新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1758、2017/05/31 16:05 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm
【民事、タレント活動契約、東京地裁平成27年9月9日判決】
AV出演拒絶と債務不履行責任
質問:
私はとある芸能プロダクション会社から「有名になれるから,タレント活動をしてみないか」などと勧誘を受けて,プロダクション業務の委託を受ける契約を締結しました。しかしその実態は,テレビに出てタレント活動をする,というようなものとは程遠く,ヌード撮影やアダルトビデオの撮影がメインの仕事でした。
契約書には,たしかにヌード撮影やアダルトビデオの撮影が業務内容として明記されていますが,よく内容を確認することなく契約書に署名・捺印してしまい,今になって後悔している状況です。会社からは,今後2年間で5本のアダルトビデオに出演してもらう必要がある,1本目の撮影は来週に予定しており,既に準備に着手している,これに従えない場合は,アダルトビデオ制作会社から支払われるはずであった5本分の出演契約料,1本目の撮影をキャンセルすることに伴う実損,これまで私のために出捐してきた広告費等の経費全額を損害賠償請求することになる,と脅されています。
内容を良く確認せずに契約してしまった私が悪いのは分かるのですが,アダルトビデオに出演することは気持ち的に受け容れられません。しかし,高額な損害賠償債務を負担できる経済力はありませんので,とても困っています。何とかならないでしょうか。
↓
回答:
1 問題点は、今後の撮影を拒否できるかということと会社の主張する損害賠償を負担しなければならないかということですが、結論から言うと撮影並びに損害賠償請求の拒否はできます。
あなたとプロダクションとの間の契約は,有期雇用契約類似のものといえます(なお、アダルトビデオの撮影契約といっても、契約の内容によっては雇用契約とは認められない場合もありますから注意が必要です)。有期雇用契約類似の契約は、期間中であっても解除が認められますが、解除を行うことができるのは,「やむを得ない事由」が認められる場合に限ります(民法628条前段)。そしてアダルトビデオへの出演という債務の性質に照らし,意に反して当該債務を強制することが出来ない以上,契約の解除の要件である,「やむを得ない事由」が認められるといえます。
2 速やかに,プロダクションに対して契約解除の通知書を送付すべきです。プロダクションの方から高額の損害賠償請求をされたとしても,解除後の債務は消滅するため,債務不履行責任を負うことはなくなりますので,基本的には支払う必要がありません。
3 ただ,プロダクションによっては,しつこく金銭の要求をしてきたり,訴訟を提起してきたりする可能性もありますので,交渉段階から弁護士を窓口として毅然とした対応を取っておくことをお勧めします。
解説:
第1 芸能プロダクションとの間の契約の性質
1 後述のとおり,あなたがアダルトビデオへの出演を取り止めたいと考えるのであれば,芸能プロダクションとの間で締結した契約を解除しなければなりません(契約の公序良俗違反を理由とする無効あるいは錯誤による無効等の主張も法律構成として考えられますが、後述の判例では、有期雇用契約類似の契約として解錠を認めています)。そして,契約の解除が認められるための要件については,契約の性質により異なるため,まずは,あなたと芸能プロダクションとの間で取り交わした契約の性質を考える必要があります。
2 労務の供給に関する契約は,大きく分けて,雇用契約と業務委託契約に分類することができます。
雇用契約というのは,一方(労働者)が労働に従事し,相手方(使用者)がこれに対してその報酬を与えることを約束する契約です(民法623条)。
一方,業務委託契約とは,一方が特定の仕事をし,その仕事に対して相手方が報酬を支払うことを内容とする請負(民法632条)類似の契約をいいます。当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方(受任者)がこれを承諾することを内容とする委任契約(民法643条)や法律行為以外の事務を委託する準委任契約(民法656条)を業務委託契約と呼ぶこともあり,業務委託契約は幅広い概念です。業務委託契約という契約書の名称にかかわらず、契約内容に即して雇用契約類似の契約なのかあるいは業務委託契約類似の契約なのかを判断する必要があります。
雇用契約上の労働者は,労働基準法や労働契約法上の保護を受けますが,労働者ではない業務委託契約上の役務提供者は労働法の適用対象外となるのが原則です。たとえば,雇用契約上の労働者を解雇するには,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められることが要件とされており(労働契約法16条),簡単に解雇ができないような仕組みとなっていますが,業務委託契約の場合はそのような決まりはありません。本稿とは関係がないので詳細は割愛します。
3 両者の区別ですが,例えば,さいたま地裁平成26年10月24日判決は,倉庫内の管理業務等の管理に関する契約について、労働法の適用を受ける「労働者」といえるかどうかは,当事者間の契約の名称や形式にかかわらず,その実態として,使用従属関係の下での労務の提供が行われていると評価できるか否かにより判断すべきである,としています。その上で,@仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無,業務の内容及び遂行方法に関する指揮監督の有無,時間的・場所的拘束性の有無,代替性の有無,並びに,A時間給、欠勤の控除,残業手当の付与等,報酬の性格が使用者の指揮監督下に一定時間労務を提供していることに対する対価と評価できるか否か等を総合的に考慮して判断するのが相当である,としています。
端的に言うと,指揮監督関係(従属性)と労務対償性(労務を提供している以上仕事の結果、成果に関係なく対価を受領できる。委託は労務の提供に無関係で成果、結果の対価として報酬をもらう。)を有するのが雇用契約で,そうでない場合が業務委託契約といえるでしょう。
4 では,あなたの場合はどうでしょうか。
契約書の記載次第ということにはなりますが,出演者が主体となって会社がマネージメントをするような契約内容となっている場合は別ですが、一般的に,芸能活動の内容を女性側が自由に決められるような記載になっていることは稀であり,多くの場合,アダルトビデオへの出演の諾否を自由に決められることは予定されていないのではないかと思われ労働契約としての指揮監督関係がみとめられます。そして,会社の指揮監督の下にアダルトビデオの撮影を行い,当該労務を提供したことの対価として一定の報酬を得る仕組みになっている契約内容であれば労務対償性も認められ労働者性が認められる可能性が高いといえるでしょう。
この点,東京地裁平成27年9月9日判決も,本件類似の事案において,「被告が原告に対してマネジメントを依頼するというような被告中心の契約ではなく,原告が所属タレントないし所属AV女優として被告を抱え,原告の指示の下に原告が決めたアダルトビデオ等に出演させることを内容とする雇用類似の契約であったと評価することができる。」旨判断しています。
第2 アダルトビデオ出演を拒否するための方策
1 契約の解除
(1) アダルドビデオへの出演を取り止めるための手段として,プロダクションとの間の契約を解除する旨の意思表示を行うことが考えられます。では,契約の解除は認められるでしょうか。
たとえば,プロダクションとの間の契約が,業務委託契約のうち準委任的な性格を持つということであれば,いつでも解除が可能です(民法656条,651条1項。ただし,651条2項により,不利な時期の解除は損害賠償義務あり。)。
しかし,前述のとおり,本件契約の性質は雇用契約類似のものといえそうです。期間の定めのない雇用契約であればいつでも解約可能ですが(民法627条1項前段),本件のような期間の定めのある雇用契約については,やむを得ない事由があるときに限って解約が認められることになります(民法628条1項前段)。
(2) それでは,本件でやむを得ない事由があるといえるでしょうか。
ア 従来,使用者側による雇用契約の解除(解雇)については,解雇権濫用法理を中心に多数の裁判例の蓄積がなされてきました。すなわち,民法628条1項及びそれを使用者側に確認した労働契約法17条1項は,どちらかというと,労働者を守るための規定として用いられてきたように思います。
しかし,雇用契約の期間を契約で定めた場合,使用者側の「契約期間中は働いてくれるだろう」という期待を保護する必要がありますので,やはり労働者側も当該期間に拘束されねばなりません。しかし、仕事ができない正当な理由が認められる場合もありますから「やむを得ない事由」がある場合は契約の解除が可能とされています。
イ いかなる場合に労働者側からの解除がやむを得ないと言えるかについては,これまであまり議論されてきませんでしたが,学説上は,使用者側の賃金不払い,労働者側の負傷,疾病等による就労不能等がこれに該当するものと考えてきたようです(新・判例解説Watch民法(財産法)No.10)。
ところが,前記東京地裁平成27年9月9日判決は,「アダルトビデオへの出演は,原告が指定する男性と性行為等をすることを内容とするものであるから,出演者である被告の意に反してこれに従事させることが許されない性質のものといえる。それなのに,原告は,被告の意に反するにもかかわらず,被告のアダルトビデオへの出演を決定し,被告に対し,第2次契約に基づき,1000万円という莫大な違約金がかかることを告げて,アダルトビデオの撮影に従事させようとした。したがって,被告には,このような原告との間の第2次契約を解除する「やむを得ない事由」があったといえる。」と判示し,労働者側の意思に反するというだけでやむを得ない事由に該当するかのような判断を行いました。
この裁判例に照らせば,あなたについても,アダルトビデオへの出演が意に反する以上,契約の解除にはやむを得ない事由が認められることになる可能性が高いといえるでしょう。
ウ ただし,この裁判例はあくまでも事例判断であると捉えるべきでしょう。判示内容をよく読むと,業務の内容,性質を問題としていることがわかります。すなわち,業務の性質上,労働者の意思に反して強制することが許されないという特殊事情に着目して,そのような場合は例外的に,意に反するというだけで「やむを得ない事由」に該当すると考えたのでしょう。
逆に言えば,通常の会社従業員が,デスクワークを行いたくないという理由で有期雇用契約の解除を行うことは一般的に困難と考えられます。これを認めてしまうと,あらゆる有期雇用契約が簡単に反故にされてしまうことになり,経済活動に混乱をもたらすことになりかねません。
要するに,強制することが非人道的あるいは人格を大きく蹂躙するような内容の業務については,たとえ有期雇用契約であったとしても,即時に解除を可能とするのが妥当である,という価値判断が前提にあるのだと思われます。
2 その他考え得る主張
その他,事案によっては,@契約内容を誤認識していたため,契約が錯誤無効であるとの主張(民法95条本文),A契約締結に向けた意思表示が詐欺あるいは脅迫に基づくものであったことを前提とする契約の取消しの主張(民法96条1項)等が考え得るところです。
ただし,@錯誤無効の主張については,契約書に実際の契約内容が明記されている場合は,内容を確認した上で署名・捺印したことが強く推認されますので,「重大な過失」(民法95条但書き)が存在したと認定されてしまう(その結果,錯誤による無効を主張できない)可能性が高いといえます。また,A詐欺あるいは脅迫による契約の取消しの主張については,詐欺行為ないしは脅迫行為の立証が一般的には容易でないことを認識しておく必要があります。
なお,あなたが未成年の場合は,B両親の同意を得ることなく契約締結した場合の契約取消しの主張(民法5条2項)が可能であり,両親の同意書等を取得されていない限りは,比較的通りやすい主張ということができそうです。
いずれにせよ,本件では契約解除が認められる可能性が高いです。上記主張はあくまでも予備的主張とお考えください。
第3 損害賠償義務を負うか否か
では,解除が認められるとして,先方が主張する損害を賠償しなければならないのでしょうか。
有期雇用契約の解除により,その後の債務は消滅しますので,解除後の債務の不履行というものも観念できなくなります。先方の主張する損害のうち,得られる予定であるアダルトビデオの出演料は,将来あなたがアダルトビデオに出演するという債務を予定通り履行することを前提としたものですので(履行利益といいます。),賠償の必要はないことになります。
また,あなたのために費やしてきた広告費等の経費は,本来的に会社が負担すべきものであり,たとえ労働者側が契約を解除したとしても,そのことに変わりはありません。
問題となるのは,1本目の撮影をキャンセルすることに伴い発生する実損です。前記東京地裁平成27年9月9日判決は,損害の費目ごとに細かな検討を行うことなく,契約を解除したのだから債務不履行責任を負うことはない,という理由で全ての請求を棄却しています。しかし,撮影直前のキャンセルにより無駄となったロケバスの手配代金やカメラの準備代金等について,会社側が請求できる余地が一切ないかというと,必ずしもそうではないと考えられます。私見ですが,出演者側が会社側に対し,撮影に参加することを強く期待させた上で,直前にキャンセルしたような場合,その期待は保護に値するものといえ,出演者側が不法行為責任を負う可能性もあるように思います。そのため,解除の意思表示を行うタイミングには注意が必要といえるでしょう。
その他,民法628条後段は,有期雇用契約を解除するに至ったやむを得ない事由が「当事者の一方の過失」によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う旨規定しています。しかし,少なくとも本件事案であなたの過失が認定されることはないでしょう。裁判例上も,労働者側に同条項を根拠とした損害賠償責任を肯定したものはほとんどないようです。
第4 まとめ
以上述べてきたとおり,あなたとプロダクションとの間の契約は,有期雇用契約類似の契約と評価することができ,契約解除には「やむを得ない事由」が求められることにはなりますが,債務の性質・内容に照らし,当該要件を満たす可能性が高いということができます。
したがって,まずはプロダクションに対し,書面で,契約解除の通知書(内容証明郵便)を発送すべきでしょう。損害の拡大を防止するために,来週予定されている撮影に行かないということも通知書に明記しておくべきです。
その後,プロダクションの方から多額の損害賠償請求を行う旨の書面が届くかもしれませんが(場合によっては訴訟提起も),同種事案にかかる裁判例に照らし,責任を否定できる可能性が高いですので,任意に支払う必要はありません。
会社との交渉を1人で行うのは非常に負担が重いです。弁護士に交渉の窓口を引き受けてもらうことをお勧めします。
以上
【参考判例】
さいたま地方裁判所平成26年10月24日判決「地位確認及び賃金支払並びに損害賠償請求事件」
『原告が、労働契約法上の「労働者」(二条一項)に該当するか。
ア 労働契約法二条一項は、労働契約法が適用される「労働者」を「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義しており、これに当たるか否かは、当事者間の契約の名称や形式にかかわらず、その実態として、使用従属関係の下で労務の提供が行われていると評価できるか否かにより判断すべきである。そして、使用従属関係の下で労務の提供が行われているか否かは、仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、業務の内容及び遂行方法に対する指揮監督の有無、時間的・場所的拘束性の有無、代替性の有無、並びに、時間給、欠勤の控除、残業手当の付与等、報酬の性格が使用者の指揮監督下に一定時間労務を提供していることに対する対価と評価できるか否か等を総合的に考慮して判断するのが相当である。なお、労働基準法が適用される「労働者」(労働基準法九条)も「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されていることからすれば、基本的に労働契約法が適用される労働者と同義であると解される。』
東京地方裁判所平成27年9月9日判決「損害賠償請求事件」
『第3 当裁判所の判断
1 認定事実
上記前提事実,証拠(甲2〜7)及び弁論の趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)原告が第1次契約を締結した目的と,契約書の記載内容
原告は,被告をしてアダルトビデオに出演させ,ヌードにさせることを主たる目的として,当時未成年であった被告との間で,親権者の同意を得ることなく,業務内容に「アダルトビデオ」を明示しない第1次契約を締結した。この契約は,民法5条2項により取消しうべき契約である。
(2)第1次契約に基づくアダルトビデオの撮影
そして,原告は,第1次契約に基づき,被告が未成年の間は露出度の高いグラビア撮影等に従事させ,■平成2■年■月に,1本のアダルトビデオのため複数回にわたり撮影に従事させた。
(3)第2次契約に基づき1000万円くらいの違約金がかかることの告知
原告は,平成2■年■月■日,■被告をして,業務内容に「アダルトビデオ」を明示した第2次契約の契約書に署名指印させた。そして,原告は,被告に対し,あと9本のアダルトビデオへの出演が決まっていること,これを拒否した場合には1000万円くらいの違約金がかかることを告げて,第2次契約に基づき,被告をアダルトビデオの撮影に従事させようとした。
(4)被告が解除の意思表示をした理由
被告は,グラビア撮影の内容及びアダルトビデオへの出演が,第1次契約の当初より被告の意に反する業務であったため,平成2■年■月■日のグラビア撮影及び翌■日のアダルトビデオ撮影の直前である同月■日に,支援者を通じて,原告に対し,第1次契約及び第2次契約を解除する旨の意思表示をした。
2 検討
上記前提事実及び認定事実に基づき,被告の不出演が債務不履行にあたるかを検討する。
(1)契約の性質
第1次契約及び第2次契約の内容は,被告が出演するものについて原告の決定に従わねばならず(8条1項),出演しなかった場合に損害賠償義務を負うとされているのに対し(9条1項,6項),被告の得られる報酬の額や支払方法について具体的な基準は定められていない(7条1項,2項)。実際にも,被告がどんなグラビア撮影やアダルトビデオ撮影に従事するかについては,被告の意思にかかわらず,原告が決定していた。また,原告が芸能プロダクションの運営等を目的とする会社であり,被告以外にもアダルトビデオに出演する女優を多数マネジメントしてきたと考えられるのに対し,被告は,第1次契約の当時は18歳になって間もない高校生であり,第2次契約を締結したのも■であった。
これらの実情に照らすと,第1次契約及び第2次契約はいずれも,被告が原告に対してマネジメントを依頼するというような被告中心の契約ではなく,原告が所属タレントないし所属AV女優として被告を抱え,原告の指示の下に原告が決めたアダルトビデオ等に出演させることを内容とする雇用類似の契約であったと評価することができる。
そうすると,被告の解除は,2年間という期間の定め(3条)のある雇用類似の契約の解除とみることができるから,契約上の規定にかかわらず,「やむを得ない事由」があるときは,直ちに契約の解除をすることができるものと解するのが相当である(民法628条)。
(2)直ちに解除することの可否
アダルトビデオへの出演は,原告が指定する男性と性行為等をすることを内容とするものであるから,出演者である被告の意に反してこれに従事させることが許されない性質のものといえる。それなのに,原告は,被告の意に反するにもかかわらず,被告のアダルトビデオへの出演を決定し,被告に対し,第2次契約に基づき,1000万円という莫大な違約金がかかることを告げて,アダルトビデオの撮影に従事させようとした。したがって,被告には,このような原告との間の第2次契約を解除する「やむを得ない事由」があったといえる。
(3)債務不履行の有無
そうすると,仮に第2次契約に基づき被告に平成2■年■月■日のグラビア撮影及び同月■日のアダルトビデオ撮影等への出演義務があったとしても,被告の民法628条に基づく同月1日の解除により,第2次契約に基づくこれらの義務は消滅したと認められる。したがって,被告がこれらの撮影に出演しなかったことは,債務不履行にあたらない。
以上により,その余の点を判断するまでもなく,被告は原告に対し,債務不履行による損害賠償義務を負わない。
第4 結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,注文のとおり判決する。』
【参考条文】
○民法
(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条 雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とする。
2 前項の規定により契約の解除をしようとするときは、三箇月前にその予告をしなければならない。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
○労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
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