再開発区域への参加辞退について

民事|都市再開発法|再開発区準備組合への参加辞退|手続きと対策

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

ターミナル駅から徒歩3分のところに戸建てを所有して居住しております。このたび当該区域に再開発の話が持ち上がり、「まちづくり勉強会」や「まちづくり検討会」や「まちづくり協議会」が設立され、先月「再開発準備組合」も設立されました。準備組合の事務局の人がうちに来て「事業計画案の概要」という書類を置いていきました。私はそういうのには参加したくないので準備組合にも加入していませんが、「事業計画案の概要」をみると私の家は再開発区域の予定に入っており再開発組合が設立され加入することになりそうです。準備組合への加入や、再開発組合への加入を拒否・辞退することはできないのでしょうか。再開発区域への参加を辞退するために、誰とどのような交渉をすれば良いでしょうか。また、再開発区域に入ってしまった場合の異議申し立て手続きについて教えて下さい。

回答:

1、 あなたの土地が再開発区域に入るかどうかは、再開発組合の事業計画案に含まれる再開発施行地区区域図に記載されるかどうかで決まります。民間の再開発事業である第1種市街地再開発事業の場合は、準備組合が正式組合に移行する際の、事業計画案の採択決議と、それを受けた都道府県知事の再開発組合の設立認可決定によって、再開発区域への加入が決まります。

2、 再開発区域の案を作成するのは、準備組合の理事会です。ご自宅が再開発区域に入らないようにするための、交渉相手は、再開発準備組合の事務局(理事会)になります。

再開発準備組合は、地権者と参加組合員により構成されています。民間の手続きですので、再開発区域をどのように決めるのか、当事者の自由に任せられていることにはなりますが、従来権利者が再建築後の権利床を取得する際に、できる限り有利な条件で広い面積の権利床を取得するために、経済合理性に従って議案が策定されることが多くなっています。従って、都市再開発法の条件を満たす限り、できるだけ広い区域で再開発計画を策定しようとするのが一般的です。

3、 また、再開発組合の設立に先立って、都道府県の都市計画審議会において、「都市再生特別地区」を定める都市計画決定がなされることになります。これは再開発手続きを進めるために必要な前提条件となります。都市計画審議会の議案と期日は事前に公表されますので、その審議会に向けて、当該議案に対する意見書を提出することができます。

4、 あなたの土地が再開発区域に入っている場合、準備組合に加入しなかったとしても、正式組合には強制的に加入させられてしまうことになります。正式組合に対して、事業計画案の採択決議に対して異議申し立てをするとすれば、決議手続きが法律要件を満たしていないことを主張することが考えられます。招集手続きや、決議手続きが法令に違反しているという主張ですが、これらの条件は通常遵守されていますので、この点で争うことは一般的に困難でしょう。

5、 再開発組合の設立決議と事業計画案の採択決議があった場合、再開発組合が、都道府県知事に対して、事業計画案を添付して再開発組合の設立認可申請をすることになります。この事業計画案が法令に合致しているかどうか、行政が審査して通常は数ヶ月~半年以内に、事業計画案が公衆の縦覧に付され、これに対する意見書を提出することができます。

6、 最終的に、事業計画案が認可され、再開発組合の設立が認可されてしまった場合、この認可決定は行政処分ですから、法令違反や裁量逸脱を根拠として審査請求や行政取消訴訟を提起することができますが、一般的に覆すのは困難と考えられます。

7、 以上、再開発区域に入らないようにする手段がありますが確実なものとは言えません。そこで、再開発施行区域内に含められる可能性が高まってきた場合は、交渉の方針を、施行区域からの離脱よりも当該土地建物の評価向上及び権利床面積の増加に切り替えて、御自身の権利を最大限に保全維持する方向で検討する必要があります。

8、 再開発準備組合に関する関連事例集参照。

解説:

1、 事業計画における再開発施行地区区域図

民間の地権者が集まって再開発事業を進める第一種市街地再開発事業では、施行区域内の土地所有者や借地権者が5名以上集まって、事業計画を定め、施行区域内の宅地所有権者及び借地権者の人数と面積で、それぞれ3分の2以上の同意を得て、組合設立認可申請をすることができます。

都市再開発法第11条(認可)

第1項 第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。

第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)

第1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。

再開発組合の設立が認可されると、権利変換計画案を作成し、組合決議を経て認可申請をすることにより、権利変換期日に、施行区域内の従来の権利が全て消滅し、敷地所有権は一旦施行者である再開発組合に帰属することになり、複雑な権利関係を整理して、建て替えをすすめることができるようになります。

通常、再開発に必要な建設費を従前権利者だけで全額負担することは困難ですから、再開発後の建物の床面積の一部を保留床として不動産デベロッパーやゼネコンなどに提供し参加組合員として再開発組合に参加して貰い、共同して手続きを進めるケースが多くなっています。

都市再開発法第20条(組合員)

第1項 組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。

第2項 宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。ただし、当該宅地の共有者(参加組合員がある場合にあつては、参加組合員を含む。)のみが組合の組合員となつている場合は、この限りでない。

第21条(参加組合員)前条に規定する者のほか、住生活基本法第二条第二項に規定する公営住宅等を建設する者、不動産賃貸業者、商店街振興組合その他政令で定める者であつて、組合が施行する第一種市街地再開発事業に参加することを希望し、定款で定められたものは、参加組合員として、組合の組合員となる。

都市再開発法施行令第6条(参加組合員)法第二十一条 の政令で定める者は、次に掲げる者とする。

一号 地方公共団体又は地方公共団体が財産を提供して設立した一般社団法人若しくは一般財団法人(第四十条の二第一号において「特定一般社団法人等」という。)

二号 地方住宅供給公社又は日本勤労者住宅協会

三号 前二号に掲げる者以外の者で参加組合員として組合が施行する市街地再開発事業に参加するのに必要な資力及び信用を有するもの

再開発の施工地区は、実際の再開発組合の設立認可申請時に添付される、事業計画案における、「再開発施行地区区域図」に記載によって決まります。第一種再開発事業は民間事業ですから、「施行区域内の土地所有者や借地権者が5名以上集まって、事業計画を定め、施行区域内の宅地所有権者及び借地権者の面積と人数で、それぞれ3分の2以上の同意」という再開発組合の設立条件を満たす限り、地権者の協議によって自由に決定することができます。

本邦の民法典の大原則である、所有権絶対の原則、私的自治の原則からいえば、所有者の同意がなければ自分の財産は処分できないのですが、都市再開発手続においては3分の2の多数意見に従わなければならないという点では大きな例外と言えます。

都市再開発法施行規則

(施行地区位置図及び施行地区区域図)

第四条 法第七条の十一第一項 (法第十二条第一項 、法第五十条の六 、法第五十三条第四項 及び法第五十八条第三項 において準用する場合を含む。以下この条から第八条までにおいて同じ。)又は法第十二条第二項 の施行地区(施行地区を工区に分けるときは、施行地区及び工区。以下この条において同じ。)は、施行地区位置図及び施行地区区域図を作成して定めなければならない。

2 前項の施行地区位置図は、縮尺二万五千分の一以上とし、施行地区の位置を表示した地形図でなければならない。

3 第一項の施行地区区域図は、縮尺二千五百分の一以上とし、施行地区の区域並びにその区域を明らかに表示するに必要な範囲内において都道府県界、市町村界、市町村の区域内の町又は字の境界並びに土地の地番及び形状を表示したものでなければならない。

2、 交渉の相手方

再開発施行区域の案を作成するのは、準備組合の理事会です。実際の交渉相手は、再開発準備組合の事務局になります。再開発準備組合は、地権者と参加組合員により構成されています。民間の手続きですので、再開発区域をどのように決めるのか当事者の自由に任せられていることにはなりますが、従来の権利者が再建築後の権利床を取得する際に、できる限り有利な条件で広い面積の権利床を取得するために、経済合理性に従って議案が策定されることが多くなっています。施行区域の面積が広くなれば参加組合員に譲渡する保留床の面積も多くなって権利床の面積も増やす事が出来ることになります。従って、都市再開発法の条件を満たす限り、できるだけ広い区域で再開発計画を策定しようとするのが一般的です。

再開発準備組合では、事業計画案を策定する場合は、事前に事業計画案に関する説明会を開催し、意見書の提出を受け付ける取り扱いになっています。組合設立後に事業計画を定める場合に関する都市再開発法15条の2、同施行規則第10条の2を参照して下さい。

都市再開発法

第15条の2(事業計画の案の作成及び組合員への周知等)

第1項 第十一条第二項の規定により設立された組合は、同条第三項の事業計画を定めようとするときは、あらかじめ、事業計画の案を作成し、国土交通省令で定めるところにより、説明会の開催その他組合員に当該事業計画の案を周知させるため必要な措置を講じなければならない。

第2項 前項の組合員は、同項の事業計画の案について意見がある場合においては、国土交通省令で定めるところにより、組合に意見書を提出することができる。ただし、事業基本方針において定められた事項については、この限りでない。

第3項 組合は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その意見書に係る意見を勘案し、必要があると認めるときは事業計画の案に修正を加えなければならない。

第4項 組合が成立した後、最初の役員が選挙され、又は選任されるまでの間は、前三項に規定する組合の事務は、第十一条第二項の規定による認可を受けた者が行うものとする。

都市再開発法施行規則第10条の2(組合員への周知等)

第1項 法第十一条第二項 の規定により設立された組合は、同条第三項 の事業計画の案を作成したときは、その決定に係る総会の開催日の一月前までに、当該事業計画の案に関する説明会を開催しなければならない。この場合において、組合は、少なくとも説明会の開催日の五日前から第四項の規定により意見書を提出することができる期間の満了の日までの間、当該事業計画の案を主たる事務所に備え付けなければならない。

第2項 説明会は、できる限り、説明会に参加する組合員の参集の便を考慮して開催の日時及び場所を定め、開催するものとする。

第3項 組合は、説明会の開催日の五日前までに、説明会の開催の日時及び場所並びに次項の規定により意見書を提出することができる期間を組合員に通知しなければならない。

第4項 組合員は、組合が説明会の翌日から起算して二週間を下らない範囲内で定める期間が経過する日までの間、当該事業計画の案について、組合に意見書を提出することができる。

前記のように再開発準備組合では通常なるべく広い面積で再開発事業を進めていこうとする事情はありますが、予定区域の周辺部に位置し、かつ面積も少ない土地の場合は、協議により再開発施行区域から外してもらうことも不可能ではないでしょう(実際に都市計画決定前に再開発区域から外れる土地も散見されます)。一度協議してみる価値はあると思われます。

3、都市計画審議会

再開発組合の設立に先立って、都道府県の都市計画審議会において、「都市再生特別地区」を定める答申がなされ、これを受けて都道府県知事による都市計画決定がなされることになります。これは再開発手続きを進めるために必要な前提条件となります(都市再開発法2条の2第1項)。

都市再開発法第2条の2(市街地再開発事業の施行)※抜粋

第1項 次に掲げる区域内の宅地について所有権若しくは借地権を有する者又はこれらの宅地について所有権若しくは借地権を有する者の同意を得た者は、一人で、又は数人共同して、当該権利の目的である宅地について、又はその宅地及び一定の区域内の宅地以外の土地について第一種市街地再開発事業を施行することができる。

第一号 高度利用地区(都市計画法第八条第一項第三号 の高度利用地区をいう。以下同じ。)の区域

第二号 都市再生特別地区(都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区をいう。第三条において同じ。)の区域

第三号 特定用途誘導地区(都市再生特別措置法第百九条第一項の規定による特定用途誘導地区をいい、建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度が定められているものに限る。第三条において同じ。)の区域

第四号 都市計画法第十二条の四第一項第一号 の地区計画、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 (平成九年法律第四十九号。以下「密集市街地整備法」という。)第三十二条第一項 の規定による防災街区整備地区計画又は幹線道路の沿道の整備に関する法律 (昭和五十五年法律第三十四号)第九条第一項 の規定による沿道地区計画の区域(次に掲げる条件の全てに該当するものに限る。第三条第一号において「特定地区計画等区域」という。)

イ 地区整備計画(都市計画法第十二条の五第二項第一号 の地区整備計画をいう。以下同じ。)、密集市街地整備法第三十二条第二項第一号 に規定する特定建築物地区整備計画若しくは同項第二号 に規定する防災街区整備地区整備計画又は幹線道路の沿道の整備に関する法律第九条第二項第一号 の沿道地区整備計画(ロにおいて「地区整備計画等」という。)が定められている区域であること。

ロ 地区整備計画等において都市計画法第八条第三項第二号 チに規定する高度利用地区について定めるべき事項(特定建築物地区整備計画において建築物の特定地区防災施設に係る間口率(密集市街地整備法第三十二条第三項 に規定する建築物の特定地区防災施設に係る間口率をいう。)の最低限度及び建築物の高さの最低限度が定められている場合並びに沿道地区整備計画において建築物の沿道整備道路に係る間口率(幹線道路の沿道の整備に関する法律第九条第六項第二号 に規定する建築物の沿道整備道路に係る間口率をいう。)の最低限度及び建築物の高さの最低限度が定められている場合にあつては、建築物の容積率の最低限度を除く。)が定められていること。

ハ 建築基準法 (昭和二十五年法律第二百一号)第六十八条の二第一項 の規定に基づく条例で、ロに規定する事項に関する制限が定められていること。

第2項 市街地再開発組合は、第一種市街地再開発事業の施行区域内の土地について第一種市街地再開発事業を施行することができる。

都道府県は、都市計画決定をする場合に、事前に市区町村の意見を聞くことになっていますので、市区町村の都市計画審議会の承認手続きも経る形となります(都市計画法18条1項、77条1項、77条の2第1項)。市区町村と都道府県の都市計画審議会に先立って、付議される議案の縦覧が行われ(都市計画法17条1項)、これに対して意見書を提出することができます(同条2項)。

※参考URL、東京都の都市計画審議会

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/keikaku/shingikai/index.html

4、再開発組合への議事手続きに関する異議申し立て

あなたの土地が再開発施行区域に入っている場合、準備組合に加入しなかったとしても、正式組合には強制的に加入させられてしまうことになります(都市再開発法20条1項)。

都市再開発法第20条(組合員)

第1項 組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。

第2項 宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。ただし、当該宅地の共有者(参加組合員がある場合にあつては、参加組合員を含む。)のみが組合の組合員となつている場合は、この限りでない。

正式組合に対して、事業計画案の採択決議に対して異議申し立てをするとすれば、決議手続きが法律要件を満たしていないことを主張することが考えられます。決議手続きの瑕疵を具体的に指摘した内容証明郵便を組合に対して送付して交渉する手段が考えられます。しかし、招集手続きや、決議手続きは通常遵守されていますので、この点で争うことは一般的に困難でしょう。なお、議事手続き違反について具体的な証拠により立証可能と考えられる場合には、決議の不存在確認訴訟を提起することを検討して下さい。

事業計画案採択における主な法律要件を列挙します。

(1)組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者の、人数と面積で、それぞれの3分の2以上の同意を得ること(都市再開発法14条1項)。

(2)組合の理事及び監事は、組合員のうちから総会で選挙する(都市再開発法24条1項)。

(3)総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の五日前までに、会議の日時、場所及び目的である事項を組合員に通知しなければならない(都市再開発法31条6項)。

(4)理事長は、少なくとも通常総会の会議を開く日の五日前からその会議を開く日までの間、当該通常総会の承認を求めようとする事業報告書、収支決算書及び財産目録を主たる事務所に備え付けておかなければならない(都市再開発法31条7項)。

(5)理事長は、組合員から前項の書類の閲覧又は謄写の請求があつたときは、正当な理由がない限り、これを拒んではならない(都市再開発法31条8項)。

(6)総会は、総組合員の半数以上の出席がなければ議事を開くことができず、その議事は、この法律に特別の定めがある場合を除くほか、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる(都市再開発法32条1項)。

(7)議長は、総会において選任し、議長は、組合員として総会の議決に加わることができない(都市再開発法32条2項、同3項)。

(8)総会においては、あらかじめ通知された会議の目的である事項についてのみ議決することができる(都市再開発法32条4項)。

5、事業計画案の縦覧と意見書の提出

再開発組合の設立決議と事業計画案の採択決議があった場合、再開発組合が、都道府県知事に対して、事業計画案を添付して再開発組合の設立認可申請をすることになります。この事業計画案が法令に合致しているかどうか、行政が審査して通常は数ヶ月~半年以内に、2週間の期限で事業計画案が公衆の縦覧に付され、区域内の土地建物に関する権利を有する者は、これに対する意見書を都道府県知事に対して提出することができます(都市再開発法16条1項、同2項)。

都市再開発法第16条(事業計画の縦覧及び意見書の処理)

第1項 都道府県知事は、第十一条第一項又は第三項の規定による認可の申請があつたときは、施行地区となるべき区域(同項の規定による認可の申請にあつては、施行地区)を管轄する市町村長に、当該事業計画を二週間公衆の縦覧に供させなければならない。ただし、当該申請に関し明らかに次条各号の一に該当する事実があり、認可すべきでないと認めるときは、この限りでない。

第2項 当該第一種市街地再開発事業に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件について権利を有する者又は参加組合員は、前項の規定により縦覧に供された事業計画について意見があるときは、縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに、都道府県知事に意見書を提出することができる。ただし、都市計画において定められた事項については、この限りでない。

意見書が提出されると、都道府県知事はこれを審査し、意見を取り入れるべきと判断した場合には組合に対して事業計画の修正を命じ、そうでない場合は、その旨を意見書提出者に通知すべきこととされています(都市再開発法16条3項)。

都市再開発法第16条(抜粋) 第3項 都道府県知事は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは事業計画に必要な修正を加えるべきことを命じ、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。

6、 審査請求と取消訴訟

最終的に事業計画案が認可され、再開発組合の設立が認可されてしまった場合、この認可決定は行政処分ですから、法令違反や裁量逸脱を根拠として審査請求や行政取消訴訟を提起することができます。

都市再開発法による強制力を伴った建物の更新は、都市の防災安全機能を高め、高度利用による商業機能の向上による国民経済の発展も目的とした公共目的の行政事業です(都市再開発法1条)。

都市再開発法第1条(目的)この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

再開発組合の設立認可の基準は、都市再開発法17条各号で規定されておりますが、これに違反していることを主張立証することは通常困難です。

都市再開発法17条(認可の基準)

都道府県知事は、第十一条第一項から第三項までの規定による認可の申請があつた場合において、次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その認可をしなければならない。

第一号 申請手続が法令に違反していること。

第二号 定款又は事業計画若しくは事業基本方針の決定手続又は内容が法令(事業計画の内容にあつては、前条第三項に規定する都道府県知事の命令を含む。)に違反していること。

第三号 事業計画又は事業基本方針の内容が当該第一種市街地再開発事業に関する都市計画に適合せず、又は事業施行期間が適切でないこと。

第四号 当該第一種市街地再開発事業を遂行するために必要な経済的基礎及びこれを的確に遂行するために必要なその他の能力が十分でないこと。

行政処分に違法又は不当な点がある場合には、審査請求(行政不服審査法2条)や取消訴訟(行政事件訴訟法3条1項、同2項)を申し立てることができます。

行政不服審査法

第2条(処分についての審査請求)行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

行政事件訴訟法

第3条(抗告訴訟)

第1項 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

第2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

審査請求は、処分庁の上級庁(上級庁が無い場合は処分庁)に対して、処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内、あるいは処分の日の翌日から1年以内に申し立てることができます(行政不服審査法4条、同18条1項、同条2項)。都市計画決定は都道府県知事の処分ですから、当該都道府県知事に対して審査請求をすることになります。

取消訴訟は、処分庁の所在地を管轄する地方裁判所に対して、処分があったことを知った日から6か月以内,あるいは処分の日から1年以内に提起することができます(行政事件訴訟法12条1項、同14条1項,同条2項)。自己の法律上の利益に関する、違法な処分があった場合に申し立てをすることができます(行政事件訴訟法10条1項)。

裁量処分については、裁量権の逸脱ないし濫用があった場合に限り、処分が違法性を帯びて取り消し訴訟が可能とされています(同30条)。

行政事件訴訟法30条(裁量処分の取消し) 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。 都市再開発法17条の認可基準に基づく認可決定は、行政庁の自由裁量の余地が無い覊束裁量(法規裁量、法令に基づいて客観的に行使されるべき裁量)と考えられますので、これが違法性を帯びて取消訴訟の判決を得るためには、行政庁の重大な事実誤認に基づく判断があったなどの特殊事情が必要と考えられます。

7、 さいごに

このように、民間の再開発事業である第一種市街地再開発事業は、地権者の集まりである準備組合及び正式組合の理事会の私的自治に基づく自己決定により自由に定めることができますが、再開発事業には都市の防災機能向上や国民経済の振興など公益目的も有り、都道府県の都市計画決定に際してあなたの土地が再開発促進区や都市再生特別地区に含められてしまう可能性も高く、再開発施行可能区域に含まれてしまった場合は、地権者数及び面積で3分の2以上という法定要件を満たす限り、経済合理性に基づいて、事業計画案における再開発施行区域内に含められてしまう可能性が高いと言えます。

従って、準備組合の理事会と施行区域からの離脱を交渉することも可能ですが、ある程度計画が固まってきて、再開発施行区域内に含められてしまう可能性が高まってきた場合は、交渉の方針を、施行区域からの離脱よりも当該土地建物の評価向上及び権利床面積の増加に切り替えて、御自身の権利を最大限に保全維持できるようにお考えになると良いでしょう。御不安な場合は再開発手続きに詳しい法律事務所に御相談なさり一緒に交渉して貰うと良いでしょう。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

都市計画法

第十八条(都道府県の都市計画の決定)

第1項 都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県都市計画審議会の議を経て、都市計画を決定するものとする。

第2項 都道府県は、前項の規定により都市計画の案を都道府県都市計画審議会に付議しようとするときは、第十七条第二項の規定により提出された意見書の要旨を都道府県都市計画審議会に提出しなければならない。

第3項 都道府県は、国の利害に重大な関係がある政令で定める都市計画の決定をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。

第4項 国土交通大臣は、国の利害との調整を図る観点から、前項の協議を行うものとする。

第十七条(都市計画の案の縦覧等)

第1項 都道府県又は市町村は、都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該都市計画の案を、当該都市計画を決定しようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告の日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。

第2項 前項の規定による公告があつたときは、関係市町村の住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された都市計画の案について、都道府県の作成に係るものにあつては都道府県に、市町村の作成に係るものにあつては市町村に、意見書を提出することができる。

第3項 特定街区に関する都市計画の案については、政令で定める利害関係を有する者の同意を得なければならない。

第4項 遊休土地転換利用促進地区に関する都市計画の案については、当該遊休土地転換利用促進地区内の土地に関する所有権又は地上権その他の政令で定める使用若しくは収益を目的とする権利を有する者の意見を聴かなければならない。

第5項 都市計画事業の施行予定者を定める都市計画の案については、当該施行予定者の同意を得なければならない。ただし、第十二条の三第二項の規定の適用がある事項については、この限りでない。

第七十七条(都道府県都市計画審議会)

第1項 この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議させ、及び都道府県知事の諮問に応じ都市計画に関する事項を調査審議させるため、都道府県に、都道府県都市計画審議会を置く。

第2項 都道府県都市計画審議会は、都市計画に関する事項について、関係行政機関に建議することができる。

第3項 都道府県都市計画審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で定める。

第七十七条の二(市町村都市計画審議会)

第1項 この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議させ、及び市町村長の諮問に応じ都市計画に関する事項を調査審議させるため、市町村に、市町村都市計画審議会を置くことができる。

第2項 市町村都市計画審議会は、都市計画に関する事項について、関係行政機関に建議することができる。

第3項 市町村都市計画審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、市町村の条例で定める。

都市再開発法

(役員の資格、選挙及び選任)

第二十四条 理事及び監事は、組合員(法人にあつては、その役員)のうちから総会で選挙する。ただし、特別の事情があるときは、組合員以外の者のうちから総会で選任することができる。

2 前項本文の規定により選挙された理事若しくは監事が組合員でなくなつたとき、又はその理事若しくは監事が組合員である法人の役員である場合において、その法人が組合員でなくなつたとき、若しくはその理事若しくは監事がその法人の役員でなくなつたときは、その理事又は監事は、その地位を失う。

(総会の招集)

第三十一条 理事長は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。

2 理事長は、必要があると認めるときは、いつでも、臨時総会を招集することができる。

3 組合員が総組合員の五分の一以上の同意を得て、会議の目的である事項及び招集の理由を記載した書面を組合に提出して総会の招集を請求したときは、理事長は、その請求のあつた日から起算して二十日以内に臨時総会を招集しなければならない。

4 前項の規定による請求があつた場合において、理事長が正当な理由がないのに総会を招集しないときは、監事は、同項の期間経過後十日以内に臨時総会を招集しなければならない。

5 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を受けた者は、その認可の公告があつた日から起算して三十日以内に、最初の理事及び監事を選挙し、又は選任するための総会を招集しなければならない。

6 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の五日前までに、会議の日時、場所及び目的である事項を組合員に通知しなければならない。ただし、緊急を要するときは、二日前までにこれらの事項を組合員に通知して、総会を招集することができる。

7 理事長は、少なくとも通常総会の会議を開く日の五日前からその会議を開く日までの間、当該通常総会の承認を求めようとする事業報告書、収支決算書及び財産目録を主たる事務所に備え付けておかなければならない。

8 理事長は、組合員から前項の書類の閲覧又は謄写の請求があつたときは、正当な理由がない限り、これを拒んではならない。

(総会の議事等)

第三十二条 総会は、総組合員の半数以上の出席がなければ議事を開くことができず、その議事は、この法律に特別の定めがある場合を除くほか、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

2 議長は、総会において選任する。

3 議長は、組合員として総会の議決に加わることができない。ただし、次条の規定による議決については、この限りでない。

4 総会においては、前条第六項の規定によりあらかじめ通知した会議の目的である事項についてのみ議決することができる。

(特別の議決)

第三十三条 特別決議事項(第三十条第一号及び第三号に掲げる事項のうち政令で定める重要な事項並びに同条第九号から第十一号までに掲げる事項をいう。以下同じ。)は、総組合員の三分の二以上が出席し、出席者の議決権の三分の二以上で、かつ、施行地区内の宅地について所有権を有する出席者の議決権及び施行地区内の宅地について借地権を有する出席者の議決権のそれぞれの三分の二以上で決する。この場合においては、その有する議決権を当該特別決議事項に同意するものとして行使した者(以下この条において「同意者」という。)が所有する施行地区内の宅地の地積と同意者の施行地区内の借地の地積との合計(第二十条第二項ただし書の場合にあつては、施行地区内の宅地の地積に同意者が有する当該宅地の所有権の共有持分の割合の合計を乗じて得た面積)が、施行地区内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二(同項ただし書の場合にあつては、施行地区内の宅地の総地積の三分の二)以上でなければならない。

第十六条(事業計画の縦覧及び意見書の処理)

第1項 都道府県知事は、第十一条第一項又は第三項の規定による認可の申請があつたときは、施行地区となるべき区域(同項の規定による認可の申請にあつては、施行地区)を管轄する市町村長に、当該事業計画を二週間公衆の縦覧に供させなければならない。ただし、当該申請に関し明らかに次条各号の一に該当する事実があり、認可すべきでないと認めるときは、この限りでない。

第2項 当該第一種市街地再開発事業に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件について権利を有する者又は参加組合員は、前項の規定により縦覧に供された事業計画について意見があるときは、縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに、都道府県知事に意見書を提出することができる。ただし、都市計画において定められた事項については、この限りでない。

第3項 都道府県知事は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは事業計画に必要な修正を加えるべきことを命じ、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。

第4項 前項の規定による意見書の内容の審査については、行政不服審査法 (平成二十六年法律第六十八号)第二章第三節 (第二十九条、第三十条、第三十二条第二項、第三十八条、第四十条、第四十一条第三項及び第四十二条を除く。)の規定を準用する。この場合において、同節 中「審理員」とあるのは、「都道府県知事」と読み替えるものとする。

第5項 第十一条第一項又は第三項の規定による認可を申請した者が、第三項の規定により事業計画に修正を加え、その旨を都道府県知事に申告したときは、その修正に係る部分について、更にこの条に規定する手続を行うべきものとする。

行政不服審査法

第一条(目的等)

第1項 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

第2項 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

第二条(処分についての審査請求)行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

第四条(審査請求をすべき行政庁)審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。

一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 若しくは第二項 若しくは国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する庁の長である場合 当該処分庁等

二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項 若しくは第二項 若しくは国家行政組織法第三条第二項 に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長

三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣

四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁

第十八条(審査請求期間)

第1項 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

第2項 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

第3項 次条に規定する審査請求書を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者による同条第二項 に規定する信書便で提出した場合における前二項に規定する期間(以下「審査請求期間」という。)の計算については、送付に要した日数は、算入しない。

行政事件訴訟法

(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

(原告適格)

第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

(取消しの理由の制限)

第十条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。

2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

(被告適格等)

第十一条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。

一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体

二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体

2 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。

3 前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。

4 第一項又は前項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。

一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁

二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁

5 第一項又は第三項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟が提起された場合には、被告は、遅滞なく、裁判所に対し、前項各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を明らかにしなければならない。

6 処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第一項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。

(管轄)

第十二条 取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

2 土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。

3 取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。

4 国又は独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも、提起することができる。

5 前項の規定により特定管轄裁判所に同項の取消訴訟が提起された場合であつて、他の裁判所に事実上及び法律上同一の原因に基づいてされた処分又は裁決に係る抗告訴訟が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は第一項から第三項までに定める裁判所に移送することができる。

(関連請求に係る訴訟の移送)

第十三条 取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。ただし、取消訴訟又は関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。

一 当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求

二 当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求

三 当該処分に係る裁決の取消しの請求

四 当該裁決に係る処分の取消しの請求

五 当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求

六 その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求

(出訴期間)

第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。