一時保護措置からの解放手続き

行政|児童福祉法|児童相談所との協議交渉|審査請求|施設入所手続と対応

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問:

数日前,保育園に通う娘が,児童相談所に一時保護されてしまいました。オムツ替えの際に陰部から多量のおりものが出ていることを不審に思った職員が,保健所等に通報したことで,淋菌に感染していることが発覚したのが保護の経緯です。夫が性風俗店を利用した際に淋菌に感染したようで,何らかの拍子に淋菌が娘の陰部に付着し,感染してしまったと考えられます。念のため妻である私も検査をしましたが,淋菌は検出されませんでした。

夫は娘との性的接触を否定しております。医師の話では,稀にバスタオル等を介して感染することもあるとのことですが,児童相談所に理解してもらえるか不安です。娘を無事に自宅復帰させることは可能でしょうか。

回答:

1 現在は,お子様に対する性的虐待の疑いにより保護の必要性があると判断され,児童福祉法33条の規定に基づき「一時保護」となっている状況です。一時保護は、当該児童にどのような保護措置をすべきかを決めるための調査機関であり、その期間は2ヶ月間とされておりますが,必要に応じて延長が可能とされています。

2 お子様を自宅復帰させるためには,児童相談所との協議を通じて,保護の必要性が消失したことを理解してもらい,保護を解除して在宅指導に切り替えてもらうことが必要です。

そのためには,性的虐待の事実を明確に否認しつつ,性的な接触ではない他の要因による感染が医学的に考え得ることの裏付け(文献や医師の意見書等),そしてその具体的状況として考え得る日常的な場面を洗い出す作業(タオルの共用による感染の可能性,風呂場での非意図的な接触による感染の可能性,トイレの便座を介しての感染等)が求められるでしょう。

これを踏まえ,今後の再発防止策として,性風俗店の利用その他不特定多数人との性行為の自粛,定期的な性病検査の実施,タオルの使い分け,父親との入浴の自粛,父親と娘が二人きりになる状況の回避等,具体的な方策を検討し,誓約書等の形式で提示することになります。場合によっては,祖父母との同居による監督体制の強化を提案することもあり得るでしょう。

これにより,性的虐待の有無について全く否定はできないとしても,今後の再発防止の実効性が担保されていると評価されれば,在宅指導への切り替えを前提とした一時保護の解除が実現できる可能性が出てくると考えられます。

3 この過程において,一時保護期間の延長への同意を求められる可能性がありますが,その対応については,児童相談所側の対応状況に応じて柔軟に判断することが求められます。詳細は以下の解説をご参照ください。

解説:

1 一時保護と施設入所措置の制度について

⑴ 一時保護制度の概要

一時保護とは,虐待等の恐れなどがある児童について,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するために行なわれる処分です(児童福祉法33条1項)。

緊急かつ暫定的な措置ですから,児童本人やその保護者の同意がない場合でも,家庭裁判所の承認を経ず職権で実施することが可能とされています。

保護の期間については,「2か月間を超えない期間」(法33条3項)とされてはいますが,必要に応じて延長が可能とされております(同条4項)。

2か月を超えて一時保護を継続するためには,原則として親権者の同意が必要で(児童福祉法33条4項),親権者が同意をしない場合には,家庭裁判所の承認の審判が必要となります(同条5項)。

実務上は,多くの事案で一時保護期間が延長されているのが実情です。とはいえ,一時保護はあくまで,児童養護施設等に入所させる措置(法26条1項,法27条1項,同2項)等の適切な措置をとるまでの間,暫定的に認められる処分ですから,無限定に延長されることは少なく,多くの場合は1度の延長,つまり「4か月」程度の期間継続することが多いといえます。

⑵ 一時保護後の流れ

児童相談所は,上記の一時保護の期間中に当該児童に対する措置を決定することになりますが,その措置としては,大きく分けて①在宅指導と②児童養護施設等への入所や里親への委託等の措置があります。

①在宅指導とは,一時保護を解除してお子さんを自宅に帰宅させた上で,必要に応じて児童相談所が親権者に対して子の養育について面会や指導をすることです(児童福祉法27条1項2号)。

②これに対し,子を自宅に帰宅させず,児童養護施設等へ入所させる措置を決定する場合もあります(児童福祉法27条1項3号)。児童養護施設とは,保護者のない児童,虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて,これを養護し,あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設です(児童福祉法41条)。

親権者の意思とは無関係に行える一時保護とは異なり,児童養護施設への入所措置を行うにあたっては,親権者の承諾が必要となります。入所措置が親権者の意に反する場合は,家庭裁判所の承認の審判を得る必要があります(児童福祉法28条1項1号)。また,承認の審判を得ることができるのは,「その児童を虐待し,著しくその監護を怠り,その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」に限られます。

なお,施設入所に親権者が同意をした場合,入所期間に特段の制限が設けられておりません。少なくとも,数か月以上の長期間の入所措置が考えられるところであり,ケースによっては数年以上の長期間の入所という事態も否定できません。他方で,承認の審判がなされた場合の入所期間については,2年間の期間制限があります(同条2項)。ただし,一定の要件のもとでは,改めて家庭裁判所の審判を受けることで,さらなる延長が可能です。

⑶ 小括

以上のとおり,児童養護施設への入所に同意をしてしまった場合には,相当長期間,お子様を自宅で養育することが困難となってしまいます。

2 一時保護の早期解除に向けた対応

⑴ 審査請求

まず,児童相談所の一時保護の処分に対しては,行政不服審査法に基づく審査請求の申立てが可能です。

もっとも,一時保護の要件は,法律上「必要があるとき」としか制限されておらず,実務上は幅広く一時保護の必要性が認められています。また一時保護が2か月以内の暫定的な処分もあるため,審査請求に対する審査期間も考慮すれば、早期解決という点からは審査請求の実効性はそれほど高くありません。

そのため,現実的な対応としては,児童相談所の一時保護を前提とした上で,協議による保護の早期解除(在宅指導への切り替え)を目指すことになります。

⑵ 環境調整

保護の解除を実現するためには,要保護性を事後的に消失させるための活動,言い換えると,環境調整を行うことが必須となります。

勿論,当初から事実誤認による保護がなされている事案もないわけではありませんが,ほとんどの場合は,何かしらの原因があって,保護の必要性があると判断され,通報されていることを,親権者は認めざるを得ません。

その上で,児童相談所が問題視している状況を的確に汲み取った上で,同問題点を克服する手段を検討し,児童相談所側に積極的に提案することが肝要です。そのためには,児童相談所と敵対関係になるのは望ましくなく,むしろ,児童相談所側の指導に服して信頼関係,協力関係を築く必要があります。これにより,家庭復帰のための具体的条件を引き出しやすくなり,結果的に早期解除に至ると考えられます。

本件に即して言えば,まず,保護された原因が,お子様への性病感染と,そこから推認される性的虐待の可能性であると,比較的容易に想像できます。ご家庭内で(特にご主人において),お子様への性的接触がないと言い切れるのであれば,その点は明確に否定した上で,性的な接触ではない他の要因による感染が医学的に考え得ることの裏付け(文献や医師の意見書等),そしてその具体的状況として考え得る日常的な場面を洗い出す作業(タオルの共用による感染の可能性,風呂場での非意図的な接触による感染の可能性,トイレの便座を介しての感染等)が求められるでしょう。

これを踏まえ,今後の再発防止策として,性風俗店の利用その他不特定多数人との性行為の自粛,定期的な性病検査の実施,タオルの使い分け,父親との入浴の自粛,父親と娘が二人きりになる状況の回避等,具体的な方策を検討し,誓約書等の形式で提示することになります。場合によっては,祖父母との同居による監督体制の強化を提案することもあり得るでしょう。

これにより,性的虐待の有無について確定はできないとしても,今後の再発防止の実効性が担保されていると評価されれば,在宅指導への切り替えを前提とした一時保護の解除が実現できる可能性が出てくると考えられます。

⑶ 延長の回避の交渉

上記のとおり,2か月を超えて一時保護を継続するためには,原則として親権者の同意が必要であり(児童福祉法33条4項),親権者が同意をしない場合には,家庭裁判所の承認の審判が必要となります(同条5項)。

実務上,多くの事案で延長への同意を求められている現状からすれば,本件でも,調査に時間を要する等の理由で延長の同意を求められる可能性が十分に考えられます。

一時保護の延長を希望しないのであれば,「保護の延長には同意しない」旨をきちんと意思表示することが必要となります。児童相談所側からは,延長に同意しても,環境調整が整えば,期間満了前に自宅復帰が可能であるなどと説明されることがよくありますが,保護の延長に同意をするということは,さらに2ヶ月間保護されることを容認したことを意味しますから(条件付きでの承諾などあり得ない),延長を希望しないのであれば,まずはその意思を明確に示すことが必要です。

加えて,児童相談所が家庭裁判所に延長承認の審判の申立てをしないように交渉することも必要となります。すなわち,保護の必要性がないこと(性的虐待の事実がないこと)を,早期段階から具体的に説明する必要があります。

もっとも,児童相談所の人的リソースの問題もあり,虐待の有無や原因の調査,保護児童の心理状態の観察等にある程度の時間を要することも事実です。実際のところは,余程軽微な事案や事実誤認であることが明白な事案でない限り,「2か月で調査を尽くすのは困難」との理由で,親権者が同意をしなくとも,家庭裁判所で延長の承認の審判が出されるケースがほとんどという実情です。

延長の同意を求められた際は,このような実情も踏まえて,対応を検討することが求められます。たとえば,施設入所ではなく,自宅復帰を前提とした環境調整の方向で協議が具体的に進んでいる状況であれば,ある程度児童相談所に協力姿勢を示し,延長に同意するという方針もあり得るところです。反対に,何ら方針も示されずに徒に時間ばかりが経過しているような事案(児童相談所の動きが遅い場合)では,延長に同意する必要性が乏しいと考えられるでしょう。

3 施設入所の方針を明かされた場合の対応

一時保護の結果、児童相談所が施設入所の方針である場合には,まず親権者に対して施設入所の同意を求めて協議を実施するのが通常です。それでも親権者が同意しなかった場合,児童相談所としては,家庭裁判所に承認の審判を申し立てることになります(児童福祉法28条1項)。そのため,施設入所を回避するためには,まず児童相談所との協議の中で,方針を変えてもらうよう説得することになります。児童相談所が施設入所の方針を強く示している場合でも,親権者側で適切な環境調整を実施することで,方針変更に至る可能性もないわけではありません。

それでも家庭裁判所へ審判申立がされた場合には,家庭裁判所の審判の中で,「児童を虐待し,著しくその監護を怠り,その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」という施設入所の要件を満たさないことを積極的に述べることになります。

家庭裁判所は,児童福祉法28条1項による承認の審判を行う場合,親権者等の陳述の機会を設ける必要があります(家事事件手続法236条)。また,審判申立て後に,家庭裁判所の調査官が改めて事実等の調査を行いますので,必要に応じて調査官とも協議をすることになります。

基本的には,上記環境調整の項目で述べたとおり,性的虐待の事実を明確に否認した上で,再発防止策が具体的に整っており,その実効性が高いということを示し,「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する」とは言えないことを理解してもらうことになります。

以上

関連事例集

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参照条文

【参照条文】

●児童福祉法

第二十七条 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。

一 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。

二 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において、又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害者等相談支援事業に係る職員に指導させ、又は市町村、当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター、当該都道府県以外の障害者等相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に委託して指導させること。

三 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。

四 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。

② 都道府県は、肢体不自由のある児童又は重症心身障害児については、前項第三号の措置に代えて、指定発達支援医療機関に対し、これらの児童を入院させて障害児入所施設(第四十二条第二号に規定する医療型障害児入所施設に限る。)におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。

③ 都道府県知事は、少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置を採るにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。

④ 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。

⑤ 都道府県知事は、第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する場合には、児童相談所長の意見を聴かなければならない。

⑥ 都道府県知事は、政令の定めるところにより、第一項第一号から第三号までの措置(第三項の規定により採るもの及び第二十八条第一項第一号又は第二号ただし書の規定により採るものを除く。)若しくは第二項の措置を採る場合又は第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。

第二十八条 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。

一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。

二 保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。

② 前項第一号及び第二号ただし書の規定による措置の期間は、当該措置を開始した日から二年を超えてはならない。ただし、当該措置に係る保護者に対する指導措置(第二十七条第一項第二号の措置をいう。以下この条並びに第三十三条第二項及び第九項において同じ。)の効果等に照らし、当該措置を継続しなければ保護者がその児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれがあると認めるときは、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、当該期間を更新することができる。

③ 都道府県は、前項ただし書の規定による更新に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、当該措置の期間が満了した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き当該措置を採ることができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお当該措置を採る必要があると認めるときに限る。

④ 家庭裁判所は、第一項第一号若しくは第二号ただし書又は第二項ただし書の承認(以下「措置に関する承認」という。)の申立てがあつた場合は、都道府県に対し、期限を定めて、当該申立てに係る保護者に対する指導措置を採るよう勧告すること、当該申立てに係る保護者に対する指導措置に関し報告及び意見を求めること、又は当該申立てに係る児童及びその保護者に関する必要な資料の提出を求めることができる。

⑤ 家庭裁判所は、前項の規定による勧告を行つたときは、その旨を当該保護者に通知するものとする。

⑥ 家庭裁判所は、措置に関する承認の申立てに対する承認の審判をする場合において、当該措置の終了後の家庭その他の環境の調整を行うため当該保護者に対する指導措置を採ることが相当であると認めるときは、都道府県に対し、当該指導措置を採るよう勧告することができる。

⑦ 家庭裁判所は、第四項の規定による勧告を行つた場合において、措置に関する承認の申立てを却下する審判をするときであつて、家庭その他の環境の調整を行うため当該勧告に係る当該保護者に対する指導措置を採ることが相当であると認めるときは、都道府県に対し、当該指導措置を採るよう勧告することができる。

⑧ 第五項の規定は、前二項の規定による勧告について準用する。

三十三条 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

② 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第二十七条第一項又は第二項の措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。)を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。

③ 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。

④ 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。

⑤ 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。

⑥ 児童相談所長又は都道府県知事は、前項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、一時保護を開始した日から二月を経過した後又は同項の規定により引き続き一時保護を行つた後二月を経過した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き一時保護を行うことができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお引き続き一時保護を行う必要があると認めるときに限る。

⑦ 前項本文の規定により引き続き一時保護を行つた場合において、第五項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した場合における同項の規定の適用については、同項中「引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた」とあるのは、「引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した」とする。

⑧ 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、次に掲げる措置を採るに至るまで、引き続き一時保護を行い、又は一時保護を行わせることができる。

一 第三十一条第四項の規定による措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。

二 児童自立生活援助の実施が適当であると認める満二十歳未満義務教育終了児童等は、これをその実施に係る都道府県知事に報告すること。

⑨ 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第二項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、第三十一条第四項の規定による措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。第十一項において同じ。)を採るに至るまで、児童相談所長をして、引き続き一時保護を行わせ、又は一時保護を行うことを委託させることができる。

⑩ 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第八項各号に掲げる措置を採るに至るまで、保護延長者(児童以外の満二十歳に満たない者のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。以下この項及び次項において同じ。)の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、保護延長者の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

一 満十八歳に満たないときにされた措置に関する承認の申立てに係る児童であつた者であつて、当該申立てに対する審判が確定していないもの又は当該申立てに対する承認の審判がなされた後において第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書若しくは第二項ただし書の規定による措置が採られていないもの

二 第三十一条第二項から第四項までの規定による措置が採られている者(前号に掲げる者を除く。)

⑪ 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第三十一条第四項の規定による措置を採るに至るまで、保護延長者の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、保護延長者の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。

⑫ 第八項から前項までの規定による一時保護は、この法律の適用については、第一項又は第二項の規定による一時保護とみなす。