新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1761、2017/08/14 17:30 https://www.shinginza.com/qa-seikyu.htm

【民事 判決後の債権回収の方法 手続き最高裁平成23年9月20日決定、平成25年1月17日決定、 「全店照会」方式】

判決後の債権回収の方法


質問:知人に,貸金1000万円の返還について訴訟を提起し、主張通り1000万円を支払えという判決を得ることができました。
しかし,相手は、判決後も支払いません。この後どうすればよいでしょうか,相手の住所だけはわかりますが賃貸物件に住んでいるようですし,何をしているかも知りません。



回答:1000万円の支払いを認める判決を得ても,それだけでは意味がありません。自力救済は認められていない以上,債務者が任意で支払わないのであれば,法的手続き(執行)によって回収をしなければなりません。そのため,事案によっては訴訟に勝つことよりも回収することが困難なケースもよくあるところです。

  法的手続によって回収するためには,回収する財産を特定しなければならないとするのが現在の法律です。1000万円支払えという判決は、権利があって債務者が支払わなければ、強制執行ができる、という書類に過ぎません。そして、強制執行は債務者の全財産が対象となるのですが、現在の法律では全財産に対する執行という方法はなく、財産を特定して執行の申し立てをするという決まりになっています。

  「財産の特定」とは,つまり債務者が所持している(回収するに足る)財産は債権者であるあなたが調査・発見しなければならない,ということになります。

  本件のように,債務者が個人の場合,基本的な(回収するに足る)財産として,@不動産,A預貯金,B給与債権が考えられるところです。

  ご相談の場合相手は、賃貸物件に住んでいるということですから、@の不動産を所有していないと考えられます。また勤務先も不明ということですとこのうち,これまでの判例実務では,費用と手間をかけて手当たり次第に差し押さえる他なかったA預貯金について,近年では弁護士会と一部銀行が協定を結び,勝訴判決がある等の一定の要件のもとで,ある程度の情報から預貯金口座と残高の有無を調べることができるようになりました。

  下記解説では,これらの財産について,その調査方法について説明していきます。本件類似のものとして,当事務所ホームページ事例集756番1136番1364番1468番等もご参照ください。


解説:

1 はじめに

  民事裁判をおこない,判決が得られたとしても,判決記載のとおり強制的に回収ができることが認められるだけで、回収には別に手続きが必要になります。自らの手で、権利の実現、回収することは禁じられている(自力救済禁止の原則)ため,相手方が自主的に支払わない限り,一定の手続き(執行手続き)によって回収を行う必要があります。

  執行手続自体は,ある程度の定型的な流れがあるため,極めて難しい手続きという訳ではありませんから、裁判所の書記官と相談しながら申し立てることも可能です(もちろん,手続きのタイミングや順序などを間違えると十分な回収ができなくなったり,時間や費用が余計にかかったりするため,「容易」な手続きではありません)。

  執行手続きより難しいのは,執行する対象の特定です。債権の回収は,当然債務者(本件でいう「知人」)の財産からすることになりますが,裁判所が「財産」を教えてくれるわけでもないので,債権者が執行のできる「財産」を探し出す必要があります。債務者の全財産に対する執行が法律上設けられていれば良いのですが、現時点において強制執行について規定する民事執行法では、財産ごとに強制執行の方法が定められているため、財産の特定が必要とされています。

  そのため,本件のような金銭請求の事案では,請求が認められるか,という点以上に,回収できるほどの「財産」がどこに存在するのか(あるいは存在しないのか),が問題となります。

  以下では,判決が出された後の金銭債権について,特に財産の調査を中心として説明していきます。

2 財産の調査

 (1) 調査するべき財産

   債権の回収のための財産の調査である以上,回収のしやすい財産を調査・発見しなければ意味がありません。また,基本的に執行(差し押さえ)の手続きは一度実施するたびに再度手続きをする必要があるため,手間と執行にかかる費用を考えると,一度の執行手続で大きく回収することが見込める財産がより適しているということになります。

   以上の観点からすると,調査するべき財産としては,一般的に@不動産,A預貯金,B給与,ということになります。そこで,以下では,まずこの3点について,それが明らかでない場合の調査方法について説明いたします。

   なお,これらは本件のように債務者が個人である場合で,債務者が法人の場合は,他社(顧客)に対する売掛債権等,別の差し押さえるべき財産があり得るため,注意が必要です。

   また,個人の財産であっても,個別具体的な事情(例えば価値のある宝石等の動産を所持していることが明らかである等)によって対象とするべき財産は異なります。以下では,あくまでも「住んでいるところくらいしか良くわかっていない知人」に対する債権回収の一般についての説明です。

 (2) 不動産

   以上の観点から,まず調査するべきなのは不動産です。不動産であれば,ある程度の価値が見込めるため,一度で大きな額の回収が見込めるところですし,登記簿の制度があるため誰でも不動差の権利関係を確認することができ、また譲渡や売却に手間がかかる上,ある程度その痕跡が追えるため,財産を「逃がされる」ということが少ない,というのもメリットです。

   不動産の調査ですが,まずは住所がわかっているのであれば,その住所の登記を調査することで,所在の不動産(土地・建物)の状況(所有者)が分かります。なお,登記の取得については住所(住居表示)ではなく,地番が必要なのですが,ブルーマップやオンラインで住居表示から地番を検索することができます。

   登記簿上,当該不動産の所有者が債務者であれば,差し押さえの対象となります。差し押さえに当たっては,固定資産評価額だけではなく,不動産業者に依頼し,そのおおまかな時価を知ることが重要です(これは、債権の回収について見込みを立てるためですが、優先順位の担保、例えば抵当権が設定されている場合、余剰価値がないと差押が認められないことになっていることからも、実際の価値の確認が必要になります)。

   また,登記簿上現在の所有者が債務者でなくても,例えば過去債務者が所有していて,訴訟提起後に親族等に所有権が移転しているような場合は,その取り戻しが可能なこともあるため,まずは登記を取得することが必要です。

   ただし,以上の方法では実際に債務者が居る(住んでいる)場所の不動産のみの調査にとどまるため,債務者が他に不動産を有しているか等については,この方法では調査できないことになります。他の場所の不動産については,一般論としてなかなか調査は困難で,例えば調査会社等に依頼する等を検討する必要があります(その他としては,後述の財産開示手続が考えられるところですが,あまり実効性はありません)。

   なお,本件の事例とは離れますが,住所が不明で携帯電話の番号だけが分かっているような場合であっても,ケースによっては,弁護士法23条の2に定められた照会(弁護士会照会や23条照会といいます)を携帯電話会社におこなうことによって,携帯電話の契約書に記載された住所や請求書の送付先を知ることができる可能性があります。

 (3) 預貯金

   不動産と併せて調査をするべきであるのが,預貯金です。不動産に比べて額が小さいことが多いですが,回収までにかかる時間や手間,不動産を所持している人が少ないことを鑑みれば,不動産よりも回収可能性(財産がある可能性)が高いため,こちらの方が不動産よりも執行の対象として優先されるケースもあり得るところです。

   他方で,差し押さえは,手続をとった時点での預金が対象となり,その後に当該預金口座に入ってくる預金は対象にならないため(再度手続きをとる必要があります),差し押さえを実施するタイミングも重要になるのはこのためです。

   預貯金とは,当該銀行に対していつでも引き出せるよう預けているお金ですから,銀行に対する債権を意味します。債権について執行(差し押さえ)をするためには,「債権を特定するに足りる事項」(民事執行規則133条2項)を示さなければならないのですが,銀行に対する債権を差し押さえるためには,口座番号は不要であるが,銀行名だけでは足りず支店までは特定しなければならない,というのが現在の判例(最決平成平成23年9月20日民集65巻6号2710頁,最決平成25年1月17日判例タイムズ1386号182頁)と実務です。

   つまり,差し押さえをするためには「○〇銀行○○支店」というところまで調査しなければならない,ということになります。理論上は、銀行に対する債権ですから、債権の特定という意味では、口座のある支店を特定する必要はないはずです。しかし、銀行全部の預金を差押えできるとすると複数の支店の口座についてどれから差押の効力が及ぶのか確認が必要になり特定できないことになります。そこで、支店ごとに優先順位をつけるとか、金額の多い口座から差押える、という方法で特定できるか、問題となりましたが、いずれも、銀行に差押の通知が届いてから、口座を特定するまで時間がかかるため(支店ごとに判断する必要があり、通知が届いて直ちに差押えの対象となる債権を特定できない)最高裁の判例(平成23年9月20日決定、平成25年1月17日決定)では、支店特定が必要とされています。しかし、現在ではコンピューターにより全支店の口座を管理することが可能になっていますから、将来的には変更になる可能性もあるでしょう

   そのため、これまでの実務では,この(債務者が有している預貯金口座の)銀行と支店の特定が極めて困難でした。執行手続(差し押さえ手続)自体は,何度でも繰り返しできるため,債務者の住所地の近くで口座を開設していそうな銀行の支店を手当たり次第に差し押さえる等の方法が採られていましたが,手数料等がかかる上,必ず当たるわけではないため,空振りも多くなってしまっていました。

   他には,同時に複数の銀行の支店を差し押さえることもできるのですが,債権全額について複数の銀行の支店を差し押さえることは,超過差押の禁止(民事執行法146条2項)に反するため,債権を割り振る必要があります。

   つまり,1000万円の債権であれば,複数の支店について同時に1000万円ずつ差し押さえをすることはできず,○○銀行A支店は500万円,B支店は300万円,△△銀行A支店は200万円,という形で申し立てる必要があるのです。

   以上のとおり,本来預貯金口座の調査はかなり困難だったのですが,近年,一部の銀行について新たな調査が可能になりました。

   それが「全店照会」という方法で,平成29年2月現在,東京弁護士会とみずほ銀行(及びみずほ信託銀行)と三井住友銀行との間で結んだ協定により,かかる銀行については,民事執行法22条各号(5号)規定の「債務名義」(判決等)がある場合,名前(漢字表記とふりがな表記),生年月日,住所が明らかであれば,上記弁護士法23条の2規定の照会をすることによって,一致する口座が存在する支店と残高が調査できる,というものです。

   なお,生年月日については,住民票を取得すれば知ることが可能です(住民票については,弁護士であれば「職務上請求」という形で取得可能です(住民基本台帳法12条の3第3項及び同4項))。

   上記のとおり,各地の弁護士会と各銀行との協定を前提とするものであるため,他の弁護士会においては扱いが異なることもありますし,まだ上記3つの銀行でしかこの取り扱いはないのですが,これまで手当たり次第に差し押さえてみるまで分からなかった預貯金債権について,弁護士を使えば口座の有無及び残高を調査できる,というのは大きいプラスです。

 (4) 給与債権

   上記の不動産及び預貯金以外で,個人の財産として強制執行を検討する必要があるのは給与債権です。

   この給与債権については,33万円を超えない限り,手取り額の4分1のみが差し押さえの対象になる(民事執行法152条1項2号,同法施行令2条1項1号)ため,例えば手取り月額20万円の給与の債務者の場合,月5万円の範囲しか回収できない,というデメリットがあります。

   他方で,33万円を超える手取り分については全額差し押さえの対象となる上,上記預金債権等と異なり,一度差し押さえ手続きをとれば,債権額(及び執行にかかる費用)を満たすまで差し押さえの効力が及ぶ(民事執行法151条)こと,給与債権の差し押さえにより,給与を支払う会社に通知がされることになりますし,会社は債権者と債務者に給与を振り分けて支払うという煩雑な手続を強いられるため,債務者の会社内での立場から任意での支払いを促すことができる,というメリットもあります(何より,勤務さえしていれば確実に一部は回収できる,という確実性はメリットです。そのため、再就職が難しいような会社であれば、退職してしまうという危険も少なく回収の可能性は高くなります)。

   もっとも,勤務先についてはなかなか調査が難しいところです。名刺等もなく,事前に勤務先を知らなかった場合は,調査会社か後述の財産開示手続を利用するほかないところです。

 (5) 財産開示手続

   以上が,個人の債務者において調査するべき財産と可能である調査方法ですが,その他の調査の方法として,財産開示手続という法律上の調査手続きがあるため,この点について説明いたします。

   財産開示手続の制度自体については,当事務所事例集1468番に詳細があるため割愛して,本稿では執行のための財産調査の観点から必要な範囲で説明いたします。

   まず,財産開示手続とは,民事執行法196条以下で定められている制度で,要するに「@判決等の債務名義がある場合で,A他に回収できそうな財産の目星がつかないときに,B債権者が債務者を裁判所に呼び出し,債務者の財産開示をおこなわせることができる」手続です。

   このように聞くと,非常に有益な制度のように思われるかもしれませんが,現在ではあまり活用されていません。

   あまり活用されていないもっとも大きな理由として,仮に財産開示手続を実施しても,債務者が虚偽の財産開示をしたところで容易に分かるわけではないし,またそれが発覚したところで30万円以下の過料にしかならず(民事執行法206条1項),さらにその過料についてもかなり限定されたケースでしか裁判所は認めない,ということがあります。過料の制裁について,債権者から裁判所に求める権利(申立権)はない旨の最高裁判例もあります(最判平成17年11月18日?集民第218号475頁)。

   他方で,財産開示手続が完全に無益な制度か,というとそうとも言えません。

   まず,普通の個人にとって「裁判所に呼び出される(いかないと過料の制裁があるかもしれない)」事態そのものが一定程度の圧力になり得るところです。加えて,裁判所でおこなう財産開示手続期日においては,債権者から質問ができる(民事執行法199条4項)ため,質問内容等を工夫することで,和解(任意での支払い)につなげることも可能です。少なくとも,どこかに勤務している場合,給与債権の差し押さえのために,勤務先を質問することで開示を受けられる可能性は高まります(上記のとおり,過料の制裁可能性を恐れず,出頭しない,あるいは無職である等の虚偽を主張する可能性はありますが)。

   なお,財産開示手続ができるのは,民事執行197条1項において@「強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき」(1号),A「知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき」(2号)に限られています。つまり,@実際に強制執行をして配当を受けたうえでそれが債権額に満たなかった場合か,Aそうなることについての疎明があった場合にのみ認められる,ということになります。裁判所は,事前の財産調査についてある程度厳格に求める傾向にあるため,ある程度上記他の調査を尽くした,ということが必要になるところです。

   以上のとおり,財産開示手続とは,万能ではないものの,他に調査の手段がない場合には有益なこともある,ということになります。

3 おわりに

   以上が,判決を得た後の債務者の財産の調査です。近年になって預貯金の全店照会等,債権者にとって有利な制度が設けられてきてはいますが,正直なところ,「財産の調査」はそう簡単ではない,ということになります(そもそも,財産が存在しないということも十分考えられます)。だからこそ,判決だけを目指すのではなく,確実に回収できるのであれば多少債権を減額しても和解を考慮する必要がありますし,そもそも訴訟提起を検討する時点で,回収可能性を加味しておく必要があるということです。

   本件のように判決が出た後であっても,強制執行を前提として調査等に動くことと並行して,債務者に任意に支払う(判決に従う)よう促すことも重要です。やはり,「基本的に調査は困難である」ことを前提として,対応を検討しなければならないところです。

   いずれにしても,全店照会や職務上請求等は基本的に弁護士を介してのみ認められますし,本件のような場合,財産開示手続等は訴訟よりも難しいところです。時間が経てば経つほど「財産」は流失する可能性が出てきますし,可能な限り早く弁護士に相談されることをお勧めします。

【参照条文】
民事執行法
(債務名義)
第二十二条  強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一  確定判決
二  仮執行の宣言を付した判決
三  抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二  仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三  仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四  仮執行の宣言を付した支払督促
四の二  訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法 (平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)若しくは家事事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五  金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六  確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二  確定した執行決定のある仲裁判断
七  確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
(差押えの範囲)
第百四十六条  執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができる。
2  差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。
(継続的給付の差押え)
第百五十一条  給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。
(差押禁止債権)
第百五十二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2  退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3  債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
(実施決定)
第百九十七条  執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本(債務名義が第二十二条第二号、第三号の二から第四号まで若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一  強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二  知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
2  執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。
一  強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二  知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
3  前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。
一  債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。
二  債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。
三  当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。
4  第一項又は第二項の決定がされたときは、当該決定(第二項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
5  第一項又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6  第一項又は第二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
(財産開示期日)
第百九十九条  開示義務者(前条第二項第二号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(第百三十一条第一号又は第二号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。
2  前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、第二章第二節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。
3  執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。
4  申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。
5  執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。
6  財産開示期日における手続は、公開しない。
7  民事訴訟法第百九十五条 及び第二百六条 の規定は前各項の規定による手続について、同法第二百一条第一項 及び第二項 の規定は開示義務者について準用する。
民事執行規則
(差押命令の申立書の記載事項)
第百三十三条
1 債権執行についての差押命令の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、第三債務者を表示しなければならない。
2 前項の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項並びに債権の一部を差し押さえる場合にあつては、その範囲を明らかにしなければならない。
弁護士法
(報告の請求)
第二十三条の二  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2  弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。



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