トップページ > 暮らしに役立つ法律知識 > 債務整理手続の比較
借金の整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産という主な方法があります。大切なのは、減額の大きさだけでなく、生活費を確保したうえで返せるか、住宅や仕事を守れるか、保証人や差押えにどう対応するかを合わせて考えることです。このページでは、個人・個人事業主の債務整理を中心に、手続の違いと選ぶ際の注意点をご案内します。
裁判所の書類や競売開始の通知がある場合は、期限を優先してください。
弁護士への相談・受任通知や、裁判所への申立てだけで、すべての差押え・競売が自動的に止まるわけではありません。届いた書類と封筒を保管し、受け取った日、勤務先への差押え、住宅ローン保証会社の代位弁済の有無を相談時にお伝えください。
1.債務整理の4つの方法を比較
以下は典型的な個人のケースです。税金、養育費、担保付債務などには別の扱いがあります。横に長い表は左右にスクロールできます。
| 比較する点 | 任意整理 | 特定調停 | 個人再生 | 自己破産・免責 |
|---|---|---|---|---|
| 仕組み | 債権者と裁判外で返済条件を交渉 | 簡易裁判所の調停委員会が返済条件の調整を援助 | 地方裁判所で再生計画の認可を受け、減額後の債務を返済 | 地方裁判所で財産を清算し、免責により対象債務の支払責任を免れる |
| 主な利用条件 | 合意した返済を続けられる見込みと債権者の合意 | 支払不能のおそれ等があり、調整後の返済が可能なこと | 継続的・反復的な収入の見込み。法定の計算で債務総額5,000万円以下等 | 支払不能。免責は別途審査される |
| 借金はどうなるか | 利息制限法による再計算後の残高を基に、将来利息の免除・分割等を交渉。元本減額は当然にはできない | 再計算後の残高・家計を基に返済条件を調整。法律上一定割合に減る制度ではない | 債務額による最低弁済額、清算価値等を満たす返済。給与所得者等再生には可処分所得の要件もある | 免責許可決定の確定により原則として支払責任を免れる。非免責債権は残る |
| 返済期間 | 合意による。3~5年程度を検討する例があるが保証はない | 調停内容による。無理のない返済計画が必要 | 原則3年、特別の事情がある場合は5年以内 | 免責対象債務について再生計画のような返済は不要 |
| 債権者の意思 | 対象債権者ごとの合意が必要 | 合意成立が基本。調停に代わる決定も異議で失効し得る | 小規模個人再生は法定の不同意基準。給与所得者等再生は決議不要 | 債権者全員の同意は不要。免責への意見・異議等の手続はある |
| 自宅・財産 | 当然には処分されないが、担保権実行や差押えは別問題 | 当然には処分されないが、住宅ローンの調整等は別途必要 | 住宅資金特別条項などにより自宅を残せる場合。財産額が返済額を引き上げることがある | 自由財産等を除き換価・配当の対象。所有自宅を残すのは原則困難 |
| 対象債権者 | 対象を選んで交渉できるが、後の破産等を見越した公平な対応が必要 | 申立ての相手方を選べるが、全体の返済可能性を検討 | 原則としてすべての対象債権者を申告。都合の悪い借入先を除外できない | すべての債権者・財産を正確に申告 |
| 根拠法令 | 民法第695条(和解契約)。破産・個人再生等の法的債務整理を踏まえて弁護士が交渉する場合は、一般の法律事務を弁護士の職務とする弁護士法第3条も、弁護士による交渉の根拠となる。 また、貸金業法第21条第1項第9号は、弁護士等への債務処理の委託と書面による通知があった場合に、正当な理由なく電話・訪問等で直接の返済を要求し、直接要求しないよう求められても更に要求する行為を禁止する。任意整理を支える取立て規制の根拠となる。 | 特定調停法(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律)・民事調停法。特定調停法は民事調停法の特例を定める。 | 民事再生法(小規模個人再生・給与所得者等再生の特則等)。 | 破産法(破産手続・免責手続)。 |
| 官報 | 通常、掲載なし | 通常、掲載なし | 公告あり | 公告あり |
根拠:民事再生法、破産法、特定調停法。自治体の案内:釧路市・債務整理の方法。
2.手続を選ぶために、何を確認するか
- 法律上の債務額を確認します。契約書・取引履歴を集め、利息制限法による再計算、過払金、消滅時効、違法な貸付けの有無を検討します。古い請求について、確認前に一部を払ったり債務を認めたりすると、時効の主張に影響する場合があります。
- 毎月の返済可能額を出します。手取り収入から家賃、食費、光熱費、医療費、教育費、税金等を引き、突発的な支出の余裕も確保します。返済のための新規借入れを前提にしないでください。
- 財産・担保・保証を調べます。預金、不動産、自動車、保険解約返戻金、退職金見込額、住宅ローン、保証人の有無が重要です。親族名義への変更や一部の人への優先返済は、相談前に行わないでください。
- 緊急性を確認します。訴訟、支払督促、差押え、競売、税の滞納処分、車の引揚げなどが進んでいる場合、手続の選択と並行して対応します。
同じ借金300万円でも、選択は変わります
例えば、再計算後の無担保債務が300万円あり、任意整理で将来利息を免除して60回払いとする合意ができれば、元本部分は月5万円です。月5万円を安定して確保できない場合、その計画は続きません。
小規模個人再生では、債務額だけから算出する最低弁済額は100万円です。清算価値など他の要件を満たすと仮定し、100万円を36か月に均した額は月約2万7,778円です。ただし、財産額や手続の種類によっては返済額が増え、住宅ローン・税金等や手続費用も別途必要です。この額も払えない場合には、自己破産・免責を含めて検討します。
3.任意整理 ― 裁判所を使わずに交渉する方法
弁護士が受任通知を送り、取引履歴を取り寄せ、法律上の残高を確認したうえで、毎月の返済額・支払期間・将来利息・遅延損害金等について交渉します。借入先ごとの事情に応じた調整が可能である反面、債権者に減額や長期分割を強制する制度ではありません。取引が短い、返済実績が少ない、訴訟が進んでいるといった事情で条件が厳しくなることもあります。
合意書では、総支払額、支払日、振込先、遅れた場合に残額一括払いとなる条件、遅延損害金、保証人への請求を確認します。借入先の一部を対象から外しても、家計全体が成り立たなければ解決になりません。後に破産等へ移る可能性がある場合は、親族・保証人付き債務への優先返済にも注意が必要です。
貸金業法21条1項9号の適用対象では、受任通知の到達後、正当な理由のない本人への直接取立てが規制されます。ただし、通知だけで訴訟や強制執行は禁止されません。銀行・個人からの借入れ等も含め、取立て規制の適用を一律に説明することはできません。
4.特定調停 ― 簡易裁判所で返済条件を調整
支払不能のおそれがあるなど、法律上の要件を満たす債務者が利用する民事調停です。通常は相手方の住所等を管轄する簡易裁判所に申し立てます。複数の相手方がいる場合の管轄・併合等は、裁判所へ確認してください。調停委員会が間に入り、利息の再計算や家計を踏まえて返済条件を話し合います。
本人申立ても可能ですが、裁判所が申立人の代理人となるわけではありません。債権者一覧・家計・財産の資料を用意し、期日に出席し、提案を理解して判断する必要があります。過払金を返してもらう請求等は、別途交渉・訴訟を要する場合があります。
合意が調停調書に記載されると裁判上の和解と同じ効力を持ち、不履行時にはそれを基に強制執行を受ける可能性があります。裁判所が「調停に代わる決定」をすることもありますが、当事者が告知を受けた日から2週間以内に適法な異議を申し立てれば失効します。「裁判所なら必ず債権者に減額を命じてもらえる」という制度ではありません。
強制執行を止めるには、特定調停法7条に基づく申立てと裁判所の停止命令等が問題になります。申立てだけで自動停止するものではありません。詳しくは下の差押え比較をご覧ください。
参照:東京簡易裁判所・特定調停、民事調停法16~18条、特定調停法2条・7条。
事業者向けの「特定調停スキーム利用の手引」
特定調停は、個人の消費者金融等の返済調整だけでなく、中小企業の事業再生、廃業・清算、経営者の保証債務の整理にも活用されています。日本弁護士連合会は、弁護士等の専門家が関与して金融機関との調整を進めるため、次の3種類の「特定調停スキーム利用の手引」を公表しています。これらは新しい法律や独立した裁判手続ではなく、特定調停を実務上どのように利用するかを整理した手引です。
| 類型・手引 | 利用する場面 |
|---|---|
| 手引1(一体再生型) | 事業を続けるため、事業者の金融債務を整理し、必要に応じて経営者の保証債務も一体として調整する方法。事業者の事業再生を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引(PDF) |
| 手引2(単独型) | 会社について破産等の手続を行うなど、会社と保証人の一体整理が困難な場合に、経営者保証ガイドラインに基づき保証債務を整理する方法。経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引(PDF) |
| 手引3(廃業支援型) | 事業継続が難しい事業者の廃業・清算を支援し、保証債務も含めて整理する方法。事業者だけの廃業・清算に利用する場合もあります。事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引(PDF) |
例えば再生型では、弁護士が税理士・公認会計士等と連携し、資産・負債、収益力、資金繰りを調査して、経営改善計画と弁済計画を作成します。金融機関との事前協議を経て、簡易裁判所の調停手続で合意内容を確定することを目指します。単に返済期間を延ばすだけでなく、計画の合理性と債権者の合意を前提に、元本の一部免除を含む調整を検討することもあります。利用する類型によって、申立てと協議の進め方は異なります。
取引先への支払い、従業員の賃金、税金、担保権への対応を整理し、破産等の場合の回収見込みと比較して債権者にとっての合理性を説明する必要があります。債権放棄を受ける側の債務免除益、債権者側の貸倒損失などの税務も検討します。国税庁の文書回答は特定の事実関係を前提としており、特定調停を利用すれば必ず非課税になるという意味ではありません。
資料:日弁連・特定調停スキーム利用の手引(改訂版)・書式一覧、国税庁・再建計画による債権放棄の税務、国税庁・廃業支援型の税務上の取扱い。
経営者保証に関するガイドライン ― 会社と経営者の再出発のために
「会社が破産するなら、連帯保証した社長も必ず自己破産しなければならない」とは限りません。経営者保証に関するガイドラインは、中小企業・経営者・金融機関が共有する自主的な準則であり、要件を満たせば、経営者個人の破産を回避して保証債務の全部又は一部の免除を受けられる場合があります。法律によって当然に免除される制度ではなく、対象債権者との合意が必要です。
ガイドラインは保証債務の整理だけでなく、保証を求めない融資や既存保証の見直しも対象としています。融資・保証見直しの場面では、法人と経営者個人の資産・経理の分離、法人の財務基盤、適時適切な情報開示が重要です。一方、既に経営が悪化した段階の保証債務整理には別の要件があり、この3点を完全に満たさなければ整理も一切できないというものではありません。
保証債務の整理で確認する主な条件
- 主たる債務者が中小企業で、保証人がその経営者である個人等、ガイドラインの適用対象に当たること。
- 会社・保証人が弁済に誠実に対応し、資産・負債を適切に開示すること。反社会的勢力に該当しないこと。
- 会社の法的整理又は中立・公正な第三者が関与する所定の私的整理等との関係で、保証債務を整理する要件を満たすこと。会社の破産と保証人の特定調停を組み合わせる場合もあります。
- 会社と保証人の資産・債務を合わせて検討し、破産の場合より多く回収できる見込みがあるなど、対象債権者にとって経済合理性があること。
- 免責不許可事由に該当する行為をしておらず、そのおそれもないこと等。財産隠し、虚偽開示、不適切な資産処分を避け、問題がある場合も経緯を正確に説明する必要があります。
対象債権者全員の同意を得ることが基本です。裁判所の多数決による再生計画認可とは仕組みが異なり、同意のない債権者の保証債権を一方的に消滅させることはできません。一時停止・返済猶予の要請も、差押えを法律上当然に禁止するものではありません。
自宅・生活費・信用情報はどうなるか
自由財産に加え、早期の整理によって回収額の増加が見込まれるなどの事情に応じて、一定期間の生活費や華美でない自宅等を手元に残せる可能性があります。ただし、財産の内容、経済合理性、担保権、債権者の同意等によるため、自宅が必ず残る制度ではありません。インセンティブ資産を残すことを求める場合は、法人の破産等の手続が終わるまでに、ガイドラインを利用する意思を示す必要があります。令和5年11月改定の「廃業時における基本的考え方」も、早期に廃業手続へ着手することが残存資産の増加につながり得る点を明確にしています。
ガイドラインに基づいて保証債務を整理したことについて、対象債権者は信用情報登録機関への報告・登録を行わない取扱いとされています。ただし、別の個人借入れの延滞情報まで消えるわけではなく、将来の融資・カードの審査が必ず通ることを保証するものでもありません。
会社の資金が尽きる前、財産を処分する前の相談が重要です。決算書、試算表、資金繰り表、借入・保証・担保の一覧と、経営者個人の財産・家計の資料をご準備ください。弁護士が事業継続の可能性、廃業の方法、保証債務の整理を合わせて検討し、必要に応じて税理士等や中小企業活性化協議会と連携します。新銀座法律事務所の無料相談では、会社の借入れと個人保証があることを最初にお知らせください。
資料:QA0941・経営者保証ガイドライン、経営者保証に関するガイドライン本文(全国銀行協会PDF)、金融庁・中小企業庁の経営者向けパンフレット(PDF)、金融庁・廃業時における基本的考え方の改定、金融庁・経営者保証関連資料。
5.個人再生 ― 減額後の返済と住宅の維持を検討
将来にわたり継続的・反復的な収入を得る見込みがあり、法律上の計算による債務総額が5,000万円以下である個人が対象です。住宅資金貸付債権や、担保から回収できる見込みの額等は、この上限の計算で別扱いになります。支払不能のおそれなどの開始原因、返済の実現可能性、最低弁済額等の要件も満たす必要があります。
小規模個人再生と給与所得者等再生
小規模個人再生は、自営業者だけでなく会社員も利用できます。再生計画に不同意を回答した議決権者が、議決権者総数の半数以上、又は議決権総額の2分の1を超える額を占める場合、計画案は可決とみなされません。「債権者の過半数が積極的に同意すればよい」という単純な説明は不正確です。人数と金額の両方を確認します。
給与所得者等再生は、給与等の定期的収入があり、その変動幅が小さい人のための制度です。債権者の決議は不要ですが、法定の可処分所得2年分以上を弁済する要件が加わるため、小規模個人再生より返済額が高くなる場合があります。過去の免責等による利用制限も確認します。
「必ず5分の1」ではありません
小規模個人再生では、次の債務額に応じた最低額と、破産した場合に債権者へ配当される財産価値(清算価値)などを満たす必要があります。給与所得者等再生では、さらに法定の可処分所得2年分が比較対象になります。
| 基準債権総額 | 最低弁済額の目安 |
|---|---|
| 100万円未満 | 全額 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 5分の1 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 10分の1 |
ここでいう基準債権総額は、住宅ローン等を単純に含めた請求書の合計ではありません。税金などの優先債権や、養育費等の減免されない債権も考慮します。返済期間は原則3年、特別の事情がある場合に5年以内です。
住宅資金特別条項を使える場合
法律上の住宅資金貸付債権や本人の居住用住宅等の要件を満たせば、住宅ローンを支払いながら他の債務を整理する制度を利用できる場合があります。住宅ローンの元本を他の借金と同じ割合で減額する制度ではありません。住宅に別の債務の抵当権が付いている場合、共有・連帯債務がある場合などは個別の検討が必要です。
保証会社が住宅ローンを全額代位弁済した場合、原則として代位弁済の日から6か月を経過する前の再生申立てが必要となるなど、時期が重要です。競売が始まっていても直ちに断念せず相談してください。ただし、申立てのみで競売が停止するわけではなく、民事再生法197条等の停止命令の要件・進行段階を確認します。
6.自己破産 ― 財産の清算と免責は別の手続
自己破産は、財産・収入等からみて、支払期にある債務を一般的・継続的に支払えない状態(支払不能)にある場合に検討します。借金が一定額を超えたら自動的に認められる制度ではありません。破産は財産を調査・清算する手続で、借金の支払責任を免れるには、原則として免責許可決定の確定が必要です。
財産や調査事項に応じ、破産管財人を選任する管財事件となる場合と、手続費用を賄う財産がなく、管財人による調査等を要しない同時廃止事件となる場合があります。無職・低収入でも相談できますが、財産を隠したり、債権者一覧から意図的に外したりしてはいけません。
生活に必要な財産まで全部なくなるわけではありません
破産法上の自由財産には、一定の現金(原則99万円以下)、差押禁止財産、開始後に新たに取得した財産等があります。必要に応じて自由財産の範囲の拡張も検討します。ただし、預金と現金は同じ扱いではなく、預金99万円まで当然に残せるという意味ではありません。家財、自動車、保険、退職金等は、価値、生活上の必要性、裁判所の運用を確認します。自己判断で現金化・名義変更をしないでください。
免責されない債務と、裁量免責
税金、養育費等の扶養義務に関する請求権、罰金等のほか、悪意で加えた不法行為による損害賠償や、故意又は重大な過失による生命・身体侵害の損害賠償などは非免責債権となります。すべての損害賠償が免責されないわけではありません。残る債務については、担当窓口との分納等も別途検討します。
著しい浪費・ギャンブル、財産隠し、虚偽説明などは免責不許可事由となり得ます。しかし、不許可事由があっても、裁判所が事情を考慮して認める裁量免責があります。借金の理由だけで相談を諦めず、経緯を正直に説明し、家計改善と再発防止に取り組むことが重要です。
7.給与・預金の差押えと不動産競売への影響
「申立て」「開始決定」「免責・認可の確定」は別の段階です。また、通常の借金に基づく差押え、抵当権に基づく競売、税金の滞納処分では扱いが異なります。以下は主に通常の債権の強制執行と住宅ローン等の担保権実行についての整理です。
| 手続 | 給与・預金等の差押え | 抵当権に基づく不動産競売 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 受任通知だけでは止まらない。債権者との交渉や裁判への対応が必要 | 自動的には止まらない。住宅ローン債権者との協議等が必要 |
| 特定調停 | 申立てだけでは止まらない。特定調停法7条の要件を満たす場合、申立てにより強制執行の停止命令を得られることがある | 当然には停止しない。調停の目的となる権利、停止の要件、担保の要否等を個別に検討 |
| 個人再生 | 開始決定後は、原則として再生債権に基づく新たな強制執行は禁止され、既存の手続は中止。申立てから開始までの停止等には別の裁判が必要 | 担保権は原則として別除権。開始決定だけでは止まらない。31条・住宅に関する197条等の停止命令を検討 |
| 自己破産 | 開始後、破産財団に属する財産への破産債権等に基づく執行は原則禁止され、既存の執行は財団に対して効力を失う。同時廃止等での給与差押えは免責手続の規定による中止等を確認 | 担保権は原則として破産手続外で行使できる。破産・免責だけで住宅競売を防げるわけではない |
給与差押えに関する2つの注意点
特定調停でも給与差押えを停止できる余地があります。特定調停法7条が除外する「賃金」等に基づく債権は、従業員が賃金を取り立てる場合など、執行する側の請求権を指します。貸金の回収のために債務者の給与が差し押さえられた場合を、一律に停止対象外とする趣旨ではありません。
自己破産では「免責まで給与差押えが必ず続く」とはいえません。免責申立てがあり、同時廃止等の法律上の段階に至った場合、破産法249条により、破産債権に基づく強制執行が禁止・中止されます。免責許可決定が確定すると、中止された手続は効力を失います。管財事件か同時廃止か、対象となる給与・債権の性質、開始時点等を確認し、執行裁判所や勤務先に必要な書類を提出して処理します。
口座の凍結・相殺と裁判所による預金差押えは別の問題です。借入先銀行の口座に給与が入る場合、受任通知後に生活資金が使えなくなることがあるため、口座や引落しの変更を弁護士と相談してください。差押済みの金銭が既に債権者へ支払われた場合など、手続開始後も当然に取り戻せるとは限りません。
8.費用・家族・保証人・仕事への影響
費用は、裁判所の費用と弁護士費用を分けて確認
任意整理では、通常、裁判所への申立費用はかかりませんが、依頼する場合は弁護士費用等が必要です。特定調停の申立手数料は、個人では相手方1人につき原則500円と案内されていますが、事件によって追納が必要となる場合があり、郵便料等も別途必要です。個人の破産・免責申立手数料は合計1,500円、個人再生の申立手数料は1万円が基本ですが、いずれも総費用ではありません。
郵便料、官報公告費用、破産管財人・個人再生委員の費用に充てる予納金等は、裁判所・事件の内容により異なります。弁護士費用を含めた見積り、分割払いの可否、追加費用が生じる条件を確認してください。収入・資産等の要件を満たせば法テラスの民事法律扶助を利用できる場合もあるため、費用に不安があることを早めにお伝えください。
家族・保証人
家族であることだけで返済義務を負うわけではありません。ただし、保証・連帯債務や日常家事債務などは別途確認が必要です。本人が免責や再生による減額を受けても、保証人の責任は原則として残ります。保証人への一括請求等を想定し、本人と保証人それぞれの対応を検討します。中小企業の経営者保証については、経営者保証に関するガイドラインによる整理も検討できます。
仕事・信用情報・所要期間
自己破産で一般の会社員として働くことが一律に禁止されるわけではありませんが、警備員など一部の職業では復権まで資格上の制限があります。管財事件では、管財人への郵便物転送や転居・旅行の許可等が問題になる場合もあります。家族・勤務先に必ず知られないとの保証はできません。
上記4つの一般的な債務整理では、延滞・債務整理等が信用情報や与信審査に影響し、新規借入れ、カード更新、分割払いが難しくなることがあります。情報の種類・機関で登録期間や起算点が異なり、一定年数後に必ず借りられるとはいえません。解決までの期間も、資料収集、債権者数、調査事項、裁判所の運用によって変わります。合意・認可後に数年間の返済が続く手続では、その期間も含めて計画を立てます。
参照:特定調停の費用、破産手続案内(PDF)、個人再生手続案内(PDF)、破産法37条・81条・253条3項・255条。
9.判例から分かる、手続選択の注意点
免責を受けても、抵当権が当然になくなるわけではない
最高裁平成30年2月23日第二小法廷判決(平成29年〔受〕第468号)は、免責の効力を受けた債権を担保する抵当権について、民法396条は適用されず、抵当権自体が当時の民法167条2項所定の20年の消滅時効にかかると判断しました。事案では20年を経過しておらず、抹消請求は認められませんでした。
ここから大切なのは、本人の支払責任を免れることと、住宅の担保権を消すことは別という点です。現在の対応では、現行民法166条2項や改正法の経過措置、時効の起算点・完成猶予・更新等も確認します。免責から単に一定年数待てば住宅を守れると考えず、再生の住宅資金特別条項や任意売却等を早い段階で比較してください。
最高裁平成30年2月23日判決全文(裁判所PDF) / 新銀座法律事務所・競売を回避する方法
違法な貸付けは、請求額を前提に整理しない
最高裁平成20年6月10日第三小法廷判決は、著しく高利の貸付けを行うヤミ金融の事案で、被害者の損害賠償額から受領した貸付元本を差し引くことを認めませんでした。借金として分割払いする前に、契約の有効性や返還義務自体を検討すべき場合があります。ただし、無登録であることや上限利率の超過だけから、すべての事案で元本返還義務がないと即断できるわけではありません。
10.相談の準備と新銀座法律事務所の無料相談
資料がすべてそろわなくても、まずご相談ください。次のものがあると、状況の把握がスムーズになります。
- 借入先、残高、毎月の返済額、利率、借入れ開始時期、最後に返済した時期の一覧。
- 契約書、カード利用明細、通帳、取引履歴、督促状、裁判所からの書類と封筒。
- 給与・年金・事業収入、家賃・食費等の支出、税金等の滞納が分かる資料。
- 不動産、自動車、保険、預貯金等の財産、住宅ローン、担保、保証人の資料。
- ヤミ金の場合は相手の電話・SNSアカウント、振込先、入出金、取立ての録音やメッセージ。
弁護士への無料電話相談をご利用ください
新銀座法律事務所では、借金・債務整理・ヤミ金被害について無料の法律相談を受け付けています。受付後、弁護士から電話で、5分程度を目安に一般的な見解をご案内します。裁判所の期限、差押え、脅迫的な取立て、住宅ローンの代位弁済がある場合は、最初にお伝えください。
無料相談受付:0120-48-5791
つながらない場合:03-3248-5791
受付時間:平日9:00~21:00 / 土日祝日9:00~18:00
LINE・メールフォームでも受付できます。お名前、都道府県、電話番号、相談の概要を500文字以内でお知らせください。LINE・メールからの相談も、原則として弁護士から電話で回答します。
無料電話相談と、資料を詳しく確認する有料相談・代理人としての受任は別です。依頼費用、実費、裁判所の予納金、支払方法等はご事情に応じてご案内します。費用の準備が難しい場合も、その旨をお伝えください。
11.関連QA事例集・詳しい解説
各事例には掲載当時の法令・運用の説明も含まれます。現在の条文や裁判所の案内と合わせてご確認ください。
12.QA事例集の検索・ChatGPT検索
新銀座法律事務所のQA事例集を検索
Yahoo!検索で shinginza.com/db/ 内の掲載事例を探します。検索結果は別のタブで開きます。
ChatGPTで事案を整理する
ChatGPTの画面が開いたら、入力内容を確認して送信してください(この入力欄ではCtrl+Enterでも開けます)。氏名、住所、電話番号、口座番号などの個人情報は入力しないでください。入力内容はChatGPTへ引き継がれます。AIの回答には誤りや古い情報が含まれる場合があるため、出典を確認し、具体的な対応は弁護士にご相談ください。ここからの入力は当事務所への相談申込みにはなりません。
13.参照法令・公的資料・手続案内PDF
法令はe-Gov、手続案内・判決は裁判所等の公式ページへリンクしています。PDFは各機関が公開する資料であり、本記事の更新日に改訂された資料という意味ではありません。
- 破産法:支払不能、自由財産、執行への影響、免責・非免責債権。
- 民事再生法:個人再生、住宅資金特別条項、最低弁済額、債権者の決議。
- 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律、民事調停法。
- 民法、利息制限法、貸金業法。
- 東京地方裁判所・倒産手続に関するよくある質問、大阪地方裁判所・倒産手続Q&A。
- 裁判所「特定調停」(PDF):話合いによる返済条件の調整。
- 裁判所「個人再生手続」(PDF):利用条件と手続の概要。
- 裁判所「破産手続」(PDF):破産・免責の概要。
- 裁判所・パンフレット一覧:公式PDFの掲載元。
- 釧路市・債務整理の方法:4つの方法に関する自治体の案内。
2026年10月16日に確認した法令・判例・公表資料に基づく一般的な解説です。法人の破産・再生、事業再生、税の滞納処分などは追加の検討が必要です。個別の結論は、契約内容・財産・収入・手続の段階・管轄裁判所の運用等によって異なります。