分譲マンション建替え決議(最終改訂平成27年10月9日)
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マンション建替円滑化法の手続きについては、こちらを御参照下さい。
建築基準法の耐震基準が大きく改正された1981年以前に建設された分譲マンションでは、住人の間で、建替え推進派と建替え拒否派の合意が形成されにくいという問題があるようです。建替え拒否派は、「日影規制の導入で既存不適格になっているので容積率いっぱいに建てることはできない」「高齢で資金も乏しいので建て替えは無理」という意見を主張される場合が多い様です。
このような問題に対応するため、平成14年6月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が制定されています。また規制緩和により容積率を増加させることができ、増加した床面積をデベロッパーに売却することにより建設費用に充当できる場合もあります。以下、概説致しますのでご参考になさって下さい。
要約:
1、既存不適格や建設費用の懸念について。1976年に日影規制が導入されましたが、その後、2002年に東京都の共同住宅建替誘導型総合設計制度(容積率の割増制度)や、2003年に天空率の導入がなされましたので、床面積を増加させることができるケースがあります。増加した床面積を事業協力者(マンション分譲会社=デベロッパー)に売却し、建設費用の一部に充てることができる場合があります。各自治体の都市計画課や、建築設計事務所や建設会社に相談してみましょう。
2、マンションの建て替え決議は、区分所有法62条で、管理組合の「組合員数」および「議決権=持分割合」の5分の4の多数決で、成立させることができます。議決権又は組合員数で5分の1を超える反対意見が無い限り、建物の取り壊しと建て替えを進めることが(法的には)可能です。
3、ほとんどのマンションでは、区分所有者の一部に、住宅ローンの返済継続中で、建物に抵当権が設定されている方がおられると思います。この場合、建替えに際して、建物を取り壊して、新マンションを建設するまでの間、一時的に、建物の抵当権を抹消する必要があることから、抵当権者の同意を得ることが困難なケースが予想されます。近隣の土地を合わせて再開発する場合には、抵当権の対象となっている土地も変更される可能性もあります。このような場合の、区分所有者の権利や、抵当権者の権利をスムーズに新しい権利へと移行させる為に、平成14年6月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が制定され、権利変換手続が規定されています。マンションの区分所有者の合意により、マンション建替組合を結成し、権利変換計画を作成することができます。
4、敷地権が借地権となっている場合は、建て替えには土地所有権者の承諾が必要となります。別途、借地権マンションの建て替えについての記事が当事務所事例集にありますので、そちらを参考にして下さい。
解説:
1、(既存不適格と建設費用の懸念について。)
既存不適格とは、マンションを建設した後に、建築基準法などの改正があり、建物建設に関する新たな法的規制がかけられることにより、老朽化後の建替えにおいて、同じ床面積を維持することができない建物を意味します。従来の建物の使用を継続することは可能ですが、建物の再建築時には新たな規制が適用されるため、売買契約時には重要事項説明書で説明することが必要です。
既存マンションで最も大きな既存不適格の原因は、1968年の「容積率導入」と、1970年の「北側斜線規制」と、1976年の「日影規制」です。
「容積率導入」について
1960年代まで、建築物の規制は高さ31m(百尺)の絶対高さ規制が原則でしたが、建設技術の向上や、市街化による空地不足により、低階高の粗悪ビルなどが問題となり、新たな建築規制が議論され、1968年に都市計画法の新設により、一部住居地域を除く絶対高さ制限の廃止と、容積率規制が導入されました。これにより、一部都心の既存マンションは、容積率をオーバーしている状態となり、建替えなどで新たに建築確認を受ける場合は、床面積の減少を余儀なくされることになりました。
「北側斜線規制、日影規制」について
昭和40年代以降、都市化の進展と国民の権利意識の高揚により、日照トラブルが増加し、日照権侵害の回復を求める訴訟が頻発しました(最高裁昭和47年6月27日判決など)。これを受けて、国会審議が行われ、1970年の建築基準法改正で北側斜線規制が導入され、1976年の建築基準法の改正により、建築基準法第56条の2が新設され、日影規制が導入されました。これにより、容積率の範囲内であっても、隣地の日照障害の程度によっては、建物を建築することができないケースが生まれました。
また、マンション新築時からの入居者には、老齢により職業をリタイアし、年金生活をしている方もおられます。これらの方は、日常の生活には支障が無いものの、マンションの建替えに必要な建設費用を負担することは到底不可能であると考える方もおられるでしょう。
2、(様々な規制緩和、増加した床面積による建設資金への充当)
1980年代以降の急激なバブル経済の進展により、都市部、都心部では、ビル建設用地の極端な不足を招き、1987年のブラックマンデーをきっかけとして、1990年代に入ってバブル経済の崩壊も起きました。これにより、景気回復策の一環として、様々な規制緩和が策定されることになります。勿論、その背景には、高層建築技術の進歩や、耐震・免震施工技術の進歩があります。地震国である我が国でも、安全なタワーマンションを建設しうる条件が揃ってきたと言えます。
建築基準法関係だけでも、次の通り、様々な規制緩和が行われました。
<参考URL=容積率等緩和制度、国土交通省の解説ページ>
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/kijunho.html
ここでは、特に重要と思われる、2点を解説します。
「総合設計制度の拡充」
総合設計制度は、敷地内に一定以上の公開空地を有するなど、市街地の環境の整備改善に役立つと認められる場合に、都道府県などの許可により、最高で2倍までの容積率の増大を認める制度です。建築基準法59条の2で定められています。
東京都では、1976年から総合設計制度に基く容積率の割り増しを許可していますが、2002年から、「共同住宅建替誘導型総合設計」の許可基準を定めてマンションの建替えも支援しています。この制度では、築30年以上経過した共同住宅において、最高で基準容積率の75パーセント増しの容積率の建物を建築することができます。増加した床面積をデベロッパーに売却すれば、建設工事代金の一部に充当することもできますので、検討してみると良いでしょう。
<参考URL=総合設計制度、国土交通省の解説ページ>
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/59-2sogo.html
<参考URL=総合設計制度、東京都の解説ページ>
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kijun/sougou_sk.htm
<参考URL=東京都の東京都総合設計許可要綱>
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kijun/sougou_sk_kaiseiyoukou.pdf
「天空率の導入」
天空率とは、ある地点に立って、視野角180度の魚眼レンズを天頂に向けた場合に、建物に遮られずに青空を臨むことができる割合を意味します。隣接敷地の建物による、「開放感」「通風」「日照」の影響度の尺度として有効ですが、複雑な計算処理が必要なため、法律上の規制には用いられてきませんでしたが、コンピューターの進歩などにより計算が可能となり、2002年の建築基準法改正により、従来の斜線規制と同程度の天空率を維持できる場合は斜線規制を緩和する、という規定が追加されました(建築基準法56条7項)。これにより、従来、斜線規制のために基準容積率一杯に建築することができなかった敷地でも、基準容積率に近い建物を建築できるケースが増えることになります。この制度により、斜線規制の導入で既存不適格となった建物でも、建替え後に床面積を維持できる可能性が出てくることになります。
これらの規制緩和の結果、建替え後に、実際に、どれくらいの床面積の建物を建てることができるのか、行政や建設会社や建築士に相談すると良いでしょう。床面積が増加した場合は、これをマンションデベロッパーに売却することにより、売買代金を建設工事代金に充当して、建設費用の負担を少なくしたり、場合によっては、新たな費用負担無しで建替えをすることができるケースもあります。更地にマンションを建設する場合の、いわゆる「等価交換方式」と類似の考え方ですが、マンションの建替えでは、「(規制緩和等により)増加した床面積」と「建設費用」を等価交換することになります。建設費用の負担ができないと主張する区分所有者に対して、この仕組みをよく説明する必要があるでしょう。
<参考URL=東京都都市整備局、分譲マンション建替えガイド>
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/135-04manshon.htm
3、(建替え決議)
マンションの建て替え決議は、区分所有法62条で、管理組合の「組合員数」および「議決権=持分割合」の5分の4の多数決で、成立させることができます。議決権又は組合員数で5分の1を超える反対意見が無い限り、建物の取り壊しと建て替えを進めることが(法的には)可能です。
建替え決議では、次の事項を定める必要があります。(区分所有法62条2項)
一号 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二号 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
三号 前号に規定する費用の分担に関する事項
四号 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
この3号と4号の定めは、必ずしも、現在の区分所有権の持分割合そのままの平等負担である必要はありませんので、一部の区分所有者が持分割合を越える費用負担を行い建替え後の床面積を増加させる、というような計画を定めることも可能となっています。建替え決議時点の経済状態は区分所有者によって様々でしょうから、実情にあった形で計画を定めることもできることになります。希望する一部の住民は建設費用をほとんど負担せず、床面積を大幅に減少させる、という計画もありえます。これは事実上、床面積と工事費用の等価交換方式に近いものと言えます。しかし、区分所有法62条3項で「前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない」と規定されており、建設費用負担の増減と、再建築後の床面積の増減を決める場合にも、建設費用と床面積の算定については時価に沿った相当額で計算することが必要と考えられます。勿論、出来上がった建替え決議案は区分所有者の5分の4以上の賛成を得る必要がありますから、区分所有者間で議論を尽くし、大多数の区分所有者の納得が得られる内容であることが必要です。
建替え決議は、マンションの管理組合にとって極めて重要な議題となりますので、組合総会の召集通知は会日の2ヶ月以上前に通知する必要があります(区分所有法62条4項、普通の召集通知は1週間前で足りる)。
建替え決議の召集通知では、次の事項を記載する必要があります(区分所有法62条5項)。通常は、建築基準法の耐震基準の変更(1981年6月1日)に対応するための耐震補強工事の見積内容が記載されることになるでしょう。
一号 建替えを必要とする理由
二号 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三号 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四号 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
そして、組合総会の1ヶ月前までに、この召集通知の記載事項に関して、説明会を行う必要があります(区分所有法62条6項)。通常は、耐震補強工事と建物建替工事の見積書を発行した建設会社の担当者もこの説明会に出席し、見積書の内容の説明や質疑応答を行うことになるでしょう。
建替え決議が5分の4以上の賛成で成立した場合は、建替え提案者(通常は管理組合理事会)から、この決議に賛成しなかった区分所有者に対して、建替えに参加するかどうか書面で催告が行われ、2ヶ月以内に返答が無い時は建替えに参加しない旨を回答したものとみなされます(区分所有法63条3項)。
そして、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が居るときは、建替えに賛成した区分所有者又は「これらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(「買受指定者」=通常はマンションデベロッパーである事業協力者)は、この建替反対の区分所有者の区分所有権を時価で売り渡すよう請求することができます(区分所有法63条4項)。
このようにして、区分所有者の全員が建替えの意思を持つ状態になった後で、建設会社との間で建物建設請負工事契約書を締結し、具体的な建替えの工事が進行していくことになります。
4、(隣地所有者との交渉、権利変換手続、マンション建替円滑化法)
建て替え決議が成立する前後から、隣地所有者や、区分所有権に担保権を持つ第三者(抵当権を設定した銀行や住宅金融公庫など)に対して、必要な連絡や交渉を開始することになります。
隣地所有者に対しては、建替えマンションの敷地との一体開発を提案することになります。もしも隣地所有者が建てている建物が1981年以前に建築された建物であれば、建替マンションと同様に耐震強度の問題点を抱えていることになりますので、一体開発により建替えすることができれば、建物の安全性を大幅に上げることができます。隣地の容積率も最大限に活用できる可能性があります。
抵当権者に対しては、マンションの建て替えをするので、建替えに際して、建物を取り壊して、新マンションを建設するまでの間、一時的に、建物の抵当権を抹消する必要があることから、抵当権者の同意が得られるよう、建替え計画を説明する必要があります。近隣の土地を合わせて再開発する場合には、抵当権の対象となっている土地も変更される可能性もあります。このような場合の、区分所有者の権利や、抵当権者の権利をスムーズに新しい権利へと移行させる為に、平成14年6月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が制定され、権利変換手続が規定されています。この法律による建替え手続でも抵当権者の個別の同意を得ることが原則ですが、万一了承が得られない場合であっても、建替え手続きを進める手段が法律により整備されています。
円滑化法の第1条の目的規定を引用します。
この法律は、マンション建替組合の設立、権利変換手続による関係権利の変換、危険又は有害な状況にあるマンションの建替えの促進のための特別の措置等マンションの建替えの円滑化等に関する措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
明記されてはいませんが、1981年以前に建築された建物を、大規模地震に対応しうる新耐震基準の建物に建替える事を促進するのが目的とされていると思われます。
マンションの区分所有者の合意により、マンション建替組合を結成し、権利変換計画を作成することができます。
建替組合の設立条件は次の通りです(円滑化法9条)。
1) 区分所有者が5名以上共同して申請すること。
2) 定款及び事業計画を定めて都道府県知事に申請し認可を受ける。
3) 区分所有者の人数及び議決権の4分の3以上の同意が必要。
定款に定めることにより、建替え組合には、マンションデベロッパー業者や建設会社など、一部の床面積を所有し共同売主となる、参加組合員を事業協力者として加入させることができます(円滑化法17条)。
認可された建替組合は、普通の会社のように法人格を持ち(円滑化法6条1項)、設立登記をして(民法36条)、資金の借り入れや、工事などの契約名義人となったり、不動産の所有をすることができます。
権利変換計画は、建替組合の5分の4以上の総会決議(円滑化法30条3項)と、全ての権利者の同意(円滑化法57条2項)を得た上で、都道府県知事に対して認可申請をすることができますが、どうしても同意が得られない場合は、「同意を得られない理由」と「同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置」を記載した書面を添付して、権利変換計画の認可を申請することができます(円滑化法57条3項)。
権利変換計画では円滑化法58条で定めるべき内容が法定されていますが重要なものは次の項目です。
1) 施行マンションの区分所有権が、施行再建マンションの区分所有権に移行する明細(円滑化法1項2号、3号、4号)。
2) 施行マンションの区分所有権者に対して担保権等を有する者の権利が、施行再建マンションの区分所有権の上に移行することとなる明細(同5号、6号)。
3) 施行マンションを賃借している借家権者が、施行再建マンションの借家権を取得することとなる明細、家賃の計算方法(同7号、8号、9号)。
4) 施行マンションに対する権利を有する者のうち、施行再建マンションの権利を取得しない者が居るときはその明細と、その価額(同10号)。
5) 施行マンションの隣地所有者で、一体開発をするために権利を失う者が居るときはその明細と、価額(同11号)。
6) 参加組合員(事業協力者であるデベロッパー)が所有することになる施行再建マンションの区分所有権の明細(同12号)。
つまり、権利変換計画が認可されると、施行マンションに関する、区分所有権や、担保権や借家権や隣接敷地の所有権が、瞬間的に、施行再建マンションの上に移行することになります。権利変換期日の段階では、まだ建物の取り壊しすら始まっておらず、マンションの建替え工事をする前ですが、法的には、瞬間的に、新しいマンションが竣工したのと同じ状態になります。これがこの法律の最大の特徴になります。
権利変換計画は、都道府県知事の審査を経て認可され、公告と権利者全員への通知により効力を生じます(円滑化法68条1項、2項)。
権利変換計画の認可基準は、円滑化法65条で次のように規定されています。
第65条(認可の基準) 都道府県知事は、第五十七条第一項後段の規定による認可の申請があった場合において、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、その認可をしなければならない。
一 申請手続又は権利変換計画の決定手続若しくは内容が法令に違反するものでないこと。
二 施行マンションに建替え決議等があるときは、当該建替え決議等の内容に適合していること。
三 権利変換計画について区分所有権等以外の権利を有する者の同意を得られないことについて正当な理由があり、かつ、同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置が適切なものであること。
四 区分所有権等以外の権利を有する者を確知することができないことについて過失がないこと。
五 その他基本方針に照らして適切なものであること。
権利変換計画に賛成しなかった組合員が居るときは、建替組合からその組合員に対する区分所有権の売り渡し請求をすることができます(円滑化法64条1項)。逆に、反対した組合員は、建替組合に対して区分所有権の買取請求をすることができます(円滑化法64条3項)。この売り渡し請求と、買取請求は、時価相当額が売買代金となります。当事者の協議が整わない場合は、裁判所が判決で決めることになります。
このように、担保権利者等で合理的な提案をしているにも関わらず同意しない者が居る場合や、相続後に移転登記がされていなかったり夜逃げなどで所在不明の権利者が居る場合でも、円滑化法65条1項3号に定める「適切な措置」をとることにより、マンションの建替えに支障を生じないように、確実に権利変換手続を進めることができるような仕組みになっています。この「適切な措置」は、条文では、「権利変換計画について区分所有権等以外の権利を有する者の同意を得られないことについて正当な理由があり、かつ、同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置が適切なものであること」と規定されておりますが、実際には、@同意が得られない区分所有者に提案した権利変換後の権利の経済的価値が他の区分所有者と平等公平の条件であったことや、A同意が得られない区分所有者に対する、建替えの必要性や、権利変更計画の内容についての説明を十分な資料を提供し、時間を掛けて行ったことや、B同意が得られない区分所有者の区分所有権の買取提案を行う際の条件提示が時価に即した相当額であることなどを記載する必要があるでしょう。
このようにして権利変換期日を迎え、全ての権利が新しい建物に移行した場合は、建物の取り壊しと再建築工事が開始できることになります。
5、法律事務所の活用
上記のように、マンション建替え円滑化法により、マンションの建替えがスムーズにできるような環境整備が進んでいるといえますが、マンションの建替えは、建替え反対の区分所有者、借家権者、抵当権者、隣地所有者、建設会社、事業協力者であるマンションデベロッパー、など、様々な相手方との膨大な量の交渉や折衝を経なければならない大変な仕事です。合意書や、契約書や通知書など、建替え手続きに際して発行される法律文書の量も大変多いと思います。できれば、計画の初期の段階から法律事務所に相談し、弁護士と一緒にこれらの手続を進めて行かれる事をお勧めいたします。
<参考条文>
建築基準法 第56条の2(日影による中高層の建築物の高さの制限) 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合においては、この限りでない。
2 同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなして、前項の規定を適用する。
3 建築物の敷地が道路、川又は海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する隣地との高低差が著しい場合その他これらに類する特別の事情がある場合における第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
4 対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、第一項の規定を適用する。
5 建築物が第一項の規定による日影時間の制限の異なる区域の内外にわたる場合又は建築物が、冬至日において、対象区域のうち当該建築物がある区域外の土地に日影を生じさせる場合における同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
建築基準法 第59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例※総合設計制度) その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第五十二条第一項から第九項まで、第五十五条第一項、第五十六条又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。
2 第四十四条第二項の規定は、前項の規定による許可をする場合に準用する。
(天空率による斜線規制の緩和)
建築基準法 第56条第7項 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
一 第一項第一号、第二項から第四項まで及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。)
前面道路の反対側の境界線上の政令で定める位置
二 第一項第二号、第五項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。)
隣地境界線からの水平距離が、第一項第二号イ又はニに定める数値が一・二五とされている建築物にあつては十六メートル、第一項第二号イからニまでに定める数値が二・五とされている建築物にあつては十二・四メートルだけ外側の線上の政令で定める位置
三 第一項第三号、第五項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。)
隣地境界線から真北方向への水平距離が、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物にあつては四メートル、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては八メートルだけ外側の線上の政令で定める位置
区分所有法 第62条(建替え決議) 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
2 建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
三 前号に規定する費用の分担に関する事項
四 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
3 前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
4 第一項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。
5 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、同条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
6 第四項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
7 第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、第三十五条第一項ただし書中「伸縮する」とあるのは、「伸長する」と読み替えるものとする。
8 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。
第63条(区分所有権等の売渡し請求等) 建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。
2 前項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。
3 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。
4 第二項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。
5 前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
6 建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第四項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
7 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。
マンションの建替えの円滑化等に関する法律
第1条(目的) この法律は、マンション建替組合の設立、権利変換手続による関係権利の変換、危険又は有害な状況にあるマンションの建替えの促進のための特別の措置等マンションの建替えの円滑化等に関する措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
第9条(設立の認可) 区分所有法第六十四条
の規定により区分所有法第六十二条第一項 に規定する建替え決議(以下単に「建替え決議」という。)の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「建替え合意者」という。)は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。
2項 前項の規定による認可を申請しようとする建替え合意者は、組合の設立について、建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第三十八条
の議決権の合計が、建替え合意者の同条 の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)を得なければならない。
3項 区分所有法第七十条第四項 において準用する区分所有法第六十四条
の規定により一括建替え決議の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該一括建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「一括建替え合意者」という。)は、五人以上共同して、第一項の規定による認可を受けて組合を設立することができる。
4項 第一項の規定による認可を申請しようとする一括建替え合意者は、組合の設立について、一括建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第七十条第二項
において準用する区分所有法第六十九条第二項
の議決権の合計が、一括建替え合意者の同項
の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)及び一括建替え決議マンション群(一括建替え決議に係る団地内の二以上のマンションをいう。以下同じ。)を構成する各マンションごとのその区分所有権を有する一括建替え合意者の三分の二以上の同意(各マンションごとに、同意した者の区分所有法第三十八条
の議決権の合計が、それぞれその区分所有権を有する一括建替え合意者の同条
の議決権の合計の三分の二以上となる場合に限る。)を得なければならない。
5項 前各項の場合において、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人の建替え合意者又は一括建替え合意者(以下「建替え合意者等」という。)とみなす。
6項 二以上の建替え決議マンション(建替え決議に係るマンションであって一括建替え決議マンション群に属さないものをいう。以下同じ。)若しくは一括建替え決議マンション群又は一以上の建替え決議マンション及び一括建替え決議マンション群に係る建替え合意者等は、五人以上共同して、第一項の規定による認可を申請することができる。この場合において、第二項の規定は建替え決議マンションごとに、第四項の規定は一括建替え決議マンション群ごとに、適用する。
7項 第一項の規定による認可の申請は、施行マンションとなるべきマンションの所在地の市町村長を経由して行わなければならない。
第10条(事業計画) 事業計画においては、国土交通省令で定めるところにより、施行マンションの状況、その敷地の区域及びその住戸(人の居住の用に供するマンションの部分をいう。以下同じ。)の状況、施行再建マンションの設計の概要及びその敷地の区域、事業施行期間、資金計画その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
2 事業計画は、建替え決議又は一括建替え決議(以下「建替え決議等」という。)の内容に適合したものでなければならない。
第17条(参加組合員) 前条に規定する者のほか、組合が施行するマンション建替事業に参加することを希望し、かつ、それに必要な資力及び信用を有する者であって、定款で定められたものは、参加組合員として、組合の組合員となる。
第五十七条 施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、権利変換計画を定めなければならない。この場合においては、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 施行者は、前項後段の規定による認可を申請しようとするときは、権利変換計画について、あらかじめ、組合にあっては総会の議決を経るとともに施行マンション又はその敷地について権利を有する者(組合員を除く。)及び隣接施行敷地がある場合における当該隣接施行敷地について権利を有する者の同意を得、個人施行者にあっては施行マンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を有する者の同意を得なければならない。ただし、次に掲げる者については、この限りでない。
一 区分所有法第六十九条 の規定により同条第一項
に規定する特定建物である施行マンションの建替えを行うことができるときは、当該施行マンションの所在する土地(これに関する権利を含む。)の共有者である団地内建物の区分所有法第六十五条
に規定する団地建物所有者(以下単に「団地建物所有者」という。)
二 その権利をもって施行者に対抗することができない者
3 前項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。
4 第二項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者を確知することができないときは、その確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。
(権利変換計画の内容)
第58条(権利変換計画の内容) 権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 施行再建マンションの配置設計
二 施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者で、当該権利に対応して、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者が施行マンションについて有する区分所有権又は敷地利用権及びその価額
四 第二号に掲げる者に前号に掲げる区分所有権又は敷地利用権に対応して与えられることとなる施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の明細及びその価額の概算額
五 第三号に掲げる区分所有権又は敷地利用権について先取特権、質権若しくは抵当権の登記、仮登記、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記又は処分の制限の登記(以下「担保権等の登記」と総称する。)に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利
六 前号に掲げる者が施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の上に有することとなる権利
七 施行マンションについて借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)で、当該権利に対応して、施行再建マンションについて借家権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
八 前号に掲げる者に借家権が与えられることとなる施行再建マンションの部分
九 施行者が施行再建マンションの部分を賃貸する場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
十 施行マンションに関する権利又はその敷地利用権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施行再建マンションに関する権利又はその敷地利用権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる施行マンションに関する権利又はその敷地利用権並びにその価額
十一 隣接施行敷地の所有権又は借地権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、又は当該権利の上に敷地利用権が設定されることとなるものの氏名又は名称及び住所、その権利並びにその価額又は減価額
十二 組合の参加組合員に与えられることとなる施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権の明細並びにその参加組合員の氏名又は名称及び住所
十三 第四号及び前号に掲げるもののほか、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の明細、その帰属及びその処分の方法
十四 施行マンションの敷地であった土地で施行再建マンションの敷地とならない土地(以下「保留敷地」という。)の所有権又は借地権の明細、その帰属及びその処分の方法
十五 補償金の支払又は清算金の徴収に係る利子又はその決定方法
十六 権利変換期日、施行マンションの明渡しの予定時期及び工事完了の予定時期
十七 その他国土交通省令で定める事項