再開発準備組合の議決権行使
行政|都市再開発法|区域内地権者の意見書提出の機会
目次
質問:
駅前マンションに1室を所有し居住しております。近隣一帯に再開発の話が持ち上がり、準備組合も結成され説明会や勉強会なども定期的に開催されています。
このたび、事業計画案がまとまったということで、事業計画案の承認決議と、市街地再開発組合設立認可申請の承認決議を求める準備組合の臨時総会があると連絡を受けました。しかし、マンションの管理組合の一般組合員は臨時総会にオブザーバーとして出席することはできるが、議決権の行使は代表者である管理組合理事長1名のみであると言われました。
当マンションは総戸数200戸以上の比較的大規模マンションですので、それがひとつの議決権しかないとは驚きです。準備組合のこのような取り扱いは適法なのでしょうか。準備組合の仕組みを教えてください。私達マンション住人の意見を主張するにはどうしたらよいのでしょうか。
回答:
1、 都市再開発法では、地権者の集まりである第一種市街地再開発組合に都市再開発事業の遂行ができる事業主体となる地位を与えています。再開発組合では権利変換の仕組みを利用し、ある程度強制的に建物の建て替えを遂行することができます。この再開発組合が設立されるのは再開発事業決定の後ですが、その準備段階として準備組合が設立され事業の準備を進めることになっています。
再開発組合は地権者の集まりですが、都市再開発法20条2項では、「宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす」という規定があり、マンションの敷地が一筆の宅地となっている場合は、マンション所有者全員で1名の組合員とみなされることになります。これは再開発組合に適用されるものですから、準備組合にはこの規定は適用されません。しかし、準備組合と再開発組合とでは、組合の目的と業務にほとんど差異は無く、マンション所有者全員で1組員とみなすという定めも、事実上、ほとんどの準備組合でも同様の取り扱いが行われて、適法なものとされています。
2、 準備組合において大規模マンションの組合員数百人を1つの議決権とみなし、他方で、狭小戸建ての所有者も1つの議決権として、同等にカウントして議事をすすめることには当事者の公平や平等原則の観点から、やや問題があると言うこともできるでしょう。都市再開発法には、74条2項など、当事者の公平を求める規定もありますので、前記規定があっても、事実上、人数分の重みがあるものとして意見を取り扱う(尊重する)ように求めていくことは可能ですし、そのように主張するべきでしょう。
3、 なお、マンションの区分所有者の組合における議決権を1組合員として扱うということは、準備組合・再開発組合の議決権が一つということですから、区分所有者の個々の権利関係についてはあくまで一区分所有者として判断を下すことは制限されることではありません。
4、 都市再開発に関する関連事例集参照。
解説:
1、 市街地再開発組合
民間の地権者が集まって再開発事業を進める第一種市街地再開発事業では、施行区域内の土地所有者や借地権者が5名以上集まって、事業計画を定め、施行区域内の宅地所有権者及び借地権者の面積と人数で、それぞれ3分の2以上の同意を得て、各都道府県知事に対して組合設立認可申請をすることができます(都市再開発法11条1項)。なお、必要に応じて先に組合を設立し、後日事業計画の認可を得る方法も認められています(同11条3項)。
都市再開発法第11条(認可)
第1項 第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。
第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)
第1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。
再開発組合の設立が認可されると、権利変換計画案を作成し、組合決議を経て認可申請をすることにより、権利変換期日に、施行区域内の従来の権利が全て消滅し、敷地所有権は一旦施行者である再開発組合に帰属することになり、複雑な権利関係を整理して、建て替えを進めることができるようになります。
このように、多少の反対があってもある程度の強制力を伴って手続きを進めることができるのは、都市の防災機能向上や、国民経済の振興という公益目的があるからです。日本国憲法29条1項では私有財産制と私的自治が保障されていますが、所有権といえども無制限に恣意的に行使できるわけではなく、社会的生活の中で存在しているものであり、特に都市部の宅地利用権については、回りの宅地(建物)と調和の取れた再開発が必要となることもあります。例えば住宅密集地に木造住宅が密接していると、火災の場合に延焼の危険が高くなり避難経路が確保できなくなって死傷者が増大してしまうおそれがありますし、建築基準法改正前の古い耐震基準に基づいて建てられた高層建築物があると、大地震の際に周りの建物に倒壊の二次災害を引き起こしてしまう危険があります。自分の土地や建物であっても、都市の中で存在している以上、常に周囲の権利者との協調が必要となってくるのです。駅前一等地では、1軒だけ木造低層建物であったり、耐震強度不足の建物を維持することは許されないことがあるということです。
日本国憲法第29条
第1項 財産権は、これを侵してはならない。
第2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
第3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
都市再開発法第1条(目的)
この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
2、 再開発組合および準備組合の仕組み、議決権の取り扱い
再開発組合の組合員は、再開発施行区域内の宅地や借地権を有する地権者ですが(都市再開発法20条1項)、敷地が共有になっている場合は共有者全員で1名の組合員と見なされます(同20条2項)。また、地権者の他に参加組合員として不動産デベロッパーが組合員となるのが一般的です。通常は再開発に必要な建設費を地権者(従前権利者)だけで全額負担することは困難ですから、再開発後の建物の床面積の一部を保留床として不動産デベロッパーやゼネコンなどに提供し参加組合員として再開発組合に参加して建築費を負担して貰い、共同して手続きを進めるケースが多くなっています。
都市再開発法第20条(組合員)
第1項 組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。第2項 宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。ただし、当該宅地の共有者(参加組合員がある場合にあつては、参加組合員を含む。)のみが組合の組合員となつている場合は、この限りでない。
第21条(参加組合員)前条に規定する者のほか、住生活基本法第二条第二項に規定する公営住宅等を建設する者、不動産賃貸業者、商店街振興組合その他政令で定める者であつて、組合が施行する第一種市街地再開発事業に参加することを希望し、定款で定められたものは、参加組合員として、組合の組合員となる。
都市再開発法施行令第6条(参加組合員)法第二十一条 の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一号 地方公共団体又は地方公共団体が財産を提供して設立した一般社団法人若しくは一般財団法人(第四十条の二第一号において「特定一般社団法人等」という。)
二号 地方住宅供給公社又は日本勤労者住宅協会
三号 前二号に掲げる者以外の者で参加組合員として組合が施行する市街地再開発事業に参加するのに必要な資力及び信用を有するもの
地権者の集まりである再開発組合の理事も、都市の再開発事業については経験も知識も不足しているのが原則ですから、再開発に経験のある参加組合員と共同して手続きを進めていくことになります。現実には、再開発事業についてのノウハウを持つ不動産デベロッパーが組合事務局に関与して再発事業を進めていくことになります。
市街地再開発組合および準備組合(通常は本組合の手続きを踏襲します)は、総会の決議により、役員として理事3名以上および監事2名以上を選任し(都市再開発法24条1項、同23条1項)、理事の互選により理事長1名を設置します(都市再開発法23条2項)。理事長は、「理事長は、組合を代表し、その業務を総理」します(都市再開発法27条1項)。組合を代表するということは、組合名義の各種契約書を締結作成して記名押印するということになります。
理事長は、組合員から総組合員の十分の一以上の同意を得て会計の帳簿及び書類の閲覧又は謄写の請求があつたときは、正当な理由がない限り、これを拒むことができません(都市再開発法27条9項)。
理事は、「定款の定めるところにより、理事長を補佐して組合の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠けたときはその職務を行う」とされています(都市再開発法27条2項)。
監事は、次の業務を行うこととされています(都市再開発法27条4項)。
一 組合の財産の状況を監査すること。
二 理事長及び理事の業務の執行の状況を監査すること。
三 財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、総会又は都道府県知事に報告をすること。
四 前号の報告をするため必要があるときは、総会を招集すること。
都市再開発法には理事会に関する規定はありませんが、都市再開発法27条3項に「定款に特別の定めがある場合を除くほか、組合の業務は、理事の過半数で決する」という規定があり、再開発の手続き方針や、個々の契約締結や、総会の議案など、すべて、理事の間で良く協議して、多数決を取り、決定することが求められています。監事は理事の業務を監査する義務を負いますから、理事会(役員会)にも出席し、業務の状況を監査・監督することが求められるでしょう。
総会の決議事項は次の通り法定されています(都市再開発法30条)。逆に言えば、これ以外の事項は、通常の業務執行として理事会(役員会)の権限になるということになります。通常総会は最低年に1回、必要があるときはいつでも臨時総会を開くことができます。
第三十条 次の各号に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 事業計画の決定
三 事業計画又は事業基本方針の変更
四 借入金の借入れ及びその方法並びに借入金の利率及び償還方法
五 経費の収支予算
六 予算をもつて定めるものを除くほか、組合の負担となるべき契約
七 賦課金の額及び賦課徴収の方法
八 権利変換計画
九 事業代行開始の申請(都道府県知事に事業代行をしてもらう決議)
十 第百三十三条第一項の管理規約(建替後区分建物の管理規約の制定)
十一 組合の解散
十二 その他定款で定める事項
総会の定足数(開催に必要な出席数)は、総組合員の半数以上で、原則として議事は議決権の過半数で決し、可否同数の場合は議長(通常は理事長)の決するところにより決せられます(都市再開発法32条1項)。議長は特別決議事項を除いて議決権を行使することができません(同32条3項)。
総会の議題のうち、次のものは特別決議事項となり「総組合員の3分の2以上が出席し、出席者の議決権の3分の2以上で、かつ、施行地区内の宅地について所有権を有する出席者の議決権及び施行地区内の宅地について借地権を有する出席者の議決権のそれぞれの3分の2以上で、かつ、施行地区内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の3分の2以上の地権者の多数により」決することとされています(都市再開発法33条、都市再開発法施行令20条)。
準備組合及び再開発組合総会の特別決議事項
・定款の変更のうち、「参加組合員に関する事項の変更」「費用の分担に関する事項の変更」「総代会の新設又は廃止」に関する事項
・事業計画又は事業基本方針の変更のうち、「施行地区の変更」「工区の新設、変更又は廃止」に関する事項
・事業代行開始の申請(都道府県知事に事業代行をしてもらう決議)
・第百三十三条第一項の管理規約(建替後区分建物の管理規約の制定)
・組合の解散
ここで権利変換計画案の承認決議が普通決議事項となっていることに御注意下さい。権利変換計画案によって、再発事業により建築される建物にどのような権利が認められるかが、ほぼ決定されるので、地権者にとっては最も重要な議題ですが、普通決議で決めることが出来てしまいます。権利変換計画案は本組合設立前の事業計画案の同意集計時に事実上決定されますから、その時が各地権者が権利保護のため異議申立をする最後の機会であると言えます(都市再開発法14条1項)。
前記の通り、マンション敷地などのように、宅地所有権が共有になっている場合は、共有者全員で組合員1名とみなされることになりますので(都市再開発法20条2項)、これらの総会決議において、マンション地権者は、全員で1つの議決権として取り扱いされてしまうことになります。
3、 区分建物所有者の主張方法
このように、再開発組合及び準備組合の議事手続きにおいて、マンション地権者が全員で1つの議決権として取り扱われてしまうことは仕方ないことですし、適法な取り扱いであるとされていますが、マンション地権者も組合員であることに変わりはありませんので、自分達の権利を最大限に主張して行くべきでしょう。そこで、区分建物所有者(マンション地権者)の権利主張方法を検討したいと思います。
(1) 都市計画審議会に対する意見書の提出
準備組合における事業計画の策定に先立って、各都道府県の都市計画審議会において、再開発促進区を定める都市計画決定を受けることが前提条件として必要になります(都市再開発法3条)。この際、再開発計画のあらましについて、準備組合と行政側が事前協議を行うことになります。都市計画審議会に先立って、都市計画案の縦覧がなされますから(都市計画法17条1項)、利害関係人として意見書を提出することができます(同17条2項)。事実上、これは準備組合が策定している再開発計画に対する異議を申し立てる行為となりますので、行政側としては、準備組合内の意思統一が不十分であると判断する可能性があります。「組合内でもう少し良く話し合って下さい」という指導がなされることがあります。
時系列で言うと、
①準備組合と都市計画審議会による事前協議
②都市計画案の作成、公告、縦覧(公告から2週間)
③縦覧期間中の地権者、利害関係人による意見書の提出
④都市計画審議会を経て都市計画決定、公示
ということになります。
その後は、
①再開発組合の設立認可申請、組合の設立認可
②再開発事業計画の行政による事前審査、計画の縦覧
③地権者、利害関係人による意見書の提出
④事業決定(あるいは再開発組合に対する「事業計画修正命令」)
という手続きが進みます。
都市計画法第17条(都市計画の案の縦覧等)
第1項 都道府県又は市町村は、都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該都市計画の案を、当該都市計画を決定しようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告の日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。
第2項 前項の規定による公告があつたときは、関係市町村の住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された都市計画の案について、都道府県の作成に係るものにあつては都道府県に、市町村の作成に係るものにあつては市町村に、意見書を提出することができる。
(2) 都市再開発法27条9項の閲覧請求手続の活用
都市再開発法27条9項により、理事長は、組合員から総組合員の十分の一以上の同意を得て会計の帳簿及び書類の閲覧又は謄写の請求があつたときは、正当な理由がない限り、これを拒むことができません。組合の業務が適正に行われているか、組合員間の公平が保たれているか確認するために、組合員の10分の1以上の同意を得て、組合の内部資料の開示を求めることができます。他の組合員に声を掛けて、この手続きを推進する試みをすると良いでしょう。
(3) 都市再開発法14条1項の同意手続きにおける意見書の提出
再開発組合の設立認可申請には、再開発区域内の人数及び面積で3分の2以上の同意書を添付する必要があります。この場合の集計でも、共有宅地は1名とカウントされることになります(都市再開発法14条2項、同7条の2第5項)。ただ、面積については、マンションも戸建ても同様にカウントされますので、マンション敷地が再開発区域の3分の1に近い面積があれば、事実上拒否権を有するのと同じことになります。
第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)
第1項 第11条第1項又は第2項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの3分の2以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の3分の2以上でなければならない。
第2項 第7条の2第5項の規定は、前項の規定により同意を得る場合について準用する。
第7条の2第5項 第3項の場合において、所有権又は借地権が数人の共有に属する宅地又は借地があるときは、当該宅地又は借地について所有権を有する者又は借地権を有する者の数をそれぞれ一とみなし、同意した所有権を有する者の共有持分の割合の合計又は同意した借地権を有する者の共有持分の割合の合計をそれぞれ当該宅地又は借地について同意した者の数とみなし、当該宅地又は借地の地積に同意した所有権を有する者の共有持分の割合の合計又は同意した借地権を有する者の共有持分の割合の合計を乗じて得た面積を当該宅地又は借地について同意した者が所有する宅地の地積又は同意した者の借地の地積とみなす。
4、 都市再開発法16条2項の意見書提出
再開発の事業計画は、組合設立申請と同時に(都市再開発法11条1項)、あるいは設立後に(同11条3項)、縦覧手続きを経て(同16条1項)、認可申請することができます。事業計画の縦覧は、行政の事前審査が完了した後、2週間の期間公衆の縦覧に供されることになります。この縦覧期間満了の翌日から2週間の期間に、土地又は建物権利者は、事業計画案について、都道府県知事に対して意見書を提出することができます(同16条2項)。都道府県知事は意見書の内容を審査し、意見を採択すべきと考える場合は、組合に対して「事業計画修正命令」を発令し、再審査を経て、再度縦覧に付されることになります。意見書が採択すべきでないと判断された場合は、その旨の通知が意見書提出者に対してなされることになります。
(事業計画の縦覧及び意見書の処理)
第十六条 都道府県知事は、第十一条第一項又は第三項の規定による認可の申請があつたときは、施行地区となるべき区域(同項の規定による認可の申請にあつては、施行地区)を管轄する市町村長に、当該事業計画を二週間公衆の縦覧に供させなければならない。ただし、当該申請に関し明らかに次条各号の一に該当する事実があり、認可すべきでないと認めるときは、この限りでない。
2 当該第一種市街地再開発事業に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件について権利を有する者又は参加組合員は、前項の規定により縦覧に供された事業計画について意見があるときは、縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに、都道府県知事に意見書を提出することができる。ただし、都市計画において定められた事項については、この限りでない。
3 都道府県知事は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは事業計画に必要な修正を加えるべきことを命じ、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
5、 都市再開発法74条2項に関する意見書を組合に対して提出
権利変換計画案の承認決議は普通決議となっていますが、都市再開発法74条に、権利変換計画認可の基準が法定されています。
都市再開発法第74条(権利変換計画の決定の基準)
第1項 権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物、施設建築敷地及び個別利用区内の宅地の合理的利用を図るように定めなければならない。
第2項 権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならない。
法74条1項は、「権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物、施設建築敷地及び個別利用区内の宅地の合理的利用を図るように定めなければならない。」と規定し、要するに公益目的が合理的に実現できることが条件として求められています。やや抽象的な規定ですが、反対者が居ても強制的に建物の建て替えを進める以上、公共の福祉に役立つ計画である必要がありますので、この点に疑義がある場合は、意見書として組合に対して主張してくべきでしょう。
法74条2項は、「権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならない。」と規定し、組合員間に不公平な計画は認められないと規定しています。具体的には権利変換において、組合員間で従前資産の評価や権利変換比率の点で不公平な計画であれば、これに対して異議を述べることができるということです。不公平であると主張するためには、客観的資料が必要ですから、弁護士や不動産鑑定士の協力を得て意見を提出するのが良いでしょう。権利変換計画案に対する意見書の提出期間は、組合が行う権利変換計画案の縦覧期間と同じ2週間です(都市再開発法83条1項、同2項)。縦覧が始まってから意見書を用意することは通常不可能です。法的な意見を十分に主張するには通常数か月の準備が必要です。
6、まとめ
このように見てくると、マンション地権者に準備組合や再開発組合の決議における議決権が1つしか無いとしても、利害関係人として、あるいは組合員として、準備組合や再開発組合に対して都市計画案、事業計画案に関する様々な意見を主張できる可能性があることが分かります。再開発計画をいたづらに妨害するということではなくて、組合員間の公平を図りつつ、地域一帯の全員の利益になるような意見であれば、何ら躊躇する必要は無く、どしどし意見を出していくべきでしょう。
以上