の権利を移転する場合は、施行者(再開発組合)の承諾を得る必要があります。しかし、正式組合設立前であれば、区域内の土地建物を売却することは自由です。

4、先行買収も、普通の不動産の売買契約と同じですが、正式組合設立前ということで、再開発の事業計画が未確定の状態ですので、再開発の計画容積率が未定となっていることに注意が必要です。前述の通り、再開発事業における様々な特例を適用することにより、都市計画図に記載された「指定容積率」とは掛け離れた計画容積率を実現できる可能性がありますので、地権者の有する土地の価値は、潜在的に大きく上昇していることになります。

この価値の上昇(潜在的価値)について十分加味した上での売買価格による譲渡であれば、当事者合意の下で契約締結することも良いと思います。再開発施行区域内の土地については、潜在的価値が大きく変 化することになりますので、例えば従来の地価相場の1.5倍であるから有利な条件と断定することはできませんので注意が必要です。ご心配であれば、再開発に詳しい弁護士事務所に御相談なさると良いでしょう。

5、都市再開発法に関する関連事例集参照。

解説:

1. 第一種市街地再開発事業とは

 第一種市街地再開発事業は、都市再開発法で定められた、権利変換方式を用いる再開発(建て替え)の手法です。ちなみに、第二種市街地再開発事業は、管理処分方式(用地買収方式)と言って、公共性の高い事業について、地方自治体などが主体となり、区域内の権利を全て取得し、その上で希望者に再入居させて、再開発を 進める方式です。

 第一種再開発事業は、従前建物の耐震性や耐火性を高め、商業施設などの利便性を高めるために、都市計画決定を経た上で、区域内の地権者5名以上で、区域内の宅地所有者及び借地権者の3分の2以上(面積及び人数)の同意により、組合を設立し、権利変換計画を定め、従来の土地建物の権利を、新しい建物の敷地権と区分 所有権に変換させて、円滑に建て替えを進めるための事業です。

(1)権利変換とは

 権利変換とは、組合が定めた計画を都道府県知事や国土交通大臣が認可した場合に、権利変換期日に次の ① ~ ④ の効力が生じるものです。建物は一旦組合に権利が移行しますが、建物除却及び再建築を経て、新しい建物の権利は、権利変換計画に定められた者が新たに取得することができます(都市再開発法73条1項 2号)。

① 施行区域内の土地は、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する(都市再開発法87条1項前段)。

② 従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条1項後段)。

③ 施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者(組合)に帰属する(都市再開発法87条2項前段)。

④ 当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条2項後段)。

 面積と人数で3分の2以上という多数の意思形成は必要ですが、逆に言えば、区域住民の大多数が同意できるような計画を提示できれば、多少の反対があっても事業を進めることができるように法令が整備されています。

都市再開発法第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)

第1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有す るその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならな い。

2. 再開発のメリット

 再開発事業には、不燃建物率の向上や、建物の耐震性強化による住民の安全性向上という、各自治体の行政目的にも合致するメリットがありますので、再開発事業では、通常、都市計画決定を経ることにより、容積率の向上というボーナスを受けることができるのが通例です。

 平成20年から平成24年前に行われた事業完了地区97地区の平均容積率は89パーセントから586パーセントに約6.6倍上昇し、不燃建物率も39パーセントから100パーセントへと大幅に上昇しています(公益社団法人全国市街地再開発協会調べ)。

参考URL:全国市街地再開発協会パンフレット「あなたのまちがここから変わる」

調査設計費や共同施設整備費など、事業費の一部について、国や地方自治体の補助金を得ることもできます。

参考URL:東京都都市整備局の東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準」

 東京都の再開発促進区を定める地区計画運用基準によれば、再開発の計画容積率は、次の構成により算出されることになります。この運用基準に沿った企画を提案すれば、都市計画審議会の決議を経て、容積率の割増しを受ける可能性が高くなります。

施行区域内の土地について、再開発促進区を定める都市計画決定を経る前であれば、都市計画図に記載された「指定容積率」は、「見直し相当容積率」に変更され、「評価容積率」が加算され、最終的には、計画容積率は、従来の指定容積率 とは掛け離れた数値(例えば5倍以上など)となりますので、注意が必要です。ただし、市街地に近い区域で元々の指定容積率が200パーセントを超えているような場所では、前記のように5倍の容積率は実現困難と思われます。

計画容積率 ≦ 見直し相当容積率 + 評価容積率 となります。

(1)用語の説明

それぞれの用語の説明は次の通りです。前述の通り、従来の容積率の5倍以上もの計画容積率とすることができる可能性があるのです。

・指定容積率(%)

用途地域に関する都市計画に定められている容積率(区域内等の指定容積率が、2以上の異なる容積率にわたる場合は、加重平均容積率。都市計画図に記載された容積率。不動産売買のチラシや重要事項説明書などに 記載されているのは、この指定容積率です。)

・見直し相当容積率(%)

再開発、開発整備などによる土地利用転換や公共施設整備後、将来見直すことを想定した場合の指定容積率。

・計画容積率(%)

地区整備計画で定める「建築物の容積率の最高限度」

・評価容積率(%)

地区計画の区域内及び周辺市街地環境の整備、改善等に資する貢献内容や建築計画などの優良性を評価して設定する容積率

(2)見直し相当容積率の設定

 見直し相当容積率は、当該区域の都市構造上の位置付け、土地の高度利用や都市機能の増進への貢献度、都心居住の推進や業務商業機能の開発、整備及び育成への寄与度などを勘案して、「用途地域等に関する指定方針及び指定基準(平成14年7月:東京都)」に基づき設定されます。その際、見直し相当用途地域及び見直し 相当容積率は、計画区域又は周辺地域の骨格的な都市基盤施設等の整備状況などを勘案して、次の①から③までの内容を総合的に評価し設定されます。

① 都市構造上の位置付けの評価基本計画等の位置付けなどを考慮し、用途地域及び容積率を総合的に評価する。

② 骨格的な都市基盤施設(都市計画施設)の評価地区計画により骨格的な都市基盤施設を整備する場合又は既に完成された施設で開発規模などに応じた必要な対策が講じられている場合は、内容、貢献度などを総合 的に評価する。

③ 主要な公共施設及び地区施設の評価土地利用転換後に必要な施設であることから、見直し相当容積率で評価することが原則とされます。つまり、公共施設を建設するのに必要な容積率は割増しを受ける ことができる可能性が高いということです。

(3)評価容積率の設定

 評価容積率は、原則として、地区整備計画の区域の区分された地区ごとに、再開発等の計画内容が当該区域及び周辺市街地の開発、整備に貢献する度合いなどを勘案し、次の ① から ⑤ までの内容を総合的に評価して評価容積率が設定されます。

① 有効空地の計画の評価

計画建築物の敷地内に設ける有効空地は、その形態、規模、配置、機能などにより、その実面積に有効係数を乗じて得た、有効空地面積に相当する面積や緑化の取組を勘案して、評価容積率を設定する。

② 区域環境の整備、改善及び向上に資する施設計画の評価

区域環境の整備、改善及び向上に資する施設計画で、次のアからウまでに掲げるものについて、計画内容及び整備水準に応じた評価が行われます。

ア 区域の交通環境の整備、改善等に資する施設の計画公共駐車場、バスロータリーなど、交通補完施設等におけるその計画施設面積の敷地面積に対する割合を勘案した評価容積率を設定することができる。

イ 区域の供給処理機能の整備、改善等に資する施設の計画貯水槽、ゴミ中間施設、自家発電施設など、供給処理施設等におけるその計画施設面積の敷地面積に対する割合を勘案した評価容積率を設定することができる。

ウ 災害に強いまちづくりへ貢献する施設の計画防災貯水槽、防災備蓄倉庫、巡査派出所(いわゆる交番)など保安施設等におけるその計画施設面積の敷地面積に対する割合を勘案した評価容積率を設定することが できる。

③ 地域の育成及び整備に貢献する施設計画の評価

都心居住の推進につながる住宅の供給など、地域の育成及び整備に貢献する施設を導入する計画で、次のアからウまでのものについては、計画内容及び施設の整備 水準に応じて評価されます。

ア  住宅の供給の促進に寄与する施設の計画下記のエリア内で計画された、住宅の用に供する床面積のうち容積対象部分の面積を評価の対象とすることができる。評価容積率については、それぞれ次に定めると ころによる。

(ア) センター・コア・エリア内で「都市開発諸制度活用方針」で位置付けられた「都心等拠点地区」以外において住宅を設ける場合住宅床面積のうち容積対象部分の面積÷敷地面積×100%×1.0

(イ) センター・コア・エリア外で、かつ、環状七号線に囲まれた地域内において延べ面積の2/3以上の住宅を設ける場合住宅床面積のうち容積対象部分の面積÷敷地面積×100%×0.8

イ 文化、教育等及び地域社会のコミュニティの向上に貢献する施設の計画地域コミュニティ施設等を計画するものに、次式で得られた値を評価容積率として適用することができる。地域コミュニティ施設等の床面積の5割を評価容積率として加算できるということです。

地域コミュニティ施設等の床面積÷敷地面積×100%×0.5

 ウ 福祉の向上に資する施設の計画福祉施設等を計画するものに、次式で得られた値を評価容積率として適用することができる。つまり、福祉施設等の床面積の6割を評価容積率として加算できるということです。

 福祉施設等の床面積÷敷地面積×100%×0.6

エ 子育て支援のために必要な施設の計画子育て支援施設を計画するものに、次式で得られた値を評価容積率として適用することができる。つまり、子育て支援施設の床面積を評価容積率として加算できるということです。

子育て支援施設の床面積÷敷地面積×100%×1.0

オ 高齢者福祉の向上に資する施設の計画

高齢者福祉施設を計画するものに、次式で得られた値を評価容積率として適用することができる。つまり高齢者福祉施設の床面積を評価容積率として加算できるということです。高齢者福祉施設の床面積÷敷地面積×100%×1.0

④ 歴史的、文化的環境の保全、整備に資する施設計画の評価

重要文化財指定建築物、歴史的建造物等の保存、修復など、歴史的、文化的環境の保全、整備に資する計画を行うものに評価容積率を設定することができる。当該 建築物の重要性、規模、公開性など、地域への寄与度などを勘案した評価容積率を設定することができる。

⑤ 地区基盤施設の評価

主要な公共施設及び地区施設については、見直し相当容積率における評価を原則とするが、整備水準等に応じて評価を行うことができる。

3. 権利変換手続開始の登記

 再開発組合の設立が認可されると、再開発施行区域内の土地建物借地権について、遅滞なく、権利変換手続開始の登記が申請されます(都市再開発法70条1項)。そして、この登記後に、施行区域内の権利を移転(売買)する場合には、施行者つまり再開発組合の承認を得る必要が生じます。権利変換手続に支障がある場合は、承認を拒否される場合もあり、事実上、先行買収を自由に行えるのは正式組合設立前の時期に限られる事になります。

都市再開発法第70条(権利変換手続開始の登記)

第1項 施行者は、第六十条第二項各号に掲げる公告があつたときは、遅滞なく、登記所に、施行地区内の宅地及び建築物並びにその宅地に存する既登記の借地権について、権利変換手続開始の登記を申請し、又は嘱託しなければならない。

第2項 前項の登記があつた後においては、当該登記に係る宅地若しくは建築物の所有権を有する者又は当該登記に係る借地権を有する者は、これらの権利を処分するには、国土交通省令で定めるところにより、施行者の承認を得なければならない。

第3項 施行者は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、前項の承認を拒むことができない。

第4項 第二項の承認を得ないでした処分は、施行者に対抗することができない。

第5項 権利変換期日前において第四十五条第六項、第百二十四条の二第三項又は第百二十五条の二第五項の公告があつたときは、施行者(組合にあつては、その清算人)は、遅滞なく、登記所に、権利変換手続開始の登記の抹消を申請しなければならない。

4. 先行買収への対応方法

 正式組合設立前の先行買収は、普通の不動産売買契約と同じです。当事者が合意すれば、売買契約を締結し、所有権移転登記を申請することができます。但し、売買契約代金については、前述の通り、再開発により当該敷地の容積率は大きく変化する可能性を秘めていますので注意が必要です。

 先行買収が商店街に対して行われた場合、店舗がどんどん移転して、ゴーストタウンのようになってしまう場合もあります。裁判例に一部参考になる記述(原告主張の引用)がありますので、ご紹介致します。

(1)福岡地方裁判所平成2年10月25日判決

福岡地方裁判所平成2年10月25日判決(注意=これは裁判所が原告側の主張を引用したもので、裁判所の事実認定ではありません。参考として読んで下さい。)

『この先行買収のやり方は、例えば乙第三二号証の図面「左側の三角地帯の緑色のところに、Rさんという生け花教室をしている奥さん」(A・第一八四・二三七項)についていうと、その隣の人が先行買収に応じてその家が取り壊しになったあとは「その後が、もう、すぽつと、切っただけで、屋根が同じような屋根だったもんですから、切っただけだったから、後は柱も生のまんま、みんな出てしまって、そのままほったらかされてしまった」(前同・二四二項)、「仕切りもなんにもしなくて、もう一週間も二週間も、雨が降ったら、中に、そのまま、はいるというふうな状況で」放置という状態であった。これでは「Rという生け花教室をしている奥さん」もおれたものではない。その他当該地では、「先行買収によって、ちようど、炭鉱が廃坑になった後の荒地のような形に、通りがなってしまうわけです。片っ端から、そこには、平になって、そして、後では、良かったけど、最初のうちは、もう建物を切り取ったら、そこの切り取った後の補修もせずに、生でぶらさがると、建物が、という状態では、人通りは、全く、途絶えてしまうわけです。ここに店がある。次がない。次が店がある。次はない。もう三軒続けてない。これでは商売は成り立たない訳です」(同・二二九項)という状況が現出する。』

 従って、できれば、先行買収に対して、区画一帯の世帯がまとめて交渉した方がゴーストタウン化してしまうリスクを回避できると考えられます。先行買収のやり方が強引であるとして、権利変換計画認可決定の取消を求めた裁判例もありますが、個別の不動産売買契約は当事者が合意の下に穏便に締結され、しっかりした契約書も作成されていますので、なかなか手続全体が違法性を帯びるまで事実認定を得ることは困難です。事例判決となりますが、判決を引用します。

福岡地方裁判所平成2年10月25日判決(後日原告の控訴棄却)

『福岡市は、本件事業計画決定の公告に先立ち昭和五七年から本件施行区域内の用地の先行買収及びそれに伴う借家人補償を行っていた。その件数は、用地の取得が、昭和五七年三件、同五八年五件、同五九年一一件、同六〇年二件の合計二一件で面積は合計約一四五〇平方メートル、借家人の補償が、昭和五七年五件、同五八年四件、同五九年七件の合計一六件であった。このような先行買収を行った理由は、昭和五六年に本件施行区域について再開発事業の都市計画決定がされたことにより、都市計画法上、本件施行区域内での建築が規制されるとともに、その規制に適合しない建物を建築することを希望する者はその土地の買収を請求し得ることとなり、本件事業の施行者である市としては、建築許可申請から土地買取請求という正規の手続きがされていない場合でも、施行区域内の土地所有者から土地買取の要求が出されるとこれに応じざるを得ない立場にあったことにある(なお、原告らは、この点について、市側から強引な先行買収が行われた旨主張し、原告会社代表者の供述中には、これに副う部分もあるが、右部分は事実の特定性に欠け、これのみで右主張を認定することはできないし、他にこれを認めるに足る証拠もない。)。』

(2)先行売買の注意点

 何よりも、正式組合設立前の先行買収(先行取得)において注意すべきことは、現在の指定容積率(自分の土地の容積率として認識しているもの)と、都市計画決定後の見直し容積率と、実際の事業計画案に示された評価要素を加味した評価容積率の合計、つまり再開発の計画容積率は大幅に異なる(2~6倍となることも考えられる)ということです。また、再開発によって利便性や機能性が大幅に向上する新築建物の平米あたりの価格も、従来の近隣の価格とは異なることが予想されるということです。様々な都市機能を備えた複合再開発ビルができるのですから利便性が大幅に上昇し、床面積あたりの価格(平米単価、坪単価)が大幅に上昇することも考えられます。容積率の上昇と、平米単価の上昇は掛け算により相互作用し、結果として、驚くような分譲価格総額となるのです。

 仮に、同一区域の建物の平米あたりの単価が同一とすると、容積率が5倍となって、床面積が5倍になる場合は、一般に分譲した場合の収入は5倍となります。土地の価格も5倍に近く価値が上がると考えることも可能です。これらのことを念頭に、先行買収の提案には対応・交渉していくことが必要でしょう。ご不安があるという場合は再開発に詳しい法律事務所と相談しながら対応されると良いでしょう。

以上

関連事例集

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※参照条文

都市再開発法

第73条(権利変換計画の内容)

第1項 権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。

一  配置設計

二  施行地区内に宅地、借地権又は権原に基づき建築物を有する者で、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等を与えられることとなるも のの氏名又は名称及び住所

三  前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその価額

四  第二号に掲げる者に前号に掲げる宅地、借地権又は建築物に対応して与えられることとなる施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の明細及びその価額の概 算額

五  第三号に掲げる宅地、借地権又は建築物について先取特権、質権若しくは抵当権の登記、仮登記、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記又は処分の制限の登 記(以下「担保権等の登記」と総称する。)に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利

六  前号に掲げる者が施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等に関する権利の上に有することとなる権利

七  施行地区内の建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)で、当該権利に対応して、施設建築物の一部につ いて借家権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所

八  前号に掲げる者に借家権が与えられることとなる施設建築物の一部

九  施設建築敷地の地代の概算額及び地代以外の借地条件の概要

十  施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要

十一  第七十九条第三項の規定が適用されることとなる者の氏名又は名称及び住所並びにこれらの者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその価額

十二  施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築 敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる宅地若しくは建築物 又は権利並びにその価額

十三  組合の参加組合員に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその参加組合員の氏名又は名称及び住所

十四  第五十条の三第一項第五号又は第五十二条第二項第五号(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)に規定する特定事業参加者(以下単に「特定事業参加者」とい う。)に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所

十五  第四号及び前二号に掲げるもののほか、施設建築敷地又はその共有持分及び施設建築物の一部等の明細、その帰属並びにその管理処分の方法

十六  新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項

十七  権利変換期日、土地明渡しの予定時期及び工事完了の予定時期

十八  その他国土交通省令で定める事項

第2項 宅地又は借地権を有する者が当該宅地の上に建築物を有する場合において、当該宅地、借地権又は建築物について担保権等の登記に係る権利があるときは、 これらの宅地、借地権又は建築物は、それぞれ別個の権利者に属するものとみなして権利変換計画を定めなければならない。ただし、次の各号の一に該当する場合 は、この限りでない。

一  担保権等の登記に係る権利の消滅について関係権利者のすべての同意があつたとき。

二  宅地と建築物又は借地権と建築物とが同一の担保権等の登記に係る権利の目的となつており、かつ、それらのすべての権利の順位が、宅地と建築物又は借地権と建築物とにおい てそれぞれ同一であるとき。第3項 借地権の設定に係る仮登記上の権利があるときは、仮登記権利者が当該借地権を有する場合を除き、宅地の所有者が当該借地権を別個の権利者として有する ものとみなして、権利変換計画を定めなければならない。第4項 宅地又は建築物に関する権利に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は当該権利 が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。ただし、借地権以外の宅地を使用し、又は収益する権利の存否が確定しない場合にあつて は、その宅地の所有者に対しては、当該権利が存しないものとして、その者に与える施設建築物の一部等を定めなければならない。

第74条(権利変換計画の決定の基準)

第1項 権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物及び施設建築敷地の合理的利用を図るように定めなければ ならない。

第2項 権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならない。

第87条(権利変換期日における権利の変換)

第1項 施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地 を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。

第2項 権利変換期日において、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者に帰属し、当該建築物を目的とする所有権以外の権利 は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。ただし、第六十六条第七項の承認を受けないで新築された建築物及び他に移転すべき旨の第七十一条第一項 の申出があつた建築物については、この限りでない。