姻族関係終了届(最終改訂、平成22年3月31日)

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夫婦の一方が死亡した場合において,生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときは,姻族関係(婚姻により生じた親戚関係)は終了します(民法728条)。そして,姻族関係を終了させる意思表示は,姻族関係終了届が受理されたときに効力が生じます(戸籍法96条)。なお,姻族関係終了の効果には復氏(旧姓に戻ること)はありませんので,氏の変更をすることなく,亡夫の両親や兄弟姉妹との親族関係を解消することができます。

(婚姻の効力について)
婚姻は,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,その効力を生じます(民法739条)。夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称することになります(民法750条)。婚姻が成立すると,夫婦は,互いに配偶者という親族関係になり,同居し,互いに協力し扶助しなければならない義務を負います(民法752条)。ところが,婚姻の効果には,夫婦のみならず,配偶者の一方と他方の血族との間に姻族関係(婚姻により生じた親戚関係)が生じ,3親等内の姻族までが法律上の親族とされています(民法725条)。個人を尊重し平等、公正な家庭、家族の維持(憲法24条)は一定範囲の親戚の存在、協力が不可欠です。なお,親等の計算は,親族間の世代数を数えて,これを定めることとされており,傍系親族の親等を定めるには,その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり,その祖先から他の一人に下るまでの世代数によるとされています(民法726条)。したがいまして,妻と夫の両親や夫の兄弟姉妹とは,姻族関係という親族関係に該当します(夫婦の一方の血族と他方の血族は,姻族関係になく法律上の親族関係にあたりません)。

(姻族関係と復氏について)
前述したとおり,妻と夫の両親や夫の兄弟姉妹とは,姻族関係という親族関係にあたりますので,親族間の扶け合いの義務(民法730条)や扶養義務(民法877条2項に,家庭裁判所は,特別の事情があるときは,三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができると定められています)を負います。私有財産制を採用していることから遺産は一定の親族に相続されることから助けあい、扶養義務も親族に認められます。この姻族関係は,夫婦が離婚した場合には法律上当然に終了しますが,夫婦の一方が死亡した場合には,生存配偶者と死亡配偶者の血族との姻族関係が当然に終了することはありません。姻族関係を終了させるには,その意思を表示することが必要となります(民法728条2項)。そして,姻族関係を終了させる意思を表示するためには,死亡した配偶者の氏名,本籍及び死亡の年月日を届書に記載して,その旨を市町村役場に届け出なければなりません(姻族関係終了届)(戸籍法96条)。届出が市町村長に受理されて初めて姻族関係終了の効力が生じます(要式行為)。
 次に,姻族関係の終了と復氏(婚姻前の氏に復すること)の関係についてですが,生存配偶者の姻族関係の終了と復氏とは法律上関連性はありません。すなわち,復氏届けのみをしても姻族関係は終了することなく継続しますし,姻族関係の終了届けのみをしても復氏の効果は生じません。個人主義(憲法13条)の下では、氏は個人を特定表示する単なる呼称であり、親族の範囲を定める姻族関係の存否とは無関係だからです。

≪条文参照≫

憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
○2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

民法
(親族の範囲)
第七百二十五条  次に掲げる者は、親族とする。
一  六親等内の血族
二  配偶者
三  三親等内の姻族
(親等の計算)
第七百二十六条  親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2  傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条  姻族関係は、離婚によって終了する。
2  夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
(親族間の扶け合い)
第七百三十条  直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
(婚姻の届出)
第七百三十九条  婚姻は、戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2  前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
(夫婦の氏)
第七百五十条  夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
(生存配偶者の復氏等)
第七百五十一条  夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
2  第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条  夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(子の氏の変更)
第七百九十一条  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3  子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4  前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
(扶養義務者)
第八百七十七条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

戸籍法
第九十六条  民法第七百二十八条第二項 の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。


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