薬物事犯における刑の一部執行猶予

刑事|覚せい剤取締法違反|刑法27条の2第1項|平成28年6月1日施行

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

親族の経営する飲食店で勤務する息子(33歳)についての相談です。昨日、息子が仕事から帰宅せず、連絡もつかなかったため心配に思っていたところ、今朝方、警察から、息子が覚せい剤所持の容疑で逮捕されたという連絡を受けました。密売人の外国人から覚せい剤の粉末や注射器等を購入した直後、警察官から職務質問を受け、覚せい剤等を任意提出したところ逮捕された、という経緯のようです。息子は、以前にも覚せい剤の使用と所持で、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けており、今回は執行猶予が明けて半年もしないタイミングで逮捕されています。このような状況で、刑務所への服役の回避は難しいでしょうか。刑の一部執行猶予という制度があると聞きましたが、可能でしょうか。また、量刑を少しでも下げるため、今のうちから何かできることはないでしょうか。お知恵をお貸し下さい。

回答:

1. 息子さんは、覚せい剤所持罪(覚せい剤取締法41条の2第1項)の容疑で逮捕されているとのことですが、本罪は類型的に起訴猶予処分が期待しにくい上、同種前科も存在することから、勾留期間経過後に公判請求されることが強く見込まれるところです。もし今後の捜査によって覚せい剤使用の事実が明らかになれば、覚せい剤使用罪(覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条)と合わせて起訴されることになるでしょう。

2. 想定される量刑ですが、伺った事情の下では、覚せい剤が多量であったり、常習性が極めて顕著である等、特別な事情がない限り、概ね2年ないし3年程度の懲役刑に止まるものと予想されます。しかし、全部執行猶予付判決の獲得見込みについては、極めて厳しいと言わざるを得ないでしょう。実際の裁判例を見ても、覚せい剤事犯で同種前科がある場合、過去の同種事犯にかかる判決確定後10年以上が経過した、いわゆる準初犯の事案でない限り、ほぼ例外なく実刑となっているようです。

3. ただし、息子さんの場合、刑の一部執行猶予を得られる可能性が十分考えられます。刑の一部執行猶予とは、文字通り、宣告刑の一部につき執行猶予を付することを可能とする制度であり、法改正によって平成28年6月1日より施行されています。同制度の概要及び要件について、解説で詳述してありますので、ご参照ください。

4. 刑の一部執行猶予を付するためには、再犯防止の見地からの必要性と相当性が要件とされており、専門的な処遇プログラムや効果の高い社会内処遇方法が存在していることのみならず、それらが実効的に実施できる状況にあることの裏付けとなるような情状事実(息子さんご本人の反省の情、更生に向けた意思の強さ、社会内での更生を支援する監督者の確保、社会復帰後の環境調整等)の主張、立証が要求されています。また、これらを説得的に示すためには、起訴後、早期の保釈を実現し、保釈期間中、薬物依存治療の専門医の受診や専門機関のカウンセリングの受講、薬物依存からの脱却を目的とした自助グループへの参加等、更生に向けた具体的行動を示すことが重要となってきます。

5. そのためには、速やかに適任の弁護人を選任の上、保釈の早期実現や、一部執行猶予の獲得を含む量刑の最小化を見据え、取り調べ対応に関する指導や一部執行猶予の獲得を確実なものとするための環境調整、家族等への身元引受や保釈金準備、情状証人としての出廷の協力要請、打ち合わせ等の活動を開始してもらうことが望ましいといえるでしょう。

6. 覚せい剤取締法違反に関する関連事例集参照。

解説:

1.(覚せい剤取締法違反)

はじめに、息子さんに成立し得る犯罪について、簡単に確認しておきたいと思います。

伺ったところによると、現在の息子さんの被疑罪名は、覚せい剤所持罪とされているようですが、別途覚せい剤使用の事実があれば、覚せい剤使用罪についても立件される可能性が高いと考えられます。

(1)覚せい剤所持罪(覚せい剤取締法41条の2第1項)

覚せい剤をみだりに(法律上の正当事由なく)所持した場合に成立する犯罪です。本罪は法定刑に罰金の定めのない重い犯罪であり(法定刑は10年以下の懲役のみ)、また、社会的法益に対する犯罪としての性質を有するものであることから、立件された事案についてはほぼ確実に公判請求されることが通例となっています。まして、同種前科が存在するとなれば、不起訴処分の獲得は事実上不可能と考えられ、本件でも、息子さんが起訴されることを前提に対応等を検討しなければなりません。

(2)覚せい剤使用罪(覚せい剤取締法41条の3第1項1号、19条)

法定の除外事由がないにもかかわらず覚せい剤を使用した場合に成立する犯罪であり、法定刑は所持罪と同様、10年以下の懲役とされています。覚せい剤使用の事実は尿検査等によって容易に明らかとなるものであり、検査の前提となる採尿等も裁判官の発する令状によって容易になしうるため、今後、仮に息子さんによる覚せい剤使用の事実が明らかとなった場合、覚せい剤所持の事実と合わせて起訴されることがほぼ確実視されることになります。

上記2罪は、いわゆる併合罪(刑法45条前段)の関係に立ち、刑の加重の上限となる15年の懲役の範囲内で処断刑が決定されることになりますが、前科が伺っている1件のみということであれば、実際には、覚せい剤が多量であったり、常習性が極めて顕著である等、特別な事情がない限り、概ね2年ないし3年程度の懲役刑が見込まれることになります。

問題は、本件で執行猶予が見込まれるか否かですが、結論から申し上げると、全部執行猶予付判決(いわゆる執行猶予付判決)の獲得は極めて困難と言わざるを得ないでしょう。覚せい剤は、依存性が強く、類型的に再犯のおそれが大きいことから、特に再犯者に対しては厳格な量刑をもって臨まれることになります。実際の量刑相場を見ても、判決で認定された犯罪事実の時点が過去の同種事犯にかかる判決確定後10年以上経過していない事案において、全部執行猶予付きの判決が言い渡されたケースは、少なくとも本稿執筆者の調査の限りでは不見当となっています。息子さんは、前刑にかかる判決確定から約3年半のタイミングでの再犯ですので、基本的には実刑が強く見込まれる事案であるといえます。

息子さんの場合、実刑の判決が言い渡される場合に備え、後述する刑の一部執行猶予の獲得に向けた検討、準備を開始すべきことになります。

2.(刑の一部執行猶予について)

平成28年6月1日より、法改正により、刑の一部執行猶予と呼ばれる制度が施行されています。本改正により、従前は宣告刑の全部につき実刑とするか、全部につき執行猶予とするか、といういずれかの判決しかなしえなかったところ、宣告刑の一部につき執行猶予を付することが可能となりました。例えば、懲役2年6月、その一部である懲役6月の執行を3年間猶予する、という内容の判決の場合、2年間の懲役刑の執行を受けた終わった後、再犯等による執行猶予の取消しを受けることなく猶予期間である3年間が経過した場合、6月分については服役せずに済むということになります。

刑の一部執行猶予については、刑法27条の2第1項に要件が規定されていますが、覚せい剤の単純所持、使用等のケースについては、特別法(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律)によって、次のとおり、一部執行猶予の適用範囲に変更が加えられています。

○刑法27条の2第1項が定める一部執行猶予の要件

次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者

三 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

○薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律3条が定める一部執行猶予の要件

薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成二十五年法律第五十号)第二条第二項に規定する薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき

まず、特別法では、刑法27条の2第1項各号所定の前科要件が除外されていることが分かります。覚せい剤所持、使用等に代表される薬物犯罪は、一般的に規制薬物への依存性の高さ故、再犯可能性が非常に高い犯罪類型であり、刑事施設への収容のみでは再犯防止に向けた改善教育として不十分であるとの指摘が以前よりなされていました。そのため、薬物使用等のケースでは、更生に向けた実効性のある処遇を実現するため、刑法上の制度の適用がない累犯者についても一部執行猶予制度を活用していくことが想定されています。「刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施すること」が適用の前提とされており、施設内処遇と社会内処遇の連携によって処遇の効果を上げようとするものですので、執行猶予期間中は必ず保護観察が付されるとともに(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律4条1項)、猶予期間中の保護観察における特別遵守事項として、専門的処遇プログラムの受講が義務付けられることになります(更生保護法51条の2第1項)。

また、刑法上、特別法上の共通の適用要件として、再犯防止の見地からの必要性と相当性が要求されています。殊に薬物事犯の場合については、刑事施設内処遇に引き続いての社会内処遇の実施が、処遇効果を上げる上で有用である、ということが制度の前提認識となっているため、一部執行猶予を付することの必要性は類型的に認められ易いものといえるでしょう。

問題は、一部執行猶予を付すことの相当性です。いくら専門的な処遇プログラムや効果の高い社会内処遇方法が存在していても、それらが実効的に実施できる状況になければ、一部執行猶予が再犯防止のために相当であるとはいえないことになります。この点については、項目を改めて述べることにします。

なお、刑法上の一部執行猶予制度と特別法上の同制度との関係については、基本法である刑法が優先適用される関係にあり、累犯者である等により、刑法上の要件を満たさない場合にはじめて特別法上の要件が検討されるべきことになります。

息子さんのケースでは、前刑にかかる執行猶予期間を経過していることで、刑の言渡しが失効しており(刑法27条)、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」(刑法27条の2第1項1号)にあたるため、法適用上は刑法上の一部執行猶予の適用があり得る状況といえます。もっとも、薬物事犯の場合、一部執行猶予の必要性、相当性に関する主張、立証事項は、刑法上の制度と特別法上の制度とでほぼ重なり合うことになるため、いずれの制度が適用されるかによって、活動内容に違いが出るわけではありません。また、刑法上の一部執行猶予の適用に際して、執行猶予期間中、保護観察に付することは任意的とされていますが(刑法27条の3第1項)、特に薬物事犯における適用場面では、原則的に保護観察に付する運用がなされており、いずれの制度が適用されるかによって結論に差異が出ることも想定しにくいと思われます。

3.(具体的対応について)

前記のとおり、一部執行猶予の相当性の判断においては、「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状」が考慮されるため、公判において、社会内処遇の実効的な実施が可能であることの裏付けとなるような情状事実を示せるよう、入念な打ち合わせ、事前準備を行っておく必要があります。具体的には、息子さんご本人の反省の情、更生に向けた意思の強さ、家族、親族等、社会内での更生を支援する監督者の確保、社会復帰後の環境調整(覚せい剤の入手元との関係断絶、良好な生活環境(監督者との同居等)の確保、就業環境の確保等)等を証人尋問、被告人質問等の立証活動を通じて示せるようにしておく必要があるでしょう。

また、特に、本人の反省の情、更生意欲の高さ、監督者としての資質、更生環境確保との関係では、起訴後速やかに保釈請求を行い、保釈を実現することが重要です(刑事訴訟法88条1項)。保釈期間中、薬物依存治療の専門医の受診や専門機関のカウンセリングの受講、薬物依存からの脱却を目的とした自助グループへの参加等の更生に向けた活動を積極的に行うことで、一部執行猶予の相当性を高めることができるためです。そのためには、起訴前の段階から速やかな保釈の実現を見据えた対応が必要となります。弁護人の指導の下での、権利保釈の除外事由である覚せい剤使用、所持等の常習性や罪証隠滅のおそれを疑われる余地を最小限に止めるような取り調べ対応や(刑事訴訟法89条3号、4号参照)、弁護人を通じて家族等への身元引受や保釈金準備の協力要請を行っておくことが望ましいといえるでしょう。覚せい剤の単純所持、使用の場合、覚せい剤成分の鑑定に時間を要するため、勾留延長がなされるケースが多いと思われますが、20日間の勾留期間の間に保釈許可決定、さらにはその先の一部執行猶予の獲得を含む量刑の最小化を見据えた対応、活動が求められることになります。

なお、本稿はあくまでも一般論としての回答であり、実際には、詳細なご事情を伺った上で、見通しを立て、方針決定を行う必要があります。同種事案の対応経験が豊富な弁護士等を速やかに弁護人に選任の上、刑事手続の早い段階から万全の態勢で対処していくことをお勧めいたします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

刑法

(執行猶予)

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

第二十七条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

(刑の一部の執行猶予)

第二十七条の二 次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者

三 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

2 前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。

(刑の一部の執行猶予中の保護観察)

第二十七条の三 前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

覚せい剤取締法

(使用の禁止)

第十九条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。

一 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合

二 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合

三 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合

四 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合

五 法令に基いてする行為につき使用する場合

第四十一条の二 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。

第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。

一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律

(趣旨)

第一条 この法律は、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、刑事施設における処遇に引き続き社会内においてその者の特性に応じた処遇を実施することにより規制薬物等に対する依存を改善することが有用であることに鑑み、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し、その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察その他の事項について、刑法(明治四十年法律第四十五号)の特則を定めるものとする。

(定義)

第二条 この法律において「規制薬物等」とは、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の三に規定する興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物及び劇物(これらを含有する物を含む。)であって同条の政令で定めるもの、覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚せい剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらをいう。

2 この法律において「薬物使用等の罪」とは、次に掲げる罪をいう。

一 刑法第百三十九条第一項若しくは第百四十条(あへん煙の所持に係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪

二 大麻取締法第二十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)の罪又はその未遂罪

三 毒物及び劇物取締法第二十四条の三の罪

四 覚せい剤取締法第四十一条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第四十一条の三第一項第一号若しくは第二号(施用に係る部分に限る。)若しくは第四十一条の四第一項第三号若しくは第五号の罪又はこれらの罪の未遂罪

五 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第六十四条の三第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)、第六十六条第一項(所持に係る部分に限る。)若しくは第六十六条の二第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪

六 あへん法第五十二条第一項(所持に係る部分に限る。)若しくは第五十二条の二第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪

(刑の一部の執行猶予の特則)

第三条 薬物使用等の罪を犯した者であって、刑法第二十七条の二第一項各号に掲げる者以外のものに対する同項の規定の適用については、同項中「次に掲げる者が」とあるのは「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成二十五年法律第五十号)第二条第二項に規定する薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について」と、「考慮して」とあるのは「考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが」とする。

(刑の一部の執行猶予中の保護観察の特則)

第四条 前条に規定する者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、刑法第二十七条の三第一項の規定にかかわらず、猶予の期間中保護観察に付する。

更生保護法

(特別遵守事項の特則)

第五十一条の二 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律第四条第一項の規定により保護観察に付する旨の言渡しを受けた者については、次条第四項の定めるところにより、規制薬物等(同法第二条第一項に規定する規制薬物等をいう。以下同じ。)の使用を反復する犯罪的傾向を改善するための前条第二項第四号に規定する処遇を受けることを猶予期間中の保護観察における特別遵守事項として定めなければならない。ただし、これに違反した場合に刑法第二十七条の五に規定する処分がされることがあることを踏まえ、その改善更生のために特に必要とは認められないときは、この限りでない。

刑事訴訟法

第八十八条 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。