税務署の公売物件の取得方法(最終改訂平成24年10月4日)

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インターネットで税務署の公売物件というのを見つけました。裁判所の競売物件とは何が違うのでしょうか?落札後の明け渡しも可能でしょうか?


回答:

1、税務署の公売は、国税徴収法に定められた、税務署の徴税手続のひとつです。手続の主催者は納税義務者の所轄の税務署長です(国税徴収法94条)。担保不動産の競売手続は、民事執行法に基く強制執行手続で、手続の主催者は、担保不動産の所在地を管轄する地方裁判所です(民事執行法44条、民事執行法188条)。税務署の公売は滞納税の徴収が目的で行われるのに対し、担保不動産の競売は債権者の申し立てにより被担保債権の弁済を目的として行われます。

2、このように、手続の根拠規定と性質が異なる為、入札手続についても、落札者の明け渡し手続についても、若干異なります。最も大きな違いは、落札後の明け渡し手続です。担保不動産強制競売手続では、買受人に対抗できない占有者に対して引渡命令(民事執行法83条)の申立をすることができ、裁判手続によらず簡易な手続により、明け渡しの強制執行をすることができますが、国税徴収法に基く公売手続では、このような制度は法定されていませんので、買受人が、占有者と独自に交渉し、又は、裁判手続を行い、明け渡しを進めていく必要があります。

3、税務署の公売により建物を落札した場合は、「鍵がかかっておらず、荷物も一切無い」という例外的な場合を除いて、「従前の占有者(最後に鍵を施錠した人物)と交渉して引渡しを受ける」か、「従前の占有者を債務者として、占有移転禁止仮処分申立を行い、その後、建物明け渡し請求訴訟を提起し、勝訴判決を得て、建物明け渡し強制執行の申し立てを行う」必要があります。従前の占有者の同意なく鍵をあけて建物に立ち入った場合は住居侵入罪(刑法130条)、同意なく従前の占有者の占有を奪った場合は不動産侵奪罪(刑法235条の2)や、同意なく従前占有者の物品を損壊した場合は器物損壊罪(刑法261条)、同意なく従前の占有者の物品を領得した場合は窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性がありますのでご注意下さい。法的手続きに則って明け渡しの手続をする必要があります。

解説:

1、税務署の公売は、国税徴収法に定められた、税務署の徴税手続のひとつです。手続の主催者は納税義務者の所轄の税務署長です(国税徴収法94条)。担保不動産の競売手続は、民事執行法に基く強制執行手続で、手続の主催者は、担保不動産の所在地を管轄する地方裁判所です(民事執行法44条、民事執行法188条)。税務署の公売は滞納税の徴収が目的で行われるのに対し、担保不動産の競売は債権者の申し立てにより被担保債権の弁済を目的として行われます。

※国税庁による公売の説明ページ
http://www.nta.go.jp/taxanswer/osirase/9207.htm

※ 国税庁による公売情報サイト
http://www.koubai.nta.go.jp/auctionx/public/hp001.php

国税徴収法1条の目的規定を引用します。手続の目的は、あくまでも納税義務の実現であり、国税収入の確保が主要な目的になります。納税義務は国民の三大義務(憲法30条)の一つであり、公的義務の中核となり、国家存立の経済的基盤をなすもので必要不可欠なものです。従って、私人間の争いを前提として私的自治の大原則が支配する権利確定、民事執行の手続きとは本質的に違います。一刻も早く(迅速性)公的費用確保(優先的確保:破産の財団債権、非免責債権はその例です。)するため国家は、訴訟を起こす必要がなく債務名義も不要です。国家は、租税滞納者に対する簡易な滞納処分(租税徴収法37条、国税通則法40条)により公売することができます。ただ、公売は、法の支配の原則である公正な訴訟による権利確定の手続きを行うことによって、債務名義を取得していませんし、任意競売における担保権設定の同意もありませんので、公売による買受人の地位は、後記のように民事執行法による競落人と異なる点があります。

国税徴収法第1条 この法律は、国税の滞納処分その他の徴収に関する手続の執行について必要な事項を定め、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とする。

これに対し、民事執行法には目的規定はありませんが、1条で法律の趣旨が規定されています。また、民法1条では、私法の一般原則が規定されています。

民事執行法第1条 強制執行、担保権の実行としての競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産の開示については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
民法第1条(基本原則)
第1項 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
第2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
第3項 権利の濫用は、これを許さない。

要するに、民事執行法では、当事者(債権者と債務者)の公平を重視して手続が規定されているということになります。

2、(税務署による不動産の差押)

国税の滞納があった場合、税務署では、滞納者に対して差押書を送達することにより、滞納者の資産である不動産を差押することができます。滞納者の一般債権者は、貸金返還請求訴訟などの民事裁判を起こして勝訴判決を得て、これを債務名義として、不動産強制執行の申立をする必要があります。一般債権者の場合は、裁判を起こして勝訴して、これを確定させ、強制執行を申し立てなければ差押できませんので、税務署の差押手続は、これに比べますと、極めて簡単であると言えます。

国税徴収法第68条(不動産の差押の手続及び効力発生時期)
不動産(地上権その他不動産を目的とする物権(所有権を除く。)、工場財団、鉱業権その他不動産とみなされ、又は不動産に関する規定の準用がある財産並びに鉄道財団、軌道財団及び運河財団を含む。以下同じ。)の差押は、滞納者に対する差押書の送達により行う。
2項 前項の差押の効力は、その差押書が滞納者に送達された時に生ずる。
3項 税務署長は、不動産を差し押えたときは、差押の登記を関係機関に嘱託しなければならない。
4項 前項の差押の登記が差押書の送達前にされた場合には、第二項の規定にかかわらず、その差押の登記がされた時に差押の効力が生ずる。

不動産を所有する滞納者に対して、抵当権者が居る場合は、抵当権者も支払いが滞っていれば比較的簡易に差押の申立をすることができます。担保不動産実行手続(民事執行法180条)です。

国税と抵当権の優先関係は、次のようになっています。

あ)差押時期の前後を問わず、原則として国税が優先する(国税徴収法8条)。
い)但し、滞納処分となった国税の法定納期限前に登記された抵当権については国税に優先する(国税徴収法16条)。

滞納者の不動産に抵当権などの担保権が設定されている場合は、これらの権利との調整が必要となりますので、不動産の換価手続は、原則として民事執行法に基いて、担保不動産競売手続によって換価されることになります。

しかし、滞納者が所有する不動産に抵当権などの担保権の設定が無い場合は、税務署による差押通知の送達後、国税徴収法に基き、税務署の公売手続により換価(売却)手続が行われることになります。通常の銀行融資では、債務者所有の不動産は全て抵当権を設定することになりますので、抵当権の設定が無い状態というのは極めて珍しい事情になりますが、例えば融資実行後に債務者が不動産を取得した場合や、法人融資で代表者個人の自宅について銀行も了解のもとに担保提供してなかった場合などに、そのような可能性を生じます。

3、上記の通り、手続の根拠規定と性質が異なる為、入札手続についても、落札者の明け渡し手続についても、若干異なります。

民事執行法による不動産競売手続では、入札検討者に対して、いわゆる3点セットが開示され、これを検討することができます。「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」です。物件明細書は、裁判所書記官が作成し、売却により消滅する権利や売却後も存続する権利について記載されています。現況調査報告書は執行官が強制的に対象不動産に立ち入って占有関係や権利関係について調査した報告書です。評価書は、不動産鑑定士が現況調査や近隣不動産価格などを勘案して評価額を査定したものです。

他方、国税徴収法に基く公売手続でも、必要に応じて不動産鑑定士の鑑定評価を参考にして見積り額が査定されますが、詳細な現況調査報告書や、鑑定士の評価書は開示されない取扱いです。また、税務署が売却後の権利関係について物件明細書のような書類で事前に提示するということもありません。公売手続では、買受人の自己責任で、物件を現況調査し、権利関係も検討しなければなりません。公売の物件情報には、次のような留意事項が表示されることがあります。

※税務署の公売で表示されることの多い留意事項の例
公売は現況有姿により行うものであるため、次の一般的事項を十分ご理解の上、公売へご参加ください
1 公売財産については、あらかじめその現況及び関係公簿等を確認してください
2 公売財産に隠れた瑕疵(かし)があっても、執行機関(国)は、担保責任を負いません
3 執行機関(国)は、公売財産の引渡し義務を負わないため、使用者又は占有者に対して明渡しを求める場合や不動産内にある動産の処理などはすべて買受人の責任において行うことになります
4 土地の境界については隣接地所有者と、接面道路(私道)の利用については道路所有者とそれぞれ協議してください
5 土壌汚染やアスベストなどに関する専門的な調査は行っておりません


民事執行法による競売と国税徴収法による公売の最も大きな違いは、落札後の明け渡し手続です。担保不動産強制競売手続では、買受人に対抗できない占有者に対して引渡命令(民事執行法83条)の申立をすることができ、裁判手続によらず簡易な手続により、明け渡しの強制執行をすることができますが、国税徴収法に基く公売手続では、このような制度は法定されていませんので、買受人が占有者と独自に交渉し、又は、裁判手続を行い、明け渡しを進めていく必要があります。

民事執行法の引渡命令というのは、買受人に対抗できない占有者に対して、買受人からの申し立てにより簡易な手続で裁判所の命令を得ることができ、これを債務名義として建物明け渡しの強制執行も行うことができるという制度です(民事執行法83条)。「買受人に対抗できない占有者」というのは、@前所有者自身の占有、A前所有者から無償で使用貸借している占有、B抵当権設定後に引渡しを受けた賃借人の占有、などです。

税務署の公売では、この手続が使えませんので、買受人が自己責任で、建物の引渡しを受けなければなりません。

具体的には、「占有移転禁止仮処分」「建物明け渡し訴訟」「建物明け渡し強制執行」の3つの手続が必要となります。訴訟提起から判決確定まで、数ヶ月から1年程度の時間が掛かることが多いので、占有者が移転してしまうと、判決が執行できなくなってしまいます。従って、訴訟提起前に占有の移転を禁止する保全命令の申し立てが必要になるのです。

民事保全法62条(占有移転禁止の仮処分命令の効力)
1項 占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。
一号 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者
二号 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者
2項 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。

このような相違がありますので、税務署の公売では、裁判所の競売よりも、さらに、入札参加者が少なくなり、落札価格は低額となる傾向があります。

4、税務署の公売により建物を落札した場合は、「鍵がかかっておらず、荷物も一切無い」という例外的な場合を除いて、「従前の占有者(最後に鍵を施錠した人物)と交渉して引渡しを受ける」か、「従前の占有者を債務者として、占有移転禁止仮処分申立を行い、その後、建物明け渡し請求訴訟を提起し、勝訴判決を得て、建物明け渡し強制執行の申し立てを行う」必要があります。本邦は法治国家であり、正当な権利を有している権利者であっても、当事者の合意がある場合を除いて、法の支配の理念から自力救済を行うことは認められておらず、法令に定められた手続に従って権利を実現する必要があります。

公売の物件情報に「空家」と表示されていても、建物が施錠されているのであれば、従前占有者の占有が継続していると評価することができます。落札して代金を払ったとしても、従前占有者の同意なく、建物に立ち入ることはできません。従前占有者である納税義務者が夜逃げしており連絡がつかない場合でも、裁判所に対して、公示送達の申立をすることにより裁判をすることができます。

民事訴訟法110条(公示送達の要件)
次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一号 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二号 第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三号 外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四号 第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合

従前の占有者の同意なく鍵をあけて建物に立ち入った場合は住居侵入罪(刑法130条)、同意なく従前の占有者の占有を奪った場合は不動産侵奪罪(刑法235条の2)や、同意なく従前占有者の物品を損壊した場合は器物損壊罪(刑法261条)、同意なく従前の占有者の物品を領得した場合は窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性がありますのでご注意下さい。法的手続きに則って明け渡しの手続をする必要があります。お困りの場合はお近くの法律事務所にご相談下さい。


※国税徴収法
(差押の要件)
第四十七条  次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一  滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二  納税者が国税通則法第三十七条第一項 各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
2  国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項 各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
3  第二次納税義務者又は保証人について第一項の規定を適用する場合には、同項中「督促状」とあるのは、「納付催告書」とする。


(公売)
第九十四条  税務署長は、差押財産を換価するときは、これを公売に付さなければならない。
2  公売は、入札又はせり売の方法により行わなければならない。
(公売公告)
第九十五条  税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも十日前までに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、公売に付する財産(以下「公売財産」という。)が不相応の保存費を要し、又はその価額を著しく減少するおそれがあると認めるときは、この期間を短縮することができる。
一  公売財産の名称、数量、性質及び所在
二  公売の方法
三  公売の日時及び場所
四  売却決定の日時及び場所
五  公売保証金を提供させるときは、その金額
六  買受代金の納付の期限
七  公売財産の買受人について一定の資格その他の要件を必要とするときは、その旨
八  公売財産上に質権、抵当権、先取特権、留置権その他その財産の売却代金から配当を受けることができる権利を有する者は、売却決定の日の前日までにその内容を申し出るべき旨
九  前各号に掲げる事項のほか、公売に関し重要と認められる事項
2  前項の公告は、税務署の掲示場その他税務署内の公衆の見やすい場所に掲示して行う。ただし、他の適当な場所に掲示する方法、官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げる方法その他の方法を併せて用いることを妨げない。

(見積価額の公告等)
第九十九条  税務署長は、公売財産のうち次の各号に掲げる財産を公売に付するときは、当該各号に掲げる日までに見積価額を公告しなければならない。
一  不動産、船舶及び航空機 公売の日から三日前の日
二  せり売の方法又は第百五条第一項(複数落札入札制)に規定する方法により公売する財産(前号に掲げる財産を除く。) 公売の日の前日(当該財産につき第九十五条第一項ただし書(公売公告)に該当する事実があると認めるときは、公売の日)
三  その他の財産で税務署長が公告を必要と認めるもの 公売の日の前日
2  税務署長は、見積価額を公告しない財産を公売するときは、その見積価額を記載した書面を封筒に入れ、封をして、公売をする場所に置かなければならない。
3  第九十五条第二項の規定は、第一項の公告について準用する。ただし、税務署長は、公売財産が動産であるときに限り、その財産に見積価額を記載した用紙をはりつけて、この公告に代えることができる。
4  税務署長は、第一項の場合において、公売財産上に賃借権(不動産又は船舶に係るものに限る。)又は地上権があるときは、あわせてその存続期限、借賃又は地代その他これらの権利の内容を公告しなければならない。
(公売保証金)
第百条  公売財産の入札又は競り売りに係る買受けの申込み(以下「入札等」という。)をしようとする者(以下「入札者等」という。)は、税務署長が公売財産の見積価額の百分の十以上の額により定める公売保証金を次の各号に掲げるいずれかの方法により提供しなければならない。ただし、税務署長は、公売財産の見積価額が政令で定める金額以下である場合又は買受代金を売却決定の日に納付させるときは、公売保証金の提供を要しないものとすることができる。
一  現金(国税の納付に使用することができる小切手のうち銀行の振出しに係るもの及びその支払保証のあるものを含む。次号、第四項及び第百十五条第三項(買受代金の納付の期限等)において同じ。)で納付する方法
二  入札者等と保証銀行等(銀行その他税務署長が相当と認める者をいう。以下この号及び第四項において同じ。)との間において、当該入札者等に係る公売保証金に相当する現金を税務署長の催告により当該保証銀行等が納付する旨の契約(財務省令で定める要件を満たすものに限る。)が締結されたことを証する書面を税務署長に提出する方法
2  入札者等は、前項ただし書の規定の適用を受ける場合を除き、公売保証金を提供した後でなければ、入札等をすることができない。
3  公売財産の買受人は、第一項第一号に掲げる方法により提供した公売保証金がある場合には、当該公売保証金を買受代金に充てることができる。ただし、第百十五条第四項の規定により売却決定が取り消されたときは、当該公売保証金をその公売に係る国税に充て、なお残余があるときは、これを滞納者に交付しなければならない。
4  税務署長は、第一項第二号に掲げる方法により公売保証金を提供した入札者等に対して第百十五条第四項の規定による処分をした場合には、当該入札者等に係る保証銀行等に当該公売保証金に相当する現金を納付させるものとする。この場合において、当該保証銀行等が納付した現金は、当該処分を受けた者が第一項第一号に掲げる方法により提供した公売保証金とみなして、前項ただし書の規定を適用する。
5  前項の規定は、税務署長が、第百八条第二項(公売実施の適正化のための措置)の規定による処分をした場合について準用する。この場合において、前項中「第百十五条第四項」とあるのは「第百八条第二項(公売実施の適正化のための措置)」と、「前項ただし書」とあるのは「同条第三項」と読み替えるものとする。
6  税務署長は、次の各号に掲げる場合には、遅滞なく、当該各号に規定する公売保証金をその提供した者に返還しなければならない。
一  第百四条から第百五条まで(最高価申込者等の決定)の規定により最高価申込者及び次順位買受申込者(以下この項、第百六条第一項及び第二項(入札又は競り売りの終了の告知等)、第百八条第一項及び第二項並びに第百十四条(買受申込み等の取消し)において「最高価申込者等」という。)を定めた場合において、他の入札者等の提供した公売保証金があるとき。
二  入札等の価額の全部が見積価額に達しないことその他の理由により最高価申込者を定めることができなかつた場合において、入札者等の提供した公売保証金があるとき。
三  第百十四条の規定により最高価申込者等又は買受人がその入札等又は買受けを取り消した場合において、その者の提供した公売保証金があるとき。
四  第百十五条第三項の規定により最高価申込者が買受代金を納付した場合において、最高価申込者が提供した公売保証金で第三項本文の規定により買受代金に充てたもの以外のもの又は次順位買受申込者が提供した公売保証金があるとき。
五  第百十七条(国税の完納による売却決定の取消し)の規定により売却決定が取り消された場合において、買受人の提供した公売保証金があるとき。
(入札及び開札)
第百一条  入札をしようとする者は、その住所又は居所、氏名(法人にあつては、名称。以下同じ。)、公売財産の名称、入札価額その他必要な事項を記載した入札書に封をして、これを徴収職員に差し出さなければならない。この場合において、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律 (平成十四年法律第百五十一号)第三条第一項 (電子情報処理組織による申請等)の規定により同項 に規定する電子情報処理組織を使用して入札がされる場合には、入札書に封をすることに相当する措置であつて財務省令で定めるものをもつて当該封をすることに代えることができる。
2  入札者は、その提出した入札書の引換、変更又は取消をすることができない。
3  開札をするときは、徴収職員は、入札者を開札に立ち会わせなければならない。ただし、入札者が立ち会わないときは、税務署所属の他の職員を開札に立ち会わせなければならない。
(再度入札)
第百二条  税務署長は、入札の方法により差押財産を公売する場合において、入札者がないとき、又は入札価額が見積価額に達しないときは、直ちに再度入札をすることができる。この場合においては、見積価額を変更することができない。
(せり売)
第百三条  せり売の方法により差押財産を公売するときは、徴収職員は、その財産を指定して、買受の申込を催告しなければならない。
2  徴収職員は、せり売人を選び、差押財産のせり売を取り扱わせることができる。
3  前条の規定は、差押財産のせり売について準用する。
(最高価申込者の決定)
第百四条  徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない。
2  前項の場合において、最高の価額の入札者等が二人以上あるときは、更に入札等をさせて定め、なおその入札等の価額が同じときは、くじで定める。

(不動産等の売却決定)
第百十三条  税務署長は、不動産等を換価に付するときは、公売期日等から起算して七日を経過した日(以下「売却決定期日」という。)において最高価申込者に対して売却決定を行う。
2  次順位買受申込者を定めている場合において、次の各号の一に該当する処分又は行為があつたときは、税務署長は、当該各号に掲げる日において次順位買受申込者に対して売却決定を行う。
一  税務署長が第百八条第二項(最高価申込者等の決定の取消し)の規定により最高価申込者に係る決定の取消しをしたとき。 当該最高価申込者に係る売却決定期日
二  最高価申込者が次条の規定により入札の取消しをしたとき。 当該入札に係る売却決定期日
三  最高価申込者である買受人が次条の規定により買受けの取消しをしたとき。 当該取消しをした日
四  税務署長が第百十五条第四項(売却決定の取消し)の規定により最高価申込者である買受人に係る売却決定の取消しをしたとき。 当該取消しをした日

(買受代金の納付の期限等)
第百十五条  換価財産の買受代金の納付の期限は、売却決定の日(買受人が次順位買受申込者である場合にあつては、同日から起算して七日を経過した日)とする。
2  税務署長は、必要があると認めるときは、前項の期限を延長することができる。ただし、その期間は、三十日を超えることができない。
3  買受人は、買受代金を第一項の期限までに現金で納付しなければならない。
4  税務署長は、買受人が買受代金を第一項の期限までに納付しないときは、その売却決定を取り消すことができる。
(買受代金の納付の効果)
第百十六条  買受人は、買受代金を納付した時に換価財産を取得する。
2  徴収職員が買受代金を受領したときは、その限度において、滞納者から換価に係る国税を徴収したものとみなす。
(国税の完納による売却決定の取消し)
第百十七条  税務署長は、換価財産に係る国税の完納の事実が買受人の買受代金の納付前に証明されたときは、その売却決定を取り消さなければならない。

(権利移転の登記の嘱託)
第百二十一条  税務署長は、換価財産で権利の移転につき登記を要するものについては、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の法令に別段の定めがある場合を除き、その買受代金を納付した買受人の請求により、その権利の移転の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

(権利移転に伴う費用の負担)
第百二十三条  第百二十条第二項(有価証券の裏書等の代位)の規定による手続に関する費用及び第百二十一条(権利移転の登記の嘱託)の規定による嘱託に係る登記の登録免許税その他の費用は、買受人の負担とする。

※民事執行法第83条(引渡命令)
執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2項  買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項 に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。
3項  執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。
4項  第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5項  第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。


租税通則法
(滞納処分)
第四十条  税務署長は、第三十七条(督促)の規定による督促に係る国税がその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納されない場合、第三十八条第一項(繰上請求)の規定による請求に係る国税がその請求に係る期限までに完納されない場合その他国税徴収法 に定める場合には、同法 その他の法律の規定により滞納処分を行なう。

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