離婚時の子の親権について 最終改訂(平成16年5月31日)
1、親権(民法818条)には、財産上の管理権と、身分上の監護権とが含まれます。前者は法定代理人としての財産管理権であり、後者は同居して現実に養育・教育をしていく権限です。両親が結婚中は、夫婦が共同で親権を行使しますが、離婚する場合は、どちらか一方を親権者に決めて、離婚届に記入しなければなりません。
2、両親が離婚する場合、親権のうち、「同居して懲戒・教育する」という権限だけを「監護権」として分離させることができます。民法766条で規定されています。但し、戸籍や住民票の記載事項ではありませんので、市役所に届け出をすることはできません。監護権者を決める場合は、家庭裁判所の調停で調停調書を作成するか、弁護士に協議離婚合意書の作成を依頼するなどの手続が必要です。
3、親権や監護権を決める話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所で話し合いをします。それでもどうしてもまとまらない場合は、家事審判や離婚裁判で強制的に裁判所に決めてもらいます。
4、親権者を決めるにあたって重要なポイントは子供の年齢です。実務の考え方では子供は母親のもとで育てられた方が保育学上子供の福祉にかなうと考えられています。判断の分岐点として13才前後であれば子供に自由意思ありとして子供の意思を尊重する判断が下りやすく、逆にその年齢以前であれば母親を親権者とする判断が下されやすいです。お子さんが2人以上いる場合も同じです。
5、親権や監護権を持たない方の親は、1ヶ月〜3ヶ月に1回程度子供と面会することを要求できます。これを面接交渉権といいます。権利といっても,具体的に条文に記載されているわけではなく,解釈上,親子という身分関係から当然発生する自然権であるとか,監護に関連する権利であるなどといわれています。裁判手続きとしては,家事審判法9条乙類4に規定する子の監護に関する事項として扱われていると考えられます。したがって,親権や監護権者を決める場合は、あわせて面接交渉の頻度や方法についても取り決めをしておくと良いでしょう。約束が守られなかった場合の違約金を決めることもあります。面接交渉についての話し合いがまとまらないときも、調停や審判により裁判所に決めてもらうことができます。
6、子供の引渡について、調停や審判で認められた権利がある場合には、裁判所の強制執行で引渡を請求することができますが、相手が応じない場合には間接強制と言って1日数万円の支払いを命ずることしかできません(民事執行法172条)。間接強制のお金については給料差し押さえなどで強制的に弁済を得ることができます。
7、子供を取り返す方法として、人身保護法に基づいて、地方裁判所に人身保護請求の申立をする方法もあります。この手続は、緊急の場合に認められる手続ですから、両親が離婚する前は、義務教育が受けられないなど特殊な事情がない限り認められません。人身保護請求の申立が認められると、指定日時に裁判所に出頭するように命令が下ります。命令に従わない拘束者は拘引し、命令に従うまで勾留し、1日ごとに過料を課すことがあります(法18条)。申立後1週間以内に審問期日が開かれ(法12条)、審問から5日以内に判決言い渡しされる(規則36条)など、迅速な手続となっています。弁護士にご相談になると良いでしょう。
8、厚生労働省が発表している人口動態調査統計(H12.5.10)に基づく、親権者割合はこちら。その1、その2。
9、最高裁が発表している司法統計年報(H15.7.10)から、調停・審判における親権者・監護権者の指定状況はこちら。