権利変換 (最終改訂、平成27年1月30日)
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「権利変換」とは、第一種市街地再開発事業において、都市再開発法の定める手続に従って処理することにより、特定の期日(権利変換期日)に、従来の土地や建物の権利が全て消滅し、代わりに新しい再開発後の土地や建物の権利が与えられることを意味します。権利変換手続きにより、円滑な建物の建替え工事が促進されることになります。
都市再開発法第87条(権利変換期日における権利の変換)
第1項 施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。
第2項 権利変換期日において、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者に帰属し、当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。ただし、第六十六条第七項の承認を受けないで新築された建築物及び他に移転すべき旨の第七十一条第一項の申出があつた建築物については、この限りでない。
※第一種市街地再開発事業における借家権の扱い
都市再開発区域内に借家権を有する権利者の権利は、前記の「権利変換」により、新しい再開発後の建物の借家権を付与されることが原則となります。都市再開発法77条5項と、88条5項が根拠条文です。権利変換手続における借家権の消滅について、借地借家法は適用されません。第一種市街地再開発事業において、借家人は借地借家法に基づいた権利主張をすることができないことになります。
都市再開発法第77条(施設建築物の一部等)
第5項 権利変換計画においては、第七十一条第三項の申出をした者を除き、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者から当該建築物について借家権の設定を受けている者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)に対しては、第一項の規定により当該建築物の所有者に与えられることとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、当該建築物の所有者が第七十一条第一項の申出をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。
都市再開発法88条
第5項 施行地区内の建築物について借家権を有していた者(その者がさらに借家権を設定していたときは、その借家権の設定を受けた者)は、権利変換計画の定めるところに従い、施設建築物の一部について借家権を取得する。
ここで、都市再開発法71条3項は、借家人が新しい建物の借家権の取得を希望しない旨の申し出をした場合の規定で、71条1項は、宅地の所有者及び借地権者及び建物所有者が権利変換を希望しない旨の申し出をした場合の規定です。都市再開発法77条5項の但し書きの部分は、借家権者の大家が権利変換を希望せず退去する場合であっても、借家権者は保護されて、新しい建物の借家権を取得できる旨が規定されています。
都市再開発法77条5項の規定を、分かりやすく書き直すと、次の様になります。
都市再開発法第77条(施設建築物の一部等)
第5項 権利変換計画においては、施行地区内の土地に建築物を所有する者から当該建築物について借家権の設定を受けている者に対しては、権利変換計画により当該建築物の所有者に与えられることとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、当該建築物の所有者(借家人にとっての大家)が、事前に退去する旨の申出をしたときは、市街地再開発組合に帰属することとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。
※権利変換計画に対する異議申立手続
再開発における権利変換計画において、借家権が定められていなかったり、定められていても床面積が著しく不利な定められ方をしていた場合の、異議申立手続は、都市再開発法83〜84条に規定されています。つまり、権利変換計画の縦覧が行われた時に、借家人は、「権利変換計画に関する意見書」を施行者に提出することができ、権利変換計画及び意見書に対する対応方法について、「審査委員の過半数の同意」、又は、「市街地再開発審査会の議決」を得ることが必要です。
都市再開発法第83条(権利変換計画の縦覧等)
第1項 個人施行者以外の施行者は、権利変換計画を定めようとするときは、権利変換計画を二週間公衆の縦覧に供しなければならない。この場合においては、あらかじめ、縦覧の開始の日、縦覧の場所及び縦覧の時間を公告するとともに、施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者にこれらの事項を通知しなければならない。
第2項 施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者は、縦覧期間内に、権利変換計画について施行者に意見書を提出することができる。
第3項 施行者は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは権利変換計画に必要な修正を加え、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
第4項 施行者が権利変換計画に必要な修正を加えたときは、その修正に係る部分についてさらに第一項からこの項までに規定する手続を行なうべきものとする。ただし、その修正が政令で定める軽微なものであるときは、その修正部分に係る者にその内容を通知することをもつて足りる。
第5項 第一項から前項までの規定は、権利変換計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。
第84条(審査委員及び市街地再開発審査会の関与)
第1項 施行者は、権利変換計画を定め、又は変更しようとするとき(政令で定める軽微な変更をしようとする場合を除く。)は、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経なければならない。この場合においては、第七十九条第二項後段の規定を準用する。
第2項 前項の規定は、前条第二項の意見書の提出があつた場合において、その採否を決定するときに準用する。
審査委員は、「土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから総会で選任する。(都市再開発法43条2項)」とされており、一定の公平な判断が期待できる機関です。市街地再開発審査会は、「土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者(都市再開発法57条4項)」として地方公共団体の長から任命された5〜20名の委員による機関で、これも一定の公平な判断が期待できる機関と言えます。公正な判断のため当然法的専門家、不動産鑑定士の参加も予定されています。
この、審査委員による同意や、市街地再開発審査会の議決において、不公平な判断が出てしまった場合や、これに対して異議がある場合には、権利変換計画の認可を受けた通知に対して、「行政不服審査請求」又は「行政処分取消訴訟」を提起することになります。
都市計画法第86条(権利変換の処分)
第1項 施行者は、権利変換計画若しくはその変更の認可を受けたとき、又は権利変換計画について第七十二条第四項の政令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならない。
第2項 権利変換に関する処分は、前項の通知をすることによつて行なう。
第3項 権利変換に関する処分については、行政手続法
(平成五年法律第八十八号)第三章 の規定は、適用しない。
実際には、権利変換計画の策定前の期間や、縦覧や意見書を提出する期間内に、市街地再開発組合との間で、借家権をどうするか、実質的な交渉を行うことになります。
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