再開発における私道の評価

民事|行政|都市再開発法|都市再開発法80条1項の「相当の価額」の解釈|地権者の従前資産評価への大きな影響|地権者の対策|参加組合人側との利益調整方法|都市再開発法7条の2第2項

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集

質問

再開発計画の区域内に、戸建て店舗(私道つき土地建物)を所有しておりますが、数年前に再開発準備組合が設立され、再開発事業の都市計画決定が決まり、容積率が従来の400パーセントから800パーセントに緩和され、40階建ての高層複合ビルが建つことになりました。本組合の設立に先立って、事業計画案や本組合の定款が作成され、各地権者にはモデル権利変換の説明も始まりました。地権者は建設費の負担なく建て替えに参加できるということで、基本的に我が家も計画自体に反対ではありませんでした。しかし、モデル権利変換の説明を受けたところ、私道部分が、建物が建っている部分の敷地に比べて半額以下の坪単価の評価になっていました。これは再開発が無ければ理解できる評価ですが、既に容積率の緩和を認める都市計画決定が行政決定され、新聞でも報じられています。勿論私が所有する私道部分の土地の容積率も緩和されていますし、私道部分も含めて40階建ての高層ビルになるのです。それなのに、従来の建物が建たない土地(私道)としての従前資産評価になってしまうのは仕方ないのでしょうか。

回答

1、再開発手続きにおける従前資産評価は、権利変換手続きにより地権者が取得できる新築建物の割合を決める基準となるもので、従前資産評価に再開発による土地の評価の上昇分を考慮するか否かは、地権者にとって重要な問題といえます。この点は、私道だけでなく宅地についても同様な問題となります。

2、再開発における従前資産評価は、都市再開発法80条1項で、「近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする」とされています。同意なく建て替えを余儀なくされる地権者の財産権を保護する必要があるため、土地収用手続きにおける完全補償説と同様に考えれば、この「価額」は、組合設立認可公告から31日目の評価基準日における、時価相当額と解釈することができます。

3、実際の再開発手続きでは、区域内地権者による本組合の創立総会において決議された、再開発事業計画案と、本組合の定款と、その付属書類である「従前資産評価基準」によって、事実上、都市再開発事業の都市計画決定で認められた緩和後の計画容積率を加味せずに、従来の指定容積率に基づいて評価する取り扱い事例も多くなっています。

4、裁判例は多くありませんが、私道の評価も含めて、開発利益(容積率の緩和分)を加味せずに従前資産評価していても、区域内地権者の多数決により承認された事業計画案に含まれる従前資産評価額は合理性があり有効であると判示するものがあります。

5、私道についても、宅地についても、容積率の緩和分を十分に評価に組み入れてほしいということであれば、区域内地権者の意見を、事業計画案に明記する必要があります。それは、デベロッパーやゼネコンなどが主導する準備組合事務局には難しいことになります。区域内地権者の声を事業計画案に組み入れるためには、準備組合とは別の地権者の団体を設立して、再開発手続きを学び、区域内地権者の意見を集約して「地権者の立場に立ったあるべき事業計画案」を作成し、行政や準備組合に提言し、事業計画に地権者の意見を反映させていく努力が必要です。

6、その他本件に関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

1、再開発手続きにおける従前資産評価方法

都市再開発法では、「権利変換手続き」という手法を使って建物の建て替えを実現する仕組みになっています。

権利変換とは、組合が定めた計画を都道府県知事や国土交通大臣が認可した場合に、権利変換期日に次の(1)~(4)の効力が生じるものです。建物は一旦組合に権利が移行しますが、建物除却及び再建築を経て、新しい建物の権利は、権利変換計画に定められた者が新たに取得することができます(都市再開発法73条1項2号)。

(1)施行区域内の土地は、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する(都市再開発法87条1項前段)。

(2)従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条1項後段)。

(3)施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者(組合)に帰属する(都市再開発法87条2項前段)。

(4)当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条2項後段)。

面積と人数で3分の2以上という多数の意思形成は必要ですが、逆に言えば、区域住民の大多数が同意できるような計画を提示できれば、3分の1に満たない反対があっても事業を進めることができるように法令が整備されています。

この、権利変換計画を定めるにあたって、従前床と新しい床の評価が「著しい差額が生じないように」定めなければならないとされており(等価原則)、また、「与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように」定めなければならないとされています(都市再開発法77条2項)。つまり、従前床の評価が高ければ、従後床の価値も高くなり(床面積が広くなり)、また、建設資金を分担する参加組合員に与えられる床面積も、従前床の評価額と保留床処分金の価額とを比較して算定されることになります。

都市再開発法77条第2項 前項前段に規定する者に対して与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。この場合において、二以上の施設建築敷地があるときは、その施設建築物の一部は、特別の事情がない限り、それらの者の権利に係る土地の所有者に前条第一項及び第二項の規定により与えられることと定められる施設建築敷地に建築される施設建築物の一部としなければならない。

従って、再開発手続きにおいて、従前床の評価は各権利者にとって極めて重大な問題であると言えます。都市再開発法では、従前床の評価は、次の通り定められています。

都市再開発法第80条(宅地等の価額の算定基準)

第1項 第七十三条第一項第三号、第八号、第十六号又は第十七号の価額は、第七十一条第一項又は第四項(同条第五項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

第2項 第七十六条第三項の割合の基準となる宅地の価額は、当該宅地に関する所有権以外の権利が存しないものとして、前項の規定を適用して算定した相当の価額とする。

第81条(施設建築敷地及び個別利用区内の宅地等の価額等の概算額の算定基準) 権利変換計画においては、第七十三条第一項第四号、第九号、第十四号又は第十五号の概算額は、政令で定めるところにより、第一種市街地再開発事業に要する費用及び前条第一項に規定する三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として定めなければならない。

つまり、評価基準日(組合設立認可および事業計画認可公告から30日後)における、「近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額」により評価すべきとされています。

2、「相当の価額」とは

都市再開発法80条1項の「相当の価額」について、条文上必ずしも明確ではありませんが、

(1) 従前床の評価額と、保留床処分金が、価額という同じ土俵で比較対照されうること。

(2) 区外転出の場合には、権利を失う対償として支払われる価額であること。

(3) 再開発手続きに反対している組合員でも、また、再開発組合の決議に関与できない借家権者でも、強制的に換価されてしまうこと。

(4) 都市再開発法85条1項で、評価額に異議がある場合に、土地収用法の裁決手続きを申請できると規定されていること。

これらの事情を考慮すると、土地収用手続きにおける完全補償説と同様に、都市再開発法80条1項の評価は時価相当額によるべきと考えることができます。土地収用法に関して裁判所は、完全な補償が必要であるとの考え方を示しています。所有権の絶対、私有財産制の沿革からしても完全補償説が原則と考えられます。

最高裁判所昭和48年10月18日判決

「おもうに、土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によつて当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもつて補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要するものというべく、土地収用法七二条(昭和四二年法律第七四号による改正前のもの。以下同じ。)は右のような趣旨を明らかにした規定と解すべきである。」

この判例で言及している昭和42年改正前の土地収用法72条は次のような規定でした。

土地収用法(昭和42年改正前規定) 第72条(土地の収用の損失補償)収用する土地に対しては、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。

対応する現行規定は、次の通りです。

土地収用法(現行規定) 第71条(土地等に対する補償金の額)収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。

この判例では、土地収用法における公共用地の収用が、道路工事や河川工事や砂防工事や運河工事など、特定の場所における個別の不動産を収用するものであって、農地改革の様に全国的に土地の利用関係を変更するものではなく、個別不動産に対して「特別の犠牲」を求める手続だから、原則として、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償が必要であるという考え方に立っています。この理屈は現行の土地収用法71条についても当てはまるものと考えることができます。

この完全補償説を、都市再開発手続きの場面で考えるのであれば、「再開発の前後を通じて、区域内地権者の財産価値を等しくならしめるような権利変換と明け渡し補償が必要である」という考え方に帰着することになります。この考え方をベースに都市再開発法のあらゆる規定を解釈することが必要です。

「区域内地権者の財産価値を等しくならしめる」という基準では、再開発の利益を加味しなくても地権者全員同じ基準で評価するのであれば、等しい評価といえることになりますが、地権者対参加組合員の間で公平にするには地権者の土地評価に再開発の利益を加算する必要があるのではないかということが問題になります。

3、開発法による私道の評価

国土交通省が公表している「不動産鑑定評価基準」から、更地を評価する場合の開発法についての記述を引用します。

>Ⅰ 宅地

>1.更地

>更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。

>(1)一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

>(2)分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。

※国土交通省、不動産鑑定評価基準

https://www.mlit.go.jp/common/001043585.pdf

これは不動産鑑定士が鑑定書を作成する場合にも使われる基準です。都市再開発法の権利変換計画に搭載される「相当の価額」についても、この評価基準で認められている「開発法」による評価を加味して価額を算定することは十分合理性のある評価方法です。

この評価方法では必然的に、その土地からどれだけ分譲(販売)可能な床面積を創出できるかということが評価の根拠となりますので、従前指定容積率から緩和された都市計画決定を経た市街地再開発事業の計画容積率を評価資料として使うことができますし、私道であっても市街地再開発事業により私道廃止されることが決まっているのであれば専有面積を産み出す建物敷地として評価され得ることになります。その宅地に建物を建てて、その専有床の販売価額から建築費用などを控除して、評価基準日の現価に修正した価額を以て評価額とすることが可能となります。

実際の鑑定評価実務では、開発法に加えて、再調達価格を算出する「現価法」、近隣の実際の取引事例を基に算出する「取引事例比較法」、賃料収入を期待利回りで還元して本体価額を算出する「収益還元法」などのオーソドックスな評価方法に基づく価額を算出し、土地の特性に合わせてそれぞれの評価方法に重みをつけた加重平均により鑑定評価額を算出することになるでしょう。開発法は、当該土地が生み出す分譲可能床面積の売却可能額に着目した評価方法ですので、賃料収益利回りを還元して現在価額を算出する収益還元法と考え方は類似しています。どちらも当該土地が生み出す利益(開発法は売却益、収益還元法は賃料収益)に着目した評価方法なのです。

4、開発利益に関する判例紹介

再開発によって容積率が緩和され地価が上昇するのだから、その開発利益も都再法80条1項の「相当な価額」に含まれると考えることができるでしょうか。都市再開発法関連の参考判例がありますので御紹介致します。

東京高裁平成21年11月12日判決

『(1) 控訴人らは,都市再開発計画により土地価格形成要因の変更が確実であれば,それを織り込んだ開発利益が既に発生しているともいえるから,市街地再開発事業の完成によって発生する開発利益が評価基準日に発生していなくても,土地の価額に加算すべきである旨主張する。

しかしながら,都市再開発法80条1項は,同法73条1項3号の従前資産の価額を,評価基準日における近傍類似資産の取引価格等を考慮して定める「相当の価額」とする旨定めており,これは,権利変換の前後を通じてその者の有する財産価値を等しくさせることを目的として算定される金額であって,権利変換計画の決定前の日である評価基準日の時点における近傍類似資産の取引価格その他の諸事情を考慮して定められるべきものと解するのが相当であり,評価基準日の後に発生する開発利益は加算すべきではないことは,原判決判示のとおりである。土地価格形成要因の変更が確実であることから,それを織り込んだ開発利益が既に発生しているということは擬制にすぎず,そうであるからこそ,本件取扱基準が開発利益を「加えた価格」を宅地の価格とする旨定めているのであり,真に現実化しているなら,加える必要自体がないことになる。

したがって,控訴人らの主張は採用できない。

(2) 控訴人らは,収用委員会の裁決に不服がある場合の訴えにおいては,開発利益を加算することが許されないとすると,二重の基準を設けることになり,市街地再開発組合が,自ら定めた従前資産の評価基準を無視した評価による権利変換計画を定めた場合,権利者が,裁決を申請し,裁決の変更を求める訴えを提起しても,その是正を図ることができないことになると主張する。

しかしながら,都市再開発法80条1項にいう「相当の価額」が上記のようなものと解すべきである以上,収用委員会も裁判所も,この「相当の価額」について認定判断すべきものであることは,同法の規定の当然に予定するところといわなければならない。そして,原判決が本件権利変換計画において定められた宅地の価格が開発利益も加算したものとなっていることにつき,直ちに違法となるものではないと判示したことを二重の基準を設けるものと非難しているが,これは,施行者である被控訴人が同法80条1項所定の評価基準と異なる取扱基準を用いたことにつき,違法とまではいえないが同法に根拠を有しない事実上の措置にすぎないとしているものであり,二重の基準とはいえない。

なお,このように,収用委員会及び裁判所においては,あくまで,都市再開発法80条1項の「相当の価額」の認定判断をするものであり,その範囲でのみ違法の是正を行うものであることからすると,施行者が事実上の措置として「相当の価額」に加算した額をもって宅地の価額としている場合には,是正された価額に同じ加算がされるように求めることはできないことになるが,それがあくまで事実上の措置である以上,裁決及び判決により救済を図ることは,同法の予定していないところといわざるを得ない。

したがって,控訴人らの主張は採用できない。』

この判例では、都市再開発法80条1項の「相当の価額」が、「評価基準日における近傍類似資産の取引価格その他の諸事情を考慮して定められるべきものと解するのが相当であり,評価基準日の後に発生する開発利益は加算すべきではない」と判断され、開発利益は相当価額に含まれないという立場を採用しています。

しかし、現実の不動産取引においては、当該不動産に関連する行政決定が告示され、再開発手続きによる建て替えが予定されている場合には、それが実際に現実化する前から価格は上昇していくのが通例であり、その事情は、近傍類似資産の取引価格にも影響しうることから、この判例の論理は自己矛盾を含んだ理屈になっているとも言えます。完全補償説(収用の前後において対象資産に増減を生じさせない、つまり、当該物件の評価は完全に時価相場額で補償する)を徹底するのであれば、評価基準日における適正価額を算出する場合に、開発利益の一部が加算されると考えるのが妥当でしょう。

この判例の再開発事例では、組合設立時の従前資産評価基準に、「宅地の価格(単価)は,地価公示価格,基準地価格,近傍類似の土地取引価格及び価格形成上の諸要因を考慮して求めた標準地の正常価格を基準として,これに各画地の接道条件,公法上の規制,形状,規模等の個別的要因による個別格差修正を行って求めた価格に,事業による評価の増加分(開発利益)を加えた価格とする。」と定めており、裁判所も「施行者である被控訴人が同法80条1項所定の評価基準と異なる取扱基準を用いたことにつき,違法とまではいえないが同法に根拠を有しない事実上の措置にすぎない」としながらも組合が独自に開発利益を加味する従前資産評価基準を設けることを是認したと解釈できることも注目に値します。準備組合理事会の有志が発案し発議すれば、地権者の利益を確保できるように配慮した組合運営も可能であることを示唆するものです。

もうひとつ東京高裁の判例を御紹介致します。

※東京高裁平成28年12月15日判決

『ア 「開発利益」という用語は,都再法上の用語ではなく,実務において多義的に使用されているものであるところ,本件で証拠として提出されている文献等(甲1,17,25,乙3,4,12)において述べられているその意義を整理すれば,①再開発事業のもたらす全体の効用を指す概念であり,粗効用-(工事費+資本コスト+用地費)として捉えるもの,②個別の再開発事業において形成された従後資産の価値と事業の原価たる従前資産及び事業費の合計額との差額をいうとするもの,③再開発事業の施行地区内の土地の価値という観点から,再開発事業により土地が一体利用されることによる価値の増分をいうとするもの,④再開発事業の施行地区の近隣の土地の価値という観点から,再開発事業による市街地の活性化,利便性の向上等又はこれに対する期待に伴う価値の増分をいうとするもの,⑤再開発事業の施行地区内の土地の価値という観点から,都市計画等の見込み,決定等に基づく再開発事業の完成の期待に伴う価値の増分をいうとするものがある。そして,控訴人の主張する「開発利益」は,その主張内容に照らし,⑤に該当するもの(以下,これを「開発期待」と称する。)と解される。

イ 前記ア①ないし③の意味における開発利益は,その内容に照らし,再開発事業の完成によって生じるものであることが明らかであり,かかる意味の開発利益が「相当の価額」において考慮されるべきものに該当しないことは,「相当の価額」が評価基準日における価額であるとされていること(都再法80条1項)から明らかというべきである。

ウ 一方,再開発事業は,事業による市街地の活性化,利便性の向上等及びこれに対する期待から,評価基準日までに施行区域を含むその近隣の土地全体の地価を上昇させることがあり得る。「相当の価額」とは,従前土地を有する者が近傍において当該従前土地と同等の代替地を取得することを得るに足りる金額をいうことは前記2に説示したとおりであることか

らすると,上記のような近隣の土地全体の地価の上昇があるときには当該地価の上昇分を考慮しなければ,従前土地の所有者は近傍において当該従前土地と同等の代替地を取得することができなくなるから,その場合における「相当の価額」の算定に当たっては当該地価の上昇を考慮する必要があるというべきである。前記ア④の意味における開発利益は,このような意味の評価基準日までに生じた施行地区の近隣の土地の価格上昇をいうものであり,「相当の価額」の算定において考慮されるべきものであると解される。

エ 控訴人は,従前土地について,評価基準日までに生じた前記ア⑤の意味における開発期待による価格の上昇を「相当の価額」の算定において考慮されなければならないと主張する。

評価基準日までの期間において従前土地の処分に関する制限はないから,従前土地についても,再開発事業に参加することを希望する者との間で売買が成立することはあり得ることであり,その場合に再開発事業に参加したいと希望する者が開発期待を織り込んだ割増価格で買い受けることもあり得ると考えられる。しかし,当該割増分は,再開発事業に参加を希望する者が再開発事業に対して付加する価値であり,再開発事業の完成によって実現するものであるから,従前土地の売買時点における客観的価値とは異なるものであり,その性質上,従前土地の所有者に補償されるべきものとはいえないというべきである。

また,控訴人の主張する開発期待は,評価基準日の時点における従前土地の価格上昇分として把握するものであるから,権利取得者に限らず権利喪失者にも等しく及ぶことになると解されるところ,再開発事業は評価基準日から完成まで更に数年を要することが多く,本件再開発事業においても,本件評価基準日(平成24年3月11日)からその完成予定時期(平成28年10月頃。前提事実(5)キ)まで4年7か月余りの期間が予定されているところであり,その間には多くのリスクが存在し得ることに鑑みると,当該リスクを負担することがなくなる権利喪失者にまで,再開発事業が施行されて初めて実現する付加価値というべき期待に係る利益を,再開発事業が予定されることによって評価基準日までに施行地区及びその近隣の土地全体に等しく生じ得る地価の上昇分に加えて補償する必要があるとは解されず,また,再開発事業で行われる権利変換によって従前土地の所有者が被る特別の犠牲とは,本来,再開発事業が行われない従前の状態における所有権の価値であることからしても,前記ア④の意味の開発利益とは別に再開発事業が施行されるということにより従前土地に係る付加価値として生じるとする開発期待は,従前土地の価値に含まれると解することはできないというべきである。

さらに,「相当の価額」が評価基準日における価額であることに鑑みると,評価基準日までに現実に生じた地価の上昇分は加味されるべきであるということになるところ,前記ア④の意味における開発利益を「相当の価額」の算定に当たって考慮することは,従前土地の所有者に近傍において同等の代替地を取得せしめてその財産権の保障を実行ならしめるために

必要不可欠であり,また,都再法80条1項が「相当の価額」を近傍類似の土地の取引価格等を考慮して定めるものと規定することとも整合するのに対し,控訴人が主張する前記ア⑤の意味の開発期待は,上記のとおり,再開発事業の完成に期待して付加される価値であり,評価基準日の時点における従前資産の価値とは別個のものである上,多分に個別的要因の強いものであって,かかる付加価値分が施行地区内の土地全体に等しく妥当すると解する根拠を欠くものというべきであるから,「相当の価額」を構成する要因とするのは相当とはいえない。

オ 以上によれば,本件再開発事業を起因とする地価の上昇が,前記ア④の意味における評価基準日までに本件施行地区内の従前土地のみならずその近隣周辺において同等に生じるものは,「相当の価額」に含まれるべきものであるが,前記ア⑤の意味における従前土地が再開発事業の施行される土地であることにより生じる同事業完成の期待に伴う価値の増分は,評価基準日以降に生じる付加価値であり,個別的要因によって変動し得る不確定なものであって,施行地区内の土地全体に一般的,普遍的に及ぶ利益ではないから,「相当の価額」の算定において考慮されるべきものではないと解するのが相当である。』

この判例では、開発利益の意義について次の5種類の意義があり得ると分析しています。

①再開発事業のもたらす全体の効用を指す概念であり,粗効用-(工事費+資本コスト+用地費)として捉えるもの,

②個別の再開発事業において形成された従後資産の価値と事業の原価たる従前資産及び事業費の合計額との差額をいうとするもの,

③再開発事業の施行地区内の土地の価値という観点から,再開発事業により土地が一体利用されることによる価値の増分をいうとするもの,

④再開発事業の施行地区の近隣の土地の価値という観点から,再開発事業による市街地の活性化,利便性の向上等又はこれに対する期待に伴う価値の増分をいうとするもの,

⑤再開発事業の施行地区内の土地の価値という観点から,都市計画等の見込み,決定等に基づく再開発事業の完成の期待に伴う価値の増分をいうとするものがある。

そのうえで、①ないし③の意味における開発利益は,再開発事業の完成によって生じるものであることが明らかであり,かかる意味の開発利益が「相当の価額」において考慮されるべきものに該当しないことは,「相当の価額」が評価基準日における価額であるとされていること(都再法80条1項)から明らかであると判示しています。再開発ビルが現実に竣工していないので、「再開発の効用」や「従後資産価値差額」や「価値増分」は観念できないとしています。これを「実現利益」とするならば、この部分についての判断は一定の合理性を有すると言えるでしょう。

さらに、都市再開発法91条の転出補償を念頭に置いて、「当該従前土地と同等の代替地を取得する」ためには、近隣区域内も含めて現に生じている④の開発期待価格は考慮すべきとしていますが、⑤の再開発区域内の具体的な開発期待価格(都市計画決定後の実際の取引価格事例)は、「当該割増分は,再開発事業に参加を希望する者が再開発事業に対して付加する価値であり,再開発事業の完成によって実現するものであるから,従前土地の売買時点における客観的価値とは異なるものであり,その性質上,従前土地の所有者に補償されるべきものとはいえない」として、「相当の価額」には含まれないと判断しています。

この裁判所の理論構成には疑問が残ります。現実に取引された価額が「客観的価値」とは異なると断じてしまったら、不動産鑑定評価基準でも主要な鑑定評価手法と認められている「取引事例比較法」を否定しているのと同じことになってしまうからです。前記完全補償説の立場を考慮すれば、不動産の鑑定評価の場面において現実の取引価格を無視することはできないはずです。

また、同じ東京高裁の判例では、類似の理論構成で容積率の緩和部分についても、「相当の価額」に加味しなくても違法ではないと判示しています。

※東京高裁平成28年12月15日判決

『4 本件土地の「相当の価額」の算定において本件特区決定の存在を考慮することの可否(争点2)

(1) 控訴人は,建築物の容積率の規制を大幅に緩和する本件特区決定の存在は,本件再開発事業による開発期待を生じさせる重要な価格形成要因として,本件土地の「相当の価額」の算定に当たり考慮されるべきであると主張する(当事者の主張要旨1(3))。

(2)ア 前提事実(3)によれば,本件特区決定は,本件評価基準日の約2年8か月前である平成21年6月22日,本件再開発事業に係る本件都市計画決定と同時に,かつ,本件再開発事業の施行者である被控訴人の前身である本件準備組合の提案に基づいてされたものであり,その内容は,本件再開発事業に係る本件事業計画に沿って,本件施行地区における容積率の最高限度を1330%に緩和し,建築物の建ぺい率の最高限度を8/10,建築物の建築面積の最低限度を1000㎡と定めるとともに,本件施行地区を一体利用して建築される建築物の外壁又はこれに代わる柱は原判決別紙3-2「計画図」に示す壁面線を越えて建築してはならない旨の壁面の位置の制限等を課すものであることが認められる。

イ 以上認定のとおり,本件特区決定は,本件評価基準日前にされたものであり,これが本件施行地区の周辺の土地に影響を及ぼし,本件評価基準日までに当該周辺の土地の価格上昇をもたらした場合には,その価格上昇は,本件施行地区内の従前土地の価格にも影響を及ぼすものであるから,その場合における当該従前土地の「相当の価額」の算定に当たり考慮されるべきものであり,この意味における本件特区決定による影響が考慮されるものであることは,前記3で説示したとおりである。

ウ 他方,本件特区決定による本件施行地区内の従前土地についての容積率等の緩和自体は,本件再開発事業により建築される施設建築物を前提として壁面の位置の制限などとともに定められているのであるから,本件再開発事業が完成することでしか実現できないものである。

また,本件特区決定は,前記アのとおり,建築物の建ぺい率の最高限度を8/10,建築面積の最低限度を1000㎡と定めていることからすれば,本件土地(1173.43 ㎡(土地面積)×0.8(建ぺい率)=938.744 ㎡(建物建築面積)<1000 ㎡)はもとより,本件施行地区内のいずれの従前土地も単体では本件特区決定による容積率の緩和等の利益を受けることはでき

ないものであり,これに壁面の位置の制限を併せみると,従前土地単体で適用されることは想定されていないということができる。

以上によると,本件特区決定それ自体が本件評価基準日前にされていたとしても,本件土地を含む本件施行地区内のいずれの従前土地も単体で本件特区決定による容積率の緩和等の利益を受けることは想定されておらず,本件再開発事業の施行を離れて本件特区決定があることによる独自の価値増加は観念できない。そして,前記3において説示したとおり,本件再開発事業の成果として実現する価値は従前土地の「相当の価額」を算定する上で考慮されないものであるから,本件特区決定は従前資産たる本件土地自体の価格形成要因として考慮されるものということはできない。

また,本件特区決定が本件再開発事業の実現可能性を高めるものとして,その期待に対する地価の上昇が観念できるとしても,それは本件施行地区の近隣の土地について同様に及んだ地価の上昇を介して従前資産の評価に反映されることになるから,これに加えて,本件土地が本件特区決定の対象とされた本件施行地区内の土地であることを考慮して「相当な価額」

の算定をすべきことにはならない。

(3) 控訴人は,被控訴人の定めた従前資産評価基準5条1項は,権利変換又は取得する土地の価額は「正常な取引価格」によるものとし,従前資産評価基準細則第1が,土地の正常な取引価格は,標準価格比較法により評価するものとし,標準価格は不動産鑑定士が鑑定評価した価格によるものと定めているところ,本件特区決定による公法上の規制を考慮外とすることは,不動産鑑定評価基準に則っていないことになり,許されないと主張する。

しかしながら,本件土地を含む本件施行地区内の各従前土地は,前記(2)ウで説示したとおり,本件特区決定による容積率の緩和等の利益を受け得ない土地であるから,結局のところ,本件土地の「相当の価額」を算定するに当たり本件特区決定による公法上の規制を考慮する余地がないことになる。

そうすると,被控訴人の定めた従前資産評価基準等に基づいて本件土地の「正常な取引価格」を評価する場合にも,本件特区決定による公法上の規制を考慮する余地がなく,これは同規制がない場合と同じことになるから,本件土地について同規制を考慮外として上記「正常な取引価格」を評価したことが不動産鑑定評価基準に則っていないということにはならない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができず,同主張が指摘する事由は,前記3の「相当の価額」の解釈及び本件土地の「相当の価額」を算定する際の本件特区決定の取扱いについての前記(2)の各説示を左右するものではない。』

この判例では、都市計画決定による容積率の緩和には、「建築面積の最低限度」や「壁面の位置の制限」などが同時に規制として課せられており、「従前土地単体で適用されることは想定されていない」ので、従前資産評価に考慮することはできないと判断しています。容積率を緩和する行政決定は出ているが、それには同時に最低建築面積などの不利益な規制も掛けられており、単独で建て替えすることはできない行政条件となっているので、当該画地の価額評価に用いることはできないという理屈です。

しかしながら、これもまた、現実に生じている容積率の緩和を一切考慮しないという点で、前記完全補償説の趣旨から逸脱した判断で疑問が残ります。不動産鑑定実務では、最低敷地面積などの行政上の制約がある場合は、「個別格差率」を0.9倍などと設定し、容積率の緩和分の9割程度を加味して評価する手法が採られることもあります。

いずれにしても、この論点について最高裁判所の判例が確立している状態ではありませんので、今後の議論や事例判断が注目されるところです。いずれの事案も、参加組合員取得床面積や従前資産評価基準も含めた事業計画案は再開発組合の多数決の決議を経ており、地権者の意思決定があることがポイントになります。地権者の意思決定を覆すほどの違法性は見られないという判断になっているのです。

7、私道の評価に関する判例紹介

東京地裁、昭和60年9月26日、権利変換処分取消請求事件判決

『このほか、原告D所有の別表(一)の3の土地、原告K両名共有の同表67の宅地はそれぞれE路線価に基づいて算出されたが、これはA路線価とC路線価との諸条件の比較検討により定められたものであり、原告D所有の別表(一)の1の土地のうち私道部分はF路線価に基づいて算出されたが、これはC路線価との諸条件の比較検討により定められたものである。

また、同原告所有の同表の2の土地はG路線価に基づいて算出されたが、これはA路線価との諸条件の比較検討により定められたものである。そして、これらに基づき、各個別の土地の評価については、東京都の市街地再開発事業の施行に伴う評価及び損失補償基準実施細目に定められた奥行逓減、側道加算、私道減価の各増価要因、減価要因を個別に乗じて別表(一三)の各土地該当欄記載のとおり算出し、このうち私道部分については、市場性が乏しいことからも減価率を五〇パーセントとしたものであり、右各土地の評価額については、昭和五三年一月九日の本件地区市街地再開発審査会において付議され可決された。以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

右認定事実によれば、被告のなした各路線価額の設定及びこれに基づく各土地の評価は、いずれも適正な手続に則つており、その評価した額についても合理性を肯定しうるものということができる。』

この判例は、東京都が施行する第一種市街地再開発事業における従前資産評価について、私道減価を行った従前資産評価に基づく権利変換計画の策定が適正な手続きに従っており合理性も認められると判断したものです。他の開発利益の取り扱いに関する裁判例と同様に、従前の土地建物の評価であるので、再開発ビル建築後の事情は考慮する必要が無いという判断です。前記判例同様に疑問の残るところですが、未だ裁判例も少なく最高裁判例もありませんので、司法における法解釈が確立している状態とは言えません。

8、地権者の対策

上記見てきたとおり、なかなか司法過程による救済は難しい現状があります。私道についても、宅地についても、開発法の評価基準と加味して、容積率の緩和分(開発利益)を十分に評価に組み入れてほしいということであれば、区域内地権者の意見を取りまとめて、多数決の力により、従前資産評価基準や事業計画案に明記する必要があります。それは、一般的に言って、デベロッパーやゼネコンなどが主導する準備組合事務局には難しいことです。準備組合事務局が事業計画の原案を作成するため、どうしてもデベロッパーやゼネコンなどの利益に偏った事業計画案が作成されやすい傾向にあるからです。事業計画案における地権者が取得する権利床とデベロッパーが取得する保留床の割合を比較しますと、デベロッパーが取得する保留床の割合が8割を超えている事例も珍しくありません。他方、保留床の割合が6割程度になっている再開発事例もあります。

公益社団法人全国市街地再開発協会が発行している「日本の都市再開発第8集」934ページによると、日本全国の組合施行の第一種市街地再開発事業525件の権利床の平均は39パーセント(増し床を含む)、デベロッパーが取得する保留床は61パーセントとなっています。この数値から大きく掛け離れている事業計画には何らかの問題点が潜んでいる可能性があります。

※組合施行の525地区の平均値

地権者が取得する専有面積:全体の39パーセント(増し床を含む)

デベロッパーが取得する専有面積:全体の61パーセント

この割合は、もちろん、地価の動向や建築費の状況などにより左右されるものですが、準備組合理事をはじめとする地権者の方々が再開発事業の状況を良く理解し、自分達の意見を再開発計画に反映させるように努力しているかどうかも大きな要素になってきます。

区域内地権者の声を事業計画案に組み入れるためには、準備組合とは別の地権者の組合を設立して事業計画に地権者の意見を反映させる努力が必要です。次のような対策が考えられます。基本的に、準備組合が行っているのと同じ活動を異なる立場で行うことになるでしょう。

・地権者団体の設立(団体名の例:第2準備組合、対策会、考える会、勉強会、権利床30パーセントを実現する会など)

・区域内地権者アンケートの実施、結果の公表

・目標とする権利床割合の設定(再開発ビルの分配割合、地権者がどれだけ取得できるのか。例えば25パーセント、30パーセント、35パーセントなどの目標を設定する。)

・都市再開発手続きについて勉強会の開催

・地権者の疑問に答える相談窓口の設置、個別相談会の実施

・当該再開発事業に関する定期刊行物の発行(地権者による再開発ニュース)

・地権者が考える事業計画案の策定、その説明会

・地権者が考える従前資産評価の提示(鑑定士による鑑定評価書)

・地権者の意見を公表するウェブサイトの開設

・地権者の意見を議論するインターネット掲示板開設

・地権者の意見を議論するメーリングリスト開設

・準備組合に対する反対者の共同意見書・共同質問書の送付

・再開発準備組合に対する指導内容を行政当局に陳情、上申書の提出

・日本全国および近隣の再開発事例との比較対照レポートの作成、報告会、勉強会

・都市再開発法7条の2第2項の適用を目指す署名活動

都市再開発法7条の2第2項では、市街地再開発促進区域に関する都市計画決定告示があってから5年以内に、本組合設立及び事業計画認可がなされない場合は、市区町村つまり行政主導による第一種市街地再開発事業が施行されるべきことを規定しています。デベロッパーを優遇しすぎているような従来の事業計画案が一旦白紙になるということになります。

弁護士は法的代理人ですので、地権者の多数派意思形成に関与することはできませんが、都市再開発法や市街地再開発手続きの内容について法的アドバイスをすることはできます。どうしてもお困りであれば経験のある弁護士事務所に一度ご相談なさってみると良いでしょう。

※参考条文
都市再開発法7条の2(第一種市街地再開発事業等の施行)

1項 市街地再開発促進区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、当該区域内の宅地について、できる限り速やかに、第一種市街地再開発事業を施行する等により、高度利用地区等に関する都市計画及び当該市街地再開発促進区域に関する都市計画の目的を達成するよう努めなければならない。

2項 市町村は、市街地再開発促進区域に関する都市計画に係る都市計画法第二十条第一項の告示の日から起算して五年以内に、当該市街地再開発促進区域内の宅地について同法第二十九条第一項の許可がされておらず、又は第七条の九第一項、第十一条第一項若しくは第二項若しくは第五十条の二第一項の規定による認可に係る第一種市街地再開発事業の施行地区若しくは第百二十九条の三の規定による認定を受けた第百二十九条の二第一項の再開発事業の同条第五項第一号の再開発事業区域に含まれていない単位整備区については、施行の障害となる事由がない限り、第一種市街地再開発事業を施行するものとする。

3項 一の単位整備区の区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者が、国土交通省令で定めるところにより、その区域内の宅地について所有権又は借地権を有するすべての者の三分の二以上の同意(同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上となる場合に限る。)を得て、第一種市街地再開発事業を施行すべきことを市町村に対して要請したときは、当該市町村は、前項の期間内であつても、当該単位整備区について第一種市街地再開発事業を施行することができる。

4項 前二項の場合において、都道府県は、当該市町村と協議の上、前二項の規定による第一種市街地再開発事業を施行することができる。当該第一種市街地再開発事業が独立行政法人都市再生機構又は地方住宅供給公社の施行することができるものであるときは、これらの者についても、同様とする。

5項 第三項の場合において、所有権又は借地権が数人の共有に属する宅地又は借地があるときは、当該宅地又は借地について所有権を有する者又は借地権を有する者の数をそれぞれ一とみなし、同意した所有権を有する者の共有持分の割合の合計又は同意した借地権を有する者の共有持分の割合の合計をそれぞれ当該宅地又は借地について同意した者の数とみなし、当該宅地又は借地の地積に同意した所有権を有する者の共有持分の割合の合計又は同意した借地権を有する者の共有持分の割合の合計を乗じて得た面積を当該宅地又は借地について同意した者が所有する宅地の地積又は同意した者の借地の地積とみなす。

以上

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