国選弁護人は再逮捕回避のための弁護活動をできるか

刑事|被疑者国選事件における余罪弁護|同種事件の再逮捕回避の方法|国選弁護人の職務の範囲|弁護士職務基本規程49条1項2項

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問

窃盗の容疑で逮捕、勾留されている28歳、会社員です。容疑の内容は、私の以前の職場であった喫茶店で店長が管理していた現金約26万円を盗んだというもので、1週間ほど前に突然警察が自宅にやってきて、逮捕状を示されて逮捕されました。私はこの容疑には全く身に覚えがなく、取調べでも否認しています。

ただ、実は同じ人が店長をしている別の系列店で3回ほど現金十数万円ずつを盗んだことがあり、これらについては取調べでも素直に認めているところです。

私には国選弁護人が就いているのですが、先日の取調べの際、刑事さんから、「この件で釈放されても、すぐに余罪で再逮捕だろうな。」と言われたことから、弁護人と相談したところ、「確かに再逮捕の可能性は高いけれど、余罪について店長と示談できれば再逮捕を回避できる可能性はあるだろう。ただし、私が示談交渉を担当することはできない。」といったことを言われました。

私は、再逮捕を避けるためにできることは何でもしたいと思っているのですが、どうすることもできないのでしょうか。

回答

1 逮捕勾留されている被疑事件について私選弁護人を選任し、余罪についても私選弁護人により示談を進め、逮捕勾留されている事件についての不起訴処分並びに余罪についての再逮捕を避ける必要があります。

2 まず、あなたが置かれている状況についてですが、事件に対する認否の状況からすると、延長を含めて20日間の勾留期間とされることが通例であり(刑事訴訟法208条1項、2項)、検察官としては、その間の捜査の結果を踏まえ、証拠上確実に有罪にできると判断すればあなたを起訴し、逆に証拠不十分であれば、いったん処分保留にするなどして釈放することになります。被疑事実に身に覚えがない以上、取調べにおいて終始一貫した事実主張を行うとともに、不利な内容の供述調書を作り出させない(納得できない内容の調書に署名押印しない)ことが、起訴回避のためにはまず重要です。

3 ただし、本件被疑事実について起訴を回避できて釈放されたとしても、事実関係に争いのない余罪で再び逮捕される可能性が非常に高いと思われます。再逮捕の可能性を低下させるためには、逮捕の要件である「逮捕の必要性」(刑事訴訟法199条2項、刑事訴訟規則143条の3)を低下させるような事情を作り出し、それを明らかにする資料を予め捜査機関に提出しておくことが有効ですが、中でも最も重要となってくるのが、余罪についての被害者との示談の成否です。どのみち余罪について不起訴処分を獲得するためには示談は避けて通れないため、早期の示談成立によって再逮捕自体を回避できる可能性のある今のうちに示談交渉を開始しておくことが望ましいといえます。

4 しかし、未だに逮捕すらされていない余罪に係る示談交渉は、勾留された事件ごとに付される国選弁護人としての職務範囲外であり、本件のようなシチュエーションで余罪の示談交渉を進んで行おうとする国選弁護人は、実際にはほぼ皆無と思われ、現在の弁護人に余罪に係る示談交渉まで期待することは困難と思われます(国選弁護人が余罪について示談することはあなたの依頼があれば法律上は可能ですが、国選の費用の範囲内で行う必要があり、弁護士としては行う義務はないといえます)。したがって、弁護人に再逮捕阻止に向けて動いてもらうためには、家族等の援助を受ける等して、弁護活動の範囲に制限がない私選弁護人を新たに選任せざるを得ないことになります。これは国選弁護に関する制度の不備に起因するものであり、勾留状記載の犯罪事実に関するものか否かという枠に囚われず、被疑者にとって真に必要な活動をしてもらうことが困難な国選弁護制度の現状は、早急に改善されるべきといえるでしょう。

5 余罪の示談においては、あなたが否認している事件についても、そのことを被害者の店長に納得してもらえないことには、事実上示談の成立は困難と思われ、決して容易な交渉ではないと考えられます。私選弁護人選任の目的でもある示談の成立や再逮捕の回避の確度を高めるためには、刑事弁護や示談交渉の経験が豊富な弁護士を選任することを強くお勧めいたします。

6 その他本件に関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

1 あなたが置かれている法的状況について

(1)本件での身柄拘束

あなたは勤務先の喫茶店で金銭を窃取したという窃盗(刑法235条)の被疑事実で逮捕され、現在は勾留されているとのことですが、伺った事情の下ですと、まずこの勾留期間がある程度長期に渡る可能性が高いと考えられます。

勾留とは、逮捕に引き続いて行われる比較的長期間の身柄拘束処分のことを言い、その期間は、送検後の検察官による勾留請求の日から起算して、原則10日間とされているのですが(刑事訴訟法208条1項)、事件を担当する検察官があなたに対する終局処分(起訴するか、不起訴にするか)の決定にあたって追加で取調べや証拠収集をする必要があると判断した場合、10日間の延長が認められています(刑事訴訟法208条2項)。

被疑事実について否認している場合、捜査機関としては、被疑者の自白がなくても有罪に出来るだけの十分な証拠があるかどうか、という観点から慎重な捜査を尽くす必要性が高まるため、一般的に勾留延長が認められ易い状況といえます。本件でも合計20日間の勾留が続く可能性が高いものと考えておく必要があるでしょう。

検察官は、この勾留期間中の捜査の結果を踏まえ、有罪にできるだけの証拠があると判断すればあなたを起訴(正式裁判請求)し、逆に証拠が不十分であると判断すれば、いったん処分保留にするなどして釈放することになります。

本件では、被疑事実に一切身に覚えがないとのことですので、現在の被疑事実についての起訴の回避を確実なものとすることが、まずは必須となってきます。そのためには、取調べにおいて終始一貫した事実主張を行うこと、黙秘権(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)、供述調書の訂正申立権・署名押印拒否権(刑事訴訟法198条4項・5項)等の権利行使を適切に行い、不利な内容の供述調書を作り出させないこと、弁護人によるあなたに不利な証拠の信用性弾劾のための取組み等の対応が非常に重要となってきます。

否認事案における具体的対応については、『否認事件における勾留』『犯行の一部否認と勾留決定に対する準抗告の必要性』で詳述しております。

(2)余罪での再逮捕

ただし、本件では、取調官や国選弁護人が指摘するように、仮に上記のような対応が奏功し、本件被疑事実について起訴を回避できて釈放されたとしても、余罪で再び逮捕される可能性が非常に高いと思われます。

被害金額が大きく、窃盗被害自体はいずれも発覚済みである可能性が極めて高いこと、実際にあなたが窃取した現金の管理者(被害者)がいずれも本件と同一人であり、余罪にかかる窃盗についても本件と同様、被害届が出されていると考えられること、あなた自身も取調べにおいて余罪にかかる各犯行を自認していること等からすれば、逮捕の要件である「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項)が優に認められると考えられること、同一の被害者に対する一連の犯行についての捜査を進める中で、捜査機関が被疑者を一時的であれ釈放するということが現実的には考えにくいこと等がその理由です。

さらに、あなたの場合、余罪が複数あるとのことですから、一度余罪で逮捕、勾留され、終局処分(起訴、不起訴の決定)が決まったとしても(この間、最大で23日間かかることになります。)、さらに別の余罪で逮捕される可能性も考えられます。

刑事訴訟法上、逮捕、勾留の効力の範囲は、被疑者という人単位ではなく、逮捕状ないし勾留状記載の犯罪事実を基準として決められるため(刑事訴訟法60条1項、61条、64条1項、203条、205条、207条1項、345条等の規定は、被疑者の身柄拘束手続を特定の犯罪事実を基礎として行うことを予定しているといえます。)、同一人につき犯罪事実が複数ある場合、その回数分逮捕、勾留がなされる可能性があることになります。そして、基本的には、各犯罪事実の手続きごとに、それぞれについての終局処分(起訴、不起訴)が決定されることになります。

このように見てみると、余罪で改めて逮捕される可能性が高いという取調官や国選弁護人の指摘は、あながち間違いではないといえるでしょう。

2 再逮捕回避のために必要な対応

もっとも、将来余罪で逮捕される可能性を低下させるための方策がないわけではありません。被疑者を逮捕するためには、前述のとおり、法律上の要件を満たしている必要があり、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(「逮捕の理由」といいます。)があることの他、明らかに逮捕の必要がない(被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及びその態様その他の事情に照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証隠滅するおそれがないこと等の事情を指します。刑事訴訟規則143条の3)とはいえないこと(「逮捕の必要性」といいます。)が必要とされています(刑事訴訟法199条2項)。

そこで、逮捕の必要性を低下させるような事情を作り出し、それを明らかにする資料を予め捜査機関に提出しておくことが、逮捕状の請求を思い止まらせ、あるいは裁判官による逮捕状の発付を回避させる上で有効となってきます。

具体的には、余罪に係る犯罪事実を認めるとともに、関連事実について可能な限り詳細に申述した上申書の作成、提出、捜査機関への出頭や事件関係者への不接触等を内容とする誓約書の作成、提出、家族や親族作成の身元引受書の提出、あなたの就業先や役職等が分かる資料の提出等が考えられますが、最も重要なのは、余罪との関係で被害者と示談が成立しているか否かでしょう。

被害者との間で、謝罪と被害弁償を内容とする示談が成立し、被害者が宥恕(刑事処罰を求めない程度に許すこと)の意思を示している場合、同種前科があったり執行猶予中であったり等の特別な事情がなければ、検察官の終局処分としては、通常、不起訴処分を選択する局面と思われます。示談の成立によって不起訴処分が見込まれる状況は、そもそも厳罰を恐れて逃亡を図ったり、罪証隠滅を図る動機自体を欠くことになるという意味で、逮捕の必要性を大きく低下させる事情となるため、逮捕の回避に大きく資することになります。

したがって、再逮捕(余罪での逮捕)の回避をより確実なものとするためには、本件被疑事実に係る勾留期間中に、各余罪にかかる被害について被害者との間で示談交渉を行い、示談を成立させておくことが必須ということができます。余罪について事実関係に争いがないのであれば、被害者との示談は不起訴処分を獲得するために避けては通れない活動といえるため(謝罪や被害弁償等に向けた活動を何ら行っていない場合、被害額の大きさからして、公判請求が見込まれることになるでしょう。)、どのみち示談が不可避なのであれば、終局処分までの時間的余裕のある(再)逮捕前の段階で交渉開始しておくことが望ましいといえるでしょう。

3 国選弁護人の職務の範囲

ところで、あなたは国選弁護人から示談交渉を行うことに消極的な回答をされているとのことですが、これは余罪に関する示談が国選弁護人としての職務範囲外であるとの考えによるものと思われます。

そもそも国選弁護人というのは、貧困その他の事由により弁護人を選任することができない場合に、裁判所ないし裁判官が付する弁護人であり、被疑者段階においては、被疑者が勾留されている場合に、勾留された事件ごとに付されるものです。すなわち、勾留の効力の範囲が犯罪事実を基準として判断されるのと同様、勾留された事件ごとに付される国選弁護人の弁護活動の範囲も当該勾留に係る犯罪事実に関するものに限られるとの考えが導かれることになります。

したがって、未だ勾留すらされていない余罪に関する示談交渉となると、国選弁護人の職務外(国選弁護人として行うべき弁護活動の範囲外)ということになり、あなたに就いている国選弁護人が余罪についての示談交渉を行う義務はない、というのが理論的帰結になります。

もちろん、国選弁護人の中には類稀なる高い人権意識と被疑者救済という崇高なる理念の下、余罪の示談に向けて無償で尽力してくれるような奇特な弁護士もいるのかもしれません。しかし、筆者の経験と知見の限りでは、本件のようなシチュエーションで余罪の示談交渉を進んで行おうとする国選弁護人は、実際にはほぼ皆無と思われます。

したがって、再逮捕回避等のため、現時点から余罪についての示談交渉を進めておこうとするのであれば、新たに私選弁護人を選任する他ないということになります。私選弁護人の弁護活動の範囲は、弁護人との委任契約によって自由に定めることが出来るため、弁護活動の範囲に制限はなく、余罪にかかる示談交渉も問題なく対応してもらうことが可能です。もちろん、私選弁護人を付するとなると、ある程度の弁護士費用の負担が必要となってくるという現実的な問題が生じます。しかし、この点については、国選弁護人選任の資力基準を満たす程度の資力状況である以上は、家族や親族の援助を求める等の方法により対処する他ないところでしょう。

なお、仮に私選弁護人選任についての家族等の援助が得られたとして、これまでの弁護活動を担当し、事情に明るい国選弁護人に引き続き私選弁護人を依頼したいと考えられるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。

日本弁護士連合会が定める弁護士職務基本規程49条1項で、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、報酬その他の対価を受領してはならないとされ、それとの関連で、国選弁護人が私選弁護人としての選任の働きかすることは弁護士職務基本規程49条2項で禁じられています。この規定は、国選弁護人から私選弁護人への切り替えを禁止するものではありませんが、原則として切り替えはできないと考えられています。この規定に違反すると弁護士は懲戒処分を受けることになりますから、弁護士としては私選への切り替えには慎重にならざるを得ません。

こうしたことからすると、現在の国選弁護人としては、たとえあなたから希望があったとしても、私選弁護人としての継続受任を強く躊躇することになるでしょう。結局のところ、あなたとしては、本件勾留にかかる本件被疑事実及び余罪を含めた全件について、新たに別の弁護人を私選で選任せざるを得ないことになります。その場合、元々就いていた国選弁護人は解任されることになります(刑事訴訟法38条の3第1号1号)。

4 最後に

以上のような帰結は、国選弁護に関する制度の不備に起因するものといえ、勾留状記載の犯罪事実に関するものか否かという枠に囚われず、被疑者にとって真に必要な活動をしてもらうことが困難な国選弁護制度の現状は、早急に改善されるべきといえるでしょう。とはいえ、本件で余罪の示談を含めた最善の弁護活動を受けるためには、実際上、家族等の協力の下、新しく私選弁護人を選任する他ありません。

余罪の示談においては、一連の被害の一部について、あなたが関与を否認している点がネックになってくると予想されます。被害者の店長としては、状況からしてあなたの関与を強く疑っているはずであり、この点を納得させて示談成立の運びとすることは容易なことではありません。私選弁護人選任の目的でもある示談の成立や再逮捕の回避の確度を高めるためには、刑事弁護や示談交渉の経験が豊富な弁護士を選任することを強く勧めたいと思います。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

参照条文
日本国憲法

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

刑法

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法

第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
2 被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

第三十七条の二 被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
2 前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

第三十八条の三 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一 第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
4 公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人の解任は、裁判官がこれを行う。この場合においては、前三項の規定を準用する。

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

第六十一条 被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。

第六十四条 勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
2 前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
3 司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
4 司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
5 第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
3 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。

第三百四十五条 無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)、罰金又は科料の裁判の告知があつたときは、勾留状は、その効力を失う。

刑事訴訟規則

第143条の3(明らかに逮捕の必要がない場合)
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

弁護士職務基本規程

(国選弁護における対価受領等)
第四十九条弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。
2弁護士は、前項の事件について、被告人その他の関係者に対し、その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。ただし、本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合は、この限りでない。