競売回避 (最終改訂平成21年10月6日)

 自宅不動産についての競売開始決定通知(民事執行法45条2項、)を受け取ってしまった場合、競売手続を回避するにはどうしたらよいでしょうか。不動産競売には、@判決正本や公正証書など債務名義に基く強制執行としての競売手続(民事執行法43条)と、A担保権の実行としての競売手続(民事執行法180条)の2種類があります。いずれの手続も、金銭の支払いが得られないために競売の申立をしているので、金銭の支払いをすれば、申立を取り下げてもらうことが(普通は)できます。

 担保権の実行としての競売手続の場合は、債務名義に基かずに手続が開始されるので、民事執行法183条1項で「執行停止文書」が法定されています。以下に列挙しますが、慎重を期するために法律上定められた文書と言えます。逆に言うと、担保権の実体が無いような場合には、急いで、これらの文書を用意して裁判所に提出すべきことになります。

民事執行法183条1項(不動産担保権の実行の手続の停止)不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一  担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本
二  第百八十一条第一項第一号に掲げる(担保権の存在を証する)裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第三号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本
三  担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本
四  担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書
五  不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
六  不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
七  担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本

 これら文書を用意することは一般的に極めて困難ですから、債務名義に基く不動産競売手続と同様に、「金銭の支払い」をすることが現実的な競売回避の方法になります。金銭の支払いをするためには、任意売却と言って、競売不動産を売却し、その売却代金を抵当権者全員に割り振り(配当)する方法が考えられます。売却の期間や内覧が制限される競売手続に比べ、任意売却では通常の不動産市場を通じて売却できるため、売却価格の下落を防止することができますので、通常の債権者であれば、協力してくれることが多いと言えます。売却代金から債権者への支払を行い、完済できた場合の残金は、勿論、売主が取得することができます。また、任意売却の場合は、買受人が誰になるのか事前に分かりますので、買受人と相談して、不動産を賃借してそのまま住み続けることが出来る場合もあります。親戚の人や友人にも買受を打診することができます。金融機関などの債権者としても、妥当価格での売却及び配当が可能であれば、買受人が知人であっても、任意売却を拒否することは通常はありません。

 任意売却を行うには、@不動産業者に依頼するなど、買い手を探し売買契約交渉する、A抵当権者・差押債権者との担保権抹消交渉、B裁判所への競売申立取り下げ、の三つの手続が必要となります。競売取り下げのタイムリミットは、不動産競売の入札期間開始日の前日まで(民事執行法76条)です。不動産の任意売却を成功させる為には、なるべく早く、信頼できる不動産業者、弁護士(司法書士)を見つけることです。


1、住宅ローン以外にも多額の債務があり破産を検討する場合でも、不動産(財産)を処分、精算してから申立すると同時廃止の申立になり手続が簡易になります。

2、任意売却によって残った残債務については、債権者と交渉し分割での支払交渉及び残債務等の交渉することになります。無担保債権となりますので、債務者側の事情も汲んで貰いやすくなります。

3、売却価格が確定したら、その中から仲介手数料、管理費の滞納、抵当権抹消の登記費用、固定資産税等の滞納税の支払を確保しなければなりません。

4、競売手続では裁判所が配当表を作成(民事執行法85条)しますが、任意売却では、担当する弁護士が法律に従い配当表を作成し、各担保権者・債権者の了解を得て決済します。競売と異なる点は、担保権の抹消を「抹消登記申請」により行うので、本来配当が回らない後順位抵当権者にも「印鑑代」として数万円程度の解決金が支払われることです。この点、先順位担保権者も通常は異議なく了解します。

5、どうしても抵当権者が任意売却に応じてくれない場合は、強制的に抵当権を抹消する抵当権消滅請求手続をご検討下さい。

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