財産分与、離婚時の税金について(最終更新、平成23年8月8日)
1、財産分与とは、結婚後築きあげた財産の約半分を、離婚時に妻の名義に移すことです。財産分与の請求は離婚後2年以内(民法768条)にしなければなりません。これを清算的財産分与と言います。他方、離婚時の当事者間の公平を担保するため、慰謝料的財産分与や、扶養的財産分与という考え方も一部の審判例で採用されています。これについてはこちらをご参照下さい。
2、財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産(共有財産)です。具体例としては、家財道具・家具・不動産・自動車・銀行預金・株券等で、婚姻中に取得したが名義が夫婦の一方になっているものです。婚姻期間中に積み立てされた厚生年金は年金分割の対象となります。
3、夫婦どちらか一方の特有財産(個人財産)は、財産分与の対象となりません。例えば、婚姻前から夫婦の一方が所有していた財産、婚姻後に夫婦の一方が相続で取得した財産などです。
4、夫が経営する会社の資産は、個人財産ではありませんので、原則としては財産分与の対象とはなりませんが、夫の個人経営で実質上夫の資産と同視できる場合には、財産分与の対象となる場合があります。また、株式などの持分が共有財産として分与の対象となることもあります。
5、夫の将来の退職金は、財産分与の対象とはなりませんが、数年以内に確実に支給されることが明らかであれば、財産分与の算定の際に考慮に入れることができます。
6、財産分与で最も重要なのは、財産分与の対象となる財産を保全することです。夫が財産分与の請求を察知して夫名義の不動産を処分してしまう場合があります。それを防止するためには、不動産に仮差押をすることによって、対象となる不動産を処分できないようにして、妻の権利を保全することになります。
7、離婚給付には、慰謝料・財産分与・養育費などがありますが、いずれも、現金で、社会通念上妥当な範囲内の金額であれば、税金はかかりません。但し、給付額が多額で贈与税を免れるための手段であるとみなされると、妥当な範囲を上回る部分については、贈与があったものとして、贈与税が課税される場合があります。
8、財産分与や慰謝料の支払いが、現金ではなく、不動産で行われたときは、時価で譲渡されたものとして、譲り渡した人に、譲渡所得税が課税されます。不動産取得税はかかりません(慰謝料として不動産を取得した場合にはかかります)。譲渡所得税には、3000万円までのマイホーム控除があります。
9、財産分与で不動産を譲り受けた人は、後日不動産を処分したときに、譲渡所得税の計算をしなければなりませんので、財産分与時の取得費を証明する資料を用意しておかなければなりません。当事者間の確認書や、不動産業者の広告チラシや、不動産鑑定士の簡易鑑定書などが考えられます。
10、また、離婚前であれば、婚姻期間20年以上の夫婦が居住用資産を贈与する場合は、贈与税に関して2000万円の配偶者控除があります。
11、譲渡所得税の課税を回避するには、現金で分与する他、不動産の使用貸借契約(無償使用契約)をする方法もあります。「借り主が死ぬまでこの家に住んでも良い」という契約書を公正証書などで作ります。違約金を定めて抵当権設定登記も入れれば、分与を受ける人にも心配がありません。
12、厚生省が発表している人口動態調査統計(H12.5.10)に基づく、財産分与取得状況はこちら。
13、最高裁が発表している司法統計年報(H15.7.10)から、財産分与支払者別支払額状況はこちら。
14、最高裁が発表している司法統計年報(H15.7.10)から、財産分与婚姻期間別支払額状況はこちら。