【商事、会社法、出資金の法的性質、株主か貸金かの確認方法、回収手続】
質問:友人から数年前に会社を設立するので出資して欲しいと言われ、指定された口座に金100万円を振り込みました。去年もまた追加で出資して欲しいと言われ、再度金100万円をこのときは会社名義の受領証をもらって手渡ししました。株券は持っていません。今まで配当の話はもちろん、株主総会の話もされたことがありませんが出資したお金のことが気になります。そもそも私は「株主」ということでいいのでしょうか。株主であるか否かを確認するにはどうしたらいいのでしょうか。
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回答:
1 自分が株主であるのかを確認するには、会社本店に備え置かれた株主名簿を閲覧することによって確認ができます。株主であれば「株主名簿」(会社法第121条)に名前が記載されています。株主名簿には、 @株主の氏名又は名称及び住所、Aその株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)、Bその株主が株式を取得した日、C株式会社が株券発行会社である場合には、Aの株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号、が記載されています。株主名簿は原則として会社本店に備え置く義務があり(法第125条1項)、株主あるいは会社債権者であれば、理由を明らかにすれば、営業時間中であればいつでも株主名簿を閲覧することができる(同条2項)と規定されています。
2 もし、株主名簿が確認できなかった場合には、設立が「発起設立」であったなら設立時の出資については原始定款(一番最初に作成した公証人の認証を受けた定款)に貴方の名前が発起人として記載されていますし、募集設立である場合には発起人あるいは株式申込人となり、株式申込人の場合には会社に株式申込証を提出しています。これらの書類は設立登記申請時の添付書類として法務局に提出されていますので、法務局にて閲覧することによってご自身が株主であるか否かを確認することができます。
3 2回目にご友人に渡されたお金が株主としての出資であったのなら、その日以降に会社の発行した株式の数が増えていなければなりません。これは当該会社の登記事項証明書の「発行済株式の数」「資本金の額」という欄を見るとわかります。お金を渡した日以降に「発行済株式の数」「資本金の額」について増えた旨の変更登記がされていれば、増資が行われたという事実を確認することができます。逆にこれらの変更登記がされていない場合にはそもそも増資はなかったということで、「出資金」ではなく「貸付金」であったといえるでしょう。また、そもそも、会社が新株を発行して増資を行う際の金銭出資については、払込取扱機関(銀行、信用金庫等)に払込金額全額を振り込んで行うものとされていますので、手渡しで渡された2度目のお金については新株の発行に基づくものではない可能性が高いと考えられます。
4 以上のとおり、1度目の出資については、株式を引き受け、株主としての地位を得た可能性がありますが、2度目の出資については、単に会社あるいはご友人個人に金銭を貸し付けたに過ぎないと考えることができます。ご相談の状況では、まずご自身が株主であるのか、あるいは会社の債権者にあたるのかを確認する必要があります。もし株主であれば、株主として権利を行使することができますし、会社に対する債権者であれば、会社に貸付金の返還請求を検討していく必要があります。
5 法律事務所では、ご自身が株主であるのか、債権者であるのかの法律関係調査も承っておりますので、不安であれば振込記録や会社の登記事項証明書、先方の発行した受領証をご持参のうえ、お近くの弁護士をお尋ねください。
【解説】
1 株主と債権者
会社にお金を渡した場合、そのお金が会社に対する出資として渡したのか、あるいは会社に対する貸付金として渡したのかによって、貴方の会社に対する立場も渡したお金の行方も全く異なってきます。
会社に対する出資金として渡している場合には、貴方は「株主」としての地位を取得し、出資金額に応じた数の株式を有していることになります。もし、会社に対する貸付金として渡しているのであれば、貴方は「債権者」としての立場となり、会社に対して貸付金債権を有していることになります。
渡したお金が「出資金」の場合、貴方は株主としての地位と権利を取得する代わりに出資したお金自体についての返還を請求することはできません。その代わり株主としての権利である、株主総会における議決権を持株数に応じて取得したり、配当請求権や会社が解散等した場合の残余財産分配請求権を取得します。さらには持ち株数に応じて、少数株主権と呼ばれる権利も取得します。
渡したお金が「貸付金」であれば、貴方は債権者としてそのお金の返還を請求することができます。「貸付金」の場合、貴方と会社(あるいはご友人)との間には、「金銭消費貸借契約」が締結されていることなります(民法第587条)ので、民法の規定に基づいて返還を請求していくことになります。例えば、今回のご相談で貸付金か否かわからないということは、返済期限について定めがないものと予想されます。この場合、お金の返済の要求については、相当期間を定めれば返還の催告が可能とされています(民法591条1項)。
【民法】
第587条(消費貸借)消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
第591条(返還の時期)
第1項 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
第2項 借主は、いつでも返還をすることができる。
2 株主か債権者か確認する方法
出資金としてお金を渡したというだけでは、出資金とは認められません。出資金であることを主張するためには、株主として認められている必要があります(出資金と説明されてお金を渡したというだけでは、対会社との関係では株主として扱われる理由にはなりません)。では、自分が株主であるのかを確認するにはどうしたらいいのでしょうか。株主であれば「株主名簿」(会社法第121条)に名前が記載されています。株主名簿には、 @株主の氏名又は名称及び住所、Aその株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)、Bその株主が株式を取得した日、C株式会社が株券発行会社である場合には、Aの株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号、が記載されています。株主名簿は原則として会社本店に備え置く義務があり(法第125条1項)、株主あるいは会社債権者であれば、理由を明らかにすれば、営業時間中であればいつでも株主名簿を閲覧することができる(同条2項)と規定されています。
会社法第121条 (株主名簿) 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号
第122条 (株主名簿記載事項を記載した書面の交付等)
第1項 前条第一号の株主は、株式会社に対し、当該株主についての株主名簿に記載され、若しくは記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
第2項 前項の書面には、株式会社の代表取締役(指名委員会等設置会社にあっては、代表執行役。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。
第3項 第一項の電磁的記録には、株式会社の代表取締役が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
第4項 前三項の規定は、株券発行会社については、適用しない。
第125条(株主名簿の備置き及び閲覧等)
第1項 株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない。
第2項 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
第3項 株式会社は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四 請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
第4項 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の株主名簿について第二項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
第5項 前項の親会社社員について第三項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。
なお、株券についてですが、会社法では株券の不発行が原則とされています(会社法第214条)。会社が原則どおり株券不発行としているか否かは会社の登記事項証明書に記載されていますので、確認されてみるといいでしょう。
会社法 第214条(株券を発行する旨の定款の定め)株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる
まずは、ご友人に連絡を取って、会社に備え置かれているはずの株主名簿の閲覧請求をされるとよいでしょう。しかし、ご友人と連絡が取れない、これらの書類が残っていない、あるいは、そもそも作成されていない可能性も考えられます。では、万が一株主名簿が確認できなかった場合には、どのように株主であるか否かを確認していけばよいのでしょうか。
3 設立時株主であることが推測される場合
設立時に渡したお金が会社に対する出資金であった場合、設立時の形態が発起設立であったのか、募集設立であったのかによって、多少手続が異なります。
当該会社が発起設立であった場合には、設立する会社の株式を引き受けて株主となれるのは発起人だけですので、設立当初の手続に貴方も発起人として協力していることになります。発起人であれば、定款に発起人として引き受けた株式の種類及び数とともに氏名住所が記載されます。この定款は原始定款と呼ばれるもので、公証役場で認証を受けたのち、設立登記に際して法務局に提出しています(商業登記法第47条2項1号)ので、認証を受けた公証役場、あるいは、当該会社を管轄する法務局で確認をすることができます。
そして、発起人が引き受けた株式の払い込みについては、発起人の定めた銀行等の払込みの取り扱いの場所(払込取扱機関)においてしなければならないとされ(会社法第34条2項)、具体的には代表発起人の個人名義の銀行口座に当該代表発起人を含めた発起人全員が各々の出資金を振り込むことによって払い込み手続きが行われます。そして出資の履行を証明する書面として、この代表発起人の銀行通帳の写しを附属書類として添付されることが多くみられます。
会社法 第34条(出資の履行)
第2項 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法
(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項 に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
次に設立形態が募集設立であった場合、貴方が発起人であった場合には、上述と同様、定款に住所氏名の他、株式を引き受けた旨及びその数、出資金額が記載されます。募集に応じて株主となっている場合には、設立時募集株式の引き受けについての引き受け申込み証、全部を引き受けている場合には契約証を会社に提出し、これらが設立登記申請時における附属書類といて法務局に提出されています(商業登記法第47条2項2号)。この募集設立の場合の出資金についても、払込金については、会社の定める銀行等の払込取扱機関に対して行うものとされ、その金融機関の発行する保管金証明書が会社の設立登記の際の添付書類となっています(同法第47条2項5号)。
商業登記法第47条(設立の登記)
第1項 設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によつてする。
第2項 設立の登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、次の書面を添付しなければならない。
一 定款
二 会社法第五十七条第一項 の募集をしたときは、同法第五十八条第一項 に規定する設立時募集株式の引受けの申込み又は同法第六十一条 の契約を証する書面
三 、四(略)
五 会社法第三十四条第一項 の規定による払込みがあつたことを証する書面(同法第五十七条第一項 の募集をした場合にあつては、同法第六十四条第一項 の金銭の保管に関する証明書)
六〜十二(略)
3 、4(略)
以上のことから設立時のお金については、銀行に振り込んでいることから出資金の可能性が高いといえます。そして確実に株主であることを確認するには、
@会社に保存されている定款の謄本を確認する方法
A設立登記に際して管轄法務局に提出された定款の方法
B設立登記に際して管轄法務局に提出された株式引き受け証を確認する方法
C定款を認証した公証役場で定款の原本を確認する方法
のいずれかの方法を検討することになります。
3 株主であることの具体的な確認方法
@会社に保存されている定款の謄本を確認する方法
会社には、会社設立時に公証人の認証を受けた原始定款が残っている可能性があります。原始定款は従来どおりの紙謄本か、あるいは電子認証を受けている場合にはCD−Rに保存されています。株主名簿が備え置かれていない場合でも、貴方の渡したお金が出資金であって、発起人であった場合には、発起人については原始定款の絶対的記載事項として定款に記載されます。よって原始定款には株主となる発起人の氏名住所とともに引き受けた株式数や出資金額が記載されていますので、貴方が株主であるか否かが確認することができます。定款も株主名簿と同様に会社に備え置く義務があり、株主及び債権者には定款の閲覧や謄抄本の請求等が認められています(会社法第31条1項2項)。ただし、定款は、会社の運営の中で株主総会によってその内容が刻々と変更され、変更後のものが備え置かれていることになります。発起人については、定款の絶対的記載事項ではあるものの、その変更の中で、附則については削除(今後の定款から除外する)をすることが実務上多くみられます。よって備え置かれている定款について発起人の記載自体がない場合もありますので注意が必要です。
会社法第31条(定款の備置き及び閲覧等)
第1項 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。
第2項 発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。
一 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
3,4(略)
A管轄法務局に設立登記に際して提出された定款の閲覧方法
B管轄法務局に設立登記に際して提出された株式引き受け証を確認する方法
会社営業所において定款を閲覧できなかった場合、あるいは附則が削除されたものが備え置かれていた場合には、会社の設立登記申請に際して附属書類として法務局に提出された定款を閲覧する方法があります。また、募集設立であって発起人ではなかった場合には、定款ではなく、株式引き受け証に氏名住所、引き受けた株式の数などの記載があり、やはり、会社の設立登記に際して法務局に附属書類として提出されていますので、同じく法務局にて閲覧する方法が検討できます。
附属書類の閲覧については、商業登記法第11条の2において閲覧請求できる者は利害関係人に限定されています。そして、利害関係を有する事由を示し、かつ、その事由が相当であると認められた場合にのみ閲覧をすることが可能となります。今回の事情を証明できる書類(例えば、お金を振り込んだ際の振込明細票や振り込んだ記載のある通帳、相手の会社の登記事項証明書、2度目にお金を渡した際の受領証、など)の原本とその写しを持参することが必要です。閲覧の請求申請は管轄の法務局ですが、書類自体は他の法務局に移されている場合もありますので、閲覧に際しては改めて他の法務局に出向く必要があることもあります。なお、認められるのは書類の閲覧のみですので、書類そのものをコピーすることはできません。ただし、カメラによる撮影は可能ですので、デジタルカメラあるいは携帯電話のカメラ機能を利用して書類を撮影することになります。
なお、登記申請書及び附属書類の保存期間は5年間とされていますので、会社の設立が5年以上前の場合には、当該書類自体が廃棄され、閲覧自体ができなくなっていることもありますので注意が必要です。
商業登記法第11条の2(附属書類の閲覧) 登記簿の附属書類の閲覧について利害関係を有する者は、手数料を納付して、その閲覧を請求することができる。この場合において、第十七条第四項に規定する電磁的記録又は第十九条の二に規定する電磁的記録に記録された情報の閲覧は、その情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものを閲覧する方法により行う。
C定款を認証した公証役場で定款(原始定款)を確認する方法
公証役場で保管されている定款及び附属書類については、その閲覧の請求あるいは正本又は謄本の請求をすることができます。正本は認証を依頼した当事者(嘱託者)あるいはその承継人からのみ可能で、利害関係人からは謄本の請求のみが可能です。正本も謄本も記載されている内容は同じです。法務局における利害関係人からの閲覧請求と同じように、ここでも利害関係人からの閲覧あるいは謄本の請求には法律上の利害関係があることを証明する必要があります(公証人法第62条の5、第60条の4、第44条、第51条、第52から56条)。
なお、原始定款は作成後20年間公証役場に保管されています(公証人法施行規則第27条1項1号)ので今回のご相談のケースでは公証役場に原本が保管されているものと考えられます。しかし、ここで問題となるのは、定款の原本を保管しているのは、定款認証をした公証役場のみであるということです。よって認証をした公証役場を探す必要がでてきます。定款の認証については、当該会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証人のみが認証をすることができるとされています(公証人法第62条の2)。従って問題の会社が東京都に本店を置いている場合には、都内の公証役場全てに問題の会社の定款を認証したか否かについてから当たる必要が出てくることになります。
【公証人法】
第六十二条ノ五 第六十条ノ三及第六十条ノ四ノ規定ハ第六十二条ノ三第三項ノ規定ニ依リ公証人ノ保存スル定款及其ノ附属書類ニ之ヲ準用ス
第六十条ノ四 第四十四条及第五十一条乃至第五十六条ノ規定ハ第五十八条ノ二第四項ノ規定ニ依リ公証人ノ保存スル証書及其ノ附属書類ニ之ヲ準用ス
第四十四条 嘱託人、其ノ承継人又ハ証書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ関係ヲ有スルコトヲ証明シタル者ハ証書ノ原本ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得
2 第二十八条第一項及第二項、第三十一条並第三十二条第一項ノ規定ハ前項ニ依リ公証人証書ノ原本ヲ閲覧セシムヘキ場合ニ之ヲ準用ス
3 公証人嘱託人ノ承継人ニ証書ノ原本ヲ閲覧セシムヘキ場合ニ於テハ承継人タルコトヲ証スヘキ証書ヲ提出セシメ其ノ承継人タルコトヲ証明セシムヘシ
4 検察官ハ何時ニテモ証書ノ原本ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得
第五十一条 嘱託人、其ノ承継人又ハ証書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ関係ヲ有スルコトヲ証明シタル者ハ証書又ハ其ノ附属書類ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
2 第二十八条第一項及第二項、第三十一条、第三十二条第一項並第四十四条第三項ノ規定ハ前項ニ依リ公証人証書ノ謄本ヲ作成スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第五十二条 証書ノ謄本ニハ左ノ事項ヲ記載シ公証人之ニ署名捺印スヘシ
一 証書ノ全文
二 謄本タルコト
三 作成ノ年月日及場所
第五十三条 証書ノ謄本ハ其ノ一部ニ付之ヲ作成スルコトヲ得
2 前項ノ謄本ニハ抄録謄本タルコトヲ記載スヘシ
第五十四条 前二条ノ規定ハ証書ノ附属書類ノ謄本ノ作成ニ之ヲ準用ス
第五十五条 証書ノ正本若ハ謄本又ハ其ノ附属書類ノ謄本ヲ請求スル者ハ之ニ記載スヘキ事項ヲ自ラ記載シ公証人ノ署名捺印ノミヲ請求スルコトヲ得
2 公証人前項ノ正本又ハ謄本ニ署名捺印シタルトキハ其ノ正本又ハ謄本ハ公証人自ラ之ヲ作成シタルト同一ノ効力ヲ有ス
第五十六条 証書ノ正本若ハ謄本又ハ其ノ附属書類ノ謄本数葉ニ渉ルトキハ公証人ハ毎葉ノ綴目ニ契印ヲ為スヘシ
2 第三十七条及第三十八条ノ規定ハ証書ノ正本及謄本並其ノ附属書類ノ謄本ノ作成ニ之ヲ準用ス
第六十二条ノ二 会社法第三十条第一項 及其ノ準用規定並一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第十三条 及第百五十五条 ノ規定ニ依ル定款ノ認証ノ事務ハ法人ノ本店又ハ主タル事務所ノ所在地ヲ管轄スル法務局又ハ地方法務局ノ所属公証人之ヲ取扱フ
【公証人法施行規則】
第二十七条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務 又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したとき は、この限りでない。
一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年
二、 三(略)
2,3(略)
4 会社成立後の出資(新株発行、募集株式の発行)
会社の成立後に会社が出資金を集める場合には、新株を発行するという方法によります。新株を発行する方法はいくつかあり、出資金を振り込むことなく新株を発行することもできますが、出資金を振り込んでもらって新株を発行する場合には、株式引き受け人には会社の定める銀行等の払込取扱機関に実際にお金を振り込んでもらう必要があります(会社法第208条)。
ご相談のケースでは、手渡しでは現金で手渡されたとのことですので、後日そのお金が貴方名義で会社指定の払込取扱機関に振り込まれているという事情がない限り、出資ではなく会社への貸付金であると考えるのが自然です。会社成立後の株主についても、前述のとおり株主名簿を閲覧するのが一番簡単で早い方法ですが、ここでは株主名簿が閲覧できなかった場合の方法を検討しておきます。
実際に新株が発行されたか否かは、貴方がお金を渡した日以降に、当該会社の登記事項証明書の事項欄中、発行済み株式の総数欄及び資本金の額欄にそれぞれ増加する旨の変更登記が入っているか否かを確認することでも推測はできます。しかし、お金を手渡しで渡している以上、実際に株主となっているのか否かは書面で確認する必要があります。もしお金を渡した日以降に「発行済み株式の総数」と「資本金の額」が増加した旨の変更登記がされていない場合には、新株は発行されておらず、貴方の渡したお金は「出資金」ではなく「貸付金」であったということになります。
そして、もし変更登記がされていた場合、ここでも確認する書面としては、当該発行済み株式の総数及び資本金の額の変更登記申請の際に添付されている附属書類になります。附属書類の閲覧については上述のとおりです。
まず、増資が株主割当による新株発行(会社法第202条)によるものであったのか、あるいは第三者割当による新株発行(会社法第203条)によるものであったのかを確認しておきます。これらは附属書類である、株主総会議事録あるいは取締役会議事録で確認することができます。株主割当であったならば、株主であるなら定められた比率にて当然に新株を取得していることになります。株式の引き受けの申込を証する書面(商業登記法第56条1号)や設立時同様に払い込みを証する書面(同法同条2号)も附属書類として添付されますのでこれらの書面に自身の名前の記載の有無を確認していくという方法になります。
【会社法】
(出資の履行)
第二百八条 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。
2 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。
3 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
4 出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利の譲渡は、株式会社に対抗することができない。
5 募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。
(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)
第二百二条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨
二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日
2 前項の場合には、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
3 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。
一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
二 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
三 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議
四 前三号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議
4 株式会社は、第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第二号の期日の二週間前までに、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 募集事項
二 当該株主が割当てを受ける募集株式の数
三 第一項第二号の期日
5 第百九十九条第二項から第四項まで及び前二条の規定は、第一項から第三項までの規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。
(募集株式の申込み)
第二百三条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 株式会社の商号
二 募集事項
三 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 引き受けようとする募集株式の数
3 前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。
4 第一項の規定は、株式会社が同項各号に掲げる事項を記載した金融商品取引法第二条第十項 に規定する目論見書を第一項 の申込みをしようとする者に対して交付している場合その他募集株式の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
5 株式会社は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下この款において「申込者」という。)に通知しなければならない。
6 株式会社が申込者に対してする通知又は催告は、第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
7 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
【商業登記法】
(募集株式の発行による変更の登記)
第五十六条 募集株式(会社法第百九十九条第一項 に規定する募集株式をいう。第一号及び第五号において同じ。)の発行による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 募集株式の引受けの申込み又は会社法第二百五条第一項 の契約を証する書面
二 金銭を出資の目的とするときは、会社法第二百八条第一項 の規定による払込みがあつたことを証する書面
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、次に掲げる書面
イ 検査役が選任されたときは、検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類
ロ 会社法第二百七条第九項第三号 に掲げる場合には、有価証券の市場価格を証する書面
ハ 会社法第二百七条第九項第四号 に掲げる場合には、同号 に規定する証明を記載した書面及びその附属書類
ニ 会社法第二百七条第九項第五号 に掲げる場合には、同号 の金銭債権について記載された会計帳簿
四 検査役の報告に関する裁判があつたときは、その謄本
五 会社法第二百六条の二第四項 の規定による募集株式の引受けに反対する旨の通知があつた場合において、同項 の規定により株主総会の決議による承認を受けなければならない場合に該当しないときは、当該場合に該当しないことを証する書面
5 株主の地位を有する場合の権利行使方法
渡した金銭が「出資金」であれば、あなたは知人の会社の「株主」としての地位を有します。出資金自体の返還を請求することはできませんが、株主として「自益権」と「共益権」を行使することができます。自益権とは、会社から経済的利益を受ける権利をいい、会社の剰余金の配当を請求する「配当請求権」、会社清算時に会社の残余財産の分配を請求する「残余財産分配請求権」があります(会社法第105条1項1、2)。会社法では様々な種類の株式を発行することができるとされていますが、配当請求権と残余財産分配請求権を全て奪う株式を発行することはできないとされています(同条2項)
会社法第105条(株主の権利)
第1項 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
第2項 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
共益権とは会社の経営に参加する権利です。主な権利として、株主総会における議決権(会社法第105条1項3)と、会社の運営を是正監督する権利として、1株の株主でも行使できる「単独株主権」と株式の一定数あるいは一定の割合の保有に応じて行使できる「少数株主権」があります。
単独株主権としては、株主総会等の決議の取り消し(法第831条)、新株発行・自己株式処分・新株予約権発行の差し止め請求(法第210条、245条)、書類の閲覧・謄写請求(法第31条2項、125条2項、252条2項、442条2項)、議事録の閲覧・謄写請求(法第318条4項、371条2項、394条2項、413条3項)、会社解散命令の申し立て(第824条)などがあります。少数株主権(※)としては、@株主総会の招集少数手続等に関する検査役選任請求権(法第306条)、A議題提案権(法第303条)、議案通知請求権(第305条)、B業務の執行に関する検査役の選任請求権(法第358条1項)、C会計帳簿閲覧請求権(法第433条1項)、D株主総会招集請求権(法第297条1項2項)、E役員解任請求の訴え提起権(法第854条1項2項)、F会社の解散の訴え提起権(法第833条)G簡易合併等に対する反対権(法第796条3項)などがあります。少数株主権を含む共益権は、会社会計や経営の適正化を図り、株主の自益権を保全・行使するための前提を整える性質を有する権利と言えます。
今後は、株主総会議事録の閲覧謄写請求権、決算書類の閲覧謄写請求権を行使することが考えられます。各書類を確認できれば今まで受け取っていない配当金の有無がわかります。もし会社が解散等となった場合には残余財産を請求していくことになります。
※少数株主権の概要
@株主総会の招集少数手続等に関する検査役選任請求権(法第306条)
原則として議決権の1/100以上の議決権を有する株主(但し、公開会社においては6箇月前から引き続き有する株主)。株主総会証集手続の適正性を担保するために、第三者である検査役の選任を裁判所に申し立てることができます。
A議題提案権(法第303条)、議案通知請求権(第305条)
取締役会設置会社においては、原則として議決権の1/100以上又は300個以上の議決権を(公開会社においては、引き続き6箇月前から)有する株主のみ行使できます。。議題提案権(法303条)は、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権限で、議案提案権(法305条)は、株主総会の目的である事項について議案を提出する権限です。
B業務の執行に関する検査役の選任請求権(法第358条1項)
原則として、議決権又は発行済株式総数の3/100以上の数の株式を有する株主。役員による不正経理が疑われたり、取締役会や株主総会が開催されていないなど、不正行為や法令または定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由がある場合にこれを調査する検査役の選任を裁判所に申し立てることができます。
C会計帳簿閲覧請求権(法第433条1項)
原則、議決権又は発行済み株式総数の3/100以上の数の株式を有する株主。会社に収入があるはずなのに配当が無い、または配当が少ない、という場合には、まず最初にこの帳簿閲覧権を行使して、不正会計が無いかどうか調査することができます。
D株主総会招集請求権(法第297条1項2項)
原則として、議決権の3/100以上の議決権を有する(公開会社においては引き続き6箇月から有する)株主。役員の解任など、重大な事項について株主総会を開催する必要があるときは、この権限を行使して、株主総会の招集を請求することができます。
E役員解任請求の訴え提起権(法第854条1項2項)
原則として、議決権の3/100以上の議決権を有する株主(但し、公開会社では引き続き6箇月目から有する株主)・・役員の職務の執行に関して不正な行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、役員を解任する議案が株主総会において否決されたとき、又は、当該役員を解任する旨の株主総会の決議が種類株主総会の決議を要する旨等の定めがあることによりその効力を生じないときは、株主総会の日から30日以内に訴えを提起することができる。
F会社の解散の訴え提起権(法第833条)
原則として議決権または発行済株式の10/100以上の数を有する株主。「やむを得ない事由」がある場合に、株主から裁判所に対して、会社解散の訴えを提起することができます。但しこれは、解散した方が株主全体の利益が図られるとみられるような特殊な事情がある場合に限られると考えるべきでしょう。
G簡易合併等に対する反対権(法第796条3項)
株主総会における吸収合併契約等の承認決議において議決権を行使できる株主。純資産額の5分の1未満の吸収合併を受ける側の会社であっても、株主の利害が大きく、株主総会における実質的な審議が必要だと考えれば、総会決議の省略を拒否することができます。
6 貸付金の回収方法
渡した金銭が「貸付金」であれば、貴方は債権者としてそのお金の返還を請求することができます。「貸付金」の場合、貴方と会社(あるいはご友人)との間には、「金銭消費貸借契約」が締結されていることなります(民法第587条)ので、民法の規定に基づいて返還を請求していくことになります。例えば、今回のご相談で貸付金か否かわからないということは、返済期限について定めがないものと予想されます。この場合、お金の返済の要求については、相当期間の猶予を定めれば返還の催告が可能とされています(民法591条1項)。
この場合の、貸金返還請求は、契約書の無い形式の契約に関する請求権の行使ですので、請求権を行使する場合は、金銭消費貸借契約の存在を立証するための証拠関係を準備する必要があります。契約書に代わる、書証を用意する必要があります。例えば、当事者間のメールのやりとりとか、電話通話記録とか、銀行振込の記録などです。注意すべき点は、金銭を渡したことが「書面によらざる贈与(民法550条)」であるとの反論が予測されることです。万一相手方が「贈与」「書面によらざる贈与」の主張をしてきた場合は、贈与の契約を否認し、贈与契約の存在について証明が無いことを主張し、さらに、贈与するような関係に無いことや、贈与する理由が無いことを主張する必要があります。
民法第550条 (書面によらない贈与の撤回)書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
7 最後に
以上のとおり、最初の振込で支払ったお金については出資金である可能性が高く、2度目の手渡しでわたされたお金については貸付金である可能性が高いといえます。株主であるのか否かは株主名簿がきちんと備えて付けられていれば直ぐに判断できることなのですが、実際にはきちんと作成されている場合は少ないと言えるでしょう。もし、株主名簿がなく、ご友人と連絡が取れない、あるいは、連絡しても取り合ってくれない、言葉を濁しているような場合(出資金でないのなら、貸付金として返済する必要がでてきます。)にはご自身ではっきりさせる必要があります。株主であったなら、株主としての権利を主張していく必要がありますし、貸付金であるとして会社債権者であったなら、改めて返済について取り決めた借用書を作成し、場合によっては連帯保証人を要求されてもよいでしょう。いずれにしても、株主であるか否かを確認するためには、上述の方法で各書類に閲覧する必要があります。法律事務所では、これらの閲覧等を始めとする法律関係調査はもちろん、調査後の株主であった場合、あるいは、会社債権者であった場合の状況に応じて、相手方との対応、交渉等のご依頼を承ることも可能です。一度関係書類を揃えてお近くの法律事務所のご相談に行かれることをお勧め致します。
※参照条文
会社法第306条(株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)
第1項 株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
第2項 公開会社である取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」と、「有する」とあるのは「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とし、公開会社でない取締役会設置会社における同項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」とする。
第3項 前二項の規定による検査役の選任の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
第4項 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
第5項 第三項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
第6項 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第三項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
第7項 第三項の検査役は、第五項の報告をしたときは、株式会社(検査役の選任の申立てをした者が当該株式会社でない場合にあっては、当該株式会社及びその者)に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
第303条(株主提案権)
第1項 株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。
第2項 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。
第3項 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
第4項 第二項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
第305条
第1項 株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる。
第2項 公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
第3項 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
第4項 前三項の規定は、第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。
第358条 (業務の執行に関する検査役の選任)
第1項 株式会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、次に掲げる株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
一 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主
二 発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主
2 以下(略)
第433条(会計帳簿の閲覧等の請求)
第1項 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2以下(略)
第297条(株主による招集の請求)
第1項 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
第2項 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 以下(略)
第854条(株式会社の役員の解任の訴え)
第1項 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該株式会社である株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
第2項 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 以下(略)
第833条 (会社の解散の訴え)
第1項 次に掲げる場合において、やむを得ない事由があるときは、総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、訴えをもって株式会社の解散を請求することができる。
一 株式会社が業務の執行において著しく困難な状況に至り、当該株式会社に回復することができない損害が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。
二 株式会社の財産の管理又は処分が著しく失当で、当該株式会社の存立を危うくするとき。
2(略)
第795条 (吸収合併契約等の承認等)
第1項 存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
第2項 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、その旨を説明しなければならない。
一 吸収合併存続株式会社又は吸収分割承継株式会社が承継する吸収合併消滅会社又は吸収分割会社の債務の額として法務省令で定める額(次号において「承継債務額」という。)が吸収合併存続株式会社又は吸収分割承継株式会社が承継する吸収合併消滅会社又は吸収分割会社の資産の額として法務省令で定める額(同号において「承継資産額」という。)を超える場合
二 吸収合併存続株式会社又は吸収分割承継株式会社が吸収合併消滅株式会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等(吸収合併存続株式会社又は吸収分割承継株式会社の株式等を除く。)の帳簿価額が承継資産額から承継債務額を控除して得た額を超える場合
三 株式交換完全親株式会社が株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(株式交換完全親株式会社の株式等を除く。)の帳簿価額が株式交換完全親株式会社が取得する株式交換完全子会社の株式の額として法務省令で定める額を超える場合
第3項 承継する吸収合併消滅会社又は吸収分割会社の資産に吸収合併存続株式会社又は吸収分割承継株式会社の株式が含まれる場合には、取締役は、第一項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。
第4項 存続株式会社等が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げる場合には、吸収合併等は、当該各号に定める種類の株式(譲渡制限株式であって、第百九十九条第四項の定款の定めがないものに限る。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
一 吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員に対して交付する金銭等が吸収合併存続株式会社の株式である場合 第七百四十九条第一項第二号イの種類の株式
二 吸収分割会社に対して交付する金銭等が吸収分割承継株式会社の株式である場合 第七百五十八条第四号イの種類の株式
三 株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式である場合 第七百六十八条第一項第二号イの種類の株式
第796条 (吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
第1項 前条第一項から第三項までの規定は、吸収合併消滅会社、吸収分割会社又は株式交換完全子会社(以下この目において「消滅会社等」という。)が存続株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、この限りでない。
第2項 前条第一項から第三項までの規定は、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を存続株式会社等の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。ただし、同条第二項各号に掲げる場合又は前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
一 次に掲げる額の合計額
イ 吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この号において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する存続株式会社等の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
ロ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
ハ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
二 存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
第3項 前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。