法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月4日改訂)
各論12、境界確認を自分でやる。
質問:
自宅土地を売却するため測量しようと隣人に立ち会ってもらったのですが、境界について双方の意見が食い違ってしまい、境界確認書を作成できませんでした。境界が決まらないと売却できないと不動産屋さんから言われ困っています。境界の確認の訴訟を考えていますがどうしたらよいでしょうか。
回答:
1. 境界確認訴訟の前に平成18年に新設されました筆界特定制度を検討してはどうでしょうか。
解説
筆界(境界)という制度がどうしてあるかを簡単に説明しておきます。
大袈裟かも知れませんがこれも「法の支配」の現れととらえることができます。法の支配の理念は、前述のように私有財産制と私的自治の原則という基本的社会構造として具現化されます。私有財産制は私的財産の譲渡の自由を大前提としますから私有財産の中心である不動産の取引の安全が必然的に要請されることになります。私的自治の原則から言えば不動産取引の方式、内容は契約自由の原則から当事者間の自由な意思決定に任せてしまえばいいはずですが(民法176条)、万が一不動産の占有者、権利の外観を有する者が無権利者であった場合(所有権者でなかった場合)、取引は混乱し最終的に不動産取引全体が信用性を失い私有財産制の基礎を揺るがしかねません。そこで、不動産取引の安全確保をどうするかということで、明治維新になった時、国家が積極的に取引に介入し不動産について日本全国のすべての不動産を区割り(分筆)し各々の土地にあまねく地番(例、東京都中央区銀座4丁目100番。住居表示とは別です)という名前をつけてその所有者、権利者を公開するという登記制度を作り、不動産取引に関与する者が不測の損害を被らないようにしたのです。勿論、私的自治の原則(契約自由の原則)が基本ですから登記を売買等の成立要件・効力要件にしないで、対抗要件として位置付けています(民法177条。詳しくは事務所事例集NO712号参照)。この地番によって特定された不動産と隣地の境界線を、筆界というのです。したがって筆界は、私有財産制を保障するために国家が特に定めた登記制度から必然的に生じるもので国家が決めた公の境界で私有財産制を側面から維持するものなのです。いわば国家間の国境のようなものですから、当然に、私人は勝手に変更できない訳です。以下詳論します。
1. 民法は、土地について登記制度を設け、不動産登記簿で権利関係を明らかにするという制度をとっています。そして、不動産の登記については不動産登記法で一筆の土地ごとに地番をつけることになっています。そこで、土地については一筆の土地が一つの土地となり、地番(筆)がことなれば別の土地となり、地番が異なる隣接する土地の境界線が問題となります。この境界は、国家が作った公的な不動産登記簿上の境界線という意味で,これを筆界(ひっかい)といいます(公的境界線)。
2. 土地の境界には、もう一つ、隣接する土地所有権範囲を決める境界線があります(私的境界線)。
この2つの境界線は通常同一ですが,土地の一部についての時効,売買,測量過誤等により不一致になる場合があり,必ずしも同一であるとは限りません。
3. 公的境界線である「筆界」に争いがある場合は,最終的に境界(筆界)確定訴訟いう裁判になります。しかし,平成18年に訴訟によらず暫定的に不明となった「筆界」を定める筆界特定制度が創設,施行されましたので,この制度を利用して境界を定めることをまず考えるべきでしょう。ただし、筆界特定制度により結論が出ても,不服であれば、「筆界」確定訴訟及び私的境界線を定める土地所有権確認訴訟を独自に提起することが可能です。
4 問題点の指摘。
以上が概略の説明ですが問題になる点を説明します。
@ 筆界と所有権の範囲の問題が違うということは、理解できたでしょうか。理解しにくいかもしれませんが、「筆界」は,国家が管理する不動産登記簿の表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において,当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいいます(不動産登記法123条1号)。これは不動産登記簿に登記されたときにその土地の範囲を公的に区画するものとして定められた線です。公的な境界線といっていいと思います。これに対し、所有権の範囲を定める境界は、隣接する土地との所有権の範囲を実質的に画する線(私的境界線といっていいでしょう)です(両者は別のものですが一致することが多いでしょう)。
このように、筆界は公的な制度で、国家が決めたものですから所有者同士の合意等によって勝手に変更することはできないわけです。
B 筆界は国が決めるものであれば、筆界の確定に隣人の承諾は不要のようにも思えます。たしかに、筆界は法務局にある公図や測量図から判明する場合が多いでしょう。しかし、正確な測量図がない場合もありますし、測量当時確定した筆界を示す界標が時の流れ,天災,事変等により不明になっている場合があります。このような土地につては、不動産を販売する場合に筆界を明らかにしておく必要があり、改めて土地を測量しておく必要があります。そして測量をする場合は、隣人に確認を求める必要がでてくるのです。公的境界線であり所有権の範囲を決めるものでなければ隣人も確定に応じてくれてもいいように思いますが,当事者が筆界確定に同意し新たに界標を打ち込みますと,あとで特別な反証を挙げない限り所有権の範囲についても同意したという反射的効果があり,隣人としても安易に同意できないわけです。
C当事者間で協議が出来ない場合には従来は,境界確定訴訟で決着をつけていました。しかし,明治時代に決めた公的な筆界を再現するのですから手続がかなり大変です。和解で解決ができませんし、四方に囲まれた土地の筆界を再度確定しそこから当該土地の面積,界標地点を確定していかなければならず費用も時間もかかります。
そこでこのような不都合を避けるため平成18年1月20日に不動産登記法の改正として筆界特定制度というものが創設,施行されました。
5 筆界特定制度とは,土地の所有権の登記名義人等の申請に基づいて,法務局(地方法務局)の長が指定する筆界特定登記官が,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,土地の筆界の現地における位置を行政庁が暫定的に特定する制度です。この制度により,裁判によらず適正,公平,迅速な筆界確定が出来ることになり,当事者の費用的負担も軽くなりました。なお,この制度による特定は暫定的なものであり特定の結果に不服がある場合には,勿論筆界の確定を求める民事訴訟ができます・不動産登記法147条148条)。本例権利の争いは,裁判を受ける権利(憲法32条)が認められる以上裁判所の管轄に属するので,行政庁が最終判断は出来ないからです。
特定方法は,筆界調査委員という専門家が,これを補助する法務局の職員とともに,土地の実地調査や測量,利害関係人の意見聴取を含むさまざまな調査を行った上,筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し,筆界特定登記官がその意見を踏まえて筆界を特定します。
6 申請方法
筆界特定の申請を行えるのは,土地の所有者で、対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官に対して,筆界特定を申請します。申請に際しては,申請書に必要な事項を記載し,添付書類とともに提出します。費用は、対象土地の価額によって決まる申請手数料と(対象土地である2筆の合計額が4,000万円の場合,申請手数料は8,000円になります。)、手続の中で、測量が必要となった場合の測量費用(面積により異なりますが,数十万円程度から負担します。)がかかります。
申請書の雛形は、法務省のホームページで公開されています。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji104-1.pdf
7 効果
@筆界特定がされると,筆界特定の対象となった土地を管轄する登記所において筆界特定書が保管されるので,特定の結果が,筆界特定書の写しの交付請求等によって,公開されます。また,筆界特定の対象となった土地の登記記録に,筆界特定がされた旨が記録されます。
しかし、境界確定の訴えがあった場合,当該判決で確定した筆界が優先し,これに抵触する筆界特定は効力を失います(不動産登記法148条)。
筆界特定により相手方が異議を申し出ないようであれば,筆界確定訴訟と同じように専門家による現地調査,測量,利害関係者の意見聴取を行いますので,筆界の信用性は実質的に高く筆界特定を前提に不動産取引は促進されることになるでしょう。
≪条文参照≫
憲法
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
民法
(物権の設定及び移転)
第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法
(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
不動産登記法
(定義)
第百二十三条 この章において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において,当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
二 筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について,この章の定めるところにより,筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは,その位置の範囲を特定すること)をいう。
三 対象土地 筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する一筆の土地及び他の土地をいう。
四 関係土地 対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって,筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するものをいう。
五 所有権登記名義人等 所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人,所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者,表題登記がない土地にあっては所有者をいい,所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。
(筆界特定の事務)
第百二十四条 筆界特定の事務は,対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどる。
2 第六条第二項及び第三項の規定は,筆界特定の事務について準用する。この場合において,同条第二項中「不動産」とあるのは「対象土地」と,「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と,「法務局若しくは地方法務局」とあるのは「法務局」と,同条第三項中「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と読み替えるものとする。
(筆界特定登記官)
第百二十五条 筆界特定は,筆界特定登記官(登記官のうちから,法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が行う。
(筆界調査委員)
第百二十七条 法務局及び地方法務局に,筆界特定について必要な事実の調査を行い,筆界特定登記官に意見を提出させるため,筆界調査委員若干人を置く。
2 筆界調査委員は,前項の職務を行うのに必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから,法務局又は地方法務局の長が任命する。
3 筆界調査委員の任期は,二年とする。
4 筆界調査委員は,再任されることができる。
5 筆界調査委員は,非常勤とする。
(筆界特定の申請)
第百三十一条 土地の所有権登記名義人等は,筆界特定登記官に対し,当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について,筆界特定の申請をすることができる。
2 筆界特定の申請は,次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 申請の趣旨
二 筆界特定の申請人の氏名又は名称及び住所
三 対象土地に係る第三十四条第一項第一号及び第二号に掲げる事項(表題登記がない土地にあっては,同項第一号に掲げる事項)
四 対象土地について筆界特定を必要とする理由
五 前各号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項
3 筆界特定の申請人は,政令で定めるところにより,手数料を納付しなければならない。
4 第十八条の規定は,筆界特定の申請について準用する。この場合において,同条中「不動産を識別するために必要な事項,申請人の氏名又は名称,登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)」とあるのは「第百三十一条第二項各号に掲げる事項に係る情報(第二号,第百三十二条第一項第四号及び第百五十条において「筆界特定申請情報」という。)」と,「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と,同条第二号中「申請情報」とあるのは「筆界特定申請情報」と読み替えるものとする。
(申請の却下)
第百三十二条 筆界特定登記官は,次に掲げる場合には,理由を付した決定で,筆界特定の申請を却下しなければならない。ただし,当該申請の不備が補正することができるものである場合において,筆界特定登記官が定めた相当の期間内に,筆界特定の申請人がこれを補正したときは,この限りでない。
一 対象土地の所在地が当該申請を受けた法務局又は地方法務局の管轄に属しないとき。
二 申請の権限を有しない者の申請によるとき。
三 申請が前条第二項の規定に違反するとき。
四 筆界特定申請情報の提供の方法がこの法律に基づく命令の規定により定められた方式に適合しないとき。
五 申請が対象土地の所有権の境界の特定その他筆界特定以外の事項を目的とするものと認められるとき。
六 対象土地の筆界について,既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき。
七 対象土地の筆界について,既に筆界特定登記官による筆界特定がされているとき。ただし,対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除く。
八 手数料を納付しないとき。
九 第百四十六条第五項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないとき。
2 前項の規定による筆界特定の申請の却下は,登記官の処分とみなす。
(筆界調査委員の指定等)
第百三十四条 法務局又は地方法務局の長は,前条第一項本文の規定による公告及び通知がされたときは,対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を行うべき筆界調査委員を指定しなければならない。
2 次の各号のいずれかに該当する者は,前項の筆界調査委員に指定することができない。
一 対象土地又は関係土地のうちいずれかの土地の所有権の登記名義人(仮登記の登記名義人を含む。以下この号において同じ。),表題部所有者若しくは所有者又は所有権以外の権利の登記名義人若しくは当該権利を有する者
二 前号に掲げる者の配偶者又は四親等内の親族(配偶者又は四親等内の親族であった者を含む。次号において同じ。)
三 第一号に掲げる者の代理人若しくは代表者(代理人又は代表者であった者を含む。)又はその配偶者若しくは四親等内の親族
3 第一項の規定による指定を受けた筆界調査委員が数人あるときは,共同してその職務を行う。ただし,筆界特定登記官の許可を得て,それぞれ単独にその職務を行い,又は職務を分掌することができる。
4 法務局又は地方法務局の長は,その職員に,筆界調査委員による事実の調査を補助させることができる。
(筆界調査委員による事実の調査)
第百三十五条 筆界調査委員は,前条第一項の規定による指定を受けたときは,対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査をすること,筆界特定の申請人若しくは関係人又はその他の者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査をすることができる。
2 筆界調査委員は,前項の事実の調査に当たっては,筆界特定が対象土地の所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならない。
(意見又は資料の提出)
第百三十九条 筆界特定の申請があったときは,筆界特定の申請人及び関係人は,筆界特定登記官に対し,対象土地の筆界について,意見又は資料を提出することができる。この場合において,筆界特定登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは,その期間内にこれを提出しなければならない。
2 前項の規定による意見又は資料の提出は,電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により行うことができる。
(意見聴取等の期日)
第百四十条 筆界特定の申請があったときは,筆界特定登記官は,第百三十三条第一項本文の規定による公告をした時から筆界特定をするまでの間に,筆界特定の申請人及び関係人に対し,あらかじめ期日及び場所を通知して,対象土地の筆界について,意見を述べ,又は資料(電磁的記録を含む。)を提出する機会を与えなければならない。
2 筆界特定登記官は,前項の期日において,適当と認める者に,参考人としてその知っている事実を陳述させることができる。
3 筆界調査委員は,第一項の期日に立ち会うものとする。この場合において,筆界調査委員は,筆界特定登記官の許可を得て,筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人に対し質問を発することができる。
4 筆界特定登記官は,第一項の期日の経過を記載した調書を作成し,当該調書において当該期日における筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
5 前項の調書は,電磁的記録をもって作成することができる。
6 第百三十三条第二項の規定は,第一項の規定による通知について準用する。
(筆界調査委員の意見の提出)
第百四十二条 筆界調査委員は,第百四十条第一項の期日の後,対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を終了したときは,遅滞なく,筆界特定登記官に対し,対象土地の筆界特定についての意見を提出しなければならない。
(筆界特定)
第百四十三条 筆界特定登記官は,前条の規定により筆界調査委員の意見が提出されたときは,その意見を踏まえ,登記記録,地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容,対象土地及び関係土地の地形,地目,面積及び形状並びに工作物,囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して,対象土地の筆界特定をし,その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。
2 筆界特定書においては,図面及び図面上の点の現地における位置を示す方法として法務省令で定めるものにより,筆界特定の内容を表示しなければならない。
3 筆界特定書は,電磁的記録をもって作成することができる。
(筆界特定の通知等)
第百四十四条 筆界特定登記官は,筆界特定をしたときは,遅滞なく,筆界特定の申請人に対し,筆界特定書の写しを交付する方法(筆界特定書が電磁的記録をもって作成されているときは,法務省令で定める方法)により当該筆界特定書の内容を通知するとともに,法務省令で定めるところにより,筆界特定をした旨を公告し,かつ,関係人に通知しなければならない。
2 第百三十三条第二項の規定は,前項の規定による通知について準用する。
(筆界特定手続記録の保管)
第百四十五条 前条第一項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされた場合における筆界特定の手続の記録(以下「筆界特定手続記録」という。)は,対象土地の所在地を管轄する登記所において保管する。
(筆界確定訴訟における釈明処分の特則)
第百四十七条 筆界特定がされた場合において,当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起されたときは,裁判所は,当該訴えに係る訴訟において,訴訟関係を明瞭にするため,登記官に対し,当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができる。民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起された後,当該訴えに係る筆界について筆界特定がされたときも,同様とする。
(筆界確定訴訟の判決との関係)
第百四十八条 筆界特定がされた場合において,当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは,当該筆界特定は,当該判決と抵触する範囲において,その効力を失う。
(筆界特定書等の写しの交付等)
第百四十九条 何人も,登記官に対し,手数料を納付して,筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部(以下この条及び第百五十三条において「筆界特定書等」という。)の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは,当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。
2 何人も,登記官に対し,手数料を納付して,筆界特定手続記録(電磁的記録にあっては,記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。ただし,筆界特定書等以外のものについては,請求人が利害関係を有する部分に限る。
3 第百十九条第三項及び第四項の規定は,前二項の手数料について準用する。