内縁の相続問題(最終更新平成25年8月12日)

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内縁の夫や内縁の妻が亡くなってしまった場合の相続問題を考えてみます。

1、内縁とは、法律による具体的な定義はありませんが、判例上、次のように解釈されています。

@ 婚姻の意思をもって
A 共同生活を営み
B 社会的にみて夫婦と認められながらも
C 婚姻届が提出されていない男女の関係

内縁関係を証明できる資料としては、同一世帯で「妻(未届)」と記載されている住民票や、社会保険の第3号被保険者となっている保険者証が考えられます。その他、家計を同一にして3年以上の共同生活を営んでいることや、携帯電話の家族割の適用を受けていること、近所や職場、親戚の証言などで内縁関係を証明する方法もあります。

2、婚姻届を出さない(仕事の関係で夫婦別姓を選択した)、あるいは、出せない事情(成人した子供から同棲は構わないが結婚は反対されてしまった)があって、傍からみると夫婦同然の生活を営んでいるにも関わらず、婚姻届を提出していないために法律上の夫婦とは認められていない関係をいいます。法律上の夫婦とは認められていませんが、内縁関係は婚姻に準ずるものと考えられているので、民法で定める婚姻に関する規定は婚姻届に関する規定を除いて類推適用されます。

婚姻関係と同様に取り扱われるものとしては、以下のようなものがあります。
@ 婚姻費用分担義務(760条準用)
A 同居協力義務(752条準用)
B 扶養義務(752条準用)
C 日常家事債務の連帯責任(761条準用)
D 内縁継続中の懐胎が証明された場合の嫡出の推定(772条準用)

他方、婚姻関係との違いもいくつかあります。この違いは主に婚姻届が出されていないことに起因するものです。
@ 相続権がない。
A 成年擬制に関する規定は適用されない。
B 内縁関係にある男女から生まれた子供は母親の戸籍に入り、非嫡出子となる。
C 生まれた子供は、原則母親の単独親権に服する。
D 父子関係については認知が必要。

(類推適用の判断基準) 内縁関係が認められる場合,できるだけ戸籍上の夫婦(法律上の配偶者)と同様に扱う,というのが原則です。どのような範囲で夫婦(婚姻)関係に関する法律上の規定が内縁 関係に類推適用されるかという問題ですが,一般的にいうと,夫婦当事者関係のみを規定する法律(例えば,婚姻費用の分担,貞操義務,財産分与等)は 内縁 関係に類推適用されますが,夫婦以外の第三者に影響を及ぼす公の規定(例えば,氏の使用,相続権等)については基本的に類推適用が出来ません。当事者が法律婚を希望しなくても実態が法律上の夫婦と同じである以上,法律上の夫婦と同様に扱うのが当事者の意思にも合致し公正,公平の原則に適合しますし,何よりも夫婦が対等平等であるという憲法24条の本来の趣旨を社会全体に実質的に生かすことが出来るからです。しかし, 内縁 として戸籍に登録,公示していませんから,単なる内縁 当事者の意思により第三者の利害,混乱を生ぜしめることは出来ません。従って,公に関するもので第三者に影響を及ぼす規定は類推できない事になります。

3、相続権に代わる法的手段

 上記の通り、内縁関係の配偶者には、法的な相続権は無い、ということになります。内縁関係で子供が産まれていれば、子供が第一順位の相続人として法定相続します(民法887条)が、子供が居ない場合は、第二順位(父親・母親)、第三順位(兄弟姉妹)の法定相続人が法律上の相続人となります。内縁の相続問題で最も多いのが、亡くなった方の兄弟姉妹(代襲相続人甥姪)が法定相続人となるケースです。残された内縁配偶者はどのような主張を行うべきでしょうか。

(1)特別縁故者に対する相続財産の分与請求(民法958条の3)

家庭裁判所に対して相続財産管理人を申し立てて、相続財産管理人が「相続債権者及び受遺者に対する請求申出公告(2ヶ月以上)」を行い、相続財産から債権者や受遺者に対する支払いを行い、残った相続財産について、さらに「相続人捜索の公告(6ヶ月以上)」を行い、それでも相続人としての権利を主張する者が現れなかった場合は、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」の請求により、裁判所の判断により、相続財産の全部又は一部を分与できます。

民法第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与) 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

内縁の妻に相続財産の全部の分与を認めた判例として、千葉家裁昭和38年12月9日審判や、名古屋家裁平成6年3月25日審判などがあります。他方、東京高裁昭和56年4月28日決定のように、正式な妻が居るのに内縁関係を開始したというような、いわゆる重婚的内縁関係の場合に公序良俗に反する妾関係であるとして分与を認めなかった事例もあります。また、大阪高裁平成4年3月19日決定のように、長年療養看護に勤めた住み込み店員に対して約半分の遺産を分与し、その他を、被相続人の亡くなった妻の従弟や姪に分与し、残りを国庫に帰属させることにした事例のように、必ずしも相続財産の全額が特別縁故者に分与されない事例もあります。

この方法による相続財産の清算は、次のような条件が必要となります。
@兄弟姉妹などの法定相続人が手続に理解を示し、全員が「相続放棄」してくれる場合
A内縁関係が明確であり長期に渡って継続しており、他の特別縁故者が居ない場合
B相続財産の一部が国庫に帰属することになっても構わない場合

(2)民法255条に基づく持分移転登記

相続人が不在の場合の不動産は国庫に帰属することになるのが原則ですが(民法239条2項)、共有不動産の場合は、それぞれの共有持分が他の共有者に対する権利の制約であると考えることができますので、持分放棄や死亡して相続人が居ない場合に、制約が解消されて完全な所有権を取得しうると規定されています(民法255条)。

民法第255条(持分の放棄及び共有者の死亡)共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

実際に民法255条を原因として不動産共有持分の移転登記をする場合は、前記の特別縁故者が現れなかったことも必要な条件となります。移転登記する場合の登記原因は、「相続人及び特別縁故者不存在確定」となります。

この方法による相続財産の清算は、次のような条件が必要となります。
@相続財産が、不動産共有持分だけである場合
A内縁夫婦が、自宅などの不動産を2人で共有していた場合
B兄弟姉妹などの法定相続人が手続に理解を示し、全員が「相続放棄」してくれる場合
C特別縁故者も特に居ない場合

(3)相続人に対する不当利得返還請求(民法703条)

相続人(亡くなった人の子供や兄弟姉妹)が取得した財産の中に、内縁配偶者が扶助を受けるべき資産や、内縁配偶者が受領すべき死亡慰謝料が含まれていた場合は、内縁配偶者からこれらの相続人に対し、不当利得返還請求訴訟を提起することにより、支払いを受けることができる場合があります。大阪地裁平成9年3月10日判決では、3100万円の交通事故死亡保険金を受領した法定相続人に対し、24年間連れ添った内縁の妻の相続人が、相続人が受けた逸失利益の3分の2を内縁の妻の扶助に充てられるべきであり、また、死亡慰謝料の4割を内縁の妻が受けるべきであるとして、合計1129万円の不当利得返還請求を認めています。

民法703条(不当利得の返還義務) 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

この判例の考え方を拡張していけば、法定相続人が相続した遺産のうちから、被相続人の扶養を受けていた内縁の妻が扶助を受けたであろう金額や、夫婦共同事業で財産を築いた遺産の半額程度にについては、不当利得返還請求が認められる余地もあることになりますが、この判例はあくまでも保険金として逸失利益の賠償を受けた場合の判断ですし、現時点では、相続財産に対して直接の不当利得返還請求権を認めた判例は見当たりません。

この方法による相続財産の清算は、次のような条件が必要となります。
@相続人が、被相続人の死亡事故などにより、賠償金や保険金を受領したケース
Aこの賠償金や保険金の中に、被相続人の逸失利益や死亡慰謝料が含まれていた場合

(4)相続人に対する貸金返還請求、名義貸し清算請求

被相続人と内縁配偶者との間で、金銭の貸し借りがあった場合や、預金口座や不動産名義の名義貸しが有った場合は、これらの法律関係に基づいて、法定相続人に対して、民事上の権利を行使することが考えられます。金銭の貸し借りについては、金銭消費貸借契約書や、借用書や、銀行振り込み記録などの証拠資料が必要です。また、名義貸しについても、預金口座を開設するときのお金の流れや、不動産を購入するときのお金の流れから、実際に金銭を支出していたのが内縁配偶者であったということが立証できることが必要です。内縁の夫婦が自営業を営んでいた場合には、形式的に営業の名義や預貯金・不動産などの資産を夫単独名義にしていても、実質的には内縁妻の夫名義資産形成に寄与する貢献度が半分程度認められる事例もあります。このような場合は、内縁の夫婦間で名義貸しが行われていたと法的に評価し得るでしょう。兄弟姉妹や甥姪などの法定相続人との協議がうまく出来る場合は、これらの権利関係に関する和解合意書を作成することにより、相続関係の清算をすることができますが、法定相続人との協議がうまく行かない場合は、民事調停の申立や民事訴訟の提起が必要となってしまう場合もあります。

この方法による相続財産の清算は、次のような条件が必要となります。
@被相続人と内縁配偶者との間で、金銭の貸し借りや名義貸しの契約関係が存在したこと
Aこの法律関係について、客観的な証拠資料により主張立証が可能であること

4、亡くなる前の場合

 被相続人予定者が亡くなる前であれば、内縁配偶者としては、本人の同意を得て正式な婚姻届を役所に提出して配偶者としての相続権を確保したり、公正証書による包括遺贈の遺言書を作成する方法もありますが、本人が病気などで意識不明になっている場合には、婚姻届出の有効性が問題となる場合があります。死亡直前の入籍や遺言書作成の場合、他の法定相続人との間で婚姻無効裁判や遺言無効裁判となってしまう可能性が高くなります。

 参考判例をご紹介いたします。内縁関係を継続してきた者が、婚姻の意思を有し婚姻届出書を作成したが、届出書が受理された当時意識を失っていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情が無い限り、婚姻は有効に成立すると判断したものです。但し、当然ながら、婚姻届受理当時に既に本人が死亡してしまっている場合には、婚姻は有効に成立しないことになります。

最高裁昭和44年4月3日判決
「本件婚姻届が○○○の意思に基づいて作成され、同人がその作成当時婚姻意思を有していて、同人と上告人との間に事実上の夫婦共同生活関係が存続していたとすれば、その届出が当該係官に受理されるまでの間に同人が昏睡状態に陥り、意識を失ったとしても、届書受理前に死亡した場合と異なり、届出書受理以前に翻意するなど婚姻の意思を失う特段の事情のないかぎり、右届書の受理によって、本件婚姻は、有効に成立したものと解すべきである。もしこれに反する見解を採るときは、届書作成当時婚姻意思があり、何等この意思を失ったことがなく、事実上夫婦共同生活関係が存続しているのにもかかわらず、その届書受理の瞬間に当り、たまたま一時的に意識不明に陥ったことがある以上、その後再び意識を回復した場合においてすらも、右届書の受理によっては婚姻は有効に成立しないものと解することになり、きわめて不合理となるからである。」

 この判例でも、婚姻届出書作成時の婚姻意思は必要とされていますから、届出書作成時の本人の意思確認は極めて重要です。問題が顕在化し、法的紛争となるのは本人が死亡してしまった後になりますから、立証資料の準備が必要です。勿論、婚姻届出書に記載された証人の意思確認も重要となりますが、公正証書による夫婦財産契約書(民法755条)を作成するなどの行為を併用しておけば、権限ある公証人による意思確認を経ていますので、後日の法的紛争においても婚姻意思の有効性を主張しやすくなると考えることができます。婚姻届出書作成当時本人が重病だった場合や、入院していた場合は、作成当時の会話を録音するとか、ビデオ撮影するとか、写真撮影するとか、様々な立証資料の準備が必要です。

5、最後に

以上のように、内縁関係の相続問題には様々な手段がありますが、通常の法律婚夫婦間の相続の様に簡単に請求できるという性質のものではありません。被相続人の兄弟姉妹や甥姪などの法定相続人との間の協議が欠かせない事案であるといえます。内縁の夫婦であった以上、夫婦間に金銭の貸し借り(立替払い)や名義貸しが全く存在しないということの方が少ないと言えますが、そのことを法定相続人の方々にしっかり理解して頂く必要があります。どうしても協議がうまく行かない場合は、間に代理人弁護士を立てて円満に協議する方法もあるでしょう。お困りの場合はお近くの法律事務所にご相談なさってみると良いでしょう。


<参照条文>
※民法
第九百五十一条(相続財産法人の成立) 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
第九百五十二条(相続財産の管理人の選任) 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2項  前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
第九百五十三条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用) 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
第九百五十四条(相続財産の管理人の報告) 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
第九百五十五条(相続財産法人の不成立) 相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
第九百五十六条(相続財産の管理人の代理権の消滅) 相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2項  前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
第九百五十七条(相続債権者及び受遺者に対する弁済) 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2項 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
第九百五十八条(相続人の捜索の公告) 前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
第九百五十八条の二(権利を主張する者がない場合) 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
第九百五十八条の三(特別縁故者に対する相続財産の分与) 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2項 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
第九百五十九条 (残余財産の国庫への帰属) 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

※参考判例、大阪地裁平成9年3月10日判決
「3 ところで、前記一、二で認定した事実によれば、亡Sは、亡Rの相続人ではないけれども、亡Rが本件事故で死亡するまで二四年間亡Rと準婚関係にあつたものであり、亡Rの死亡当時、亡Sは満七五歳の高齢で、身体が相当弱つており、内縁の妻として、一一歳年下の亡Rから扶助を受ける権利を有し、現に扶助を要する状態にあつたのであるから、亡Rの逸失利益は先ず亡Sの扶助に充てられるべきものであつたというべく、亡Rの相続人たる被告らにおいて請求し得る亡Rの逸失利益の範囲は、右扶助に充てられるべき部分を控除した残額の部分に限られるものと解するのが相当てあり、かかる法理は、本件のように、亡Rの死亡を原因として既に支払われた保険金中の逸夫利益に該当する部分についても同様に妥当するものというべきである。これを本件についてみると、亡Sが要扶養状態にあつたことは前記認定のとおりであり、一方、亡Rが稼働能力を有していたことは本件保険金の給付の事実に照らして明らかであるから、扶養可能状態にあつたものと認められるところ、扶養可能期間は、亡Rの死亡時点における亡Rの稼働可能年数と扶養権利者である亡Sの推定生存期間の重なる期間である九年(亡Rの死亡時点の満午齢六四歳の均余命の二分の一)を限度とすべきであるから、結局、本件保険金のうち逸失利益部分である金一七三八万七〇〇〇円(これは、前述のとおり、亡Rの稼働年数を九年、亡Rの生活費として四割を控除済みの金額である。)の三分の二に相当する金額(亡Rの生活費と同様に逸失利益の四割相当分)の金一一五九万一〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨)が、亡Sの扶助に充てられるべき部分に該当するものと認めるのが相当であり、したがつて、被告らが相続し得る部分は、金一七三八万七〇〇〇円から金一一五九万一〇〇〇円を控除した残額の金五七九万六〇〇〇円となる。
4 次に、本件保険金のうち亡Rの死亡慰謝料部分である金一三〇〇万円については、内縁の妻である亡Sも、民法七一一条の類推適用により固有の慰謝料請求権が認められるところ、亡Sは、亡Rの酒癖の悪さや暴力に悩まされてはいたものの、二四年間連れ添つた内縁の夫婦として、それなりに亡Rに対する愛情を抱き、また、残された人生と将来の生活について一一歳年下の亡Rに多大の期待を寄せていたことは想像に難くないから、かかる事情を斟酌すると、亡Sには、右慰謝料部分金一三〇〇万円についてその四割に相当する金五二〇万円が帰属するものと認めるのが相当であり、したがつて、被告らが取得し得る慰謝料部分は金七八〇万円となる。
5 以上の認定説示によると、被告らが受領した本件保険金のうち金一一五九万一〇〇〇円と金五二〇万円との合計金一六七九万一〇〇〇円は亡Sにおいて取得すべきものであり、被告らは、右同額の金員を不当に利得したものというべきであるから、亡Sに対しそれぞれ金八三九万五五〇〇円を返還すべき義務がある。」

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