会社更生法申立について (最終更新日平成21年8月7日)

 株式会社の経営が困難となった場合は、@破産申立、A民事再生申立、の他に、B会社更生法による「更生手続開始の申し立て」を検討することができます。@破産は、会社財産を全て譲渡して法人格を消滅させる手続です。A民事再生は、経営陣留任のまま会社債権者の多数決の同意を得て、再生計画を策定して企業再建を図る手続です。B会社更生法の申し立ては、この、破産と再生の中間的な手続と言えます。民事再生よりも強力な手続(担保権消滅許可、会社更生法104条など)で、経営陣は退陣し(法211条4項)ますが、会社の法人格は継続させることができる、というものです。会社更生法は、平成14年に約35年振りの大改正があり、手続が強化されましたので、経営再建を検討される場合は選択肢の一つにすると良いでしょう。

参考URL(法務省の解説ページ)
http://www.moj.go.jp/HOUAN/houan15.html

※新・会社更生法手続の特徴

1、抵当権の実行停止命令(法24条1項2号)
  勝訴判決や公正証書に基づく強制執行は、破産法や民事再生法でも止めることができますが、
  抵当権の実行だけは、他の手続では止められません(別除権、破産法65条、民事再生法53条)。
  企業存続を目的とする会社更生法でのみ認められる手続です。

2、担保権消滅許可決定(法104条)
  法104条1項を引用します。「裁判所は、更生手続開始当時更生会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法 若しくは会社法 の規定による留置権がある場合において、更生会社の事業の更生のために必要であると認めるときは、管財人の申立てにより、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産を目的とするすべての担保権を消滅させることを許可する旨の決定をすることができる。」
  この制度の要件が、破産法や民事再生法とは若干異なっています。破産法では186条で「当該財産を任意に売却して当該担保権を消滅させることが破産債権者の一般の利益に適合するとき」となっておりますし、民事再生法では148条で「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるとき」のみ、担保権消滅の申立をすることができます。会社更生法では、民事再生法の「必要不可欠」よりも若干緩和された「必要性」が認められれば許可が下りることになります。

3、旧経営陣の退任(法211条4項)
  民事再生法では、再生計画案に会社役員の退任を定める必要はありませんが、会社更生法の申立では「更生会社の従前の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人は、更生計画認可の決定の時に退任する。」と規定され、原則として役員全員が退任し、新たな経営陣の下で、再建計画を実行していくことになります。

4、更生計画案決議要件の緩和(法196条5項)
  従来は一般債権者の3分の2以上かつ抵当権者の5分の4以上かつ総株主の2分の1以上の同意が必要(旧会社更生法205条)で、経営者及び申立代理人による根回しが困難となっておりましたが、改正法では、一般債権者の2分の1以上、抵当権者の4分の3以上、総株主の2分の1以上の同意で決議できるようになりました。

5、株主の権利制限(法174条1号、法177条の2第1項)
  上記の通り、更生計画の決議に株主の決議も必要となっていることから、株主の権利制限も可能となっています。この点は、民事再生法と大きく異なる点です。民事再生法では、通常の会社法の手続の範囲内で、つまり、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要な株式併合や第三者割当増資が、総株主の過半数の同意で可能となっています。このことは、会社債権者を説得する際の有効材料となることが期待されます。

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