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保釈金は幾らかかるか、釈放してもらうにはどうすれば良いか、勤務先はどうなるか、学校はどうなるかという相談をされることがあります。重大犯罪に限らず、痴漢や盗撮など迷惑防止条例違反などの罰金刑でも逮捕される場合があります。この場合、刑事事件の事案の内容や、被害者との和解の状況や、実刑相当かどうか量刑の見込み、刑事手続の進行度合いが大きく影響しますので、時系列で順番にご説明したいと思います。
※刑事事件の流れフローチャート図
まず、刑事手続における逮捕・勾留の制度をご説明いたします。法治国家においては、犯罪行為があった場合は、捜査機関が証拠を収集・保全し、検察官がこれを法律的に構成し起訴状を作成し主張立証を行い、裁判官による刑事裁判を経て、判決により罪を償うことになります。被疑者や被告人の身柄を拘束する(逮捕したり勾留したりする)必要はありません。もしかして皆さんも駐車違反やスピード違反で罰金を納めたことがあるかもしれませんが、これも一応刑事手続で、身柄拘束を伴わない手続が行われたことになります。
しかし、重大な詐欺事件や強盗事件・殺人事件など、犯人の逃亡の恐れがある場合や、証拠を隠滅してしまったり、証人を脅迫してしまう可能性があるような場合には、被疑者の身柄を拘束し、刑事裁判の真実追及(真相究明)と、裁判期日における被告人の出廷と、有罪の場合の刑執行の確実性を確保しなければなりません。懲役刑の実刑判決が出ても被告人が出頭しなければ収監できず、刑の執行ができないことになってしまいます。そこで、刑事訴訟法では一定の場合に被疑者の逮捕を認めています。
逮捕には、大きく分けて3種類の形式があります。
検察官又は警部以上の警察官の請求により逮捕状が発行された場合の逮捕です。
刑事訴訟法199条1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法
、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
通常逮捕の要件を満たす場合で、例外的に逮捕状を事後的にとることが認められる場合です。
刑事訴訟法210条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
犯罪現場、又はその直後に、誰でも犯人を拘束できる制度です。
刑事訴訟法212条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2項 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
213条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
被疑者が逮捕されると、48時間以内に捜査書類と証拠物と被疑者の身柄を「検察官送致」する必要があります(刑事訴訟法203条)。そして、検察官は24時間以内に、釈放するか、又は、裁判官に勾留請求をしなければなりません(刑事訴訟法205条)。逮捕は正式な刑事裁判を経ずに行われるので、被疑者の基本的人権を保持するためにも、また、真実追求の必要(違法捜査の排除)からも、72時間(3日)以内の裁判官の再度のチェックを要すると規定したものです(刑訴法207条)。勾留請求が認められると最長10日間されることになります(同208条1項)。複雑な事件の場合など、必要があれば、10日間の勾留延長が認められます(同208条2項)。これら日数を合計すると、通常の身柄事件では、23日以内に検察官により公訴提起(起訴)され、被告人勾留(刑訴法60条)へと切り替わることになります。
刑事訴訟法60条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
起訴される前は、被疑者段階では、保釈請求の制度はありませんので、弁護人としては、まず、被疑者が起訴されることを阻止することに全力を注ぎます。具体的には、被害者との示談交渉です。被害金の弁償を行い、示談書を作成し、被害届や刑事告訴の取り下げを行い、検察官の起訴猶予処分を引き出すことを目標に弁護活動を行います。被害者との示談に成功した場合は、関連資料をまとめて検察官に提出し、起訴猶予(刑訴法248条)相当事件である事を法律的に説明・説得します。
刑訴法248条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
示談成立まで時間が掛かりそうな場合、被疑者の身元・住居がしっかりしていて、被疑事実を全て認めていて、逃亡のおそれも少ない場合には、そもそも勾留する必要が無いと主張して、勾留裁判や勾留延長裁判に対して、準抗告の申立を行います(刑訴法429条)。申立書には、刑訴法60条の各号の要件(定まった住居、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)を、それぞれ満たしていない事をひとつひとつ丁寧に主張します。また、検察官と交渉して、身柄事件から在宅事件に切り替えてもらうこともあります。在宅事件に切り替わる場合は、被疑者は釈放されますので、事実上、検察官は上記の23日間に縛られずに、起訴の準備をすることができます。どうしても被害者が被害弁償金を受領しない場合は、法務局に弁済供託(民法494条)を行う方法により、法律上の被害弁済を成立させ、その資料を検察官に提出することもあります。示談などにより検察官の不起訴処分や起訴猶予処分を得ることができれば、前科もつかないことになります。社会生活の再スタートを切ることができます。
民法494条 (供託)債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。
第495条(供託の方法)前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
2項 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
3項 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
起訴されてしまった場合は、保釈請求(保釈申請)を行います。刑訴法88条により申立権者は、@被告人本人、Aその弁護人、Bその法定代理人(親権者)、C保佐人、D配偶者、E直系の親族(両親、子供)もしくは兄弟姉妹です。起訴されたのですから、裁判所に書類を提出済みですから、既に捜査は終了しており、証拠隠滅や逃亡のおそれが無い場合は、原則として保釈を認めなければなりません。これを権利保釈(必要的保釈、刑訴法89条)と言います。控訴審では権利保釈は認められません(刑訴法344条)。
しかし、実際に保釈されているのは、勾留されている被告人の1割程度です。第1回目の裁判が終わった後や、結審したあとには、否認事件でない限り保釈が認められやすいのですが、経済的事情などから保釈申請に至らない事案が多いのかもしれません。権利保釈の条文もご紹介致します。保釈が認められないのは、刑訴法60条の勾留要件と刑訴法89条権利保釈の例外規定にあたる場合です。すなわち、「被告人が定まつた住居を有しないとき」、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」、「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」には、保釈すると刑事裁判の遂行が困難となってしまうために保釈を許可することができないのです。
刑訴法89条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
また、前記の必要的な保釈のほかに、裁量保釈といって裁判所が適当と認める場合に職権で認められる保釈があります(刑事訴訟法90条)。控訴審・上告審では権利保釈できません(刑訴法344条)ので、控訴審・上告審での保釈は、この裁量保釈になります。
保釈申請書では、まず必要的な保釈が認められるべきことを説明しますが、必要的保釈が認められない場合でも裁量保釈が認められるよう詳細に事情を説明します。個別の事案により異なることになりますが、仕事をする必要があることや、経済的な理由を挙げることになるかと思われます。他に、身柄引き受け書といって、保釈になった場合は責任を持って監督します、という趣旨の書面提出することになります。身柄引受人となるのは配偶者や両親などが一般的です。裁量保釈については、こちらのページで追加説明しますので、参照してください。
刑訴法90条(裁量保釈)裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
これらの書面を作成して裁判所に提出すると、保釈を認める場合は裁判官と面接して保釈保証金の金額を決めることになります。金額の基準となるのは、当該被告人にとって経済的負担として相当かどうかです。ニュースで保釈金何億円というのを良くみますが、そういうのは稀なケースです。保釈金の相場ですが、資産がある人の場合は高額になる傾向があるものの、通常は150〜500万円で決定されます。経済的に余裕がないことを説明すれば減額されることもありますが100万円を下ることはないといってよいでしょう。裁判所が保釈を却下した場合は、準抗告の申立を行い別の裁判官に再度審理してもらうことができます(刑訴法429条)。
保釈保証金は、保証金ですから被告人が裁判に出頭して裁判が終われば返還されるお金です。万一逃亡して裁判に出頭しないと没収されてしまいます。保釈金は事案の軽重や被疑者の収入・財産により変わりますが、150万円から500万円程度が相場と言えるでしょう(報道されるような有名人の数千万円の保釈金などは例外事例です)。保釈金の見込み額については法律相談の際に弁護士にお尋ねください。保釈保証金をどうしても用意できないという場合は保釈保証金を立て替える機関も最近できています。100万円について5万円程度の手数料がかかるようです。消費者金融の利息と比較すると高額ですので、法律事務所として積極的に利用を勧めることはできませんが、現金が用意できないがどうしても保釈してほしいという場合は利用することを検討されると良いでしょう。
裁判所から保釈を許可すると連絡があった場合、現金を用意して裁判所に行き必要書類を裁判所からもらって裁判所の会計に保管金として納めることになります。最近では裁判所によっては事前に登録する事により銀行、インターネット送金でも出来るようになりました。お金を納める人は保釈申請をした人に限られます。もし別の人の名前で納める場合は事前に裁判所の許可をもらっておく必要があります(刑事訴訟法94条2項)。保証金は、納めた人に返還されますので、誰の名前で納めるかは後で問題がおきないために検討しておく必要があります。お金を納めたことの書類を、再度刑事部の担当部に持参すると裁判所から検察庁に保釈が許可されたことを連絡してくれますのでその日のうちに釈放されます。釈放は検察庁から留置場に指示をして行うのですが、電話で指示することはできないので2〜3時間はかかるようです。
以上が保釈申請の概略です。夫が起訴されているのであれば妻として保釈を申し立てることは可能です。自分では申請書を作成できないという場合は弁護士に依頼することもできます。ただ、弁護士に依頼する場合は、保釈の申請だけ依頼するということはできません。弁護士としては刑事事件の裁判を受任し弁護人となって、その手続の中で保釈の申請をすることになります。刑事事件の弁護士費用はもちろん事件の内容によって異なりますが、着手金で30万から50万円、報酬で同じ程度の金額、その他実費がかかるのが普通とされています。弁護士費用については依頼する時点で契約書を作成しなければならないことになっていますから、依頼する際、弁護士から費用について説明してもらうことが大切です。
勤務先との関係では、逮捕勾留された状態は、ご家族から「都合により欠勤」の旨を連絡していたとしても、本人からの連絡が無いということで無断欠勤とされてしまう危険もあります。そういう場合、保釈は時間との闘いになりますので、早急に弁護士に相談されると良いでしょう。相談時に、弁護士に次のことを告げて、次のことを質問してみましょう。
弁護士に相談するときに述べるべきこと
・被疑者との関係(相談者に弁護人選任権があるかどうか、弁護人選任権のある人物の協力が得られるか)
・被疑者の逮捕日時
・逮捕された警察署
・逮捕された罪名、被疑事実
・被害者の連絡先が分かるかどうか
・前科前歴があるかどうか(前科前歴の内容)
弁護士に相談するときに聞くべきこと
・弁護人となる場合の弁護方針(どのような弁護活動を予定しているか)
・当該事案の終局処分見込み(どのような結果が予想されるか)
※国選弁護人と私選弁護人の違い
国選弁護人は裁判所が選任しますから初めに費用を負担する必要はありません。ただ、起訴されてから国選弁護人が選任されるまで期間がかかることがありますから、起訴されてすぐ保釈の申請をするには自分の費用で弁護士(私選弁護人)を依頼しない限り、弁護士なしで申請する必要があります。又、国選弁護人によっては保釈の申請に消極的な人もいます。国選弁護人は基本的に財産的に余裕がなく私選弁護人を選任することが困難な人が利用する制度ですので、保釈金が用意できるのであれば金銭的余裕があるので私選の弁護人を選び保釈の申請をしてほしいという理由のようです。国選弁護人は原則1名で活動しますが、私選弁護の場合は複数弁護士で担当することもできます。被害者との民事和解も、国選弁護人より私選弁護人の方が積極的なことが多いでしょう。
※被疑者国選弁護制度について
被疑者国選弁護制度とは、刑事訴訟法の改正により成立した制度で、長期3年を超える懲役・禁固に当たる事件(窃盗、傷害、業務上過失致死、詐欺、恐喝等)で勾留決定された被疑者の請求により、国選弁護人が選任される制度です。逮捕段階には国選弁護制度はありません。被疑段階で選任された国選弁護人は、特別な事情で裁判所から解任されない限り、第1審の公判終了までの弁護を担当することになります。
これにより、被疑者・被告人を通じて一貫した国選弁護制度が創設されることになりました。もともと刑事訴訟法は、憲法37条3項が「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」としているのを受けて、これまでは起訴されて裁判に付された刑事「被告人」にのみ国選弁護人を附することとしており、起訴前の逮捕・勾留段階の「被疑者」には国選弁護制度がありませんでした。ところが、逮捕・勾留という捜査段階で弁護人がつかず、たった一人で警察の取調べを受けることは、刑事手続の内容や自身の権利を理解できず、身柄拘束下で不安が大きいばかりか、不本意な供述調書に署名押印をさせられて、裁判で重要な証拠である被告人の自白調書が作成されるなど、様々な不利益が生じていたため、逮捕された時点から弁護士が弁護人として関与することが重要であると言われていました。これを補う制度として各弁護士会が、逮捕され身柄拘束された被疑者に最初の接見だけは無料で行う「当番弁護士」制度を設けていますが、当番弁護士は、被疑者の疑問や説明に答えたり、被疑者が希望し、当番弁護士が承諾すれば私選弁護人となることができますが、起訴される前の被疑者段階での国選弁護人という制度が新たにできたわけです。
被疑者国選弁護制度では、刑事訴訟法上、「資力申告書」を提出することになっており、「資力」の基準額を50万円とされています。現預金の合計が50万円以上になる場合、国選ではなく、まずは私選弁護人を弁護士会に選任してもらうよう申し出ることが本人に義務づけられます。これまでの起訴後の国選弁護人の場合、本人が「貧困その他」にあたると申告すれば、保有資産などを問われずに、国選弁護を受けられていましたが、今後は、被疑者・被告人ともに50万円の基準が適用されることになります。虚偽の申告に対しては10万円以下の科料が課せられます。
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