相続欠格(最終改訂、平成24年7月9日)
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相続欠格とは,ある相続に関して相続人の地位を有する者が,当該相続あるいは被相続人に関して,民法891条で定める一定の行為(欠格事由)をした場合に,被相続人の意思とは関係なく当然にその相続人たる地位を失わせるものです。
相続欠格の効力は,相続開始前に欠格事由に該当する行為があった場合は即時に,相続開始後に欠格事由に該当する行為があった場合には相続開始時に遡って,その効力が発生します。
相続欠格の制度趣旨ですが、これは私有財産制に基づく遺言自由の原則を側面から保障しようとするものです。各号の内容は、被相続人の自由、公正な遺産処分を実現しようとしています。1、2号は、合わせて犯罪を予防し、3乃至5号は遺産処分に関する道徳的側面から相続人の相続権を規制しています。相続人廃除も同様の趣旨に基づくものですが、廃除(民法892条、893条)は、欠格よりも相続人の違法性がより少ない場合をも規制して被相続人の遺産処分の自由意思を保証しています。各相続人個別的理由によるものですから、相続人の合理的意思の実現とされる代襲相続人に何ら影響がありません。相続欠格者に子供が居る場合には、子供が代わりに代襲相続を受けることができます。欠格事由は違法性が強く、遺産の死後贈与を受ける地位も失いますが(965条、891条)、廃除は、被相続人の自由意思で行われるもので、被相続人が遺贈の意思をそれでも有しているのであれば、被相続人の意思を尊重して、受遺能力には影響がありません。
相続人たる地位を失わせる制度としては,他に廃除(民法第892条)があります。廃除が被相続人の意思に基づき,家庭裁判所への申立あるいは遺言によって行われるのに対し,相続欠格は,欠格事由の発生により,当然に相続人たる地位を失います。また,受遺能力についても,廃除の場合には失わないのに対し,相続欠格の場合には失われることになります。なお,代襲相続については,廃除・相続欠格ともに発生します。
民法 (相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
1 第1項 「故意に」とあるので,過失致死,傷害致死は含みません。
2 第5項 平成9年1月28日最高裁判決で,「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者に当たらない」として,破棄又は隠匿には,不当な利益を得る目的が必要であるとされています。遺言自由の原則を保証する制度ですから妥当な解釈です。
≪条文参照≫
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
(相続人に関する規定の準用)
第九百六十五条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。
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