法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年8月13日改訂)
総論6、裁判所の管轄、訴訟はどこの裁判所に起こすか。
Q:500万円の貸し金請求訴訟を起こそうと思いますが何処の裁判所に起こせばよいのですか。どのような基準で決まるのですか。教えてください。
A:
1. 貴方は、利用する裁判所の(管轄の)合意がない限り被告の住所地を管轄する地方裁判所か、貴方の住所地を管轄する地方裁判所どちらか貴方にとって都合のいい方に訴えを起こすことが出来ます。
2. 裁判所が具体的事件について裁判権を行使することが出来る権限の範囲を管轄といいます。管轄を決める基準は、貴方の裁判を受ける権利(憲法31条)を実質的に保障するため私的紛争を適正、公平、迅速、低廉に解決するという理想に基づいて法律で決められています。
3. 不明な時、貴方は憲法上裁判所を利用する権利があるのですからお住まいの裁判所に電話で聞きましょう。丁寧に教えてくれます。
4. 尚、詳しい管轄の分け方については新銀座法律事務所ホームページで検索して参照してください。
解説
1. 貴方が、訴えを起こすには裁判所に訴状を提出しなければなりませんが、その裁判所は貴方の事件について裁判権を持っている必要があります。裁判所が具体的事件について裁判権を有する範囲を裁判管轄といい、裁判権を有する権限を裁判管轄権といいます(民訴4条)。裁判所は国家機関ですから訴えを起こすのはどこの裁判所でもいいじゃないかと思うかもしれませんがそうではありません。裁判所の存在意義は、法の支配の理念である国民個人の尊厳を守るため私的紛争を適正公正、迅速低廉に解決することにありますから、どの裁判所がどの様な事件を扱うかという管轄の問題も当然法の支配の理念、裁判の理想(民訴2条)により決められているのです。例えば、取引が自分の住所地で行われたのに大きく離れた取引の相手方(被告)の住所地である裁判所が管轄となってしまいますと、証拠の収集提出に時間労力経費(交通費等)がかかり適正、迅速な裁判が出来ない可能性がありますし、訴えは訴状の形式的要件(民訴137条、133条、規則2条)さえあれば裁判所は受理してくれますしその他訴訟要件があれば(管轄等形式的要件で紛争の実質的理由は考慮されていません)審理は終局判決まで継続しますので正当な理由もないのに被告が遠い原告の住所地の裁判所に行くことも公平の理念から不都合です。そこで法は、前記理想を実現するために種々の面から決まりを作り管轄を定めています。その決まりの基準が複数あり場合によっては訴えを起こす人にとり複数の管轄裁判所から自分に都合のいい裁判所を選べるようになっています。このようにして国民の裁判を受ける権利(憲法31条)を実質的に保障しています。
2. 管轄を決める判断基準は紛争の当事者と紛争の内容を多方面から検討して紛争解決の理想から裁判管轄が定められています。従って、以下のような基準に従い訴えを提起する裁判所が具体的に決まります。
3. まず、貴方の訴えは、500万円の貸し金債権があるかどうかの判断を求めていますので、訴えを受け付けて訴訟物を判断する裁判所すなわち、受訴裁判所が管轄になります(裁判所法24条、33条)。私的紛争解決手続きは、私的紛争を適正、公平、迅速に解決するため頭書記述したように訴訟物を判断する裁判所(受訴裁判所)とその判断に基づき執行する執行裁判所、執行を確実なものにする執行保全裁判所に分かれます。裁判所という同じ建物にあっても3つの裁判所の職務は分担独立しているのです。具体的には各部(例えば民事4部、保全部、執行部等、)として独立しています。このような職務内容による管轄の定めを職分管轄といいます。従って貴方の訴えは判決手続きを求めていますから内容上当たり前のことですが執行裁判所、または執行保全裁判所に訴えは提起できません。
4. 次に貴方の受訴裁判所に対する訴えは、最初に提起するものですから第一審を担当する裁判所に訴訟を起こさなければなりません。日本の裁判制度は紛争を適正、公平、慎重に解決するため判断を3回行う三審制が採られていますから最初の訴えは第一審を扱う裁判所が管轄裁判所となります(裁判所法1条、2条)。第一審の裁判所は、民事訴訟、刑事訴訟、(行政訴訟は事件が複雑で地方裁判所以上です。特許法、独占禁止法に関する訴訟は高等裁判所も第一審になる)でも簡易裁判所か地方裁判所になっていますからこのどちらかに提起する必要があります(裁判所法24条、33条)。勝手に高等裁判所に訴え提起は出来ません。第一審の次には上級の裁判所として高等裁判所、最高裁判所がありこのように審級ごとに管轄を決めることを法律上「審級管轄」といいます(職分管轄のひとつです)。上級審ほど経験豊かな複数の裁判官が事実認定、法律解釈を厳格に行い国民の権利を保障しています(裁判所法参照)。
5.
@ 次に第一審裁判を簡裁地裁どちらにするかは、紛争の大きさ、金額で決められています。すなわち第一審の裁判所において審判の対象(訴訟物)の額(訴額、訴状に記載する額です。140万円です)により管轄を決めています(裁判所法33条)。紛争の対象が単純で軽微であれば争点も少なく法律判断も簡易ですからそういう事件を適正、迅速、低廉に解決するため簡易裁判所と地方裁判所に事件を分担し裁判官の人数(1人)、資格(裁判所法44条。大学教授、裁判所の職員等司法試験に合格していなくても採用が可能になっていま)、手続きも簡易裁判所の方が地方裁判所より緩和されています。訴額の140万円の額は社会経済状況により改正変更になっています。このように紛争の額で管轄を決めることを法律上「事物管轄」といいます。本件は500万円ですから地方裁判所ということになります。
A ちなみに、離婚事件等人事訴訟に属する訴訟の訴額は、訴額算定不能として160万円になりますから(訴訟費用法4条2項)本来地方裁判所の管轄ですが、人事訴訟の合目的解決(裁判の勝ち負けより夫婦にとり離婚したほうがいいかどうかという結果の妥当性を重視する裁判)という特殊性から適正な解決のため地方裁判所と同じ地位にある家庭裁判所の管轄に属します(人訴4条)。
B ちなみに行政訴訟事件は、民事事件とは異なり審判の対象が行政権の作用という特殊性複雑性があり訴額に関係なく地方裁判所以上の管轄になっています(裁判所法33条1項1号)。
C なお、上記のように少額の裁判の特殊性を考え簡易裁判所に管轄権を認めていますから事案が複雑であるなど内容によっては、適正公平な解決を図るために簡易裁判所の決定で、事件を地方裁判所に裁量移送(担当替え)することができます(民事訴訟法17条)。
6.
@ 次に、貴方は日本全国に散在するどこの地方裁判所に提起するかどうかを決めなければなりません。貴方は原告の立場ですが、訴訟の当事者を基準として原告、被告どちらの住所地の裁判所で訴訟を行うかを判断することになります。民事訴訟法は基本的に被告の住所地を管轄する地方裁判所に訴えを提起することを原則としています。管轄権発生の原因となる地点(住所地等)を裁判籍と呼んでいます。また、地域的基準により管轄権を定めることを法律上土地管轄といいます(民訴4条)。
A どうして被告の裁判籍(人的、普通裁判籍といいます)すなわち住所地が土地管轄決定の原則になるかというと訴訟の公平を図ったからです。すなわち、訴訟は訴状の形式的記載、わずかな印紙、郵券で起こすことが出来、その他の形式的な訴訟要件(当事者の実在、人または法人であるという当事者能力、訴えの利益、二重起訴の禁止、国内での管轄権、国際裁判管轄権の存在等)が備わっていればあまり勝訴の見込みがなくてもやろうと思えば訴訟を何ヶ月も継続できるのです。これを原告の裁判籍で訴訟が出来るとすると遠隔地の被告は、濫訴の場合原告地に出かけ活動しなければならず著しい不利益をこうむることになります。そこで特別な理由がない限り被告の立場を保護し公平を図ったのがこの原則です。
B 「普通裁判籍」とは個人であれば、「住所地」となります(法4条2項、3項以下参照)。相手方(被告)の住所地を管轄する裁判所が、具体的に訴える裁判所となります。例えば、貴方が、東京に住んでいて、大阪に住んでいる人(被告)を訴える場合は、「大阪地方裁判所」に提起することになります。
C 尚、具体的な住所地の調査ですが、相手が住所を移転していて現在の住所が分からないときは、債権者として、相手方の住民票を調査することができます。借用書を持参して、市役所で住民票を請求することができます。住民票の除票に転出先の住所が記載されていることがあります。相手に決まった住所がないときは、「居所」の裁判所が管轄となります。「居所」とは、一時的にでも寝食しており連絡がつく場所、という意味です。日本国内に居所がないときや、居所も分からないときは、「最後の住所地」の裁判所が管轄となります。株式会社など法人の「普通裁判籍」は、個人の住所地と同じように本店所在地となります。訴状に商業登記簿謄本を添付する必要がありますので、これを請求してみると良いでしょう。商業登記簿謄本を取れないときは、相手方が個人営業をしていることになりますので、例えば「山田興業こと山田太郎」というような書き方で、個人の住所地を基準にして訴えることになります。
7.
@ さらに、貴方の紛争は貸し金請求という財産的取引上の争いですから、当該取引発生の地点を管轄する裁判所を利用することも出来ます。このように紛争の権利、内容に関係する地点を法律上物的、特別裁判籍といい、関連地点を下に管轄を決めているので土地管轄のひとつです。
A 特別裁判籍は民事訴訟法5条で、適正公平、迅速低廉な解決を目指して様々な管轄を定めています。
B 貴方の訴えは貸し金請求であり、その請求権は原告の住所地に持参して支払う義務があるという持参債務(民法484条)ですから民訴5条1項1号の「財産権上の訴え:義務履行地。」の規定により原告である貴方の住所地を管轄する地方裁判所に訴えを提起することができます。
C このような特別裁判籍を認める理由は争いとなっている当該取引場所に近い裁判所であれば関係書類、証人呼び出し等当事者の証拠の収集、立証が容易になり適性、当事者の公平、迅速、低廉な解決につながる可能性が大きいからです。
D ちなみに同様の趣旨で民訴5条は事件の内容に応じて特別(物的)裁判籍を定めています。
E 以下、主なものを列挙しますので、参考にしてください。
F 手形小切手訴訟は支払地(手形上に記載があります)です。手形は決済、融通の手段ですから証拠資料の収集しやすい支払地を裁判籍としていますので参考にしてください。
G 営業所における業務に関する訴えは営業所の所在地。営業所を中心として営業活動が行われるので証拠収集に便利であり適正、公平、迅速な裁判が期待できるからです。
H 不法行為に関する裁判は不法行為地。不法行為とは、交通事故・医療事故・労災など、契約関係に基づかずに、慰謝料など損害賠償の請求を行う手続です。この場合は、事故があった場所(事故現場)の裁判所が、現場検証などの証拠収集を行うのに適していること(適正な裁判)、迅速性、低廉性から、管轄権が認められています。
I 不動産に関する裁判は不動産の所在地。理由は同じです。
J 相続又は遺留分に関する裁判:被相続人が亡くなった時の住所地。遺産に関する争いですから遺産残存の可能性が大きい被相続人の住所地を裁判籍としで適正、迅速な紛争解決を図っています。
K 以上のように貴方は、被告の普通裁判籍である住所地を管轄する地方裁判所と貸し金債権の持参債務性から原告である貴方の住所地を管轄する地方裁判所に訴えを提起できます。貴方に訴訟追行上有利な貴方がお住まいの住所地を管轄する地方裁判所を選択することになるでしょう。
8. 尚、貴方は、どの裁判所に訴えを提起していいかどうか迷っているようですが、よく商取引の契約書等に記載されているように貴方の消費貸借契約書等文書に裁判管轄の合意がなされていた場合は必ず合意した当該裁判所に訴えを提起しなければなりません。これを合意管轄(民訴11条)といいます。たとえば、「本件消費貸借契約に関する紛争については横浜地方裁判所を管轄裁判所とする。」という条項があった場合です。国民は裁判を受ける権利を有し、訴訟制度の第一の目的は私人間の私的紛争を解決することにありますから、第一審に限り合意文書を条件として私人である紛争当事者の意思を優先したのです。ただ裁判所は、前述のように、職務管轄、事物管轄について職務体制、内容の違いにより国民の私的紛争を適正公平、迅速低廉に解決する公的理由のため管轄裁判所を法が専属的に定めている範囲(当事者が勝手に管轄を決められないので専属管轄といいます)については合意管轄を認められません。たとえば、500万円貸し金請求の訴えを簡易裁判所、高等裁判所、または家庭裁判所にする合意などは裁判所の職務の内容から適正な解決が出来ませんので認められないのです。専属管轄については事件の性質上種々のものがあります(破産法に定める裁判、破産法4条、再審事件、民訴340条、民事執行事件、民事執行法3条、44条)。従って、他の裁判所に訴えを提起しても合意管轄が分かった時点で当該裁判所は訴訟の内容についての判断をする権限がありませんから前提要件が欠けるとの理由で訴えを却下(棄却ではありません)し門前払いとなります。これを訴訟判決(民訴140条、これに対し訴訟物を判断するのは本案判決です。民訴243条)といいます。
9. しかし、適正な合意管轄に反して他の法律上認められた管轄地方裁判所に誤って訴えを提起しても(例えば取引場所である横浜地方裁判所を合意管轄にしたのに原告の住所地の東京地裁に訴えを提起する)被告が管轄違いの抗弁を出さないで弁論など実質的に訴訟活動をすると第一審に限りその裁判所に管轄権が事後的に生じ当該裁判所は管轄権を結果的に有することになります。これを応訴管轄といいます(民訴26条)。訴訟が開始され審理が実質的に始った以上これを事後的に認める方が迅速低廉な解決にもつながりますし、当事者の公平にも反しないからです。
10. 尚、管轄を決める標準時は、民事訴訟法15条で、訴えの提起の時と規定されています。自分も相手も、引越しをすることがあるかもしれませんが、訴え提起後の事情で裁判所を変更することは裁判の迅速性、訴訟経済(訴訟の効率)に反するからです。
≪条文参照≫
民事訴訟法
(裁判所及び当事者の責務)
第二条 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
(最高裁判所規則)
第三条 この法律に定めるもののほか、民事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第二章 裁判所
第一節 管轄
(普通裁判籍による管轄)
第四条 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3 大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5 外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6 国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。
(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一 財産権上の訴え
義務履行地
二 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
手形又は小切手の支払地
三 船員に対する財産権上の訴え
船舶の船籍の所在地
四 日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
当該事務所又は営業所の所在地
六 船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え
船舶の船籍の所在地
七 船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
船舶の所在地
八 会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
社団又は財団の普通裁判籍の所在地
イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの
ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
九 不法行為に関する訴え
不法行為があった地
十 船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
損害を受けた船舶が最初に到達した地
十一 海難救助に関する訴え
海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地
十二 不動産に関する訴え
不動産の所在地
十三 登記又は登録に関する訴え
登記又は登録をすべき地
十四 相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
十五 相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの(相続財産の全部又は一部が同号に定める地を管轄する裁判所の管轄区域内にあるときに限る。)
同号に定める地
(特許権等に関する訴え等の管轄)
第六条 特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)について、前二条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。
一 東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
東京地方裁判所
二 大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
大阪地方裁判所
2 特許権等に関する訴えについて、前二条の規定により前項各号に掲げる裁判所の管轄区域内に所在する簡易裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。
3 第一項第二号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴は、東京高等裁判所の管轄に専属する。ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴については、この限りでない。
(意匠権等に関する訴えの管轄)
第六条の二 意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。)、出版権、著作隣接権若しくは育成者権に関する訴え又は不正競争(不正競争防止法
(平成五年法律第四十七号)第二条第一項 に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴えについて、第四条又は第五条の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。
一 前条第一項第一号に掲げる裁判所(東京地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所
二 前条第一項第二号に掲げる裁判所(大阪地方裁判所を除く。) 大阪地方裁判所
(管轄の合意)
第十一条 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
(応訴管轄)
第十二条 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。
(専属管轄の場合の適用除外等)
第十三条 第四条第一項、第五条、第六条第二項、第六条の二、第七条及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない。
2 特許権等に関する訴えについて、第七条又は前二条の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には、前項の規定にかかわらず、第七条又は前二条の規定により、その裁判所は、管轄権を有する。
(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条 第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
(簡易裁判所の裁量移送)
第十八条 簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
(必要的移送)
第十九条 第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、訴訟の全部又は一部を申立てに係る地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。ただし、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、又はその申立てが、簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって、被告が本案について弁論をし、若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは、この限りでない。
(訴え提起の方式)
第百三十三条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因
(口頭弁論を経ない訴えの却下)
第百四十条 訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。
(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律
(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判
(終局判決)
第二百四十三条 裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
(管轄裁判所)
第三百四十条 再審の訴えは、不服の申立てに係る判決をした裁判所の管轄に専属する。
裁判所法
第二条 (下級裁判所) 下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所とする。
第二十四条 (裁判権) 地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
一 第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
第三十三条 (裁判権) 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
第四十四条 (簡易裁判所判事の任命資格) 簡易裁判所判事は、高等裁判所長官若しくは判事の職に在つた者又は次の各号に掲げる職の一若しくは二以上に在つてその年数を通算して三年以上になる者の中からこれを任命する。
一 判事補
二 検察官
三 弁護士
四 裁判所調査官、裁判所事務官、司法研修所教官、裁判所職員総合研修所教官、法務事務官又は法務教官
五 第四十一条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授
○2 前項の規定の適用については、同項第二号乃至第四号に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
○3 司法修習生の修習を終えないで検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。
民事訴訟費用法
(趣旨)
第一条 民事訴訟手続、民事執行手続、民事保全手続、行政事件訴訟手続、非訟事件手続、家事審判手続その他の裁判所における民事事件、行政事件及び家事事件に関する手続(以下「民事訴訟等」という。)の費用については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(訴訟の目的の価額等)
第四条 別表第一において手数料の額の算出の基礎とされている訴訟の目的の価額は、民事訴訟法第八条第一項
及び第九条 の規定により算定する。
2 財産権上の請求でない請求に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は、百六十万円とみなす。
財産権上の請求に係る訴えで訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なものについても、同様とする。
人事訴訟法
(人事に関する訴えの管轄)
第四条 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
2 前項の規定による管轄裁判所が定まらないときは、人事に関する訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
破産法
(破産事件の管轄)
第四条 この法律の規定による破産手続開始の申立ては、債務者が個人である場合には日本国内に営業所、住所、居所又は財産を有するときに限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有するときに限り、することができる。
(専属管轄)
第六条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
民事執行法
(執行裁判所)
第三条 裁判所が行う民事執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもつて、執行官が行う執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもつて執行裁判所とする。
(専属管轄)
第六条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
(執行裁判所)
第四十四条 不動産執行については、その所在地(前条第二項の規定により不動産とみなされるものにあつては、その登記をすべき地)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
行政事件訴訟法
(管轄)
第十二条 取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
民事保全法
(民事保全の機関及び保全執行裁判所)
第二条 民事保全の命令(以下「保全命令」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。
2 民事保全の執行(以下「保全執行」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
3 裁判所が行う保全執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもって、執行官が行う保全執行の執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもって保全執行裁判所とする。