法の支配と民事訴訟実務入門(平成30年7月15日改訂)
各論15、欠陥住宅についての建築紛争を自分でやる。
瑕疵担保責任、除斥期間、ADRなど。
質問
建売住宅を購入したのですが、雨漏り、ドアが閉まらない、など多数の欠陥があり、売主の工事のやり直しを請求しているのですが、一向に話し合いが進みません。法的な手続きを取りたいと思いますので、手続きについて教えてください。
回答
1. ご質問の建売住宅の購入は、法的に言うと売買契約(民法555条)に該当し、欠陥がある住宅については理論上瑕疵担保責任(民法570条、566条準用 期間1年)の追及が可能ですが、民事訴訟手続きの前にまずは裁判外紛争解決手続(これをADRと言います。)を利用することをお勧めします。あっせん、調停、仲裁制度です。貴方の場合民事調停が適切でしょう。
2. 本件のように建売ではなく注文住宅である請負契約の場合も同様に考えられますが、責任追及の期間(法634条、637条。5年、10年、 時効期間ではなく除斥期間と言われています)ADRの制度の利用方法について売買と法的構成がことなる関係上差異が生じます。
3. 平成19年4月ADR法が施行され民間にも裁判外紛争解決手続き機関設立を促進しています。
解説
欠陥住宅問題の基本的考え方を説明します。
建売でも注文住宅でも最終的責任追及は解除による代金返還、瑕疵による損害賠償の請求訴訟、裁判ということになります。しかし、住宅の購入は、かなり高額な買い物で、建物は経済社会生活上不可欠なものであり購入者の保護の必要性が高いですし、瑕疵自体の判断が一般の人には難しいことが多く専門家の意見を聴くことが必要になること、さらには瑕疵の内容が、外部から分かりにくく責任追及まで時間が経過しやすいこと、等特殊な問題があります。従って以上の点を考慮し責任追及も考える必要がありあます。
まず売買と請負における住宅建設者の責任の性質について説明します。
売買とは売主が買主にある財産権を移転しその財産権対する対価を買主が支払う有償、双務契約ですが、同じ有償、双務契約である請負は、請負人がある仕事の完成を約束して労務を提供し、注文者はその労務を提供した結果に対して報酬を支払うものです。すなわち、請負は仕事完成のための労務の提供に対する対価ですが、売買は財産権に対する対価を支払う所に特色があります。売主、請負人の責任は、基本的に財産権を相手方に渡し、仕事完成のための労務を提供すれば(履行自体しなければもちろん債務不履行です)基本的に果たしたことになりますが、目的物、仕事の結果に瑕疵、不備がある場合買主、注文者が相応する対価を支払っているので法が公平上売主、請負人に瑕疵による責任を認めたのが瑕疵担保責任です。債務不履行責任は履行自体がないので瑕疵担保責任とは異なるわけです。瑕疵担保責任であろうが、債務不履行責任であろうがそんなこと関係ないと思うかも知れませんが、責任追及の期間の点で差異が生じます。瑕疵担保責任の責任追及期間は1年から10年まであり(売買1年、請負5年、10年)この性質は時効期間ではなく、除斥期間と言われています。時効は、売主、請負人の代金請求権のように本来あるべき権利行使の事実状態を尊重して権利消滅を認めるので中断、時効援用権、援用権の濫用の問題がありますが、除斥期間は法が特別認めた権利(担保責任追及権)について早期に権利確定のための制度ですから中断、援用などありませんし期間が経過すれば当然消滅するものです。従って、期間内に権利行使しなければなりません。しかし民法上は、これらの権利消滅について除斥期間と明言しているものはなく権利によっては時効と書いてあることが多く昔から解釈上争いがありますが判断の基準は、私的自治の原則に基づき契約等により本来有する権利の場合が時効期間、法が特に公平上などの理由により権利として認めたものが除斥期間ということになります。前述した遺留分請求権、取消権(法126条)、詐害行為取消権の権利行使期間は除斥期間です。不法行為債権は、契約ではありませんが私的自治の原則の基本的内容(過失責任の原則)であり3年だけでなく20年も時効期間と解釈すべきでしょう(判例は20年について除斥期間としています。国の種々の不法行為責任で援用等が問題となります)。瑕疵担保責任の期間を短縮する特約を業者が前もってつける場合がありますが、公平の原理、民法639,640の趣旨から認められないことが多いでしょう。欠陥住宅の問題はかなり長期間経過後に判明するので、前もって消滅期間の説明をいたしました。
次に、住宅の高額、生活必需性、瑕疵解明の専門性から裁判外紛争解決手続(ADR。平成19年4月ADR法が施行されています)が活用されています。具体的にはあっせん、調停、仲裁制度です。住宅の売り主、請負人は、業務上住宅の専門的知識に精通しており他方、住宅購入者は一市民のことが多く、専門的知識が不足しており事実上責任追及が困難になる危険が存在します。法の支配の理念は適正公平な法社会秩序の形成にありますから、実質的に不平等であり時間と労力を要する訴訟を住宅購入者側に要求することは法の理想に反することになります。裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律、通称ADR法の制度趣旨から国家は紛争当事者の実質的公平、適正で迅速、低廉な解決を目指し裁判外手続において法的専門家、住宅の専門知識を有する担当者を用意して任務を遂行する義務を有することになります。ところで、あっせん、調停、仲裁の違いですが基本的に当事者の話し合い、合意を基本としますが、あっせん、調停(事件の難易性により当事者が選択しますが、あっせんは調停と違い当事者の和解合意に導き促すことを基本としあっせん案は基本的にありませんから簡易な手続きになります)は当事者の合意がなくても利用できますが、解決案に双方同意しなければ効力を生じません。仲裁は当事者が仲裁制度を利用する仲裁合意がないと開始されませんが、手続きが開始されると仲裁案に当事者は拘束されます。仲裁は解決された場合確定判決と同じ効力が認められますが、準司法機関の行うあっせん、調停には裁判と同じ効力がなく公正証書を別途作成することになります。勿論、裁判所の民事調停は判決とおなじ効力が認められます(民事調停法16条、民訴267条)。さらに、仲裁以外のあっせん、調停(民事調停は除く。民法153条)は請負代金、売買代金の時効中断の効力はありません(民法147条以下)ので注意が必要です。以下詳論します。
解説
1 紛争を解決する手続として考えられるもの
欠陥住宅の問題の解決として裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することができます。しかし、欠陥住宅の問題は建築の専門家でないと判断できない問題を含んでいることがあり、裁判所に訴訟を提起してもまず、第1回目の裁判で裁判官から民事調停で話し合ってみてください、といわれ調停に付されることがしばしばあります(民事調停法20)。調停に付された場合、調停委員に建築士等の建築の専門家が選任されますから妥当な結論が示される場合が多いとされています。
訴訟を提起してから調停に付されると時間もかかりますから、初めから調停を申し立てたほうが良いといえるでしょう。
また、簡易裁判所の民事調停のほかにも弁護士会の紛争解決センターによる仲裁という制度もあります(仲裁合意が必要です)。また、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、住宅性能表示制度を利用した評価住宅(国に登録した機関が発行する9項目についての建設住宅性能評価書がある場合です。大手の新築マンション、一戸建てなどは評価書が付いていることが多いと思います。建設会社が評価料を支払い取得します)の場合は各弁護士会に設置されている住宅紛争審査会によるあっせん、調停、仲裁という制度もあります。この制度は、売買、請負に関係なく利用できますが、評価住宅という制限があります。
参考(住宅紛争審査会URL)
https://www.toben.or.jp/bengoshi/jyuufun/
貴方の建売を購入しているので法的には売買契約ということになりますが、請負契約の場合は、「中央建設工事紛争審査会」のあっせん、調停、仲裁があります。この機関は、建設工事の請負契約についての紛争について公平、迅速、低廉に解決するため建設業法に基づき設置された公的準司法機関です。あっせん、調停、仲裁の3方式があります(建設業法25条以下)。各都道府県に設置されており勿論一般の人も利用することができます。建物売買、設計契約、近隣紛争のように請負契約自体に関連性がないものは対象になりません。勿論、これらの制度を利用する場合弁護士を代理人とすることもできます。
参考(中央建設工事紛争審査会)
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000071.html
このような制度をまず検討し、それでも解決できないという場合に裁判、訴訟を検討するのが良いでしょう。
2 欠陥住宅に関する損害賠償も通常の訴訟と変わりありません。ただ、建築という特殊性から専門的な知識が必要となること、欠陥の個所が複雑、多岐にわたる場合がありその原因の特定が困難なことなどから原告として主張、立証責任を果たすことが厳しい場合が予測されるという特殊性があります。その意味では、本人訴訟にはなじまない事案と言えるかもしれません。その意味でも、民事調停などの訴訟外の手段を検討することをお勧めします。
3 民事調停等の手続きを利用するにしろ、欠陥住宅の場合の損害賠償ができる根拠についての法律上の根拠について理解しておく必要があります。
まず、住宅の購入する場合の法律関係としては、売買契約と請負契約が考えられます。建売住宅のように既成の住宅を購入する場合は建物の売買契約となります。また、注文住宅のように設計の段階から注文して建物を完成してもらう場合を請負契約と言います。売買契約に関しては民法555条から585条までに規定されていますが、欠陥住宅で問題となるのは570条の規定する売主の瑕疵担保責任です。570条によれば売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合はその瑕疵のため契約の目的を達せられない場合は契約の解除、それ以外の場合は損害賠償の請求ができます。これに対し請負契約については民法632条以下に規定がありますが、問題となるのは634条以下の請負人の瑕疵担保責任の規定です。そこで、裁判をする場合は、形式上売買なのか請負なのかどちらの契約かを明らかにしておくと裁判官としても分かりやすいでしょう。ところで、民法の条文には、請負の場合には注文者は請負人に対し、瑕疵の修補の請求あるいは損害賠償の請求ができるが、契約の解除はできないと規定されています(民635条但し書き)。このように、条文だけをみると売買と、請負では欠陥住宅の場合の扱いに大きな違いがあるように読めますが、建売か注文住宅かで結論に大きな違いがあるのはおかしなことですので、結論とすると両者の間にあまり違いがないように取り扱われています。
すなわち、契約の解除まではその瑕疵の状態にもよりますが原則として認められないこと(もちろん瑕疵が重大で建物として利用できないような場合は契約の解除ができる場合もるでしょう)、瑕疵がある場合は通常は瑕疵修補、損害賠償の請求(瑕疵を修補するのにかかる費用についての賠償)が認められています。ただし、裁判の場合は瑕疵修補を請求するということは強制執行の関係もありできないと考えて良いでしょうから、損害賠償として請求することになります。
瑕疵担保責任という言葉はあまり聞きなれないので、簡単に説明します。売主や請負人は建物を引き渡すことによって債務は履行したと考えるのが民法の考え方です。従って、売主や請負人には債務を履行していない責任はないことになります。しかし、お金をもらっている以上建物に欠陥があった場合、責任を持って欠陥のない状態にする責任があるとすることは公平の観点からは当然のことです。そこで民法は瑕疵担保責任という法律上の責任を定め、売主や注文者に責任はなくても瑕疵があった以上は其の瑕疵について、責任を負うことにしたのです。従って、瑕疵担保責任を追及する買主や注文者は、契約の存在と履行された物に瑕疵があったこと、瑕疵による損害額を主張立証して裁判をすることになります。
4 訴状の書き方
訴状は次のようなものになります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
訴状
平成 年 月 日
00地方裁判所00支部 御中
〒 住 所 (送達場所)
原告
〒 住 所
被告
損害賠償等請求事件
訴訟物の価額 金 万 円
貼用印紙額 金 万 円
請 求 の 趣 旨
1 被告は,原告に対し,金 万 円及びこれに対する平成 年 月 にちから支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
請 求 の 原 因
第1 請負契約
原告は、被告に対し平成 年 月 日、次のとおり後記の建物(以下「本件建物」という)の建築を注文し、被告はこれを請け負った(甲1 請負契約書)。
請負代金 金 万円
完成引き渡し時期 平成19年6月30日
注文した建物 所在
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 u 、2階 u
第2 建物の瑕疵
被告は、本件建物を完成し、平成 年 月 日原告に対し引き渡した。しかし本件建物には次のとおり隠れた瑕疵があった。
1 雨漏り。本年建物の別紙図面記載の@からDまでの個所から雨漏りがあった。
2 扉の開閉ができないこと。本件建物の別紙図面記載のEからNまでの扉10枚並びにOからSでの窓5枚の開閉が困難であった。
3 壁紙のはがれや塗装の不備。本件建物別紙図面のAからDと記載した部分の壁紙がはがれたり、塗装されていない個所があった。
第3 損害
原告は、被告に対し、平成 年 月 日前項記載の瑕疵ついての修補を請求した。しかし、被告はこれに応じなかったため、原告は他の業者に依頼しこれらの瑕疵の修補の費用について見積もりをとり、瑕疵の修補としての費用を計算し、その旨同年 月 日被告に対して連絡し、その後見積もりを依頼した業者に瑕疵の修補を依頼し、 月 日瑕疵の修補代金として金 円を支払った。これらの代金は瑕疵担保責任を負う被告が負担すべき金額である。
第5 結論
よって、原告は被告に対し本件建物の瑕疵修補による損害金として金 円の支払いとこれに対する原告が、同損害金と同額の工事代金を他の業者に支払った平成 年 月 日から完済までの遅延損害金として民法所定の利率に基づく金員の支払いを求めて本訴を提起する。
立 証 方 法
甲1 請負契約書
甲2 瑕疵修補の見積書
甲3 領収書(工事代金)
甲4 本件建物の瑕疵の写真
付 属 書 類
1 訴状副本 1通
2 甲号証正副本
(別紙) 本件建物の瑕疵についての図面
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5 訴状の書き方
@ 訴状の構成は、他の事件と同様まず表題的なものとして、裁判所に提出する日付、宛名として提出する裁判所、当事者の表示として原告と被告の住所を記載します。提出する裁判所は管轄裁判所を記載します。原則は被告の住所地の地方裁判所ですが、損害賠償のような金銭債務は持参債務と言って債務の履行地は債権者の住所地ですので、原告の住所地を管轄する裁判所にも管轄があります。
A 事件名、訴額と貼用印紙額の記載
事件名は、原告が自由に付けて良いのですが、損害賠償等請求事件とするのが通常です。訴額は、返還請求する元金の金額となります。訴額によって貼用印紙額が決められていますので、裁判所に確認してください。必要な印紙を訴状に貼って提出することになります。なお、訴額の記載は、空欄にしておいて裁判所の受付で確認してから記載するほうが、間違いないでしょう。
B 以上が表題的な部分で、次に本文として「請求の趣旨」「請求の理由」となります。まず請求の趣旨には、原告が裁判所に求める判決の主文を記載します。裁判所は原告が求める判決について理由があるかないかを判断することとなっています。原告としては、お金を払えという判決をしてもらうことになりますので、端的にその旨記載する必要があります。ここでは、何のお金かを記載する必要はありませません。大切なことは強制執行できるような主文を判決してもらうということです。
そこで請求の趣旨には、損害金の合計を記載し、それに対する遅延損害金を割合で記載して、その金額を支払え、と判決で命令してもらうことを記載します。起算日が不明の場合は、「訴状送達の翌日から支払い済みまで」と記載しても良いでしょう。
C 次に請求の原因には、原告が記載した請求の趣旨の根拠となる事実を記載します。 本件の場合は、1請負契約の成立、2仕事の完成、3建物の瑕疵があること、4瑕疵による損害について、以上4点の事実に基づき、損害賠償を請求する権利が原告にあるか否かの争いになります。そのような権利が発生する事実があるか否かを裁判所が判断するのが裁判です。瑕疵がなぜ、だれの責任で発生したのか主張する必要はありません。
D 訴状作成の際問題となるのは、瑕疵の状態をどのように特定して裁判所に理解してもらうかという点でしょう。図面や写真を利用してできるだけ細かく主張立証する必要があります。特に修補をした後で請求する場合は、裁判時には瑕疵の部分はなくなっているはずですから、どのような瑕疵があったのかは、証拠として保存しておく必要があります。
E 訴状の提出
訴状が完成したら裁判所に提出すること他の事件と同じです。訴状と一緒に証拠書類の写しを提出することになっています。証拠は裁判が始まってからも提出できますが、あらかじめ提出できるものは早く提出しておくことになっています。
4 裁判が始まるとどうなるか
裁判手続きについては、他の訴訟事件と同様です。被告が訴状の請求の趣旨に記載されている事実を認めれば判決ができることになり裁判は終結して判決の言い渡しとなります。
被告が、事実を否認した場合、判決をするには否認した事実について証拠が必要になります。
≪条文参照≫
民法
第五百六十六条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
(売主の瑕疵担保責任)
第五百七十条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
第九節 請負
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
(報酬の支払時期)
第六百三十三条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
(請負人の担保責任)
第六百三十四条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。
第六百三十五条 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
(請負人の担保責任に関する規定の不適用)
第六百三十六条 前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
(請負人の担保責任の存続期間)
第六百三十七条 前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
2 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。
第六百三十八条 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。
2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から一年以内に、第六百三十四条の規定による権利を行使しなければならない。
(担保責任の存続期間の伸長)
第六百三十九条 第六百三十七条及び前条第一項の期間は、第百六十七条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。
(担保責任を負わない旨の特約)
第六百四十条 請負人は、第六百三十四条又は第六百三十五条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
(注文者による契約の解除)
第六百四十一条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
(注文者についての破産手続の開始による解除)
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう。以下同じ。)が、第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要なものとなっていることにかんがみ、裁判外紛争解決手続についての基本理念及び国等の責務を定めるとともに、民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、併せて時効の中断等に係る特例を定めてその利便の向上を図ること等により、紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利利益の適切な実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 民間紛争解決手続 民間事業者が、紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について、紛争の当事者双方からの依頼を受け、当該紛争の当事者との間の契約に基づき、和解の仲介を行う裁判外紛争解決手続をいう。ただし、法律の規定により指定を受けた者が当該法律の規定による紛争の解決の業務として行う裁判外紛争解決手続で政令で定めるものを除く。
二 手続実施者 民間紛争解決手続において和解の仲介を実施する者をいう。
三 認証紛争解決手続 第五条の認証を受けた業務として行う民間紛争解決手続をいう。
四 認証紛争解決事業者 第五条の認証を受け、認証紛争解決手続の業務を行う者をいう。
(基本理念等)
第三条 裁判外紛争解決手続は、法による紛争の解決のための手続として、紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るものでなければならない。
2 裁判外紛争解決手続を行う者は、前項の基本理念にのっとり、相互に連携を図りながら協力するように努めなければならない。
(国等の責務)
第四条 国は、裁判外紛争解決手続の利用の促進を図るため、裁判外紛争解決手続に関する内外の動向、その利用の状況その他の事項についての調査及び分析並びに情報の提供その他の必要な措置を講じ、裁判外紛争解決手続についての国民の理解を増進させるように努めなければならない。
2 地方公共団体は、裁判外紛争解決手続の普及が住民福祉の向上に寄与することにかんがみ、国との適切な役割分担を踏まえつつ、裁判外紛争解決手続に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
建設業法
第三章の二 建設工事の請負契約に関する紛争の処理
(建設工事紛争審査会の設置)
第二十五条 建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため、建設工事紛争審査会を設置する。
2 建設工事紛争審査会(以下「審査会」という。)は、この法律の規定により、建設工事の請負契約に関する紛争(以下「紛争」という。)につきあつせん、調停及び仲裁(以下「紛争処理」という。)を行う権限を有する。
3 審査会は、中央建設工事紛争審査会(以下「中央審査会」という。)及び都道府県建設工事紛争審査会(以下「都道府県審査会」という。)とし、中央審査会は、国土交通省に、都道府県審査会は、都道府県に置く。
(審査会の組織)
第二十五条の二 審査会は、委員十五人以内をもつて組織する。
2 委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、中央審査会にあつては国土交通大臣が、都道府県審査会にあつては都道府県知事が任命する。
3 中央審査会及び都道府県審査会にそれぞれ会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を代理する。
(委員の任期等)
第二十五条の三 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員は、後任の委員が任命されるまでその職務を行う。
4 委員は、非常勤とする。
(委員の欠格条項)
第二十五条の四 次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
一 破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
(委員の解任)
第二十五条の五 国土交通大臣又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その委員を解任しなければならない。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が次の各号の一に該当するときは、その委員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められるとき。
(会議及び議決)
第二十五条の六 審査会の会議は、会長が招集する。
2 審査会は、会長又は第二十五条の二第五項の規定により会長を代理する者のほか、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 審査会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、会長が決する。
(特別委員)
第二十五条の七 紛争処理に参与させるため、審査会に、特別委員を置くことができる。
2 特別委員の任期は、二年とする。
3 第二十五条の二第二項、第二十五条の三第二項及び第四項、第二十五条の四並びに第二十五条の五の規定は、特別委員について準用する。
4 この法律に規定するもののほか、特別委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県審査会の委員等の一般職に属する地方公務員たる性質)
第二十五条の八 都道府県審査会の委員及び特別委員は、地方公務員法
(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条
、第六十条第二号及び第六十二条の規定の適用については、同法第三条第二項
に規定する一般職に属する地方公務員とみなす。
(管轄)
第二十五条の九 中央審査会は、次の各号に掲げる場合における紛争処理について管轄する。
一 当事者の双方が国土交通大臣の許可を受けた建設業者であるとき。
二 当事者の双方が建設業者であつて、許可をした行政庁を異にするとき。
三 当事者の一方のみが建設業者であつて、国土交通大臣の許可を受けたものであるとき。
2 都道府県審査会は、次の各号に掲げる場合における紛争処理について管轄する。
一 当事者の双方が当該都道府県の知事の許可を受けた建設業者であるとき。
二 当事者の一方のみが建設業者であつて、当該都道府県の知事の許可を受けたものであるとき。
三 当事者の双方が許可を受けないで建設業を営む者である場合であつて、その紛争に係る建設工事の現場が当該都道府県の区域内にあるとき。
四 前項第三号に掲げる場合及び第二号に掲げる場合のほか、当事者の一方のみが許可を受けないで建設業を営む者である場合であつて、その紛争に係る建設工事の現場が当該都道府県の区域内にあるとき。
3 前二項の規定にかかわらず、当事者は、双方の合意によつて管轄審査会を定めることができる。
(紛争処理の申請)
第二十五条の十 審査会に対する紛争処理の申請は、政令の定めるところにより、書面をもつて、中央審査会に対するものにあつては国土交通大臣を、都道府県審査会に対するものにあつては当該都道府県知事を経由してこれをしなければならない。
(あつせん又は調停の開始)
第二十五条の十一 審査会は、紛争が生じた場合において、次の各号の一に該当するときは、あつせん又は調停を行う。
一 当事者の双方又は一方から、審査会に対しあつせん又は調停の申請がなされたとき。
二 公共性のある施設又は工作物で政令で定めるものに関する紛争につき、審査会が職権に基き、あつせん又は調停を行う必要があると決議したとき。
(あつせん)
第二十五条の十二 審査会によるあつせんは、あつせん委員がこれを行う。
2 あつせん委員は、委員又は特別委員のうちから、事件ごとに、審査会の会長が指名する。
3 あつせん委員は、当事者間をあつせんし、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように努めなければならない。
(調停)
第二十五条の十三 審査会による調停は、三人の調停委員がこれを行う。
2 調停委員は、委員又は特別委員のうちから、事件ごとに、審査会の会長が指名する。
3 審査会は、調停のため必要があると認めるときは、当事者の出頭を求め、その意見をきくことができる。
4 審査会は、調停案を作成し、当事者に対しその受諾を勧告することができる。
5 前項の調停案は、調停委員の過半数の意見で作成しなければならない。
(あつせん又は調停をしない場合)
第二十五条の十四 審査会は、紛争がその性質上あつせん若しくは調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりにあつせん若しくは調停の申請をしたと認めるときは、あつせん又は調停をしないものとする。
(あつせん又は調停の打切り)
第二十五条の十五 審査会は、あつせん又は調停に係る紛争についてあつせん又は調停による解決の見込みがないと認めるときは、あつせん又は調停を打ち切ることができる。
2 審査会は、前項の規定によりあつせん又は調停を打ち切つたときは、その旨を当事者に通知しなければならない。
(時効の中断)
第二十五条の十六 前条第一項の規定によりあつせん又は調停が打ち切られた場合において、当該あつせん又は調停の申請をした者が同条第二項の通知を受けた日から一月以内にあつせん又は調停の目的となつた請求について訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、あつせん又は調停の申請の時に、訴えの提起があつたものとみなす。
(訴訟手続の中止)
第二十五条の十七 紛争について当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
一 当該紛争について、当事者間において審査会によるあつせん又は調停が実施されていること。
二 前号に規定する場合のほか、当事者間に審査会によるあつせん又は調停によつて当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(仲裁の開始)
第二十五条の十八 審査会は、紛争が生じた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、仲裁を行う。
一 当事者の双方から、審査会に対し仲裁の申請がなされたとき。
二 この法律による仲裁に付する旨の合意に基づき、当事者の一方から、審査会に対し仲裁の申請がなされたとき。
(仲裁)
第二十五条の十九 審査会による仲裁は、三人の仲裁委員がこれを行う。
2 仲裁委員は、委員又は特別委員のうちから当事者が合意によつて選定した者につき、審査会の会長が指名する。ただし、当事者の合意による選定がなされなかつたときは、委員又は特別委員のうちから審査会の会長が指名する。
3 仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法
(昭和二十四年法律第二百五号)第二章 の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
4 審査会の行う仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除いて、仲裁委員を仲裁人とみなして、仲裁法
(平成十五年法律第百三十八号)の規定を適用する。
(文書及び物件の提出)
第二十五条の二十 審査会は、仲裁を行う場合において必要があると認めるときは、当事者の申出により、相手方の所持する当該請負契約に関する文書又は物件を提出させることができる。
2 審査会は、相手方が正当な理由なく前項に規定する文書又は物件を提出しないときは、当該文書又は物件に関する申立人の主張を真実と認めることができる。
(立入検査)
第二十五条の二十一 審査会は、仲裁を行う場合において必要があると認めるときは、当事者の申出により、相手方の占有する工事現場その他事件に関係のある場所に立ち入り、紛争の原因たる事実関係につき検査をすることができる。
2 審査会は、前項の規定により検査をする場合においては、当該仲裁委員の一人をして当該検査を行わせることができる。
3 審査会は、相手方が正当な理由なく第一項に規定する検査を拒んだときは、当該事実関係に関する申立人の主張を真実と認めることができる。
(調停又は仲裁の手続の非公開)
第二十五条の二十二 審査会の行う調停又は仲裁の手続は、公開しない。ただし、審査会は、相当と認める者に傍聴を許すことができる。
(紛争処理の手続に要する費用)
第二十五条の二十三 紛争処理の手続に要する費用は、当事者が当該費用の負担につき別段の定めをしないときは、各自これを負担する。
2 審査会は、当事者の申立に係る費用を要する行為については、当事者に当該費用を予納させるものとする。
3 審査会が前項の規定により費用を予納させようとする場合において、当事者が当該費用の予納をしないときは、審査会は、同項の行為をしないことができる。
(申請手数料)
第二十五条の二十四 中央審査会に対して紛争処理の申請をする者は、政令の定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。
(紛争処理状況の報告)
第二十五条の二十五 中央審査会は、国土交通大臣に対し、都道府県審査会は、当該都道府県知事に対し、国土交通省令の定めるところにより、紛争処理の状況について報告しなければならない。
(政令への委任)
第二十五条の二十六 この章に規定するもののほか、紛争処理の手続及びこれに要する費用に関し必要な事項は、政令で定める。
仲裁法
第八章 仲裁判断の承認及び執行決定
(仲裁判断の承認)
第四十五条 仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する。ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。
2 前項の規定は、次に掲げる事由のいずれかがある場合(第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、当事者のいずれかが当該事由の存在を証明した場合に限る。)には、適用しない。
一 仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二 仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、仲裁地が属する国の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三 当事者が、仲裁人の選任手続又は仲裁手続において、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
四 当事者が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
五 仲裁判断が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
六 仲裁廷の構成又は仲裁手続が、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
七 仲裁地が属する国(仲裁手続に適用された法令が仲裁地が属する国以外の国の法令である場合にあっては、当該国)の法令によれば、仲裁判断が確定していないこと、又は仲裁判断がその国の裁判機関により取り消され、若しくは効力を停止されたこと。
八 仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
九 仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
3 前項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、当該部分及び当該仲裁判断のその他の部分をそれぞれ独立した仲裁判断とみなして、同項の規定を適用する。
(仲裁判断の執行決定)
第四十六条 仲裁判断に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(仲裁判断に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをすることができる。
2 前項の申立てをするときは、仲裁判断書の写し、当該写しの内容が仲裁判断書と同一であることを証明する文書及び仲裁判断書(日本語で作成されたものを除く。)の日本語による翻訳文を提出しなければならない。
3 第一項の申立てを受けた裁判所は、前条第二項第七号に規定する裁判機関に対して仲裁判断の取消し又はその効力の停止を求める申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第一項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、同項の申立てをした者の申立てにより、他の当事者に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
4 第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる裁判所及び請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
5 裁判所は、第一項の申立てに係る事件がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
6 第一項の申立てに係る事件についての第五条第三項又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7 裁判所は、次項又は第九項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。
8 裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、前条第二項各号に掲げる事由のいずれかがあると認める場合(同項第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
9 前条第三項の規定は、同条第二項第五号に掲げる事由がある場合における前項の規定の適用について準用する。
10 第四十四条第五項及び第八項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。
民事調停法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする。
(調停事件)
第二条 民事に関して紛争を生じたときは、当事者は、裁判所に調停の申立をすることができる。
(管轄)
第三条 調停事件は、特別の定がある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。
(民事調停委員)
第八条 民事調停委員は、調停委員会で行う調停に関与するほか、裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争の解決に関する事件の関係人の意見の聴取を行い、その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。
2 民事調停委員は、非常勤とし、その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
(調停の成立・効力)
第十六条 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。