地代減額請求(最終改訂平成23年6月27日)
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1980年代後半など、地価の高い時代に借地契約をして土地を賃借し、そこに建物を建築して所有して居住している場合は、地代が従来の基準で高額に設定されているケースも多い様です。また、特約で「3年ごとに地代を5パーセントずつ増額させる」「借地法12条の地代減額請求権の規定は本契約では適用せず地代の減額は行わない」という賃料自動改定特約や地代減額請求権排除特約が契約書に盛り込まれているケースも多い様です。このようなケースでも、その後の地価下落により、地代の減額請求ができる場合がありますので、以下の記事を参考にして下さい。
逆に、地代が不相当に安くなっているケースでは地代増額請求ができる場合もあります。相当額への修正を求めるという意味で、本件の手続と類似しますので、該当する場合は参考になさって下さい。
概要:
1、 借地法12条1項の地代増減請求権、及び平成4年8月1日以降の契約に適用される借地借家法11条1項の地代等増減請求権を排除する特約は、経済情勢の変化等により特約により定められた地代が不相当となった場合には効力を失い、当事者は同条に基づく地代増減請求権を行使しうると解釈されています。
2、 継続地代の適正額の算出方法に決まりはありませんが、有力な裁判例では、@地上建物の賃料から、いわゆる「土地残余法」により算出する方法と、A差額配分法とスライド法と利回り法と比準賃料を平均して算出する方法があります。
3、 地代減額請求は、具体的な希望額を明記した内容証明郵便で行います。内容証明通知後の協議でも合意成立しない場合は、民事調停法24条の3第1項により、地代減額請求の裁判を起こす前に、宅地建物調停を提起する必要があります。調停が不調になった場合は、その不調になった事を証明する調停調書を添付して、地代減額確認訴訟を提起することができます。調停の管轄は、土地所在地の簡易裁判所が原則ですが、土地賃貸借契約書で地方裁判所を合意管轄とする旨の定めがあればそちらに従うことになります。裁判の管轄は、相手方住所地または不動産所在地の地方裁判所になりますが、土地賃貸借契約書で合意管轄の定めがあればそちらに従うことになります。
解説:
1、(借地契約および借地借家法11条1項(旧借地法12条1項)の趣旨)
建物所有の目的で土地を他人に使用させて、その対価として賃料を授受するという契約を、土地賃貸借契約といいます(民法601条)。借地権者は、その土地に借地権設定登記を有しない場合でも、建築した建物の所有権保存登記を経由し、地代を払い続ける限り、土地所有者が変更されても賃借権を主張して建物所有を継続することができます(借地借家法10条1項)。賃貸借契約は、元来、(約束した当事者間でのみ有効な)当事者間の債権契約なのですが、借地借家法では、このように土地賃借権に第三者対抗力を持たせることにより、借地権者の地位の安定化、並びに借地権者の保護を図り、借地契約を促進しようとしています。国土は有限であり、土地は限られた資産ですから、これを有効活用することにより社会経済の発展に役立てる必要がありますので、自分が直接利用する場合の他、他人に貸して利用してもらう場合の法律関係についても、法律が整備されているのです。
(条文参照)
民法601条(賃貸借) 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
借地借家法10条1項(借地権の対抗力等)借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
民法の基本原理である契約自由の原則がありますので、土地の所有権者は、賃借人が了解する限り、どのような土地でも好きな賃料額で相手方に貸し渡すことができますが、土地の価格は常に変動しています。時間の経過に伴って、契約当時の地代が不相当になってしまう場合があります。地価が上昇した場合は貸主が地代増額を求めることになりますし、地価が下落した場合は借主が地代減額を求めることになります。そのような場合に、当事者間の公平を図るために、借地借家法11条(旧借地法12条)で地代等増減請求権が定められています。昨今の世界経済の停滞と、本邦のバブル崩壊後の地価下落と出生率の低下による人口減少社会到来により、どちらかというと地代等減額請求手続の意義が高まっていると言えるかもしれません。
(条文参照)
借地借家法11条1項(地代等増減請求権)地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2項 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3項 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
地代減額請求の内容証明郵便を送付しても、地代増減の裁判が確定するまでは、従前の地代額(又は地主が相当と認めた額)を払わなければなりませんが、裁判により相当額が定められて既払い額からの減額が認められた場合は年1割の利息を付けて差額の返還をうけることができます(借地借家法11条3項、旧借地法12条3項)。
借地借家法11条(および旧借地法12条)は当事者間の公平を図るための規定ですので、強行規定と解釈されており、地代自動改定特約を定めていても、借地借家法11条1項(旧借地法12条1項)の適用を排除することはできないと解釈されています。
<参考判例、最高裁平成15年6月12日判決@>
「地代等自動改定特約は、その地代等改定基準が借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基く相当なものである場合には、その効力を認めることができる。しかし、当初は効力が認められるべきであった地代等自動改定特約であっても、その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同項に基く地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。」
また、本件のように地代の減額を契約書の特約で明確に排除している場合であっても、裁判所は、借地借家法11条1項の地代等増減請求権の行使は妨げられるものではないと解釈しています。
<参考判例、最高裁平成16年6月29日判決A>
「本件各賃貸借契約には、3年ごとに賃料を消費者物価指数の変動等に従って改定するが、消費者物価指数が下降したとしても賃料を減額しない旨の本件特約が存在する。しかし、借地借家法11条1項の規定は、強行法規であって、本件特約によってその適用を排除することができないものである(※判例引用省略)。したがって、本件各賃貸借契約の当事者は、本件特約が存することにより上記規定に基く賃料増減請求権の行使を妨げられるものではないと解すべきである」
強行法規というのは、公平の原則や公序良俗や信義則など民法(私法)の基本原則に基き定められた条文であって、当事者間が契約書などで特約を定めて適用を排除しようとしても、その特約が無効と解釈されてしまう規定です。民法の原則には、「契約自由の原則」もありますが、どのような契約でも際限なく自由に定めることができることになってしまうと、有名なシェークスピアの戯曲「ベニスの商人」のように「返済が遅れたときは肉1ポンドを以って支払う」というような主張もなし得ることになってしまいます。このような恣意的な法律の主張は、「法の支配」の原理に照らして自ずから限界があることになります。その限界について定めた規定が、強行法規(強行規定)なのです。強行規定は、借地借家法16条の様に条文で明示されている場合もありますし、借地借家法11条1項の様に条文には「反する特約は無効」と明示されていないものの、文理解釈や反対解釈や条理解釈などの法解釈を加えることにより強行規定とされる場合もあります。借地借家法11条1項の場合には、「契約の条件にかかわらず」という言葉もありますし、但し書きで一定期間の特約の有効性が規定されていますので、間接的に一定期間を超える特約は無効と読むことが可能となっており、比較的わかりやすい強行規定と言えます。
<強行規定が明示されている例>
借地借家法16条(強行規定)第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
<強行規定が明示されない例>
借地借家法11条1項(地代等増減請求権)地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
そこで、本件の契約当時から約20年の期間経過の経済情勢の変化を検討してみますと、確かに大幅な地価の下落が確認できます。日本のバブル経済が破綻して以降、日本の主要都市の住宅地の地価は下落の一途を辿っています。1990年頃をピークに、2010年頃までに約3分の1程度まで下落しているようです。
<参考URL=一般財団法人日本不動産研究所の市街地価指数>
http://www.reinet.or.jp/pdf/report/201009_p168_6toshi.pdf
実際の裁判ではこのような包括的な地価下落を示す資料の他に、個別地点の地価の変遷を示す資料の提出も必要となりますが、本件でも、概ね、契約締結時点から大幅に経済情勢が変化しており特約があったとしてもそれを維持することは不相当な状態に至っていると評価することができると思います。
従いまして、本件でも地代減額請求権を行使することが可能と考えられますので、不動産鑑定士の鑑定書など関係資料を準備した上で、内容証明通知などにより、地代減額請求権を行使する事をお勧めいたします。
2、(適正な継続地代の具体的な計算方法)
本邦において対価を得て不動産鑑定を業務として行う場合は、国家資格である不動産鑑定士が設置された不動産鑑定事務所が業務を行う必要があります(不動産の鑑定評価に関する法律35条、同36条)。そして、不動産鑑定士が鑑定評価を行うに際して、公平性が保たれるように、統一的な基準が「不動産鑑定評価基準」として、国土交通省から提示されています。
<参考URL=国土交通省の不動産鑑定評価基準>
http://tochi.mlit.go.jp/kantei/additional1.pdf
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/03/030703_2/030703_2_4.pdf
これによれば、不動産鑑定士が継続地代について鑑定評価を行う場合の評価方法は、@差額配分法、A利回り法、Bスライド法による賃料と、C比準賃料を関連付けて決定するものとされています。
鑑定士による評価では、これらの評価方法を併用し、各評価方法により算出された賃料額を加重平均(3対2対1など重みを付けて平均化する方法)して算出する事例が多いようです。不動産の評価は、数学の方程式を機械的にあてはめるようなものではなく、複雑に影響しあう多数の要素を総合考慮して妥当性を持った数値を提示することが求められますので、加重平均の重み付けの方法についても、一概にどのような係数で行うか、あらかじめ決められているわけではありません。
判例は、上記@〜Cを加重平均(各項目に異なる係数を掛けて合計して割り算した数値)して算出したもの(名古屋高裁平成14年11月27日判決)と、土地残余法(収益還元法)により基礎価格を算定した利回り法により算出するもの(東京高裁平成14年10月22日判決)があります。
なお、これら判例による地代算出方法は借家契約における適正継続賃料の算出方法と若干異なっていますが、これは賃貸目的物の違いと、契約期間の違いなど、借家契約と借地契約の性質の違いから派生しているものと思われます。建物を貸すには建設費用が掛かりますし老朽化や地震や火災などで損壊するリスクがありますが、土地を貸す時には造成費用しか掛かりませんし老朽化や損壊のリスクも基本的にありません。また、一般的に借地契約の方が目的物の価格が高額で契約期間も長期になる傾向があると言えます。
上記の各評価方法を具体的に解説致します。
@ 差額配分法
差額配分法は、対象土地の更地価格を基礎価格として期待利回りを乗じた適正な実質地代と、実際の地代との差額のうち、貸主に帰属すると考えられる部分(割合)を、実際の地代に加減することにより継続地代を算出する方式です。期待利回りは3パーセント前後とする判例があります。
地主に帰属する部分(割合)は、一般的要因や地域要因のほか、次の3点を分析して求められます。裁判例では、当事者の公平を考慮して、3分法を採用し、差額の3分の1を実際の地代に加算するものが多いようです。
あ)契約上の経過期間と残存期間
い)契約締結及びその後現在に至るまでの経緯
う)貸主又は借主の近隣地域の発展に対する寄与度
<計算式>
差額地代=更地価格×期待利回り(例=3パーセント)−実際の地代
3分法による地代試算額月額={実際の地代+(差額地代÷3)}÷12
A利回り法
利回り法は、対象土地の更地価格である基礎価格に継続賃料利回りを乗じて試算地代を求める方式です。
継続賃料利回りは、現行賃料を定めた時点における基礎価格に対する純賃料の割合を標準として、契約締結時及びその後の各賃料改定時の利回り、基礎価格の変動の程度、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における対象不動産と類似の不動産の賃貸借等の事例又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等の事例における利回りを総合的に比較考量して求められます。
実際の期待利回りは1パーセント前後とする裁判例が多くなっております。なお、私見ですが、当事者間の公平性を考えると、この利回りは1パーセントを大きく下回ることは妥当ではない様に思います。土地には固定資産税も掛かりますし即座に換金しにくい性質がありますので、(当然のことですが)保有することに税金も掛からず即座に換金しうる国債の金利よりも大幅に低いことになりますと、土地の有効活用が妨げられ、長期的に地価下落やそれに伴う逆資産効果(不動産価格下落により不動産所有者の総資産が目減りし投資経済活動が阻害されること)による弊害の恐れがあるからです。一部判例が採用する1パーセントという数値はぎりぎり妥当性を維持しうる最低限の数値と言えるでしょう。
<計算式>
契約時の実績地代利回り(これが地代期待利回りとなる)=年間支払い地代÷契約時不動産価格
利回り法による地代試算額月額=減額請求時不動産価格×地代期待利回り÷12
Bスライド法
スライド法は、現行地代を定めた時点における地代に、物価指数などの変動率を乗じて試算賃料を求める手法です。
変動率は、契約時から減額請求時点まで期間に対応する「消費者物価指数」「家賃指数」「賃金指数」「公租公課推移指数」などの平均変動率を算出して用いられることが多いようです。
<参考URL=総務省統計局の消費者物価指数解説>
http://www.stat.go.jp/data/cpi/
<参考URL=厚生労働省の賃金センサス解説>
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/52-20.html
<参考URL=一般財団法人日本不動産研究所の資料解説>
http://www.reinet.or.jp/?page_id=168
<計算式>
スライド法による地代試算額月額=合意地代年額×スライド変動率÷12
C賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、まず多数の新規の賃貸借等の事例を収集して適切な事例の
選択を行い、これらに係る実際実質賃料(実際に支払われている不動産に係るす
べての経済的対価)に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた賃料を比較考量し、これによって対象不動産の試算賃料を求める手法です。この手法による試算賃料を比準賃料とも言います。賃貸事例比較法は、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域等において対象不動産と類似の不動産の賃貸借等が行われている場合又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等が行われている場合に有効です。
D土地残余法(収益還元法)により基礎価格を算定した利回り法
不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還
元法以外の手法によって建物の価格を求めることができるときは、当該不動産に基づく純収益から建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益(土地の純収益)を還元利回りで還元する手法を適用することができます。この方法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地又は建物等に適正に配分することができる場合に有効です。土地残余法を適用するに当たっては、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は新築か築後間もないものでなければならないとされています。なお、対象不動産が更地である場合においても、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定することによりこの方法を適用することができます。
<計算式>
土地の純収益=(土地建物の純収益−建物価格×建物還元利回り)
土地の収益価格=土地の純収益÷土地の純収益に対応する還元利回り
適正地代試算額月額=(土地の収益価格×期待利回り)÷12
ここで、還元利回りとは、収益還元法の収益価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものとされています。実際の還元利回りの算定は、(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
や、(イ)借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法、が用いられます。銀行の借り入れ利率や、他の金融資産(10年国債など)の利率などを総合的に考慮して算定されます。
また、期待利回りは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相
当する額に対して期待される純収益のその資本相当額に対する割合をいいます。
期待利回りを求める方法については、収益還元法における還元利回りを求める方法に準ずるものとされています。但し、期待利回りの算定では、賃料の有する特性に留意すべきとされており、回収不能リスクなどを考慮して、還元利回りよりも若干高率となる可能性があります。
<判例紹介>
あ)名古屋高裁平成14年11月27日判決
「各試算賃料の特性と規範性を検討して、差額配分法を3、スライド法を3、利回り法を2、比準賃料Aを4、比準賃料Bを2とする比率による加重平均で調節して、本件賃貸借契約の適正継続賃料を算定することが妥当である。」
い)東京高裁平成14年10月22日判決
「もともと利回り法は、本来土地の市場価格が収益還元価格によって形成される場合に初めて、正当な地代計算方法たりうるものなのである。したがって、利回り法を使うのであれば、その中にどの程度の値上がり期待部分があるのか不明な土地の市場価格を基礎価格とすべきではなく、収益還元価格を算出し、それをそのまま、すなわち、借地権価格を控除しないで、基礎価格とするべきなのである。」
3、(地代等減額請求の具体的な手続方法)
地代等減額請求の手続は、借地借家法11条3項の規定により、「当事者の協議」が原則となります。まず、不動産鑑定士に地代の減額請求ができるかどうか、継続地代の簡易鑑定を依頼してみましょう。鑑定の結果、減額請求が可能な場合は、その旨を通知書に記載して、内容証明郵便で地主に通知して、減額請求をすることになります。通知文の基本的な要素は、「借地契約の特定」、「○○の理由により、借地借家法11条1項(又は旧借地法12条1項)に基づいて地代の減額請求をします」、「相当地代は○○円ですので本書面到達後2週間以内に承諾通知返信をお願い致します」という内容になります。協議をしても合意が成立しない場合は、土地所在地の簡易裁判所に宅地建物調停を申立することになります。
民事調停法24条の3第1項により、借賃減額請求の裁判を起こす前に、宅地建物調停を提起する必要があります(調停前置主義)。管轄は土地所在地の簡易裁判所が原則ですが、借地契約書で地方裁判所を合意管轄とする旨の定めがあればそちらに従うことになります(民事調停法24条)。
調停が不調になった場合は、その不調になった事を証明する調停調書を添付して、地代減額確認訴訟を提起することができます。裁判の管轄は、相手方住所地または土地所在地の地方裁判所になりますが、借地契約書で合意管轄の定めがあればそちらに従うことになります(民事訴訟法4条、5条12号)。
借地契約から一定の時間が経過し、不動産市況も下落しているなどの事情がある場合は、一度お近くの法律事務所に地代減額請求の可否についてご相談なさってみると良いでしょう。